かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
ウリ坊&グラサン
・影山についての補足
サッカーで負けたら部下たちが自分の身可愛さに情報を手放すところまで追い詰められている可哀想なおっさん(真っ黒)
・習合の部室についてのおさらい
三階 天井が開くタイプの練習用コート。重力装置が付いている。
二階 ミーティングルーム、レストルームも兼ねている。自習にも使える。
一階 ロッカー、シャワールーム完備。倉庫が隣接。
地下一階 観客収容可能なスタジアム。
その他:魔王城でおどろおどろしいレリーフなどが飾られている。
Wi-Fi完備、簡易的なキッチンもある。住める。
【えぇ急にそんな数日間も学校内で泊まるなんて。いくらなんでもむずか──】
【返事は……わかりますよね父さん?】
理事長から許可が出た。もぎ取った、奪い取った。ワタリの気迫は、断った瞬間に家族の縁を切られるんじゃないかとヒヤヒヤさせるものだったらしい。可哀想な理事長さんに南無とだけ添えておく。
そのことを部員のみんなに伝えれば、ワッと許可を取ってくると家に帰って行った。……アルゴと一号二号はのんびり歩いて行った。
「……ということでしばらく帰らないから」
『……わかった』
俺も家に向かおうとしたのだけど、エマが全て任せて欲しいと言い切り猛スピードで家に向かってしまったので、俺は電話で叔父さんに許可を取るだけ。
叔父さんが珍しく一度目の着信で電話を取ってくれたので話はとてもスムーズに進む。断って家にいなさいって言ってくれてもよかったんだよ??
ねぇ、普通中一が学校で数日寝泊まりとか許可出さないよ叔父さん?
「……いいの?」
『──も、勿論! その……た、たのし──いやなんでもない。それじゃあ』
断らせる最後の機会だぞ? そう念を押したが叔父さんは何かに焦ってそのまま電話を切ってしまった。急な仕事でも来たのかな?
仕方がない、腹をくくるしかあるまいてか。頭の中でどうにか生き残るすべを探りつつ一人の時間を過ごす。
──……いやそれくらい汲み取ってやれよ貴様
え、何のことだコルシア。
そんなこんなで皆を待って数十分。流石に手持無沙汰になり始めたのでいったん外にでも行こうか。扉に手をかけた時だった。
階段を駆け上る音が聞こえた。
「がっ……!?」
いやな予感がして扉から離れようとしたのもつかの間、勢いよく扉が開きピンボールよろしく吹き飛ばされた。そのままミーティングルームの長椅子にぶつかり、奇跡的に収まる。
まるで最初から椅子に寝そべっていましたよ? と言わんばかりのフィット感。体全身に走った痛みからうめき声も出せず立ち上がれない。
超エキサイティングならぬ懲役再ティン、前にもこんなことがあったようななかったような。……痛みで思考が意味不明になってるな。
「よっしゃ―僕たちがいっちばーん!!」
「おっ、ほんとだ。メアたちの方が早えかと思ったんだがなぁ。ボスもまだか?」
おっ、思いのほか早く来たなウリ坊にグラサン。ところでウリ坊くん。扉はゆっくり開け閉めしような。
棺から蘇る吸血鬼が如く、ゆっくりと上半身を起こす。
「ここだ」
「おっ? なんだ寝てたのかボス。それじゃ静かにしてた方がよかったか」
「……いや、騒がしい方が好みだ。それにしても、随分早いな」
まだ家に帰って少しも経っていないだろう、それなのに二人は肩からボストンバッグをぶら下げもうお泊りの準備は万全と言った顔。グラサンはサングラスしてるから分からんけど。
尋ねれば、少し自慢げにウリ坊が胸を張る。
「へへんっ、泊まってくるの一言でオッケー出たからね!」
「俺も似たよ―なもんだぜ。せいぜい迷惑かけんなよとは言われたが……」
そうか、かなりさっぱりした親子関係なんだな……っとメールが届いている。ウリ坊とグラさんの家から?
えーとなになに、ご迷惑かけたらすぐに連絡ください。引っ張って連れ帰ります? ……なるほどなるほど。これ俺が保護者代わりにされてるな? 俺同い年だよ?
