かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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サブタイはネタバレです。
近日だったので投稿しました



巻き上げられた愚民は手を伸ばす日

 

 いつだってそう、俺の昂りを飛ばしてくれたのは限界(いま)の速度のその先だった。ブレる景色が強くなるたび、己の成長を実感させた。

 

 今にして思えば、自分の走っている姿を見る誰か。そんなことを意識したことはまずなかったのかもしれない。

 

「フフフ……ハーハッハッハ!! どうだ部長、これがストーム・ブリンガーだっ!!」

 

「……ああ、凄まじいな」

 

 回転ジャングルジムに腰掛け、俺の必殺技をその身一つで受ける奴。

 涼しい顔をしているのがやや腹の立つところだが、そうこなくては面白くはない。

 

『今から俺をこのジャングルジムから引き離してみろ』

 

 そう言って始まったこの遊び。最初は何を言い出したのかとも思ったがなかなかどうして、考えられているものだ。

 まずおひとり様でガラ空きとはいえ金属でできた建造物を触れずに回すことによる。更に目的はその中にいる人間を巻き上げること。

 

「(大雑把な風では意味がない。当てる部位を考えて体勢を微調整……!)」

 

 この二つを達成するためには出力、コントロールともに要求される。生半可な走りでは達成ができない。

 更に相手はあの部長だ。猛りたちうねる衝動をいくら消費しても血がたぎる。

 

「涼しい顔をしていられるのも今のうちだ、今日は空の旅へと招待してやろう!」

 

 叫びと共にまた自己の最上を超えていく。楽しい、成長できている、工夫を生み出せている。それだけがこんなにも楽しい。

 竜巻の中で腰を下ろす部長の反応を逐一確認し、まだ飛ばせないものかともどかしくなる。

 

 単に同じ場所を同じ速度回るのではない。わざとずらし、緩急をつけることで引き込み突き放し引き込む竜巻を作り出す。

 この時点で以前よりも一段階技の完成度は高まった。さしずめストームブリンガー改ともいうべきか。

 

 けれどまだ理想には、越えるべき壁には足りない。

 目的とするはあの忌々しき神気取りすらも置いていくスピード、強さ。

 

 方向性は合っているはずだ。あとはこのまま全体のスピードを、出力を増やせば……!

 しかしそれ以上は肉体の限度、人としての限度。

 

「……くっ!」

 

 踏み出せば間違いなく体を壊す、勇気ではなく蛮勇の壁。以前壊した心の鎖から警告の音が鳴り響いている。

 俺とて、たった一瞬のみの速さで体を壊す気はない。

 

 走れなくなるつもりもない、ずっと走って走って、とことん見せつけてやるのだ。

 誰に? 見放した者たちに、向かい合う敵に、一緒に戦う仲間たちに。

 

 イメージができない。限界を超えた自分を描けない、描けないから追いつけない。

 急に成長に鍵をかけられたようだ。

 

 だからどうした。

 

 俺が、俺が世宇子を止めるのだ。

 俺だけがヘブンズタイムを止められるのだ。

 俺だけで勝たないといけないのだ。

 

「……?」

 

 自分で自分の心に疑問を持ち一瞬速度が落ちる。

 

「ソニック?」

 

「い、いやなんでもない……!」

 

 部長が怪訝な顔で尋ねてくる。慌てて戻したがはて、自分は何をおかしいと感じたのか。

 

「ソニック、休憩をとるか?」

 

 俺の迷いがすぐ伝わったらしい。部長が気をつかう。問題ないと視線を返しまた駆ける。

 もとより腹ごなし、疲れなんてかけらも無い。だから心配をするな──と考えていれば、視界の端に雷鳴が光る。

 

「雷鳴一喝ッ!! ……おお、バング。完璧に弾きやがったな!」

 

「ウス……ッス」

 

 見れば、トールの一撃を受けて何度も回転を落としていたバングがとうとう成し遂げた姿があった。

 最初は部長を相手できずバングとだと指示され不貞腐れたトールも、何度も雷を放ちスッキリとした笑顔を浮かべている。

 

「自分に直接影響はない、空気の回転層……それであの防御力。まさしく技が進化したと言っていいですね……!

