かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
この惨状はなんだ?
リーダーが新たに悪魔と契約を深めた理由はなんだ。ジミーの優勢にうつつを抜かしている僕らを他所に、確かな危機感を抱いたからこそだろう。
敵の新必殺技に対応も出来ず、ただ眺めるしかできなかったから引き起こしてしまった地獄か何かか。
『ついに決まりました……! 雷門イレブンの新必殺技、
「……ゴールが入った?」
信じられない光景と、言葉。
リーダーが負けた? 無理をしていたことは知っていた。休憩中にまた悪魔の力を増したことにも気がついていた。
けど、そこから来る不安は決して「敗北」ではなかった。彼の体が壊れないかとか、また僕らを置いて行ってしまうんじゃないかと思っていた。
「お、おい……ボス、ピクリとも動いてないぜ……!?」
「ぶ、部長! 大丈夫か!」
グラさんとジミーが駆け寄る。二人の呼びかけにもピクリとも反応していない。
ゴールが入ったことにも気が付かず、勢いの止まったボールを抱えずっと立ち尽くす彼が目に映る。
顔を伏せ、右腕の包帯には焦げ付きと赤い染みが見えた。重力以外には従わず、右腕は垂れ下がっていた。
直ぐに蛇が巻き付いて、消えていく。
赤い染みが消えていた。骨の存在をようやくそこで思い出した。
間違いない、治した。焦げ付き焼け落ちた包帯の下に、真新しい皮膚が見える。
「部長! も、もう決まったから……ボールを放して……!」
「お、おい? 気失ってねぇかこれ……」
「……!? ……!」
ウリ坊がボールを引っぺがそうとしてもがいている。
喧嘩慣れしたトールが焦っている。
カガは慌て、持ってきた救急箱の中身を散らした。
「お、起きろ部長!」
「だぁーっ! トールさんやりすぎっすよ!」
よほど慌てたのか、トールはリーダーの肩をゆさぶる。
彼の首が酷く揺れる。見ていたバングが悲鳴を上げた。
「──ァ?」
「……っ」
そこまでしてようやく、リーダーが意識を取り戻した。トールは……彼の顔に何を見たのか、手を離す。
それでもボールを固く抱きかかえたまま、辺りをきょろきょろと……ふら付いて、前のめりに倒れた。
慌ててウリ坊が支える。カガも肩を貸す。
ボールが落ちて、転がる。細々とした声でリーダーは、地面を見ながら尋ねた。
「……ま、け……たか?」
たまたま、ぐるぐる回る彼の視線の照準が僕に合った。
一瞬、両目ともが……黒白が反転した、悪魔の目に変わっている気がした。
直ぐにいつもの半分半分に戻ったけど……それでも、それでも……あれは、本当にリーダーの視線だったのだろうか。
「(怯えて、いる?)」
「……! ち、違う。まだ試合は終わってないって! まだ3-1だよ!
ウリ坊が叫ぶ、それに合わせてグラさん達もそうだそうだと捲し立てる。
僕も声をかけようとしてやっと、自分の足が竦んで全く彼に近づけていない事に気が付いた。
怖かった。少し離れた位置で見えた、聞こえた彼を知るうちに……何かが壊れてしまいそうだった。
「だめ……だった、か……ご……め……──」
「部長? 部長! 部長!!」
そうこうしている内に、また彼が意識を手放した。何も言えなかった。助けになれなかった。
「どうしようどうしよう! 部長が死んだ!」
「結論がはえ―よウリ坊!?」
体の中、心の中の光が……とげとげしく変化していく感情を覚えた。
◇
膝を曲げ、何度か屈伸をする。燃えているように熱い足裏を冷ますように軽く振る。
「ふぅー……今の技、もっと改良の余地はあるネ」
「あ、あぁそうだな……」
染岡が居心地が悪そうに返答をした。
豪炎寺などは彼方が気になってそもそも会話に参加していない。
……せっかく決めてやったというのに、まるで葬式会場ではないか。
「部長がまた気絶した! どうしたらいいの!」
「甘酒でも飲ませてみる?」
強引に口を開けられ、甘酒を流し込まれている男が皆気になってしょうがない……いや気になるが。
我が何をした。ただ単に強力なシュートを蹴っただけではないか。
アイツが無理をして一人で受け止めようとして、その報いを受けただけではないか。
「ふふふ、フフフフ……」
「おいトール、エマ嬢を抑えろ。般若みたいな顔してんぜあの子」
こう……もっと称賛する声が響いてほしいものである。評価は大事だ。
かなりの偉業をしたのだぞ? 土壇場で必殺技を編み出し、決めたのだ。本国に持ち帰れば来期もスタメンは確実である。
……散々骨が折れても止め続けた男が今更どうにかなるわけもないだろう。
苛立ちを込めてさっさと起きろと念じてみた。
「──いや、生きている。五体満足だ」
はっきりとした声で、奴らのリーダーは無事を主張した。
……どうやら意識を取り戻したらしい? 今度は万全の様に見える。
すっかり立ち上がって肩を回し、軽く手を握っては開いてを繰り返している。
「お、おぉ……? 部長、大丈夫か? 何かさっきまで世界が終わったみたいな目ぇしてたけど」
「心配かけたなジミー、われ──んんっ! 俺は問題ない」
……何か違和感があるな?
