かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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土日、火木で更新したい
嘘、本当は書き溜めがないので定期更新などできない


女神邂逅、誰かがほほ笑む日

 昔はよく、あり得た未来を浮かべて、そうならなかった過去を吐き出しては泣いていた。

 ひどく不格好で、思い出したくもない日々だった。

 だからこれを知っている人が叔父さん以外にいたのなら、もだえ苦しむこと間違いなしだ。

 

 最近、過去を夢に見ることが減った。

 サッカー部を作ってからは碌に見なくなって、トロア達が体に入ってから少し見るようになったけど……それでも頻度は減っていた。

 

 反対に、未来を見ることは増えていた。

 

 みんなと楽しく、仲良く大きくなって、高校とか大学とか仕事とか、ファンタジーやらなんやら色んな夢を見る。

 夢だとすぐにわかる夢ほど楽しくて虚しいものはないけど、目覚めは酷く楽しいものだ。

 

 起きなさい、起きるんだ。

 声が響く。

 

 ……夢の中のカラスの声は、聞き覚えがある気がして、慌てて飛び起きた。

 男? 女? どちらともとれない。不思議な声だった。

 

「……」

 

 薄れゆく記憶に後ろ髪を引かれる思いをする。起きなければならないのに。 

 まだ寝ていたいよ。

 分かっている、わかってる……起きなきゃ……何なんだっけ?

 

──ア゙ー、ア゙ー

「……はぁ」

 

 

 低血圧の時にくるような頭痛、喉にものが詰まっているような違和感。耳鳴り。口の中に残る鉄の味。

 見上げれば、カラスが弧を描いて宙を舞う。

 獲物でも見つけたのだろうか。俺のことじゃありませんように。

 

 目覚めは最悪だった。

 それでも起きれたのだから良かった、のかな?

 どう思うコルシア。

 

──あぁ良かったと思うぞ。我はこれ以上エマの相手をするのは面倒だ

「あぁ兄さんっ、おはようございます! お体痛むところはございませんか? コルシアに何かされませんでしたか?」

 

 うんざりとした口調のコルシアの声が内で響く。水が震えそうなほどに響く音が外でする。

 見れば万人が自然と微笑んでしまうほどにかわいい笑みを浮かべている妹がいる。

 そうだ、これを見れただけでも良かった。

 

「問題ない、ありがとうなエマ」

 

「いいえっ! なによりです、今お茶を淹れますね……」

──ギゥェェァァァ

 

 ところで今すりこぎで磨り潰している変な植物は何? 

 悲鳴上げてるし顔が付いている気がするんだけど。マンドラゴラとかその類じゃない? 飲んで大丈夫?

 いや妹が淹れたお茶なんて飲むしか選択肢がないんだけど。

 

──その家族役割論理もだいぶおかしいぞ貴様……ふと思ったんだが、貴様の立場はなんだ?

 

 ……なんだろ? わかんない。

 兄でも、一人息子でも、家主でもない。何なんだろ。全部に満遍なくかかわっている様で判別できない。

 考えても上手くいかなそうだ。あとにしようそうしよう。

 

「……それで、ここは」

 

『後半10分、崩れた習合を切り崩して一之瀬が攻めこ──いや、ここでアルゴがいつの間にかにボールを奪っていた! 4点目につなげるか!』

 

 周りを見る。俺はベンチに腰かけている。

 エマの逆隣には一号が座っていて、二号のことを拳を握りしめ、活躍を願ってはらはらと見ていた。

 思わず二号が羨ましく思える程に。

 

「ン……? どうした織部、どこか痛むのか?」

 

 視線に気が付かれたらしい。

 いや大丈夫だと答えて観戦に意識を戻させた。

 

──ふーふふんふ~

 

『これは自然なノールックパス、バング追いついた!』

 

 一之瀬の鋭いパスをカットしたアルゴがさっさと渡す。

 少し離れた位置に出されたボールは走り抜けて拾われる。

 

──バング、例のをやるぞ!

──はいッス、ソニックさん!

 

 バングがすかさずドライブアウト。回転ゴマとなって雷門陣地を破壊していく。

 ソニックのストームブリンガーも合わせたせいで地獄だ。あ、グラサンの爆撃も混ざっている。

 

──グレートストーム!!

