かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
校舎から飛び降りる時はしっかり確認してから落ちよう
誰かが言った、轟雷が驕りと共に猛り降りてきたと。
俺は見た、神話の一ページの様だった。
ジミーの地を抉り突風を起こす渾身のシュートを奴は片足で止めていた。
奴の後ろを残し、砂が巻き飛ぶ。
「……神の降臨だ。頭を垂れなよ」
円堂の目の前に突如降り立った神。俺達が反応できないでいたのが不服だったらしい。ボールを踏みつけ宙に浮かせたと思えば……そのまま奴はボールを円堂ごとゴールに叩きつけていた。
マジンの手が顕現する暇もなかった。一瞬たりとも持ちこたえられず……いやもはやそれは、ただ唖然としていた円堂の手に当てたようにしか見えなかった。
習合のシュートに喰らい付いてた円堂が反応できずに……その光景は、去年の俺がよく見てきたもの。
あまりに素早いシュートを前に散っていったキーパーたちのよう。
「……」
そう俺には見えていた。何の気なしの一撃が……俺の光陰如箭に劣らぬ速さだったのを。
メアのエンゼルブラスターにだって負けてはいない風圧だったのを。
ジミーの、必殺技と名付けられない必殺シュート。それすらも上回り実力差をその場の全員に見せつけた。
こいつは、この場にいる誰よりも数段上の位置にいる。
「なっ、この!」
「……君は動かない方がいい」
メアが駆け寄ろうとした。一瞥するだけで止められた。
奴はつまらなそうに周りを見下して、メアにだけ一瞬気をやるがただそれだけ。
「悪魔のキーパーはいない、か……じゃあ──サッカーをしてあげよう」
わらっていた。
倒れ伏す円堂から転がってきたボールをまた踏みつけ威圧する。
ベンチにいる俺ですら身震いするほどに感じる憐憫の眼差し。どう足掻いても……足掻くことすらできないだろうと侮っている、確かに感じた。
不快だという感情が出る前に、「どうにかしなければ命が危うい」と悟る。
「楽しい試合に割り込んでくんじゃねぇっ、キラースライド!」
「アフロディ、貴様!」
一番先に動いたのは雷門のDFの土門、そしてMFの鬼道。二人が帝国学園を想起させる動きで襲い掛かった。無数に蹴り出されるスライディングが相手ではどうよけようと足を取られるだろう。上に飛べば構えている鬼道がそこを突く。二段構えで確実にボールを奪い去ろうとする。
普段ならやや危険なプレーにも思えた動き。
「これで──なっ、消えた!?」
……奴には蹴りから飛ばされる一粒の砂さえもかからなかったのだから、気にする必要もなかった
気がついたら今度はこちらの陣地にいた。
「……はぁ」
ため息交じりにまた周りをアフロディは見下す。
ゴール前から瞬時にしてフィールドの半分近くを走った? ベンチで全体を眺められるはずの俺ですら動きが見えなかった。
……つまりそれは光陰如箭をも超えた速さ。ボールではなく人体のみで。
何の前触れもなく出来るものか。人間に出せる速度ではない。
衝撃で頭が鈍る。
「えっ」
「なんだと!?」
「……!」
周りにバング、ソニックがいた。出現に気が付いて少し遠くにいたカガがフォローに入ろうと前傾姿勢になっていた。
ようやくアフロディを見つけた鬼道達が追いかけようとしていた。
風が、俺を前のめりにして倒すほど。近く置いてあったものを等しく倒す風が、フィールドに向って吹く。
「──ヘブンズタイム」
己だけの時間。奴が高らかに指を鳴らした。
奴が通った後を追う様に集められた風が、皆を巻き込む。
無理やりに集められた風は、圧から逃れるために
雷門の殆どが、近くにいた習合の三人が、オモチャの様に吹き飛ばされる。
ストーム・ブリンガー、エンゼルブラスターがそよ風に感じる程の爆風。
その被害がひどいものはフィールドにすらいられずに近くの草むらに放り投げられ突っ込んでいく。
悲鳴すらも気にせず、奴は習合のゴールに目指して歩く。わざとらしい程にゆっくりと。
「よう……随分ふざけた真似してくれるじゃねぇか……!! 雷鳴一喝!」
「ウリ坊、タイミング合わせていくぜ! デッド・グレネーダー!」
「お、おう……! 猪突猛進!」
残ったDF陣も反抗した。これまで見た中でも最も強く密度の濃い雷、榴弾の雨が降った。それすら気にするものかと駆け抜ける巨猪の一撃が迫る。
どんな優れた選手だってまず立つことすら困難なブロック。
だがどうしてか、少しも安心できなかった。
「その程度か」