似ているけれど、根本的な何かが違う様な。
「キャプテン……また無理をしましたね?」
「ああワタリ。そうだな……約束通り、ベンチに入るとする……キーパーを交代、二号!」
……キーパーを交代した? いやあれほどのダメージを受けた後だから当たり前のように思えるが……織部が交代を素直に認めた?
それこそ骨折を隠してでも立ち続けた奴が? 意外とキーパーの立ち位置は気にしてないのか?
『お、おおっと! ここで習合はキーパーを交代するようです。雷門大チャンスか?』
心なしか実況のトーンが落ちている。流石に試合中の気絶には驚くか。その程度で驚いていては世界では任せられんぞ。
……交代と聞いて、もう一度自身の足を確認した。
まだ悲鳴こそ上げてないが……さっきの織部に感じた強烈な違和感に似たようなものが足に渦巻いている。
これはいけない。
事態を飲み込めていない我らのキャプテンの元へと向かう。
「……キャプテン、我も正直疲労が強い。練習試合という事もある、交代を願う」
「え、あ、そうか? わかった! それにしても、さっきのシュートは──」
そう言えば、キャプテンは残念そうに、また点を決めたことを盛大に褒めつくしてから交代を宣言する。
やれあんな威力のシュートは見たことがないとか、お前が作った流れは無駄にしないとか。
後色々。豪炎寺と染岡も呼んでまた同じことを言いだしたり。
……うむ。
まあまあいい環境だ。
ベンチの少林とハイタッチをしながらベンチについて、試合の流れを見守ることにした。
「……何やってんですかこるしっ──に、に……にい……さん?」
「……何も言うな……あのバカのせいだ」
仲がいいと聞いていた、妹に何やら睨まれている織部を横目に見ながら。
何を話しているのだろうか。
◇
◆
負けた。駄目だった。
俺は結局何も成せなくて、醜態をさらした。
心配そうに見つめていくれているのだろう皆のまなざしがどうしてか哀れみに感じてしまった。
俺が弱い人間だってみんな知ってしまったかな。明日から練習は、試合は。
──……気をやっている間、体は好きに使うぞ。……いやならさっさと起きろ
コルシアの声らしき何かが反響する。聞き取れない。
そう言えばウリ坊が何かを叫んでいた。聞こえなかったけど。見れば考えていることは何となくわかった。一点ごときでそんな落ち込むなとか、多分そんなところだろうな。
ごめん、それが俺の心の支えだったみたいだ。
──ふふっ、随分と一瞬で壊れたなぁ契約者。そうは思わんかフェル?
──……美味しかった!!
──寂しいのぉ
トロアとフェルタンの声色だ。
何を言っているのか分からないけれど、今はただ見知った声が聞こえるだけで安心する。
多分どうでもいいことを話している。それもありがたい。
…………
……、
……俺は今、何をしているんだろうか。
何が駄目だったんだっけ。なにが支えだったんだっけ?
負けた……何に?
えーと、えーと……。
考え事がまとまらなくなった。視界がぼやける。
真っ黒だった世界に徐々に色が付き、何かが出来上がっていく。
──そうだ、せっかくいいものを間近で見た褒美をやろう。妾は優しいからなぁ、くふふ
──お、おいトロア貴様何を!
──。
……? 何か今、ノイズが走った。何だろう、まあいいか。
ただ目に映るものに思考が揺れる。
『──!!』
『──!』
うるさい気がする。四方八方から声が響く。歓声、煽る実況。
……下は芝生?
綺麗な、青々とした芝生。寝っ転がったら気持ちいいだろう。
『さぁフットボールフロンティアもいよいよ最終幕の決勝戦! 会場の熱気は最高潮だ!!』
フットボールフロンティア? 決勝か。
じゃあ今俺は……試合をしているのか。気が付けばゴールの前に立っている。顔が上手く動かないが、少なくともベンチではない。よかった。
『ついにここまでやって来たのは雷門イレブン! ここで勝って、伝説のイナズマイレブン再びとなるかぁ!!』
相手は……雷門か。そりゃそうだ。
強いもんな。いなかったら怖かったよ。うんうん。にしても……最初の頃とはだいぶメンバーが違うな。
帝国の鬼道、アメリカの一ノ瀬、中国の黒月。
「……」
『今回からはまたもや新メンバー、エンゼルストライカー! 勅使ケ原 明が加わっております! 』
習合のメア……。
……えっ?
