かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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仕事が忙しい日が続きます
そんな中だと逆に新作のこととか思い浮かぶのが皮肉なもんですね

「奴隷を買ったがイメージと違ったので返品したい」
ファンタジーものでまるで愛玩動物の如く適当に買った奴隷がなんか違う、とのことで本人に「返品していい?」と尋ねる話です。
9割9分9厘奴隷に丸め込まれます
「エルフ奴隷を買ったが加齢臭が酷いで返品したい」「ハーピィー奴隷を買ったが抜け羽がすごいので返品したい」「不幸が口癖な女の子奴隷を買ったら幸せだとか言い始めたので返品したい」「元騎士団奴隷を買ったがチョロすぎて心配になるので返品したい」「元奴隷商奴隷を買ったが、知りたくもない裏事情を暴露して来るので返品したい」「元幼馴染奴隷を買ったが態度が大きくなって来たので返品したい」

など。毎日8千字くらいかけねーかなぁ!!




策士に恐れる日

 

 火炎の龍が吠えようと、届く前に雷に焼かれ銃器で打ち抜かれる。

 猪と鮫の猛攻をかいくぐり不意を突いた回転シュートは巨大な鏡で跳ね返される。

 そもそもシュートの段階にこぎつけられればたいしたもの、褒められたもの。

 

ドライブアウト、ッス!」「足元注意だぜ? デッド・グレネーダー!」「ふははは! ストーム・ブリンガー!」

「にひひ~ボールもーらった♪」「猪突猛進!」「雷鳴一喝!!」「……!」

 

 ブラックが前線から消え、攻撃に尖りがなくなった雷門では次元の差がある習合に対抗することは難しい。

 いくらガッツがあろうとも、心の要が破れ裏手に下がったとしても、その程度で覆せるのなら地区予選校全てが辞退などという事態が起こるわけがない。

 逆立ちしても、小細工をしても勝てぬ存在。

 

 それが求めた存在だ。力を得るためにこの身を投じた場所だ。

 

「そーらよっと!」

 

『なんだ?! コーナーから逆サイドへの逆バナナシュート*1!? ありえない軌道を描き雷門DF陣をボールが抜いた!』

 

 ……ジミーは置いておこう。あれはもう、次元が違うという域ではない。正直見ていると心が折れそうになる。

 下手に出来てしまいそうな技術の極限をホイホイ見せられるのは堪ったものではない。どんな脚力してるんだアイツ。

 見た目は単なる回転シュートのくせして何故……なぜキーパー前を飛んでいったはずのボールが曲がってゴールに突き刺さるのか。

 上から見たら釣り針の様な軌道描いているに違いないぞ今の。

 

「よっしゃ、これで4点目」

 

「すごいねジミー。正直僕もう少しひいてるよ!」

 

 メアに同意だ。お前まさかやろうと思えば光陰如箭並みの速度出せたりしないだろうな。出したら怒るぞ。

 

「くっそぉ~! あと少しだったのに!」

 

 相手の円堂とかいうキーパーも反応しかけているのが恐ろしい。

 徐々にマジンザハンドの魔神も幻影から実体へと色を濃くしてきている。

 習合が相手でなければ打ち崩すのが難しかっただろう。

 

「このままじゃ一点も取れないで終わる……! 何とかして調子を取り戻さないと、リーダーの体は今も地獄の悪魔たちにむしばまれて……!

 

 焦っているのはジミーにひいているメア。先ほどから急にエンゼルブラスターも使えなくなり、単に素早くスタミナが無尽蔵なFWになっている。

 いや普通に脅威だが。後何やらぶつぶつ喋っている。たまにある痛い時間だろう。

 しかしあのままでは流石に不味いかもだ。試合中の不調は試合中に消さなければ後に引きずる。

 折角あみだした天照が使えなくなれば、世宇子中を相手するのも危うくなる……かもしれない。

 

「……はぁ、おい織部。なにか声でもかけてやった方がいいんじゃないか?」

 

 こんなことを言うのもあれだが、見ていて忍びない。さっさとどうにかしろと隣にいる男に投げかけた。

 

 ……、

 …………、

 

 …………?