ドライブアウト改……いえ、真 ドライブアウトと銘打っていい出来でしょう!」

 

 指輪のキャンディを全部の指にはめたワタリが興奮を抑えきれないと言った素振りで話している。

 

 頭上から注ぐ雷、それから身を守るために生み出した

 ほぼ全方位を囲む回転する気流の壁か。元々あった、敵を弾き飛ばす回転エネルギーのリング。

 その一部を外側の気流に融合させたというわけだろうか?

 

「よーし後二十回ぐらいやるか!」

 

「ひぇぇ……全然一喝じゃないぃッス」

 

 仮に敵が気流を突破してバングに迫っても、気流の中には十全に回っているバングがいる。アレを破るのは至難の業か。

 奇しくもバングの技は、俺の竜巻と似た方向性へと変化し更に進化したわけだ。

 

 ──俺が、手をこまねいている間に。

 

 違う、嫉妬なんて感情は俺にはいらない!

 

「ソニック、回転が更に荒々しくなったぞ」

 

 愚かな感情をさっさと捨て、身軽になる、なる、なっているか?

 むしろ先ほどより何処か重く感じる。部長の褒め言葉……違うこれは苦言だ。荒々しいと考え込まれた嵐は違う! 今のままでは少しも動かないぞと教えてくれているのだ!

 

 どうすればいい、何をすれば己を追い越せる!

 どうして自分の中に言葉にできない感情が渦を巻いている!

 何故だ、何故だ、何故だ、何故だ!

 

「ソニック、そろそろ腹ごなしも済んだか?」

 

 部長の言葉が混乱する俺を射抜く。もう終わりなのか?

 待ってくれ部長、まだ掴めていない! ここで逃したらダメな気がするんだ! 頼む止めないでくれ、俺を立ち止まらせるな!

 

 まだ走っていたい、最初のころの気持ちよさで走りたい! こんな不完全に、どろどろに腐った走りで終わりたくなどない!

 

「……止まらない、止まれないのだっ!!」

 

 渦の中で吠えた。

 無様な犬のようだと思う。けれどこの叫びだけは聞いてほしかった。

 風のきる音が叫びを切り刻む。天に届くわけがないともて遊んだ。

 

「……そうか」

 

 部長には、目の前にいるお前には届いただろうか。

 回る檻の中、瞼は強く閉じられていた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 騒ぎというのはいつも想像もしないものであり、だからこそ俺たちは驚き慌てふためくものである。

 

 目を閉じ、ただ時間の経過を吐き気を抑えつつ待っていれば懐で震える携帯。

 ゆっくりと通話のボタンを押せばそれは知らされた。

 

「──家出、メアが?」

 

『そ、そうなんだよね……お父さんと喧嘩しちゃって』

 

 我らのエンゼルストライカー、メア。またの名を勅使河原 昭。

 彼のややコンプレックスの対象でもあり、できた姉であるメア姉。

 焦った声で状況を細やかに教えてくれた。電話の先であたふたしている彼女の様子が目に浮かぶ。

 

『急にサッカーするな、そもそもアレは本当にサッカーかとか言い出して、明は……なんか飛んでっちゃって。

申し訳ないんだけどもしそっちに行ったら、こっそり教えてもらえない?』

 

「……わかりました」

 

『ごめんね、こんなことになっちゃって。

 ……ほら父さん、早く車の準備──!』

 

 こちらの返事も早々に切れた通話音。焦りを如実に伝えていた。

 大丈夫だろうか。メアの心配は物理的にはしていないが、アイツはかなりメンタルの乱高下が激しい。しかし一体どこへ?