……まあいいか、とにかくあれだ。先にグラサンが来てくれて助かった。グラサンはDFの中では司令塔、指導方針を合わせれば地獄を軽減できる可能性がある。
「よし、まだ早いが……先に特訓内容を──」
「おうわかっ──」
「よく、聞いてくれ」
させねぇぞ!? 何いつもの試合のノリでアイコンタクトで全てわかった気になってんだ! 100の内の1も通じてねぇよ確実に!
大きくばれないように息を吸いどうにかしてグラさん達を丸め込んで見せる。そう覚悟した。
◆
今日は珍しく、すげぇ珍しくボスの奴が色々と喋っていた。
途中喋るのが面倒になったのか、ホワイトボードを使ってまで俺達に合宿の流れを説明する様は、思わず「もしかしてボス、そんだけ合宿楽しみにしてたのか」と思わざるを得なかった。
寝る場所、食料調達の方法、料理に掃除当番。謎に幅を取られた自由時間。わずか数十分でこれを考えたのか……流石だぜ。
「デッド・アーテナリー!」
「なんのっ、猪突猛進!」
俺の砲撃が巨大な猪によって弾き飛ばされる。ロングシュートだし威力は重視してないが、流石にウリ坊相手はむずいな。
説明が終わった後、ボスから「お前ら二人はしばらく二人で特訓していてくれ」みたいな感じで頼まれた時はビックリした。そりゃだって、俺達は仲いいけど相性がいいかなんて考えたこともなかったしな。
「……コルシア、やっぱりこれお前のじゃないのか?」
けどそれ以上ボスはなにも言わずに……ああしてゴール前で一人、骨の手と翼を作ってなんかしてるだけ。なにしてんだあれ? 手からは最近よく見る狼みたいなやつが出てきて会話してるっぽいが。内容は聞き取れねぇし。
ボスに限ってさぼりだなんてことは無いだろうけどなぁ。新技の考案とか?
「……新技か」
そういや俺の今使える必殺技も増えてきたが……世宇子に通用するとはいいづれぇな。狙撃して崩すデッド・スナイパー、ロングパスの代わりになるデッド・アーテナリー。早くてとらえきれねぇ奴だったりに使うデッド・グレネーダー。
小技ばっか増やしてきたが、格上の相手となるとちと厳しい。俺も新技を考えるべきか?
「新技……そうだね、僕も今色々考えてるんだ!」
俺のつぶやきにウリ坊が反応した。そういやウリ坊の必殺技はいまん所一つだけか。
一直線に突き進んでのブロック。そんだけに対処されやすいっぽいし考えることは同じだな。
「でもいいアイディアが浮かばなくて……あ、そうだ!」
腕を組みうんうんと唸って見せた後、ウリ坊の顔はひらめきを得たりとこっちに向って走り出す。
……あん? そのまま体を倒して、加速して……明らかにこれ、猪突猛進の体勢か!?
「ちょっ、ウリ坊何のつもりだ俺は今ボールも何も──あぁ?」
抗議する前にウリ坊が俺の横を通り過ぎていく。凄まじい速さでさらに加速していき……ボスの所へ。
「部長―、受け止めて―!! 猪突ッ猛ッ進!」
そう言って必殺技を発動させたウリ坊。後ろから見たのが初めてのせいか、普段よりも猪がでかい気がする。
いやいやいや、いくらなんでもそれは無しだろウリ坊! ボスだってそんなにすぐ準備が、
「ッ!? ふんっ!!」
出来たな!? ペナルティエリアに入ってきたウリ坊を見つけたかと思ったら、すぐに骨の翼から風を起こし猪にぶつける。更には少し跳び上がり、斜め上から骨の手を使ってウリ坊を抑えつけた。
すげぇな……ボス。まるで一秒が何倍にも感じているかのような判断の速さだ。猪の牙が地面に突き刺さり蛇に食われ、ついで骨の手が砕け散り消える。
「……ウリ坊、大丈夫か」
左手に巻き付く蛇を撫でながらそう言った。
何事もなかったかのようにウリ坊の心配をするボス。一方のウリ坊は頭から芝に叩きつけられたように見えたが……。
「うん? むしろなんか普段シュート止めるよりか全然……なのにこんな簡単に止められちゃうなんて!」
平気だった。口に入った芝を吐き出して喜んでいる。なんでだ。確かにすげぇが渾身の一撃を止められたばっかだってのに。
というかなんで今ボスに攻撃を……?