 

 返事がない。無視、な訳はなかろう。

 まさか織部の方も不調をきたしているのか? 先ほどの負けが響いたか?

 

「おい? 聞いているのか。おり──」

 

 視線を試合から外し、見た。

 いない。本来奴が座っていたはずの場所はぽっかり空いていて、チームの長の姿はどこにも見当たらなかった。

 

「お、おい……織部の奴は何処に行った?」

 

 周りに尋ねてみたが誰も答えず、行き先を知ることはできない。

 いくらなんでもおかしい。アイツの妹なら先ほどどこかへ出かけたようだが、織部にはその様子もなかった。

 

 いやそれどころか、真横に座っていた男が動いて何も感じないはずがない。

 まししてやあの織部だ。同じ廊下にいるだけで「いるな」と把握できるほどの闇のオーラを放つことだってある男がいなくなってどうして気が付かないか。

 

「もっともっと点入れてよ、部長の奴が気にしないくらいにとってやるぜ!」

 

「頼もしいですね……気が付いたらあと五点ぐらい入ってそうで怖いですけど」

 

 点取りに、或いはもう一点も入れないと躍起になっている習合のものたちは部長の不在に気が付いていない。

 

 そうして進む試合がただ、異常な事態を教えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ムーブモード停止──スフィアデバイス、スリープ状態へ移行』

 

「大声を出したりしないでくださいね、少し邪魔が入らないように場所を移しただけですから」

 

 ボールが青く光ったかと思えば、景色が一変していた。

 彼女が持つサッカーボールは小さく音声を鳴らし、光を消す。

 

「改めましてこんにちは、世宇子中のマネージャー……ベータちゃんです♪」

 

 占い師が名乗った。笑い首を傾ける様は絵になるほどに可愛らしい。エマといい勝負だ。

 

 さてここは……屋上だろうか。雷門中の校庭が一望できる場所。

 見下ろせば皆が戦っている姿が小さくも確認できる。夢の世界……なんてわけではない、気を失ったわけでもない。

 

──空間転移? ばかな、単なる人間に扱えるものを越えている……ハマルファス、ラムーの力でも与えられたのかこの小娘は

──人間でいうオカルティックな力は欠片も感じん。奴らというわけでもなかろう。というかラムーの奴はとっくに死んでるだろうが

 

 コルシアとトロアがひそひそと体の中で話をしている。悪魔の力ではないようだ。

 ではそれこそ、天使や神のごとき力か? いいや、それならもっとフェルタンたちが騒ぐだろう。

 じゃあなんなんだ。一体どうやってここまで?

 そもそも彼女は何者で、なにしに今ここにやって来た?

 

「あらあら、そんな怖い顔しないでください。わたしは単に、お話に来ただけですから」

 

「話、だと? また悪い未来でも見えたか」

 

 以前は確か、そう遠くない未来で死んでしまうとかそんな感じだっただろうか。もうよく覚えていない。そしてボールを使ってこちらの精神に干渉してきて、コルシアが防いでさっさと逃げたのだ。

 そんな子が話があるとやって来てさらわれて、どうして緊張を緩めることが出来るだろうか。

 まあ可愛いけれど、可愛いだけでは流石に無理なこともある。

 

 自覚できるほど顔に力が入る。それを見て彼女は「やだぁこわーい」なんて軽くおどけてみせた。

 かなり肝が据わっている。

 

「話が早い。そうです、今のままあなたが「習合のGK」でいられると危ないので、鞍を変えませんかとお話に」

 

「なんだと?」

 

──うーん……この子、なーんか変な気配~美味しそうなのを隠している様な

 

 フェルタンのボヤキの意味は分からずに、彼女の言う事を察する。

 

 不意に、覚えのある景色が脳裏に光る。

 既視感……というよりかは、昔に見た夢を思い出す様に。

 

「単刀直入に、織部長久さん。世宇子中のゴールキーパーになったほうがいいですよ?」

 

「──」

 

 

 

 

 思い出し、辿っていた。

 

 帝国を前に、折れた自分がいる。サクリファイス・ハンドにたどり着けず敗北した自分がいる。

 試合こそメアの覚醒と皆の頑張りで引き分けに持って行ったがどう足掻いても皇帝ペンギンを止められなかった自分がいる。

 フェルタンがその時に目覚めた。けれど時間を稼げず意味はなかった。

 