 

 ん……飛んでっちゃって、とか言ってなかったか? いやいやまさか。聞き間違いだろう、流石にメアもサッカーのこと以外で翼生やしたりしないし……。

 

 ──ふと空見上げたらいたりしてな

 

 ははは。フラグのようにも思えるけど……まあ例えいたとしても見えないだろうな。

 なんせ、

 

「ぐ、ぐぅぅっ!!」

 

 空をも覆い尽くすほどのうねる竜巻が、俺の周りを囲って消えないからな。

 かれこれストームブリンガーに閉じ込められ、どれだけの時間が経過しただろうか?

 回転ジャングルジムに立て篭り、こっそりと足から闇の力で引っ掛かりを作り、ジャングルジムにしがみついたがもう何回転したか考えたくもないほど回されている。

 

 目を開けていれば目まぐるしく変わる景色に吐き気しか覚えず、大半の時間は瞼の裏を見て過ごした。

 辛い、助けて。だが終わらない、腹ごなしと称した地獄の特訓は終わることはない。

 なんかバングの方は成功したし適当に声をかければ終わるだろうしかし、こちらソニックの回転拷問は終われない。

 

 何故なら、そう何故なら!

 先ほど本人が告白してくれたのをしっかり耳で聞いていたがなんと!

 

(不可抗力により)止まれないらしい!!

 

──本当にそっちか? いつものように顔見て気持ちを読んでみたらどうだ

 

 無理、三半規管狂いまくってるこの状況下でソニックを捉えられない。

 死にかけていると思うんですが、いつもの走馬灯の如きスロー視界再生も機能していない。

 

 まあ例え、例え別の意味だったとしてもだ。そろそろ止めてくれないと本格的にリバースする。

 

 今の俺には三つのルートが存在している。コルシアのいう通り意味が違っていて、部員の意図を汲んでやらないかっこ悪い部長ルート。絶対嫌だ。

 このまま止めずに続け、竜巻に巻き上げられ空からリバースするルート。悪夢がすぎる。

 不可抗力によって止まれないソニックを奇抜な発想で止めることに成功するルート。これしか生き残る道がないのだ。

 

 のだ!

 

 いや無理だこれ! どうやってこの荒れ狂う暴風を止めろってんだ!

 それにわかってんだよ! 多分不可抗力じゃなくて本当はうまく技がいいところまで伸ばせなくて満足してないんでしょう!? だとしても、このまま回り続けでも解決しないから! せめて素面で考える時間をくださいソニックさん! ねぇ、あとでアイス買ってあげるから!

 

 話し合おうソニック、回転ジャングルから降りさせてくれ……!

 止める、止める。何か良い手はないのか?

 

「ふぅー、よーしあと半分だぞバング!」

 

「う、うぃーすッス!」

 

 う、あっちの地獄も中間地点か。

 しかし俺が考えたとは言えバングには申し訳ないことをした。なんか必殺技は進化したからそれに免じて許して……。

 ……! そうだ俺の近くにはこんな素晴らしき人材がいるじゃあないか!!

 迫り上がってくる胃液を飲み込んで俺は叫んだ。

 

「バングッ!」

 

「えっ!? あ、あはいなんスか部長!」

 

 急に呼ばれ体勢を崩しかけたのだろうバング。それでも強く明るく返事をしてくれる。

 散々トールの相手をしていたのにかなり元気だな。まあむしろうれしいことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちへ、逆回転だ!」

 

 どういうことだ。走り続けているさなか疑問がわいた。

 なぜ急にバングをこちらへ。そもそも俺の叫びは届いたのか? 聞こうにもその余裕はない。

 あればさっさと限界を超えるために費やしている。

 

「え、えっ……その竜巻の中へ……ッスか!?」

 

 バングも驚いている。ようやく技が進化したばかりなのに何を? といったところか。

 だが世迷言ではあるまい。あの部長が声を張り上げて話したことが頓珍漢であるわけがない。そんな信頼が俺たちを動かす。

 

「ソニックは気にするな……いやむしろ、技をぶつけ合え!」

 

「……あ、あぁ!」

 

 ドライブアウトとストーム・ブリンガーこの組み合わせはかつて狩火庵中で試行の上生まれ、雷門を相手にひとまずの仮称を付けた。

 しかし、しかしそれはあくまでお互いが同じ方向に回ることでの相乗効果を考えた代物。逆回転させて何の意味が……!?

