かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
そして……お気に入りがついに一万件を突破いたしました!!
これもひとえに読者様方の御助力、誤字報告などによるものです。
本当に、本当にありがとうございます!!
恋焦がれる日
会場が爆発したり大会運営が冷や汗ダラダラの記者会見したり、会場に思い出がある人たちが涙を流していたりした土日が終わる。
そして月曜。ラストダンジョンと名高い部室棟にて……、ジンギスカンパーティーが行われていた。
「聞きましたかキャプテン。雷門はこれから再来週の試合までイナビカリ修練場でほぼ一日中籠るそうですよ」
ワイワイと楽しく肉鍋を囲む皆を見ていた時、
ワタリが世間話とばかりに野菜が乗った皿を持ちながら話しかけてきた。
えーほんとうかワタリ? すげぇな雷門の人たち。帰りにチラッと見せてもらったけどうちの施設より……何というか熱血! って感じのところだったよねそこ。
サッカーボールを装填するガトリング砲とか、謎の電撃出す光線銃とか、転んだら弾き落とされるルーレット型ランニングマシーンとか。あと全方位から竹刀がぶつかってくるドリブル妨害空間とか。
……あれ考えるとうちの施設はかなりマシな気がしてきたな。だいぶ。
「あと重力増加下の訓練の話をしたら今度こちらでも導入したいって言ってましたね夏未さんは。紹介しても大丈夫ですか?」
え、ああうん。あれってうちは実験の為に格安で導入してもらったけどその辺は……夏未さんちはお金持ちなんだ。へー、いいね。
……ところで夏未さんって、雷門 夏未さん? 雷門のマネージャーの子だよね。滅茶苦茶強気な顔づくりだけどツンデレ風味触れるお嬢様の。
へー。メアド交換したってのは聞いていたけど、そんな感じにイチャイチャしてるんですか?
へー。こっちはつい昨日なんて復讐のために力を貸してくれとか悪魔との契約した話を出版しませんかとか怪しい手紙しか届いてなくてげんなりしてたのに。
まあすべて羊を焼くための燃料になったけど。取り敢えず近隣住民の方々に焼くことを最初にお伝えして、良ければと一部おすそ分けに行こうとしたりもした。
──悪魔召喚の儀式だと思われたのか大概居留守使ってたな
──ウケルという奴じゃな
ウケない。
というわけで、流石にフェルタンと契約しててもヒツジ一頭は食べきれないし、こうして部活に持ってきたわけだ。
ほらワタリもっと肉食え、そしてその女子との交流話をもっと聞かせるんだ。
──がんばればイけるって~
無理ですフェルタン。胃が破裂してしまいます。
「……? どうしましたキャプ──」
「ワタリさんってその子のこと好きなんスか?」
「あ、僕も気になっちゃうなぁそれ―」
「だよだよ!」
「はいぃっ!?」
よしいいぞよく言ったなバング、アルゴ、ウリ坊。お前ら人のイチャイチャを直ぐ茶化す三人組ならばワタリの防御など紙切れ同然だ。
この三人の好奇心からは何人たりとも逃れられないぞ。
「い、いや普通にマネージャーの方との交流は色々と益がありますし、偶々それでメール交換をしただけで」
「えー、でもその辺りはマネージャーの人がした方が自然ッスよね?」
あくまで普通であるというかわしをバングが離さずつかみ取る。ちなみにうちのマネージャー達、エマはそもそも雷門マネージャーが眼中になく、メアファンの子はインスピレーションが湧いたとかで創作活動に励み、トールファンの子はトールが傷つけられるのを見ていられず気絶した後、トールに起こされたおかげで悶え死んだ。
後者二人は全治五日と俺は診断している。
「最初は何もなくてもさぁ、案外話していくうちに仲が深まってーなんてよくある話じゃーん? 実際あの子美人さんだよねぇ?」
「……まあ確かにお綺麗な方だとは思いますけど……ってアルゴさん、誘導はやめてください!」
アルゴの前者を否定したいのに文末に否定しにくい事を付ける。そんな惑わしの言葉でワタリの歩みを崩す。
そして、
「ぶっちゃけお似合いだよね」
雑過ぎるウリ坊のぶっこみが全てをなぎ倒す。完ぺきだ。こいつらの追求ではどんなドリブラーでも太刀打ちできまい。
人のいいワタリにとってここからの逃げ方は一つ「あの人には僕よりお似合いの方がいますよ」と定形を喋ることだろう。しかし、三人を前ではその言葉も「つまり意識はしてるって事?」と繋げられてしまう。罪──間違えた、詰みである。
流石に少し可哀想になってきたな。ワタリにそんな感情はなかったろうし、これ以上掘り下げるのは危険か……?