「やっぱり部長、僕の必殺技の欠点とか諸々分かってるよね! 何かアドバイスとかチョーだい!」
……賢いなアイツ。ああして自然な流れでアドバイスを貰おうとするなんて。なるほどそうか、その手があったか。
ボスは確かに……例として挙げるならドラゴンクラッシュ相手に下からパンチングしてたり、相手の技の性質をよく読み切っている節がある。メアにもよく適切な助言をしてるっぽいし。
「……直線加速だけじゃ限界が来ている。なら、横に飛ぶことも視野に入れるといい……かもしれない」
「おー? よくわかんないけどやってみるよ! ありがとう部長!!」
……もしかしたら俺も聞けば何か言われるか? そう思い、先ほど弾かれて転がって行ったボールを拾いに行く。
これで必殺技をボスにぶつけりゃいいんだな。
「っ!? いやまてグラさん、お前は……その、アレだ、ボール──弾自身が追尾する……なんてどうだ?」
俺を気遣ってくれたらしいボスが矢継ぎ早に、また珍しく大声を出してアドバイスをくれた。
……そうか、こうして必殺技を自分からぶち込むという意識を持たせることをボスは狙っていたんだな? 今にして考えれば、ダークネス・ハンドに使う骨の手を出しながらゴール前にいるなんてわかりやすすぎるヒントだった。もう少し早く気が付くべきだったぜ。
……何かボスが「違う、そういう事じゃない」なんて顔をしているようにも見えたが思い違いだな!
にしてもあれかぁ、追尾弾か。その発想はなかった。確かに自分で勝手に追ってくれるなら相手を追い込むのにも便利そうだ。
けどそれを連発するってのはまだ難しそうだし、とりあえずデカい一発をぶち込む方向性で考えてみるか。
「お、おおおお! なっなんか部長! 反復横跳び僕得意かもしれない!」
「あ、あぁそうだな……二人いるように見えるぞ」
視界の端で元気に跳んでいるウリ坊を横目に考える。デッド・アーテナリーの技を元に改造する方向がよさげか。バズーカが敵を認識するように作って、弾にそれを伝えて……。
うーんどうすりゃいいんだそれ? そもそも相手を認識して飛んでいく弾をどうやって作るか。バズーカよりも威力を持たせねぇとこれから先通用しねぇだろうし。
「二人……そうだ、この感じで横に跳びはねながら猪突猛進すればパワーが二倍だし、横幅も大きくなる! そういうことだね部長!」
「えっ」
バズーカを砲台に変えてみるかいっそ。サッカー場にどんと迫撃砲みてぇなのが現れれば威圧にも使えるな。
「よぅしこんな感じだな……後はやっぱり弾なんだがっ!?」
遠くをもう一度よく見れば……とんでもない光景が広がっていた。
「こうか、こうだね!? よしうまく行けた! もっともっと横に飛べばどんどん突進で巻き込めるものが増やせる! すごいや部長!」
「……」
一面芝生の筈のグラウンドに砂嵐が吹き荒れる。サングラスについたホコリを払いもう一度見ても変わらない。
ウリ坊のいつもの巨大猪が……増えていた。正確には普段の猪よりもやや小柄だが、一頭を先頭に何頭も。群れの突進の如く。ボスを囲み周回している。
それらを見てボスは……腕を組み、こちらを見つめてきた。
「名付けてっ、百獣大行進!! これを進化させればそのうち地上は敵なしだぁ!」
ウリ坊がご機嫌で走り回っている。それらを見てもう一度こちらを見ている。
傍目から見りゃ助けを求めているように見えるが、ンな訳がない。
な、なんだ? ボスは何を求めている。今の俺に何かできることなんて、まだ必殺技づくりに躓いてるんだぞ。
こうして砲台こそ作れたが、それにふさわしいだけの強力な弾が……。
弾……弾丸の様な突進。それを操るウリ坊は当然、目が見える。
「──っ、そうか! ウリ坊! この砲台に飛び込め!」
「えっ? う、うん!」
俺の声に従い、獣の群れがこちら目掛け突っ込んでくる。
地響き、だがウリ坊は確かに俺を目掛けている。曲がることだってできる。間違いない、これだ!
