かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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イキテマス


言った言葉は取り消せない日

 失望されていた、奇異の目で見られていた。だからこそ僕にはもう何もかかわってこないと思い違いをして言った言葉は、もう取り消せない。

 どうして僕はいつもこうして物事を軽く見てしまうのか。いくらはぐらかしても現れる現実が理想を蝕む。

 

「そんな……急にサッカーをしちゃいけないなんて。なんでそんなことを言うんだよ!」

 

「お、お父さん。明だって成績も落としていないし何も準決勝前にそんな」

 

 広くきれいに掃除された書斎。本の並び一つすら乱れがないこの空間では息をするのも一苦労だ。

 父はこんなところにいてどうして休めるのだろうか。聞く気も起きなかった。

 

「……勅使河原家の長男として、当たり前の事をしろと言っているんだ」

 

 僕たちが部屋で立ったままだというのに座り手を組んで、まるで話し合うことはない。決定事項だといわんばかりに告げられればこちらは抗議の声を上げることしかできない。

 親子の会話じゃあない。姉さんが味方にいても何もできないという絶望すらある。

 

「なんだよ当たり前って……! ただサッカーがしたい、合宿に参加したいっていってるだけじゃないか!」

 

「そうだよお父さん。織部君から聞かされてるけど、ちゃんと勉強の時間とかもあるって……! なにもサッカーごと禁止しなくても」

 

 こんなことならだれにも相談せず勝手に合宿に参加してしまえばよかったか。後悔先に立たず。

 反抗しても父は険しい顔色を緩めることはない。それどころか僕らの反論を聞いて眉が吊り上がったようにも見える。

 

「……サッカー、だと──ふざけているのか?」

 

 正しかったようだ。その言葉は呑み込めないと父が動く。

 一体、なにがここまで父を頑固にしているんだ。疎外感、放任主義なところはあれど常識的な性格をしていると思っていたのに。

 

お前たちのしているアレ……一体どこがサッカーだというんだ……!

 

 くっ、本当にどこが父は気に入らないというんだ!

 こんなにも僕たちの部活は健全かつ好成績だというのに!

 

「普通サッカーに必殺技なんて概念はないし人が宙に浮いたりもしないんだよ……! この間動画を見て怖くなったぞ」

 

「お父さん、ちょっとその感覚は古いよ……今はトップ層はあんな感じなんだって」

 

 ……どうやら今の技術が発達したサッカーが気に入らないらしい。

 そんなことを言われたって僕にはどうしようもないじゃないか。だって真面目にサッカーをしようとすればするほど父が気に入らないものになってしまうんだから。

 どうすれば……あ、そうだ。リーダーに相談してみたら何かいいアイデアとか出してくれたりしないか──、

 

「それになんなんだ悪魔のキーパーって。ふつうは比喩だろう比喩。なんで本物なんだ……! そんな危ない子とつるむなんて許さないからな……!」

 

「──っ」

 

 不意に湧き上がる衝動。ほっといてくれと思った相手からの言葉が深く突き刺さる。

 こぶしを握り締めるよりも逆に力が抜ける。

 

「そんな言い方ないでしょう? あの子は確かに見た目が少し怖いかもだけどすっごい明たちのことを考えてるいい子なんだから!

お父さんなんてつい昨日まで明の成績すら気にしてなかったじゃない!」

 

「うっ……だ、だが」

 

 姉が父の痛いところを突く。目に見えてうろたえている。しかし姉自身もそのことを引き出してしまったのに後悔しているらしい。追撃が切り出せていない。

 僕のことだから僕がやるべきだろうか。

 

 ……でも、

 

「もう、いいや」

 

「えっ……?」

 

 二人に背を向け、窓に近づく。三階から見下ろす庭園。庭師が隔週で来ては丁寧に整えていく、家の中でも嫌いではない場所だ。

 最後に見ておくべきだと思った。

 

「勅使河原なんて苗字、僕にはもういらないから」

 

「あ、明……なにを?」

 

 窓を開ければ花の匂いがほのかに。それも堪能せずに僕は、窓辺に足をかける。

 ……靴下のままだと不便かな。まあいいか。

 

「は、早まるなっ。話を聞け明!」

 

「……僕は、メアだ」

 

 迫る手からすり抜け宙に身を投げた。

 そして、祈る。この力で隣に立ちたいと願った彼のことを。

 

 さすれば翼を授かる。何一つおかしくない。

 

「なっ……!?」

 

 天使の羽と輪っか。この間から少しコツがいるけど出せるようになった。こんなことに使おうとは思ってもいなかったけど。

 リーダーのもとへ行こう。逃げ出すように僕は空へと飛び駆けていった。

 

 

 ……こんな日でも太陽は強く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーんメアからの連絡が遅いな。やっぱりお医者様関係の家だと難しいかな。