 ワタリの父とはわだかまりが残りつつも和解出来た。簡単な部室も作ってもらえた。

 けれどきっとベストではなかった。分かっていた。俺が勝てば、ワタリはもっと心の底から笑えたのに。

 

 力が欲しいと願った。みんなに心配されない、皆の部長でいられるための力が欲しかった。

 少しした後、トロアがやって来た。体を壊すが一時的なブーストを得られるようになった。

 

 それでも足りない。

 だからか、俺はあいつに引き寄せられた。

 

【くっ、エマの奴こんなところに捨てるとは……いつか確実に仕返ししてやる。……うん? なんだ貴様、我の声が聞こえるのか?】

 

 心折れずに鍛え上げ進化した高天原とぶつかり合う前の事。

 捨てられたグローブを拾いコルシアを見つけ契約。編み出した……ダークネス・ハンドで勝利を手にした自分がいる。

 サクリファイス・ハンドの知識をコルシアから又聞きして作り出した。

 

 ようやくそれらしい必殺技を手にして、確かな手ごたえを感じたはずだった。

 ブラックも鯨の悪魔も出てこない。メアの一撃で殆ど片が付く。

 

 それでも結局、皆についていけなかった。

  

 地区予選を勝ち上がった後、誰かに話しかけられて……()()()()()()()()

 学校を捨て、家に鍵をかけ、地元を離れた。

 

 目に焼き付いて離れない。

 

 泣き出しそうに、もはや何も信じられないと言った顔でこちらをみる習合の皆を。

 世宇子のユニフォームを着て、棄権を促したことが頭から離れない。

 準決勝ではメアは一度も空を飛べず、5-0で世宇子が勝利した。

 

 そして決勝で俺はメアを加えた雷門を前に……もっと力を求めた。

 トロアと契約を結びトロアの力で更に闇の力を深めた。フェルタンは何も言わなかった。

 

 そして、そうして……そうまでして求めた力は、結局メアに焼かれて消えた。

 ……これが、これが未来の俺が歩む道だった?

 

 

 

──……敢えて言うなら、多くあった道筋の一つだろうな。結局のところ貴様は今、まったくもって違う場所にいる。参考にしても気に病むものではない

「──長久さん? 聞いていますか?」

──見せた未来を思い出したか。……それで、見た未来に一切いなかったはずのこの女はなんなんじゃ?

 

 女の子の声が二柱の悪魔で挟まれる。聞いているとも。

 

 世宇子に誘われるのは……確かもっと禿げた男からだった気がするが些細なこと、ではないかもしれない。

 ブラックが代之総中に雇われることがなかったように、狩火庵中のキャプテンが無人島を彷徨う事がなかったように。

 なにかとんでもないことが起きているのかもしれない。

 

 それでも、俺には知らなければならない事がある。

 

「……断る。俺は習合を離れることはない」

──そうだそうだーゼウス、なんて名前のとこいくなんてやだー

 

 思い出す、世宇子に誘われた時の、歩まなかった未来の俺の言葉を。

 口にする。

 そうすれば、スカウトにしに来た男は口元を歪ませ下卑た笑いを見せたはずだ。

 

「……え~本当にいいんですかぁ? これははっきり言って、従うしかほかない助言ですよ。だって──」

 

 ところが、目の前の女の子はこちらを本当に心配するような目で見る。眼を見て何となくわかる。少なくともこの提案は善意から来るものだ。

 ……いい人、と信じたいけれど、あり得たかもしれない未来の知識が彼女が次に口にする言葉を教えてくる。

 

 

 

「──従わないと、あなたのご家族や……ご友人に危機が起きちゃうかもしれないんですから」

 それこそが、織部長久が皆を裏切った理由だという事も知っている。

 ついていけないと、周りから心配されていた俺だけが出来る、皆を守る方法に手を染めた。

 何で裏切ったんだと聞かれても答えられなかった理由。決勝を前になぜか暴露されていた事実。

 