「いくよグラさーん!?」
やがて十頭近くの群れが一つの巨大な猪に、更にそのエネルギーが砲台におさまるべくウリ坊の体に圧縮されていく。
砲台の前で一度跳ねくるりと回り砲台にすぽりと収まった。まるで最初からこいつの為に拵えられたかのようなジャストフィット感。
「
「っなるほど! いくよグラさん──」
強く強く、砲台のケツを蹴れば溜められたエネルギーが爆発を起こす。
勢い良く飛ばされたウリ坊は空を駆け抜け敵に当たるまでとまらねぇ!
名付けて、
「「──
ジェットパックを背負った猪が飛んでいく。小柄ながらそこに秘められた力は今までの猪突猛進なんて優に上回るだろう。
何一つ相談してねぇはずなのに名前すら完成した必殺技。
煙を吹き出し一直線に加速しながらボスに向かって行く。
待ち構えていた様に構えていたアイツを見ると……そうか、正しかったんだなと嬉しくなる。
更にウリ坊が加速した。武装が更に凶悪な者へと
まるで祝砲のようだ、達成感に包まれた俺はそんな感想を抱いた。
◆
ちょっ、いきなり必殺技が二個も完成とかふざけんなよお前ら!? しかも応用技っぽかった百獣大行進はともかく……いや明らかに分身してて怖かったけど無視するとして!
何だよスーパー・ハウンデッド突進弾って!? 構えてないと吹き飛ばされそうなぐらい圧がすごい!
しかもこれシュート技じゃないよね!? いやシュートにも使えるのかもしれないけどブロック技だよね恐らく! 俺今ボールないんだってば! さっきのウリ坊と同じことを繰り返さないでくれ!
グラさん、グラさん! ついぞお前には何も伝わらなかった気がします! ちょっ、なんか誇らしげにしてないでどうにか攻撃を中止……!
あ、あっ……あぁぁぁぁぁぁ!!
助けてぇ!!
主にフェルタン! ほら、ご飯だよ!?
──火薬のにおいがするのはちょっとやだなー
後生です、お願い!
──お前、後生があるのか……?
コルシアハウス!!
いやぁ……長くキツイ特訓でしたね(((
~オリキャラ紹介~
・部長,ボス(織部 長久) 1番 GK
とりあえず特訓だけ命じて翼の使い方を探りつつさぼっていたらこの仕打ち。
とりあえず一瞬浮遊する程度の浮力を発生させることが出来るらしい翼。ダークネス・ハンドを別の方向に進化させるとき。
・グラさん 2番 DF
あんまり心酔していないタイプの部員だったが、上手く事が運びすぎて好感度が増えた。必殺技枠4つ目が埋まる。
早熟型。持ってきた荷物の中にはグラさんのサングラスコレクションもあるらしい。
・ウリ坊 4番 DF
経験値が溜まっていたらしく、アドバイス一つで化けまくった。怖い。
横幅で巻き込んでいく百獣大行進、敵に当たるまで突進を続ける超・猟猪突進弾を覚える。
怖い。
荷物の中には枕投げに使おうと持ってきた枕(一キロ)が入っている。怖い。
~オリ技紹介~
・百獣大行進 ブロック技
反復横跳びが世界を変える。横に飛びながら前に進む。つまりは超高速で斜め跳びを繰り返すことで全てを飲み込み弾き飛ばす縦横無尽技。
普段の猪突猛進よりずっとつかれるらしいが、習合のメンツにはあんまり関係ねぇな!?
シュートブロックに対しても使えるが猪突猛進した方が威力はある。
・超・猟猪突進弾 ブロック技
グラさんが作り上げた頑丈な砲台にウリ坊の溜め込んだエネルギーを発射する技。これでドリブルしている相手を地の果てまで追い続ける。
当たれば並みのサッカープレイヤーはタダでは済まないだろう。怖い。
シュート、シュートブロックにも使えるが、ためるのに時間がかかるのでやや使いずらいか。