 そうなると不貞腐れるだろうからフォローのこと考えておいたほうがいいかなー。でもなー最近一緒にいるとすぐザ・ユートピアをもう一回打とう! 二人で新世界作ろう! って顔になるから対面するのもやりにくいんだよな。

 

「こうしてじっくり見ると……子供のおもちゃでも色々考えて作られてるってわかりますッスね……軸先を敢えて広げて攻撃用とか」

 

「上のリングも四方ではなく流線型に二つの突起……、案外バングさんの必殺技に役だったりするんじゃないですか? あれも着想はベイゴマですよね」

 

 さてこちらはごくごく平和なやりとりが繰り広げられている公園。回るベイゴマを見つめるバングとワタリ。なんとも長閑なものだ。

 しかしワタリくん、今はみんなで暇を潰す時間なのだからサッカーのことなど忘れていたまえよ、いやほんと。

 

「おぉーっ、それは確かに! 早速やってみるッス!」

 

 あぁいけませんいけませんよバング君。公園はみんなのものなのです。いきなりバンダナを巨大化させて己に巻きつけ始めたりしないで下さい……!

 

 見たまんまだけど文章にしてみると訳わかんないなこれ。そもそもなんでバンダナが急に巨大化するんだろうか。

 

「ドライブアウト……アタックモード!」

 

 繰り広げられる回転は試行錯誤の一品。

 軸足をより狭く、真円ではなく敢えて崩した回転。やがて回転から生みだされたエネルギーは視覚化されるほど強くなる。

 軸を小さくしたせいかすぐに傾きが生まれているが、逆に相手の足元をすくいあげる一撃が繰り出されそうだ。

 

 ……これは、確かに以前よりも当たればただですまない。確実に体のどこかを抉られそうだという感想が心の内で出る。

 反面、傾きで地面に対して並行ではなくなり上段からの攻撃に弱くなってしまったようにも見える。一長一短というわけか。

 

「おー流石ですねバングさん。いい感じですよ」

 

「ほんとっすか?! じゃ〜あ~ディフェンスモード、ッス!」

 

 ワタリの賞賛に気をよくすると今度は回り方を変える。伸ばしていたつま先を戻し設置面を増やす。回転の勢いこそ落ちたが横の力に強く、バランスよく。そしてじっくりと進む円は少しもずらさぬように回っている。持久力に優れているバングらしいそれだ。

 

 ……が、これはどうなんだろうか? 長く回りそうだというだけで、あまり硬いといった印象を受けない。完全ではない真円の回転は単独の効率。相手の一撃を受け止めるというよりかは受け流し耐える技だろう。

 つまりはアタックモードがブロック、ディフェンスがドリブル中といった使い分けをするのがいいだろうか。

 

「ど、どうっすか部長。俺の新ドライブアウト!」

 

 ……しかし、だ。ブロックしようとアタックモードで突っ込んで、敵の攻撃的なドリブル技が放たれた場合……これは今までよりも弱くなってしまっているのではないか?

 

「……」

 

「あ、あの部長さん……?」

 

 仮に、だ。ドライブアウト・ディフェンスモードで対抗しても、バングは回転によって守られるかもしれないが……相手はそのドリブルの勢いのまま抜けていくんじゃないか?

 しかもディフェンスモード中の足の遅さ、アタックに切り替えてもそこまで速くならないことを考えると、耐えてカウンターで背後を狙うというのも厳しい。

 

 これはその……俺のところまでさっさとやって来るんじゃ……!?

 

「──まだ、だな」

 

「うーんまだッスかー! も少し工夫してみるッス!」

 

──そこそこ汚いぞ長久

──やーいビビりめ

 

 お黙りコルシアにトロア! いやこの間の世宇子のヘブンズタイムみたいな危ない技相手なら怪我してほしくないしそっちの方がいいんだけど、ブラックみたいなテクニカルプレイヤーに簡単に抜けられたら腕がいくつあっても足らないんだよ!!

 わかる!? エースとのタイマンとかほぼ死だからね!

 

──散々我の魂を犠牲にしてくれたやつが言うと説得力が違うな

 

「防御……敵の一撃を受け流し、反撃できるよう……更に移動は速く、だろう」

 

 さすがに防御かなぐり捨てろなんて言うわけもない。自分の身の安全はとりつつもという路線で。

 ど、どうにかこう……相手の足を止めつつ無防備な相手に一発叩き込む感じで進化してくださいバングくん!

 

「ぐぐぐ、さすがは部長さん。涼しい顔をしてなかなか難しいことを……で、でもそれが出来たらきっと強いこと間違い無いかも……ッス!」

 

 流石物分かりのいいバングくん! いよっ、優しい子! まあ流石に俺も色々考えて言うからさ。頼む。

 えーとほら、相手の一撃を受け流しつつ自分は近づいて一撃ってことはアレだよアレ。

 えーと、その、ほら。

 

 ……コルシアはどう思う?