──デッド・グレネーダー!丸焦げにならないように気を付けなぁ!

 

 新技のオンパレード。蹂躙ともいう。

 バングが弾き、ソニックが巻き上げた雷門選手、かがんだまま手りゅう弾をバラマキ爆破するはグラサンかな。

 B級映画だってこんなこと起きねぇよ。よくファール取られないなあれ。爆弾を当てないで爆風で吹き飛ばすからセーフなのか……?

 

──技の殺意が心なしかいつもより増えているな。これほんとサッカーか?

──いいぞーやってしまえー! くははっ

 

 煽るなトロア。あとなんか無性に腹が立つからあとで目薬の刑なお前。

 濡れ衣かもしれんがこの目覚めの悪さに一役噛んでいる気がする。

 

 ……いやほんと、コルシアの言う通りなんか怖いな。グラさんは通常営業だが。

 ソニックとバングのグレートストームは……狩火庵中の時の奴を技に仕立て上げた奴なんだろうけど、それにしても竜巻高すぎないか? 相手が雷門レベルじゃなきゃ危ないぞあれ。

 俺だったら心の中で泣き叫ぶよ。

 

──理不尽じゃないかのう

──正当だが? ……あー、後で選手のメンタルケアをしておけ。その為にもまずはお前の精神を直しておけ

 

 ……そうか。つまりはまあ、そういうことか。……どういうことだ?

 よくわからんが励ましておけばいいのか。サンキューコルシア?

 

──ジミーさん……とみせかけてワタリさん!

──はいっ、そしてメアさん!

 

『バングからのパスを空中で受け取ったワタリ、そのまま蹴り上げパスが繋がるぅ!』

 

 がら空きになった雷門陣地で悠々とループパス。つなげて天高く。

 奇劇団かなにかかアイツら。今更か。

 にしてもあれだな。みんなすごいな。今もDF陣は攻撃中だってのに全く気を抜いていない。

 

 そしてボールを受け取ったメアからは……いつもよりも強い、攻撃への意思を感じ取れる。

 

──光よ……我が身から溢れよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

──もう少し、もう少しでなにか掴めそうなんだ……!

 

 おぉ、ここでメアの技進化か。

 改の時点でギリギリだったんだ、真となれば未完成マジン・ザ・ハンドでは相手にならないだろう。これは決まった。

 

──今ならいける……いける!

 

 翼が六枚になったメアが空にいる。天使の輪も大きくなり、バチバチと散るイナズマが迎え撃つ相手を威圧する。

 まさしく裁き。エンゼル・ブライトを初めて目にした時の様な恐怖心から湧き上がる。

 

 ……? なんか見覚えあるし、違和感がある。

 

──力が不安定に感じるな

──ちからがびりびり~でもよわよわ

 

 あ、光が消えた。霧散する。

 

──真 エンゼル・ブラ──ってあれ?

──マジン・ザ・ハンド! ってえ?

 魔神の幻影がボールを受け止めることなく消える。役目を果たす必要が消えたからだ。

 

 6枚だったはずの翼が一つを残して消え、メアは慌てて地に降りる。

 その姿はまるで片翼の天使。残った一枚もか細く今にも消え失せてしまいそうなほどにボロボロだ。

 

『おおっと、これはミスシュートか。雷門ピンチを運よく凌ぎました』

 

 転がったボールがグレートストームで飛ばされていた雷門DFに拾われる。クリアされライン外にボールが飛んでいった。

 行けるかと思ったんだけどな。何が原因だろうか。

 

──精神だろう、お前が敗れた時に一番動揺していたのは奴だろうからな

 

 俺が敗れた時……敗れた、負けた……。

 ベンチ……居場所がなくなる……。

 

──今そこ気にするか!? 面倒な男め! 流せそこはもう、過去は変わらんのだ愚かな人間!

 

『さあ試合再開……今度は染岡のパスカット! ドラゴンクラッシュをパスに変えて攻撃だ! 鬼道と一之瀬が位置に付いている!』

 

 そうだ……俺は愚かな人間……いやなんかムカついてきたな?