──おい長久、色恋のいじりは気を付けた方がいいぞ。過去の契約者の中には色恋沙汰から恨みを募らせて、というものも多くいたからな
サンコル。確かにそうだな。恋愛というのはよくわからんけどそこらへんはデリケートかもしれん。
「……三人とも、それぐらいにしておけ」
「え~……はぁーい」
不満げにしたのはアルゴ。他二人もまだ物足りないという感情をうずうずと感じる。
「……早く鍋に戻らないと肉をトールに食いつくされるぞ」
「え──うわちょっとトール! トング食いはなしでしょ!? バングいくよ、僕たちの肉を取り戻すんだ!!」
「い、いや俺はちょっともうお腹いっぱっちょっと引っ張らないで……ッス!」
筋肉増強が目標なのかやたら以前にも増して食べるようになったトールを指させば慌てて二人は戻る。ふふふ、そのうちトールは山盛りご飯を我慢できずに食べだすだろうから肉が無くなることは無いのだがな。簡単に引っかかるとはまだまだよ。
これでアルゴは一人、流石に分が悪いと感じたのか既に撤退ムードだ。
「……ふふふ、これで勝ったと思わない事だ~」
謎の遺言を残し、アルゴは姿を消した。嘘だ、本当はそのまま鍋に戻った。
これで完勝、ワタリを無事に守ることが出来た。どうだワタリ、サッカーのことならともかく他のことに関してなら部員たちを誘導することは意外と俺には出来るのだ。
「……ありがとうございますキャプテン」
──騙されるとるのぉ……むしろ最初はやし立てておったぞこいつ
お黙りトロア。お前も頭の中でヤレヤレと声出していただろうが。コルシアの提言もあった俺はこれから、相手の体力を見極めつついじるという芸を身に着ける。
……まずは思ったことをしっかりと口に出す特訓しなきゃ。そうじゃなきゃこうしてワタリ達を勘違いさせ……う、罪悪感出てきた。やっぱり話すか。そうしよう。
「……いや、本当のことを言えば俺も少し思っていた」
「えっ」
懺悔に対しすっっっっごい意外そうな目をするワタリ……ご、ごめんなさい! やっぱり無理です、耐えられませんこの視線!
誤魔化します、すっごい誤魔化します!
「お前が、あまりにも楽しそうに話すからな……」
「そ、そうでしたかね……?」
あれ、思いのほか好感触に変わったぞ! いける、この誤魔化し方行けるなぁ! 何がクリーンヒットしたんだ?
……なるほど、楽しく喋るという行為が以前は考えられなったからそれが良かったんだな。顔色に出ているぞ!
ならそっちにシフトだ。恋愛話とかは忘れてもらう。
ようし舞い降りろ俺の中に誤魔化しの神……いや悪魔よ!
助けて!