 

──案もないのに口にするな! ……受け流すだけなら、先ほどのように真円の回転で守るのが良い。あああくまで"真円"だぞ。真円もどきでは結局非効率であるし、ぶつかった際も完全には受け流しきれん。

 回転の安定力ならば重心を低く、遠心力も味方につけたほうがいいだろうが、遠心力が強すぎると攻撃を受けた時に自分にも反動がくる。

 ……無理なことだろうが、いくら回っても自分にあまり影響を及ぼさない、そんな外円の防御壁があれば更にだろうな

 

──こいつ質問のこととなると急にイキイキするな

 

 ……すげえめっちゃ丁寧に教えてくれるじゃん。なんだお前ベイゴマ博士かなにかか。中世ヨーロッパとかではベイゴマが大流行していた可能性……?

 そうかそうかよしよし。とりあえず今のコルシアの言葉を大体そのままバングに伝えるとしよう。

 

──フンッ……あとで適当な場所を殴打でもして痛みを寄越せ長久

 

 その対価はなかなか怖い。でもキーパー練習するよりはマシか……。

 コンクリート辺りでいいかな。

 

「ほほぅ……めちゃくちゃ参考になるッス! あざます!」

 

「……なんかノリノリですね部長。そもそも今必殺技の練習はするな、とか言うかと思ってたんですけど」

 

 ……そっそうだねワタリくん! 言いたかったけど変な方向性で進化されると困るからね! 適当な理由つけて誤魔化すよ!

 そして誤魔化し方は当然、格好つけムーブだ。

 

「……腹ごなしの運動ぐらいだったらいいだろう?」

 

「……ふふっ、そうですね」

 

 どうだなんかこの余裕ありまっせみたいな顔した発言。久々に決まったんじゃないか?

 最近全然いいカッコできなかったからな、この辺でポイント稼いでおかないと。

 ワタリもいい笑顔でほほ笑んでくれるしな。どうだお前も何か考えてみるか? フェイント技も強敵は最近野生の勘とかで見破ってくるようになってきたとか愚痴ってたしな!

 

「……そうしたいのは山々なんですけど、構想もまだまとまってないので。それに……」

 

「……?」

 

 ──あーあ、しーらない

 ──フェルのやつに同意だ。愚かものめ

 

 えっ、なんでワタリ君急に「タハハ」みたいな顔をしたの。

 えっ、なんで二人ともそんな急に辛辣に──、戸惑っていれば不意に背後に感じる影二つ。

 

 

 振り向かずともわかる。今にも爆発しかねない……雷鳴と、暴風。

 

「……そうだよな、腹ごなしくらいならいいよな?」

「フッフッフッ……一度吐いた言葉は飲み込めんぞ、部長?」

 

 あっ、そっかぁ。そりゃ軽くとも許可出したら、練習やる気満々だったトールとウォームアップしてきたソニックは出てくるよね……。

 

「そらそら逃げろ逃げろ、ハハハハ!」

「うぉー!? これ絶対当たったらアウトな奴だ! 頼んだぞカガ!」

「……! ッ!?」

 

 み、みんな助け──アッだめだ遠くにいるジミーたちはジミーたちで変な練習始めてる。何してんのあの子たち。

 ウリボウたちの超・猟猪突進弾をみんなで全力で対処する? へー……絶対こっちに近寄らないでください。

 

 はい。

 

「必殺技を鍛え直したくてな……!」

「俺も少しぶりに調子を見てもらうぞ……!」

 

 は、は、はは。えっとそれってやっぱり……俺が受け役って事だよね? 単に二人が技出してる横で助言するとかそんな優しい展開じゃないよね?

 

 ──おおっ、そろそろ妾の食事の時間というわけか、

 

 良いぞ良いぞと、目に映る凄まじき光景を糧とするトロアの心が躍る。

 あ、やっぱりー? ウケるー……ウケない。よしバング! 俺と共に死地へ行くか!? お前も技の進化させたいよな!

 

「えっ、俺もッスか!?」

 

 旅は道連れ世は情けない男を助けるんだよほら早く!

 

雷鳴──」

ストーム──」

 

 

 助けて!!

 

 




 今回こそソニックの強化にしようと思ったのにバングの強化イベントで終わりました。不思議ですね。
 次回は近日中に。



~オリキャラ一覧~

・メア(勅使河原 明) FW 11番
 家庭内の事情で家を飛び出した天使系フォワード。ついにサッカー関係なくとも飛べるようになった。怖い。
 父親のほうにもう一つの故郷の国からのスカウトが来てたりして今回につながったことは知らない。

 本人にとっては家出するレベルなのでシリアスだが、周りから見たらコメディである。

・織部 長久 GK 1番
 後先考えない格好付けと後先考える保身さが絶妙にかみ合わない。阿呆。最近バングを道連れにする画期的な進化を遂げた。
 
・コルシア 両腕
 一人でYaho●知恵袋をさせたら延々としているタイプの回答ガチ勢。


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