かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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マスターモード祠、コログ集め終わりました(死んだ目)


悪魔たらしめる日

『そもそも人間ごときが悪魔とその契約者に対してどうこうできると考えるのがおかしいんですよ。

だってそう、超常の存在なのですから。ただでさえ兄さんと契約している悪魔は三柱のうち二柱がこの世に現存する悪魔たちの中でも突出した存在。ついでに駄犬も一線級。

例えあなた達がいくら手を回そうが策を練ろうが意味はありません。人質? ええひどく無駄です。せめて今度からやるなら自己愛者や愛も畏敬もないロボットでも使ったらいいんじゃないですか?

まぁ結局のところ、もう尻尾を私に捕まれちゃってるので……無意味ですけれど♪』

 

 流れ出るは脳裏を溶かそうとする甘い声。通信機越しだというのに、その奥にいる悪魔の艶めかしさを想起させるもの。

 

 対岸の火事というのは酷く冷静にものが見えて楽しい。

 そんなことを語る悪趣味な評論家がいたのを思い出す。理由は何処か分からないでもないけれど、流石にそれを公言する気もなければ同意を示す気もなかった。

 

「……エマ、ほどほどにな」

『はいっ! 帰りにおやつを持って行きますね兄さん!』

 

 出来る事ならばそのおやつは倫理的に問題のない奴で頼みたい。

 それはそれとして、 

 

『こちらa-2! 他a班との通信が途切れた。なにか分からないか!』

『b-2、b-2! 応答せよ! 一体何を見た!』

『d-1より報告、こちらの近くにいるはずのないb-2ターゲットを確に──』

『おいふざけるなよβ! 何がただの家探しだ、こちら部隊は現在逃走!!』

 

 たしかに。

 通信機に矢継ぎ早に入ってくる怒号、悲鳴。慌てているベータちゃんを見ていると今までの不安と言うものが吹き飛んでしまう様な気がした。

 ところで通信内容的に各地で暴れているようだけどエマって複数人いたんだったけ??

 

──なに、一時的な分身。ついでに以前魅了した人間など使えば奴にとって他方での行動など生ぬるいものだろう

──エマっち増えようとすればサッカーチームだって作れるはずだよ~

──そういえば昔、目を付けた女を追い詰める為に村一つ全員自分の手駒にした事があったなあいつ。長久、気をしっかりと持て

 

 何それ怖い。分身なんてうちのチームだってできないのにナチュラルにしてくるのあの子? つまりもう逃げられないというわけか。

 いや可愛い妹を置いて逃げるわけもないんだけどさ。

 

「……っ! やたら素直だった理由は既に手を打っていたからですか。織部っ!!」

 

 何目の前の子めっちゃ怖い。さっきまでの妖しい微笑はどこへやら。

 まるで餌を食べる直前にお預けされて奪われた柴犬の様に……いやそれはそれで可愛いな。というか例えに犬はあんまり恐怖感でない。

 犬めっちゃ好きだし。動物に怖がられるようになった今の体質が無ければ将来的に叔父さんに許可取って捨て犬とか拾いたかったし。……コルシア、姿出す時もうちょっとコンパクトでキュートに出来ない?

 

──お前悪魔を何だと思ってるんだ……? 出来なくはないがやってやる理由もないからな

「どうやら、可愛い妹が気を利かせてくれたらしい」

──ナガヒサー、フェルもフェルもー

 

 はいはいわざわざ顔を出してアピールして来なくていいのですよフェルタンさん。さりげなくエマに指示出してくれてありがとうな。

 なんかお願い事とかあります?

 

──爆哮双龙おかわり

 

 いやです……。助けて。

 そうこうしている間にベータちゃんは一息呼吸を入れる。こちらを気にしても仕方がないと思ったのか、直接被害は加えてこないと思ったのか。

 

「……F部隊、何故逃走することになったか知らせてください」

『あぁ!? 言われた通り家に爆弾仕掛けようとしたら急にカラスが襲ってきて……時間食ってたら急に仲間割れが始まってボンッだよ! ついでに家の方は傷一つねぇ! 簡単な工作任務じゃなかったのか!』

 

 明らかに通信機の必要量を超した罵声。

 ……うん、というか言い草的にこいつ人の家に爆弾仕掛けようとしたのか? 俺の、家に?