 常人よりは少し強いと思うぞ俺は。あくまで超次元な奴らに比べるとあれなだけで。

 

「くっ、がんばれ鏡介! ツインブーストなんぞ敵ではない! 高天原の強さを示すんだ!」

──そうだそうだそのふてぶてしさを保て。あとそこの一号からマスクを奪い取れ、意味がない

 

 兄が弟を応援するため立ち上がる。素晴らしい事だが確かにもう正体隠す気ゼロどころかマイナスに入っている。

 そのうち正体を明かすのかと思ったがもうタイミング失っただろお前。

 

──っ、八咫鏡!

 

 そして……習合のピンチはゴールキーパーの二号に託される。

 

 

 

 

──ディープバイト!

──猪突猛進!

 

『鬼道達吹っ飛ばされ沈められたぁ! 恐るべしモンスターDFたち!』

 

 ことはなく、猪と鮫が構えられた鏡の前で暴れてぶち壊した。

 おかげでボールなど届かずただ綺麗な鏡が置いてあるだけ。ドレッサーかなにかか。

 そして弟が無傷で済んだものの活躍も出来なかった兄は何か言いたそうな顔をしながら座り込む。

 

「……技のスピードと精度は上がっているぞ、一号」

 

「……そうだな」

 

 とりあえず褒めておく。

 散々鍛え上げられた二号ならブラック相手でもなければ失点はまずないだろう。イナズマブレイクとかは分からんけど……。

 

──オラオラオラァ! どけぇ!

──ナイスだ、トール。パスパス!

 

 今度はトールが必殺技も使わず持ち前のパワーと体格で駆け上がっていく。すごい。ボールは直ぐに雷門側フィールドに運ばれる。

 なんだかみんなやる気が前半戦よりも倍増している気がする。やばい。

 ジミーが前でプレッシャーを放っているから円堂さんも前に出られない。ほぼ勝ちは決まったな。

 

──つまらんのぅ……結果の決まった過程ほど作業になるものはない。そうは思わんか

 

 トロアの意見に賛同するのはあれだが……本当にやることないな。

 技の改良とかを観察しながら考えようにも、大体言うこと決めてるし。メアのそれなんかコルシアに教えてもらっちゃったし。

 

──そう、予期しない物が無ければ全く面白くならない。全知全能な人間なんていたらそれはさぞつまらん人間じゃろうなぁ

 

 ……? なんかトロアが意味深だな。またなんか企んでないか?

 どう思うコルシア。

 

──こいつはいつだって神をどう斃すかか人間で遊ぶかぐらいしか考えてないぞ

──あぁん? 態度がでかいなぁ獣が。お前とてどう契約を結ぶか、の契約至上主義ではないか

 

──ナガヒサーお腹減ったから買い食いいこー

 

 二柱の悪魔が喧嘩を、手から小さい狼が、足元から小さい龍が現れ言い争いを始めた。せめて人の中でやってほしい。

 そんな時でもフェルタンは自由だな……。さっきやばすぎるシュート食べたでしょ?

 

──治すのに大分使ったからまだ腹六部ー【あ、エマちゃん。おべんとー……羊とかない?】

「ぅえっ!? ふぇ、フェルタンさん……びっくりした」

 

 いきなりシャツの下から蛇が伸びて口を開く。

 悲鳴を上げる事すらできなくなった草に熱湯を注いでいたエマが急須を落としかける。アブナイ。

 

「あっ、驚かせてごめんなさい兄さん! え、えーと……すいません、お弁当はあるのですが豚で」

 

 まぁそうだろうな。お弁当に羊肉なんて聞いたことがないし。

 今日のおかずは豚の生姜焼きとかかな。冷めても美味しいよね。……え、足丸ごと一本焼いてきたの?

 どこで手に入れたのかすら気になるけど聞かないでおくね。

 

【食べたいなぁ……エマちゃん取って来てー】

 

「えぇ……」

 

 お、おいフェルタン? いくらなんでも少しは我慢してくれせめて試合中ぐらいは──。

 

【えー羊ならそこらにいっぱいいるからさー……いいじゃーん】

 

 ……? この辺牧場とかあったっけか。

 流石に羊肉なんてその辺にないと思うんだが。

 

「──わかりました。兄さん、少し席を外しますね」

 

 え、待ってエマそんな本当に行かなくてもいいって。仮にいたとしても捕まえ方とか生肉持ってこられても困るし……!