 

「え、ええいままよッス! 真 ドライブアウト!」

 

 俺の竜巻は中央にいるものを決して逃さずじっとはさせずのもの、外から突っ込んでくるものを拒むことはない。

 といったところでろくに力のないものなら触れた瞬間フィールドのかなたまで巻き上げる自負はあるが。バングはそのくくりに入らない。

 やや強引に風の壁を突破すれば、部長が閉じこもっている回転ジャングルジムの上に位置をとった。

 

 その変化は当然、竜巻を維持している俺にやってくる。

 

「ぐ、ぐぐぐっ……!? 風が、重い……!!」

 

「う、ううっ荒波すぎるッス! こんなの、共倒れに……!」

 

 内側から走り出した逆風。俺を追い詰めるためだけにあるのではと疑いたくなるほど試練。

 しかし部長は言った、技をぶつけ合えと。だから手を緩めるわけにはいかない。

 

 走るんだ、体力の底まで、限界まで、速度の先ではない。

 どれだけ過酷であろうと今自分が出せる最高速を、最善の回り方を。最上の竜巻を。

 

「全力、全力、全力ぅ……」

 

 バングも同様のことを考えているらしい。だからか、俺に吹きすさぶ逆風は衰える気配がない。

 風が髪を抑え込む、服を引っ張る。目が乾く。苦しい。

 爽快であるわけがない。

 

 ……だがどうしてか、一人で走っていた時よりか、限界を超えられずに吠えた時よりかは、どこか成長ができるという予感がするんだ。

 なぜだ。この環境下では間違いなく速度のその先などたどりつけないのに。

 自転を揺らされながらも決して曲げないバングを見ているとまだまだいけるだろうと鼓舞する己がいる。

 

「ソニックさん……負けないッスよ!」

 

「……! 俺もだっ!」

 

 そうだ、負けたくない。劣りたくないというよりかは負けたくない。

 勝ったらとてもうれしくなるだろうし、負けたらとても悔しい。だから、最低でも引き分けでそれでも、それでも一秒でも長く風を起こしていたい。

 

「もう一段階ギアを上げる、ついてこれるなバング!? まぁ勝つのは俺だがなァ!」

 

 踏み込む足がまだやれると言い出した。膝がまだ力を籠められると励ましている。太ももがたるんでいるぞと喝を入れてくる。

 体のすべてが負けるなと言ってくる。警告を唱えない。危機を無視しているわけではない、限界を超えても何とかしてやろうと励ましてくる。

 

 だからこの苦難を、試練を、仲間という名の強敵手(ライバル)に打ち勝てと叫ぶ。俺のちっぽけな叫びをかき消す大音声。

 

「……どうだ、止まるか?」

 

 ガタガタと揺れ始めたジャングルジムで部長が尋ねてくる。相変わらず目は閉じているが、口元を左手で抑えている変化に気が付いた。

 ……笑って、いるのだろうか? だとしたらまあなんとも、キザで格好つけで、人のことのばかり考えているような男である。

 こちらも笑うしかなかった。

 

「──止まるわけがなかろう!」

 

 笑いが竜巻の中切り刻まれていく。小刻みになった声が降り注ぐ。

 

 最大を維持する、すぐにバングの回転で減速させられるがやはりまた加速する。

 押し付けられた風にコースがずれてすぐ戻す。逆風を前に体勢を変えて凌ぐ。

 

「……ん?」

 

 気が付けば、気が付けば先ほど自分の頭で考えて実行していた、より効率的な風のコントロールが自然にできている。

 不思議なものだ。しのぎを削りあっているだけだというのに。協力しようといてるわけではないのに。

 

 これを教えたかったのか? いいやあえて聞くまい。

 熱に浮かれた脳が、頭上より降り注ぐ大粒の雨で冷やされる。

 

 ……雨? はて今日は一日中晴れだったはずだが。

 

「こ、これは……二つの強力な気流のぶつかり合いで、巨大な雨雲が形成された……!?」

 

 ワタリの解説で何となく何が起きているかを察する。まあどうでもいいか。

 とにかくバングに負けじと走るのみ、外野の言葉は聞き飽きたわ!