 もはや対岸の火事とさえ思えた能天気な心にふと、どす黒い感情が生まれる。コルシア、糧にしてくれ。

 

──……ああ。しかし奇妙なカラスに、家も無事……やはりアイツか? だがあれは確かに致命傷を負ったのを我は見たが…… 

「? 分かりました。ではそのまま以前伝えた場所へ撤退を」

『ああそうさせてもらうね。もうひどい目に……あん? 変だななんで奈良に今コイツがいるんだ』

 

 まあ家が大丈夫で本当に良かった。そうかそうだな。きっと俺にとってあの家を少しで燃やされようものなら恭順どころかひどく悪魔らしいことを願ったに違いない。

 きっと世宇子の仲間に入るフリして全部自爆じみた形でウラ情報をばらまいたり色々していたことだろう。

 そう考えるとお互い助かったともいうべきか。

 

「F部隊? 状況を」

『……身を隠しているが現在、遠目にだが織部エマの対象を確認した。視認される訳もいかねぇから迂回──ぁっ』

 

 ……また一人、エマの戦果になった奴がいるようだ。

 すごいな。分身って東京から奈良にも飛ばせるのか。もうほんと日本全国逃げ場がない。それとも単に仕掛けがあるのか。

 ベータちゃんは通信機を握りしめ、急に応答が途絶えた……恐らくは最後の生き残り(比喩)であるF部隊を呼ぶ。

 

「F部隊? 応答してください……F──」

『いえ、問題ありません。失礼しました。これよりF部隊……()()()()()帰還します』

「えっ?」

 

 えっ。

 

──あぁ、やられたな。これでF部隊とやらは全員エマの手駒だ。この分だと他のもそうか……これがあるからエマを相手にしたくはないんだ

 

 そ、それってつまり魅了されたって事?

 あのいつもエマがやっているほわほわした魔術を全員食らった……? そうなると、やばいんじゃないかベータ陣営。

 

「ま、待ってください今何と」

『こちらa-1並びにa-3班。バックアップ部隊と合流。不測の事態ゆえ撤退します』

『同じくb-1から3班、行動を共にします』

『c,d班も共に……()()()()()()()()

 

──駄目じゃな。手先どもが何にも知らなければあるいは生き残れるかもしれんが、少しでも情報があればそこから芋づる式にオワリじゃ

──でた、エマちんのコウモリ戦術

 

 あ、なるほど。一人から十人に。十人から百人に。どんどん情報ぶっこ抜いて黒幕、影山のもとへと迫っていくのかぁ……。

 こわ。ベータちゃんが目に見えて焦っている。冷や汗がダラダラと流れ、今何が起きているのかを必死で理解しようとしている。

 魅了なんて、知識がなけりゃ仕方がないよな。いきなり仲間たちが不気味になったのだから。

 

「っ待ちなさい。指揮権はβにあります!」

 

 しかし通信機からは応答がない。無視されているようだ。

 魅了された人ってここまで変えられるのか……そりゃそうか。叔父さんも「エマちゃん? 長久くんに似ていい子……あれ、妹なんていたっけ……?」と中途半端に記憶というか常識が改変されていたもんな。

 役所辺りも唆したようだし……この現代人間社会において、力技ではなく根回しできるエマって一番やばい存在なんじゃ。

 

──まあいざとなれば自分だけ生き残ればいい。下の者の能力なんて受け付けない。という悪魔界隈においては見くびられるが……面倒すぎる存在だあの女は

 

 さようかコルシア。絶対兄妹喧嘩はしないと誓う事にするよ。

 ……そうこうしているうちに、ベータちゃんがまたサッカーボールみたいな機械を取り出した。

 あれかな、またワープとかして止めに行くのかな。いやほんとなんで悪魔の力も使ってないのにワープできるのか意味不明なんだけど。

 

『スフィアデバイス──時間停止(タイムストップ)モード移行』

 

 は?

 

──は?