──んなもんいないわ戯け
そんなー……。
◆
「ああそうだ……いや、ワタリはよく笑うようになった」
そう言って微笑んだキャプテン。
おかげ様ですとつい言いかけて慌てて仕舞う。自分がよく笑うようになったのを認めるのがやや小恥ずかしかったから。
「……苦笑いの方もよくするようになりましたが」
「それは……よかったな?」
皮肉も通じずに受け流すキャプテンを見てるとどうしても笑ってしまいそうになる。……確かに、少し前ならここで怒っていたかもしれないと思う。
色々なことがあったが、あの雷門との練習試合が組まれて本当に良かった。
世宇子が襲撃したのは大変だったが、あれを期にメアさんが変わり……その影響を受けたのかチーム全体が「キャプテンの助けになれる」という意識を持った。
「それでね、リーダーが発現させた片翼の翼こそ旧約聖書の一説の──」
「そうなんですね! 参考になりましゅ!!」
……メアさんはもう有頂天に達し、少し昔の様に神話を独自解釈してファンの方に説いている。メモにそんなこと書いてどうするんだろうあのマネージャーさん……。
話が逸れました。
とにかく、あの日の出来事で色々と変わったのです。もう一人の雷門マネージャーさん、音無春奈さんからの情報によれば、会場爆破の一件は相手側にかなりの損害を与えたとかなんとか。
「翼……? またコルシアさんあたりがなんかしたんですかね……?」
初めて鬼道さんや帝国学園だった人たちから影山の恐ろしさを聞いた時は驚きましたが……今ではやや憐れにも思えます。
エマさんの仕掛けとやらで多くの「いつでも切り捨てることができる手下」は警察署へと届けられ、世宇子側はもう迂闊に動くことが出来ない。
更に自分の仕業だとはバレていないが、会場への仕掛けが明らかになったことで監視の目が内外から向けられている。
そのせいで影山自身、周りから切り捨てられようとしている……。
もはや彼らが挽回するには、習合を試合で倒し、大会で優勝するという栄光をつかみ取ることで力を示すしかない。さもなくば負けた瞬間、証拠が出揃い彼は逮捕されるだろうと。
つまり僕たちは勝てばいいだけ。
「……メア、服が焦げているぞ」
「えっ?! わ、燃え焦がれる気分だったのこれか!」
……目で追う事すらできなかった実力差がありましたが、自信で溢れるメアさんを……そして皆を見て笑っているキャプテンを見ていると、負ける気がしません。
強くならなきゃ、という使命感ではなく「まだまだみんなといたい」「サッカーをたくさんしたい」そんな思いが湧き上がる。
「……キャプテン、提案があるのですがいいですか?」
「? あぁ……」
だから僕は、強くなりたいという気持ちよりもそちらを元にこれを考えました。
「雷門のマネではないのですが……僕たちも、合宿みたいなことをしませんか?」
「合宿?」
「はい、この部室棟で寝泊まりして、朝から晩までみんなでサッカーをしてその、とっても、楽しいと思うんです」
朝は何を話そうか、夜は何を話そうか。普段ならないシチュエーション。……さっきみたいないじられ方は少し困るけれど、絶対に楽しい。
思いついた時からワクワクしていたんだ。今こうしてキャプテンに考えてもらおうとしている時でさえ口元が笑おうとしているのを止められない。
「……いろいろと許可をとる必要があるな」
けど彼は大人の観点でしっかりと考え始める。そこまで言われてハッとする。
保護者への説明、部室棟とは言え敷地内での寝泊まり。簡単に上げただけでも大変なものが二つ。駄目なのか。
気がついたら俯いている。
「──まあ、何とかなるだろう。いいと思う、楽しそうだ」
けれどもう一度顔をパッと上げれば……満面の笑みで笑うキャプテンがいて、任せろと言っていた。
……いや、ここでその顔はずるい。一瞬大人の振りをしたのはなんだったんですか。言おうとして、
「じゃあ私は早速父さんから許可を取ってきます!」
思わず元気に走り出していました。
不思議ですよね?
台無しにします。
部長の内心「これが死刑宣告か……ワタリの動作がずる過ぎて断ったらかっこわるぅ」
台無しにしました。
今話より「部長、最期の一週間だってよ」編です。正確には月曜の夜からなのでで六日です。
特訓回と見せかけて好感度が稼がれていきます。
……好感度が高まれば高まる程強くなるタイプの育成ゲームを思い出してください。
~オリキャラ紹介~
・マネージャーズ
兄さん大好きエマ、バラ最高限界オタク、トールオタクの三人。
主に仕事はちゃんとやる気ではいるが、ワタリさえいればまぁなんとかなる哀しさを持つ。
一人はザ・ユートピアの映像をカメラで撮影したことをメアから大変褒められて、また自分でも尊いと言い残し死んだ。
一人はなんがかんだ付きまとっていたからか、気絶した後トールが介抱してくれて全身から熱を発し死んだ。
午後の練習には間に合うらしい。
・ワタリ(帳塚 望) FW 9番
カラス大好き親父への反抗期ドリブル型フォワード。
メアに感化され心配事が薄れたらしく笑うことが多くなった。「いくら言っても聞かないなら無理やり手伝ったほうがいい」と気が付いたらしい。
・アルゴ MF 6番
これで終わったと思うなよ。