 

「グレート・タイフーンの時よりもなんか規模増してませんかこれ……」

 

「すげぇじゃねぇか二人とも! 俺も負けてらんねぇな!」

 

 風をいなし駆け抜けるのは性に合わん! 走る、強く、常に最高を!

 濡れた服さえも今は風を強くつかむために使い果てる!

 さあさあ俺もバングもそろそろ限度か、ここからは意地の張り合い、疲れていようが最大出力でだ!

 

「……ぐ、ぐぅ! トール!」

 

 くっ、また試練を呼び寄せようというのか部長!

 だがそれが面白い、泥仕合ほどダレるものもないからな!

 

「──雷を!」

 

「任せろォッ!! 雷鳴一喝!!」

 

 すべてを吹き飛ばせと言わんばかりの命令に待っていたとトールが叫ぶ。俺たちが作り上げてしまった雨雲に、トールの雷が届く。

 帯電が音でわかる、風に伝って肌をひりつかせる。

 

 やがて、雷が放射され始めた。気流によって落ち着くことのない雲は雷を真下には落とさず、常に形を変え嵐の中を縦横無尽に駆け巡る。

 放たれた雷は嵐の中から出ることは許されず、巻き上げられてまた雨雲の中に戻っていく。そのたびに気のせいか帯電が強くなっていく。

 これはループ。きっと俺たちのどちらかが止まるまで続くロシアンルーレットに似たようなもの。

 

 ああけれど、残念ながらだ。

 バングに雷が当たろうと弾いてしまうし、そもそも俺の速度をとらえることはできない。つまりは、俺たちの戦いに巻き込まれた哀れなもののみを襲うのだこれは。

 それでも、俺たちは回り続ける。勝つために。

 

 

 

 

 

──ア゛ア゛ア゛あっ、ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!

 

 

 終わりを告げる鐘の声。

 どうやら途中で鳥を巻き込んでしまったか、断末魔にも似た叫び声が聞こえた。

 流石に動物を巻き込むのはと、バングと視線を合わせてお互いに止まった。仕方がない、今回は引き分けだ。いわずとも通じ合った。

 

 雷雲が掻き消える。閉じ込められた空気が逃げた。

 回り終えたジャングルジムの周りは、台風でも過ぎ去ったかのように荒れている。

 風でえぐれ泥でぬかるみどこから運ばれてきたのか木の枝や木の葉が散っている。

 

「……さながら大嵐の後、か」

 

「おっ、いいなその表現……! じゃあ今の、大嵐って名付けるか!?」

 

「いやさすがにそのままは微妙ッスよトールさん……」

 

 結果としてこれは新しい必殺技として成立しただろう。俺の想像していたものとは違う方向性で生まれた合体必殺技。

 ……これでヘブンズタイムを崩せるだろうか。とふと考えがよぎったが……なんだかそれもどうでもよく感じてしまった。

 

「……ザ・テンペスト、ってのはいかがですか? 暴風雨って意味なんですけど」

 

「あワタリさんの意見に一票ッス、覚えやすいし」

 

「ざっ、てんぺ……?」

 

「……後でスペルを見せますね」

 

 俺の意地にバングが加わり、トールが重ねられ、奇妙にも強力な必殺技が生み出されたのだ。

 ならばうだうだ考えようが結局、意地を通すしかない。つまり頑張るしかない。なんとも単純すぎて、なんとも単純な俺の答えにはふさわしい、か。

 

「ふっ、フッーハッハッハッ! よいではないかtempest! 行く末阻む者など俺たちの競争の合間に吹き飛ばしてくれよう!