 駄目だ行っちゃった。珍しいな静止すら聞かずに向かうなんて。

 あんまり無理言っちゃ駄目だぞフェルタン……?

 

──……おいフェルぅ、面白い事をするではないか

──なにートロアっち~♪

 

 トロアが少しフェルを睨む。トロアも豚派だったのか。今日はやたら意見が合う。

 後でエマが戻ってきたらかけるねぎらいの言葉でも考えておこうな。

 しかし、試合中にどっか行くなんてマネージャーとして結構あれなことをさせてしまったなホント。

 

「トールさんの大胸筋がチラリと見えた……! 永久保存スケッチ!」 

「メア様の憂鬱と怒りが混ざり合った顔がお美しい」

 

──……我らが出て来ても欲望に忠実なこの二人といい勝負だと思うが

 

 それな。トールファンとメアファンの子はエマと上手くやっていけるほど図太くて本当に良かった。

 あっ雷門のマネージャー達ドン引きしてる。

 

 ……流石に試合中に羊の調理とかはさせないようにしよう。イカレすぎだ。

 

──カカッ、そんな心配はいらんだろう仮契約者よ

 

 またトロアと意見があう。

 確かにそうかもしれない。だって、

 

『さあ後半20分、勝負はこのまま習合のものとなるのか!』

 

「その前に、試合が終わってしまうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「──本当にそう思っちゃってますぅ?」

 

 独り言を零す俺に、誰かが話しかけてきた。

 どこかで見た……あまり会いたくない女の子が、後ろに立っていた。

 

「……占い師?」

 

「こんにちはー、悪魔のキーパーさん?」

 

 ……じわりと肌着に冷や汗が染みて張り付く。いやな予感がした。

 

 

 助けて?




 
 今回も悪魔回、シリアスは出荷よー

 最近のゲームのスカウトって肉を投げつけた後に殴ったりしないんですかね。
 石を払うだけでいっぱいきてくれるんですけど、その後なぜかみんなまた石になるんですよね。

 素敵な仲間=石
 賽の河原にでもいる気分です


~オリキャラ紹介~

・カラス
 よくメッセージで尋ねられたりする奴。
 コルシア曰く「雑な思念体が憑りついている」程度。

・グラさん DF 2番
 チームの中で一番殺意が高い物。トロアと少し意見が合うかもしれないが、直接自分でやる派と遠巻きに眺めて楽しむ派なので一緒にしてたらその内抗争になる。
 一発一発の威力は他と比べると微妙かもしれないが技のレパートリーの多さは流石の一言。
 「習合の火薬庫」というあだ名がつく日もそう遠くない 。

・メア FW 11番
 翼が抜けたエンジェル(ストレス性)
 怒りは人の力を引き出す感情として優れたものではあるが、それは決して慈愛の天使の息吹には似合わない感情。
 拗らせたら悪魔殺しへと変貌する。

・コルシア
 最近サクリファイスされなくなってきたおかげか力もかなりついてきている。
 余裕が付いたのでアドバイス的なことも少し多くなった。

・トロア
 悪魔らしい悪魔。「予期しないものに翻弄される人間」の姿はかなりの好物。結果を知りつつも未来を変えようと必死になるのもそれなりに好き。
 過去を変えようとする奴は面白いけど嫌い。
 一番嫌いなのは神。

・フェルタン
 これでも最高位の悪魔。

・エマ
 伯邑考

・謎の占い師マネージャーβ
 逃げた方がいい


~オリ技紹介~
・グレートストーム(未完成) ドリブル・ディフェンス技 シュートブロック可
 バングの回転を更に強めたソニックの嵐が敵を吹き飛ばす。
 バングの微細な腕の動きだったりが竜巻に変化をもたらしきりもみ回転を引き起こすのだ。
 濡れた洗濯物を淹れれば多量の埃が付着するのと引き換えにそれなりに乾くだろう。

・デッド・グレネーダー ドリブル・ディフェンス技 シュートブロック可能
 デッド・スナイパーが単一相手に対する者なのだとしたらこちら対多数。
 爆風で相手を蹴散らし、疲弊させる。怖い。

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