だが敵わない。全てが見えているようにゆっくりと歩いていく。紙一重に、けれど服の一糸も擦ることなく。
爆風を躱し、雷は自然に避けていくように見えた。巨猪が目前に迫る。
煩わしいと思ったらしい、姿がぶれたかと思えば……ウリ坊がボールと共に空を舞っていた。
気が付けばトール達にもボールがぶつけられ吹っ飛ばされた。
ゴールががら空きになる。
「ぐ……八咫鏡・改!」
「歪んでるね?」
弟が出した、以前に比べ大きく装飾豊かになった鏡が、真実を映し大きく未熟な力を跳ね返す鏡が。
耐えることなく割れる。奴のシュートを映す事すら辛いと破片の一つも砕け散る。
己とゴールを守るすべを失った弟が、叫ぶことすらできずにネットに叩きつけられた。
「鏡介っ!」
叫んでいた。反応はない。
ボールが転がる。奴の足元に。
また、周りを見下す。被害をあまり受けなかった者達が唖然としている。
倒れた男たちが再び立ち上がろうとしている。
「……いいよ、わかるまで
◆
そこからは乱戦。介入してきた奴からボールを奪うべく、雷門も習合も関係なく奴に喰らい付こうとした。
控えだってお構いなしだった。何せ交代する暇もない。なんなら外には飛ばされそのまま倒れたままのものもいた。
俺も出ていたはずだ。弟をよくもやってくれたなとフィールドに入った……。
だがいつの間にか地面を舐めていた。何が起きたかそこから先は覚えていない。
痛くないところのほうが少ないと思うほどに疲弊した体。
今どこに倒れているかもわからない。
「さあ、これで終わりだね」
音が聞こえる。アフロディだ。近くにいるはずだ。
弟が近くにいる気もする。じゃあゴール近くか。きっとそうだ。
「畏れ多くも神の名を使う様な身の程知らず……しかもこの僕の前で、だがそれは無知によるものだろう」
力の奔流を感じる。大地が鼓動している。
「無知は罪だ。しかし僕は寛大だ。罰の代わりに……神の叡智を見せてあげよう」
まずい、とにかく弟の近くに行かなければと体を動かす。
何が不味いのかもわからないけれど、弟を守らなければいけないと心の底から思う。
「──真・ゴッドノウズ」
光が、光が動き出す。
弟へと、少しずつ堕ちていく。
動かなければならないのに、立ち上がらなければならないのに。
「や、たのっ……かがみ!」
よせ、鏡介。呼吸にもならない息が吐きだされる。
弟の叫びが聞こえる。わかる。それが強がりに似たものだと、鏡の一欠けらも出せていないと感覚的に。
立て、走れ、情けない頭を地面に叩きつける。
──ことすらできない。
指一本砂をかくだけだった。
「ぐっ、ぅぅゥゥウウウアアアア!!」
弟の
だから、だから俺は祈った。
「……ぉ」
傲慢で人の痛みも知らない神にではない、
頼りにしていたが破れてしまった天使にでもない、
「っ織部えぇぇッッ!!」
ひどく恐ろしく遠くにいて。それでいてどこか、俺達の近くにいようとする悪魔を呼んだ。
「──すまん、遅れた」
弟の近くで声が聞こえる。
だから、癪にも思えたが、安心する。
冷たくも優しい風が体を撫でた。
◆
翼を何度か上から下へと降ろし、ゆっくりと降り立つ。
切らした息を悟られぬよう、痛い肺を無視してゆっくりと呼吸をする。
「……へぇ、君は賢いんだね。ゴールじゃなくてそっちの子を助けるなんて」
わきに抱えた二号を一号の上に乗せる。ぐふっと声が出たあと、二人とも気を失ったようだ。……兄弟の絆ってすごいなぁ。一安心。
大きく吹き飛ばされたゴールを後目に見つつ、来訪者を見る。
「世宇子中キャプテン、
メアよりも金が混じり輝く髪。左腕の裾に巻かれた草冠モチーフのキャプテンマーク。白を基本としたユニフォームの上から肩から反対側の脇へと掛けられた布。
目につくものばかりだが……一番気になるのはその後ろで羽ばたく黒い翼。
ハッカチョウ、カラス。動物的なものとは違う。
こうあるべき、と定められ作られた。上等な美術品に近しいはずのそれは、どこか下品にも思えた。
「アフロディと呼んでくれたまえ。悪魔のキーパー……織部。長久、の方がいいかな?」
「……お前が俺の名前を、苗字も口にしなければ、な。ひどく、虫唾が走る」
「そうかい? それはありがたい。君の名前を覚えるのは嫌だったから丁度いいよ」
──珍しいな、お前がそんな言葉を口にするとは
そうだなコルシア。今俺は、ひどく怒っている。
メアが、ワタリが、ジミーが、バング、ソニック、ウリ坊にトール、カガにグラサン、一号,二号。
そして雷門の皆……大事な仲間たちと、知り合いをこんな風にされて、怒らない奴がいるか?