なぁ部長よ!」

 

 嵐、竜巻、ハリケーン。どんな風でもそれは結果であって目的ではない。俺はただ走ることでお前を魅せてやろう。

 そう心で思って振り返った。

 

「……」

 

「……」

 

「……あれ?」

 

 一度首を戻して、もう一度振り返った。

 誰もいないジャングルジムを見た。

 

 ……はて、途中までは余裕をこいていたはずなのにどこに消えたのか。

 首を傾げ、空を見上げて……。

 

「あ、空飛んでいるなあやつ。……誉め言葉のつもりか?」

 

「わーほんとだ。ずいぶん高いところまで飛び上がってますッスねー」

 

 骨の片翼で、遊覧飛行としゃれこんでいる奴がいた。まったく、あそこから飛ばされたといわれて信じる奴がどこにいるのか。

 自信をつけさせるためとはいえもう少しやりようがあるだろうに。まったく。

 

 

 ……フッ、だがお前を信じて叫んでよかった。

 

 そう口にしそうになって、慌てて咳払いでごまかした。

 

 

 

「あっ、あれメアさんじゃないッスか?」

「ほんとうですね。ついにあの人もサッカー関係なく飛べるように……あっ、キャプテンとぶつかった」

「そのままどっかに落ちてくぞ……? 大丈夫かあれ」

 

 ……まあ部長だし問題なかろう。

 俺はそう信じて、疲れたのでベンチを探した。

 

 




 ようやく出せました、習合究極奥義が一つです。
……次回からは一号、二号、そしてメアちゃんくんの出番です。
カガ、アルゴ、ワタリの強化はいましばらく先に……

 ジミー? 奴は、なんかチームみんな強化されたら勝手にまた強くなるから……

~オリキャラ一覧~

・織部 長久 GK 1番
 愚民。
格好よく落ちてるだけでやり切ろうとしたら三半規管が死んでいて衝突事故を起こした。医者の息子に慰謝料(激うまギャグ)

・ソニック(迅 颯) MF 7番
 少しゼウスを止めようと考えすぎていたが、部長のナイスアドバイス()にて走り勝つことへの執着を取り戻した。
 ついでに技も進化している。新技は究極奥義級。部長は泣いて喜ぶといい。え、もう泣いている?

・バング MF 8番
 パシられることに定評があり、織部から「まあバングなら一緒に道連れにしても問題ないだろう」とチーム内ではかなり珍しいポジションについている。
 技を真にたどり着かせ、究極奥義の一員になっているのですごい出世魚。

・トール DF 3番
 最近雷鳴一喝が修行用に使われていると薄々感じているが、力をふるってもみんな元気なのでそれはそれでうれしい。
 一喝じゃないととうとう突っ込まれたのでそのうち技を変えてくるかもしれない。

 

~オリ技一覧~

・真 ドライブアウト ドリブル・ブロック技
 攻撃守備両方の要素ごとに進化させようとしたが、織部のわがままにより奇妙な進化を遂げた。二層になった回転により持久力、防御力を高め結果的に効果的に攻撃が叩き込めるように。
 
・ストーム・ブリンガー 改 ドリブル・ブロック技
 ただ竜巻を作るだけではなくどう巻き上げればいいかを考えて作られるようになった。これには乗りこなすのも至難の業。
 一度閉じ込められたが最後、竜巻が絶え間なく襲い掛かる。


・ ザ・テンペスト ブロック技
 ソニックとバングの技をぶつけ合い生まれた気流は、滝つぼのごとききりもみ気流で敵を逃がさない。
 雷鳴轟き大雨吹き荒れるその姿はまさしく暴風雨。
 究極奥義としての格を持つ。

・闇の力とげとげ 意地張り技
 小細工だったが究極奥義に勝てるわけがない。
 
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