──ほぉぅ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時が停止した世界というのは、絵画の一枚のように思えた。

 鳥は宙で静止し、微動もしない空と言うのはこの先行きがどうなるかわからないと不安を覚えさせる。

 

 体はまともに動かない。瞬き一つも出来なければ声を発することも。

 

『ベータ、今回の任務においてその機能は許可していないが?』

「……申し訳ありません。想定外の事態が起きたため、これよりムーブモードで事態を把握。マインドコントロールモード機能を使い各人より聞き出します」

 

 風の流れがないというのがここまで不気味に感じるものか。目の前で誰かに謝っているベータをみつつ考える。

 ……上司なんだろうけど、影山ではないことは確かだな。というか時間停止できるってその技術力使えばもっと別のことに使えそうだけども。

 うちの部室の重力装置だって画期的で最新鋭の機械だってのに、目の前のサッカーボールみたいな機械は一体全体なんだというのだ。

 

『手に負えない様であれば、現在別時間へ向かっている者を向かわせるが』

「っ! いいえ、それには及びません。このベータ……与えられたプロトコルは全うします」

 

 別時間? なんだその言い方。まるで……いや、まさかねぇ?

 そんなドラ〇もんじゃないんだから。

 

【──つまり、貴様らは人の身でありながら……時間の流れに逆らった存在。という訳か?】

「っ誰!?」

 

 気がついたら、トロアが顕現していた。足元の影からおどろおどろしく、止まった時の流れなど知ったことかと宙を泳ぐ。

 自分以外誰もいないはずの停止した時間への乱入者。驚き振り向いた彼女は、自分の頭上を埋め尽くす龍に恐怖を覚えた。

 

「なっ……あっ」

【その力を単なる小娘が扱う……時間旅行者にしては悪ふざけがすぎるわ】

 

──トロっち、めちゃくちゃおこってる

──まあ我で言うなら目の前で「痛みを自由自在に操りますぅ」なんて言われたような気分なのだろう。自分の領分を侵されたと感じたらしい

 

 一言一言が響く。停止した校舎すら揺るがす呼吸。

 ベータの血の気がみるみる引いていく。どう足掻いても彼女の手でどうにかできる存在のように思えないようだ。まあ初見で俺もこんなの見たらビビるかもしれん。

 でも普段ニートしてる龍だと考えるとあんまり怖くない不思議。

 

【……妾の前に時間遡行者に似た存在が現れたのは貴様で二人目だ。喜べ、血肉にする名誉を与えてやる】

 

 固まったままのベータに対し、大顎を開いてそのままトロアは頭を降ろしていく。

 ってちょっとトロアストップ! 流石に目の前で踊り食いなんぞ御免だぞ俺は!

 いう事聞かないと後であれだぞ、目を唐辛子浮かべた水で洗うからな。俺も苦しいからやめた方がいいぞ。

 

【……言い残すことはあるか?】

 

 顎を開いたまま話す。小さく尋ねればようやく呼吸を許されたかのようにベータが息を吹き返した。

 吐き出すばかりの息。一言でも無駄にすれば夢もない。

 

 視線が一瞬俺の方を向く。残念ながら今は停止中なので何もできない。

 

「……た、……った!」

 

 ベータは、重圧に耐えかねる。トロアの口から吹き出す生暖かい息に押される。

 ひざを折り、スフィアデバイスと音声が響いていた機械を床に置き。

 

 

「──助けて、ください」

 

 神に祈る様に、声を擦り出した。

 

 

 

 

 

 

 

【つまらん、食うのはやめだ】

 

 それ俺の、と呟けたのはトロアが軽く指を振り、スフィアデバイスを壊したとほぼ同時刻だった。

 





ヒント トロアは見栄っ張り
次回はようやく神のみぞ知るさんの活躍回です、信じて下さい



オリキャラ一覧

・織部 長久 GK 1番
地雷:友達、家族、家
 流石に時間停止中は動けないらしい。
 
・トロア
 未来視の力を授けたりしてくれる悪魔。故にか時間を変えようとする輩に対しては人一倍敏感であった。
 トロアは後に目薬の刑に処された。
 やろうと思えば時間停止に対抗できるのは悪魔としての格の大きさのせい

・エマ
 人脈づくりがとても得意なので敵に回してはいけない子。
 魅了するだけではなく、悪意を持って家に近づくものに混乱の魔術をこっそり仕掛けたりも出来る。
 裏切りさせるならお任せあれ。蝙蝠。

 ちなみに家の被害が0なのは身に覚えがないそう。

・カラス
 なんか家に悪さしようとしているのがいたのでつついたりした。
 家の守護鳥気取ったりしている。
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