メアがいた。フィールドの中央に、気が付けば目の前に。今にも泣きだしそうな目でずっとこちらを見ている。
どういうことだ。俺が嫌になって、雷門に転校したのか?
なあみんな、教えてくれ……。
周りを見る。
誰も、見知った顔がいない。
ウリ坊は? カガは? トールは、ソニックは、ワタリは、一号は……あれ?
あれ、その後姿。習合の赤黒いユニフォームなんて欠片もない。神々しさを表現するかのような白が……。
『対するはかつての仲間、デビルキーパー織部 長久!! そして──』
何でおれは、こいつらと一緒にフィールドに立っている?
『神のごとき強さを持つ世宇子中!! そのキャプテン、アフロディ!!』
おれは、習合の部長ですらなくなったのか。
事実を受け止めきれないままに、笛が鳴る。誰も動かず、目の前のメアにボールが渡っている。
彼が飛ぶ。
「──」
三対、六枚の羽と天使の輪が今はただ眩しい。
力がメアからボールへそそがれていく。あれが、真・エンゼルブラスターか?
「──」
何かが違う気がする。
ただひたすらに、何かを滅しようとする。救済の光を求めたメアのものからかけ離れたナニカに変貌していく。
周囲の光がイナズマに変わり、暖かかったはずの光が痛みを与えてくる。
体が勝手に動いた。
何を考えているのか、何も考えてないのか、ただ体は闇をかき集める。
「ダークネス・ハンド……V3」
淡々と読み上げる。全力の、全壊の一撃。三つの疑似骨手が蠢き全てを壊さんと空を呪う。
だが無意味だろう。きっと通じない。どれだけ犠牲を重ねようが、届かない。
だってあれはきっと、
「……デビル、スレイヤァァァーーッ!!!」
俺を壊すための、
落ちてくる。光が、イカズチが落ちてくる。
ただ一つ一つが俺を、悪魔のキーパーを殺すために落ちてくる。
ダークネス・ハンドなど何もできず消えていく。
飲み込まれる。奔流に消えた。
◆
空を見ていた。
ただずっと、手を握ってくれているメアも見えずに空を眺めていた。
多分負けたんだろう。
2-3になっているスコアボードが印象的だった。
三点も入れられたのか。キーパー失格だなホント。
……部長でなくなったんだから、別にいいか。
──あぁ、メア。いるのか?
声が出ていたのかどうかは分からない。
喉がその時実体があったかも。
消えていく、浮いていく。
この体は何処へ消えるのか。何の代償だろうか。また無茶な契約でもしたのか。
わからないけれど、心配事が消える。心配事をしなくていいという心配事が消える。
ああでも、このグローブとかは大事にしてくれ。コルシアたちがいるはず……もういない?
そんなバカな。多分隠れてるだけだ。
まあいいや。最悪自分で何とかするだろう。
息を吸った。
天を眺めて、呪った空が恋しくなって、見せてくれたメアに感謝を伝えたくて。
──助けてくれて、ありがとうな
そう言って、消えた。
多分、満足していたんだと思う。
──本当にそうなのか?
どうしてか、空に飛ぶ烏が喋っている気がした。
Bad End No.66「迷惑野郎」
嘘です
次回からはコメディに戻ります(自分に言い聞かせる言葉)
~オリキャラ紹介~
・織部 長久
とある世界線では何かが原因で世宇子に寝返った。そのまま意気消沈した習合に勝ち、リベンジしに来たメアに滅ぼされた(サッカー)
タチの悪い契約をしたようで、その後消えた。
でも多分コイツのことなのでそのまま時間転移とかして白亜紀などに生息している。
この世界線ではトロアが大分悪さをしている。フェルタンの姿を見かけない辺り、交渉決裂したのかもしれない。
そして律儀に付き添ったコルシアは死にかけた。カスみたいになって生き延びている。
・メア
とある世界線ではいきなり部長が敵になり、悪魔殺しの名を手にした。(サッカー)
デビルスレイヤーを決めた後、習合の仲間たちと共に姿を消す。
二週間後くらい後、簀巻きにした部長と共に帰還。曰く「ティラノサウルスにも効いたから多分あれも悪魔」
詳しくはイナズマイレブンGOクロノストーン エンゼル/デビル/ヒト を参照(2XXX年 LEVEL99社より)
・コルシア
ぼくナガヒサ。
それはそうと体を勝手に動かしているのは「気絶しているのばれないようにして」というお願いジミた契約に準じたものなのだ。やろうと思えば寝ている時とかに散歩に出かけたりも出来る。
・トロア
過去や未来を見せたりすることができるが別に勝手に見せてもいいのだろう?
悪魔、怠惰のくせして悪魔。ニート。家の中でジャージでポテチとコーラ飲んでそうな悪魔ランキング堂々の一位。
とはいえ見せた時点で未来は少しだけでも変わるため、厳密には未来は見せられない。役立たず。
・カラス
コノカラダニモ、ダイブナレテキタナ