 スカウトマンは語っていた。自分が属する、世宇子の裏に在する男の力の強大さを。

 有望な選手は手駒にし、頷かなければ排除する。そしてそれがまかり通り、警察の手も及ばないほどだと。

 

 その男とは、かつて帝国学園の総帥を務めていた……。

 

「……影山の指示か」

 

「さーてどうでしょう? ……まぁ、少なくともあの人は……勝負の前に少しでも負ける可能性が1%でもあれば潰しにかかる性分らしいのですけれど」

 

 物騒ですよねぇ。と迷惑そうに眉を顰める彼女。やはりわからないと混乱するがひとまずどこかに置いておく。

 未来を思い出す。

 

「……もう周りに仕掛けているのか?」

 

 あの時は確か……そう、脅しは通用しないと強がった俺の前に、遠くから監視されている叔父さんの映像が端末越しで見せられた。

 指示一つで男たちが叔父さんを襲うと言われて、仮に防いでもそれが仲間に向かうと思ってしまって、頷いた。

 

「? やけに話が早い……まぁそうですね。今回は折角チームメイトさんも集まってますから、雷門中のいたる所に控えています♪」

 

 背筋が凍る。嘘ではないと目を見て分かった。

 彼女は優しい人間に見えるが、それでもやるべきことの為には犠牲は致し方ないと割り切れる人間でもあると気が付く。

 

「例えば居眠り中の車のサイドブレーキが外れちゃったり……水道に変なものが混じっちゃったり、こちらとしてもあまりしたくはないのですけど……」

 

 ……ここで彼女をかわし、周りに注意を呼び掛けてもどうにかなるものだろうか?

 トロアはそれに対し、ひどくつまらなそうに答えた。

 

──一般人にそれは無理だろうな、はぁー……つまらん

 

 そうだろうな……そうだとしたら、奇跡が起きても……例え今日を凌げても明日から毎日みんな……。

 叔父さんが、メアたちが……。

 耐えられるはずがない。心が、体が。ただこの身を売ればみんな助かるというなら。

 

──……んん? そういうことか……?

「まだ悩みますか? そうだ、監視についている人と通話をつなげてみましょうか。踏ん切りがつくかもしれません」

 

 ベータはポケットから端末を取り出し操作する。

 軽いコール音の後、つながる。

 

『……? こちらb-1 なにかあったか?』

「こちらβ。少々確認したいことがありまして……あなたは今誰を見ているんでしたっけ?」

 

 揺らぐ。

 せり上がる吐き気が、裏切りの言葉になろうとしている。

 浮かぶ、皆の顔が。俺を信じてくれていた皆の顔が。

 

 叔父さん、習合の皆……あれ、そういえば。

 

 

『? 俺は指示通り、悪魔のキーパーの妹を』

──フェルタンのだいしょうり―いぇいいぇいー

 

 エマの奴、どうにかできる奴がいるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ミィツケタ』

 

 麗しく愛しい妹の声が、少し低くなって端末の向こう側から聞こえた。

 ……男の悲鳴が数秒後に聞こえた。

 

 

 ……助けた方がいいかなぁ?

 

──長久、世界にはこんなことわざがある。人を呪わば穴二つ、とな

*1
カーブするシュートの事、ググると早いよ




 悪魔の妹から逃げるサスペンスホラーがはじまります(大嘘)
ようやくコメディに戻せる。




~オリキャラ一覧~
・織部長久
 いろんなルートを辿れるとかこいつぎゃるげのヒロインに間違いない。
 一応どの世界線でもコルシアとは出会うしダークネス・ハンドには目覚める。サクリファイス・ハンドは知らない。エマも知らない。

 それはそうと、弱点である仲間について。
 彼は今回の人生では心強い()家族のおかげで敵の魔の手に打ち勝てる。

・エマ
 ベータが知っている世界線では織部と遭遇していない模様。
 「いやなにの妹とか名乗っている人……」と思われていたようだが、織部があまり暴れないようにしていたようで正体が掴まれなかったようだ。
 ベータが影山さん的な石橋ヘリコプターで飛ぼう精神を持っていれば危なかった。

 それはそうと、実態持って生活している悪魔のやばさがそこにある。
 愛する兄を害そうとした相手に遠慮などいらない。
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