──いたらきっとそいつは、目の前の男の様な顔をしているのだろうな
「一つ聞く」
歩いて、一号達から離れる。
もう後ろには守るものはない。
「なにかな?」
「これをして、楽しかったのか?」
「……いいや? 少しも面白くなかったかな」
何を聞かれてるかも分からないと、亜風炉は首を傾げた。
それを見て俺は言い捨てた。
「
「……」
殺意が飛ぶ。
だがそれがどうした。こんなのものは普段の重力特訓に比べたら屁でもない。
みんなの方がもっと大変なことをしているし、この程度で怯む様なら部長ではない。
「この僕を敢えてそう呼ぶか……いいだろう。その愚かな挑発にのってあげよう」
黒き翼で強く羽ばたいて亜風炉が空へ駆ける。
光が集まる。一号の様にではない。手あたり次第、乱暴に奪って引っぺがして詰め込んでいく。
光が反転して、黒く染まる。漏れ出た力が粒子の怒りを表すかのように黒き稲妻となり迸る。
「……ダークネス・ハンドV2」
小さくつぶやいて、こちらも準備。怒りと闇の力をこねて合わせて骨手を二段作り出す。黒く細い管が腕に伸び繋がり感覚がリンクする。
今自分が出来る、最大級の技だ。
だが、
──防げんだろうなぁ
──食べらんなそー
そうだ。あれは下手をすればブラックの合体必殺技をも超えるかもしれない。フェルタンのお気に召さなければ食べることによる威力減衰も望めない。
シンプルに強い。俺達が一番苦手で不得意とするシュートだ。
正直逃げたくて仕方がない。
──だが逃げたくない、それは
格好悪いからだ、コルシア。仲間をここまでやられて、敵わないから相手をしないなんてのは習合の部長じゃない。
だからこうして迎え撃とうとしている。意地だ。
多分負けるし大怪我をする。99.9999%。なにをどうしようとそうなる未来しか見えない。
……コルシアたちも被害を受けるかもしれない。いいかな?
──神の名を騙る偽物であっても、そいつから逃げる方が屈辱じゃ。妾は褒めてやるぞ?
──息の根だけは死守してね
──おい今更か貴様? 散々サクリファイスしてくれたくせに今更か?
……まぁあれだ、欲望に正直に動いてこそ、悪魔であり、契約者だ。だがくれぐれもあの記憶のV3なんぞに手を出すなよ? あれは非効率なだけだ。いいか、そもそも──
ありがとう。あとコルシアは後で話聞くから……。
そうだ、全力で、知恵を絞って、出来るだけのことをしてやる。
空に向かって笑いかけ、闇の骨手を構え終わる。
これが駄目ならもう片方の手で更にダークネス・ハンド、それでもダメならロアフェルシアドミネーションで、それでもダメなら頭突きでもなんでも……あとはそうだな。
「……」
この翼でも何でも使おう。
改めて後ろを見れば、禍々しくも頼りがいのある片翼。
軸は骨で、肉も羽もないこの翼。なんで滑空できたかもわからないこれだって使おう。
いやーそれにしてもほんとこれおどろおどろしいな。黒い布とか巻き付いてて、いかにも死んで骨になりましたって感じの翼だ。
正直滅茶苦茶格好いい。気がついたら生えてたけど、これ誰の翼なんだ。
なあみんな?
──……?
──……?
──……えっ?
……えっ? なにその、全員知りませんよ見たいな反応。
──妾のじゃないぞ。もっとドラゴン!って感じのやつだしそもそも肉がついておる
──フェルのでもないよー、黒一色って感じだもん
──我のでもないぞ? 我のは今はまだ普通の翼だがそもそも本来は火炎を凍らせたもので……
え、じゃあこの骨の翼は何? 悪魔ーズたちのものじゃないならなんなの?
骨だらけのくせして風を捉えるし滑空できるし絶対超常の物だよね? そもそも普通人の背中から翼とか生えないよね? メア? しらん。
──正直、勝手に屋上に飛ばれたし…誰も契約していないと思うぞ
えっ、じゃあほんとこれ何なの?!
怖い怖い怖い、悪魔の誰かじゃないって知った途端ナチュラルに動かしてたこの翼が滅茶苦茶怖いんですけど!?
俺のキョドリが通じてるのか片翼さんも滅茶苦茶荒ぶってらっしゃるのだけれど?!
コルシアさん、教えてコルシアさん!
──知るか
──しらーん
──……あ、あれじゃないか? お前の先祖に骨の翼が生えた謎の生物がいて、今隔世遺伝が目覚めたとか……いや無理だなこの説
言ってて諦めるな! え、どうしようどうしよ──
「真・ゴッドノウズ!!」
あっ──
祝 主人公に翼が生える
~オリキャラ一覧~
・織部長久 人間? GK 1番
なんだかんだ生命よりも意地と格好良さを優先するあぶねー奴。
気がついたらセフィロスっぽく骨の片翼を手に入れていた。スマブラ参戦する日も近いかもしれない。
・一号 FW 12番
極神のアクアがキマッている状態でもなければヘブンズタイムは見抜けたと思うほどの実力者。見抜けたところで動きが追い付かなければ意味がないが、
弟が大事。