かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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おそらく初めての子の視点描写が入っています今回
そして後書きにて挿絵がございます。


後に祭りを思い出す日※

 思い出す、思い出す。

 あの日のことをゆっくりと。煙に巻かれた記憶を読み解いて、当時の自分を思い出す。

 この間夢見た時は忘れてしまっていた過去を朧げながらに言葉にして、形を取り戻していく。

 

「確か、あの日は……1人で神社にいた。夏祭りの日だ」

 

 家族はそんなに分かり合えない、自分の中の例を挙げるために、頭の中を進んでいた。

 

「叔父と少し考えがすれ違い、不満に思っていた日でもあった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世で初めて目が覚めた時を物心ついたとするのなら、僕は生まれてからずっと目が覚めていた。

 

 ずっと考え事をしていた。なぜ自分と同年代の子は泣くことしかできないのか。なぜ僕と同じように立ったり出来ないのか。

 やがてそれが普通なのだと気がついた後は、大人しく自分も乳飲み子のフリを受け入れた。

 

 ずっと、奇妙な声が聞こえていた。

 大人に説明してもアルコールで赤らんだ顔でスカされるばっかで、特に大事にされることはなかった。

 今思えばそれで病院とかに連れて行かれていたらもっと面倒だったから、それは良かった。

 

―― ふぁ……ぁっ眠い。まだねてよう

―― はやくこい、こっちへこい

 

 声はいつも神社の本堂より離れた位置にある………境内舎? つまりはちっちゃくてあまり人が来ない方の舎から聞こえていた。

 近づけば近づくほど鮮明に、だけれど意味もわからない言葉。

 

―― わたしはここだ、開けておくれ

―― ……ぐぅ。ぐぅースピー……

 

 なんとなくだけど、助けを求める声が聞こえる。

 

 何度か言えば、大人たちは「それはありがたいことだ」とか「きっとお前は神様の生まれ変わりなんだ」と流す。

 ただ、「あの舎だけは開けてはならないよ」とはきつくいいきかされた。なんで?と聞いても、貴重なものが置いてあるからだよとしか教えてくれなかった。

 

―― 早く楽になりたいのだ

―― むにゃ、ふひぃ……

 

 だから、雑音として考えるように。そう思うと邪魔に思えて、自分からその舎に近づくことは無くなった。

 

 二つの声を放って飲む甘酒は、ひどく濁りを感じてたまらなかった。でもまたすぐ声が聞こえてくるのでやっぱ邪魔だった。

 この町にいる限りは声は大小、あるいは頻度こそあったが止むことはない。

 

 性格が人道から少しずれてるのはこの経験のせいかもー?なんて言い訳を頭の中でした。

 ……本当はもっと違うのだろうけど。自分は人間らしいところが薄い。それが原因だなんて最初から分かりきっていた。

 

 学校に行けば、今日もみんないろんな表情を浮かべている。

 

 楽しげな顔は嫌いだった。落ち着いているのも嫌いだった。

 苦しげに、騒いでいる人を見つけるとどうしてか楽になった。

 

 まぁ当然、そんな好き嫌いをしていれば誰も寄ってこない訳で。学校では一人、人間観察と称してツマミを探すばかり。

 

「ふへへ……次はやきとうもろこし、いや焼き鳥かなぁ」

 

 とある夏祭りの日。神社で開かれるお祭りで、親戚一同集まるのが面倒で抜け出した。

 甘酒片手に屋台のおつまみを楽しむ。神社の子ということでみんなサービスしてくれて楽しかった。

 

―― はやく、はやくはやく

―― いいにおい……?

 

 でも、声がいつにも増してうるさかった。だからムカついた。こんな楽しい日なんだから少しは黙ってよと。

 そしてイラついてる自分の周りは祭りを楽しむものばかり。面白くないな。

 

 腹立ちかねて、舍がある方を向いた時だ。

 

「……えーと、アレって確か」

 

 小学校で見覚えがあった後ろ姿が、舍の方へ向かっていくのを見つけた。

 

 ◆▷◇、そんな名前だったはずだ。いつも学校で遠巻きにされて、見守られている。変な子だ。

 予兆もなく苦しげな顔をすることが多かったから覚えていた。

 

 はて何をしているのだろうか。今日もまたいきなり混乱してしまうのだろうか。自分の悪い嗜好が、彼への興味を強める。

 

「……あのままだと、舍に向かっちゃうのかなぁ?」

 

 頭にこびりついた「開けてはならない」という言いつけ。

 そんな場所に向かう、まともではない精神状態の子。

 

「……ふぅ〜ん♪」

 

 僕は彼の後をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「な〜に泣いてんの〜?」

 

 林道の脇で1人泣いている彼に話しかけた。お小遣いでも落としたか? いや手元にお札がある。

 女の子にフラれたとか? 聞いたが違うらしい。

 

「じゃあこれ食べる? まだ半分あるよー」

 

「いらないってば……」

 

―― あぁ、感じるぞ近くに、近くに!

―― ぅぅーん、美味しそうなにおい……

 

 お腹の音が鳴っていたから、もう飽きたおつまみを差し出してみるも食いつかない。ついでに泣いている顔も見せてくれないものだからつまらない。

 

 ずいぶんと強情な子だなぁ。もう放って置いて大人の人にでも任せようか。そう考えた時である。

 

「……どうすればいなくなるんだよお前は」

 

 否定するばかりだった男の子が、初めて僕に尋ねてきた。

 

 ……そう言われてしまうと、じゃあもう帰るねと言いたかった気分が収まる。というかそのままいなくなったら面白くない。

 何かをすればいなくなる、その契約内容を決めるのは僕自身だと気がつくと、途端に楽しくなってきた。

 

 この子に何を求めれば楽しくなるのだろうか。

 グルングルンとめぐる脳みそは、一つの誘導路を思いつく。

 

「じゃあさ――もう泣かないって宣言しよっか」

 

「……? そうすればいなくなるのか?」

 

「うん、泣いてたらこっちも気になっちゃうし……何より格好悪いじゃ〜ん?」

 

 無理だろうとは知っている。そんな約束一つで泣かなくなる人間は学校であんなに崩れたりしない。無理な約束を違えば僕はまた彼を見に行く口実が出来る。

 それに……。

 

「……わかった、もう二度と泣かない」

 

 話していてようやく落ちつきが少し出たらしい。腕で涙をこすり彼は振り向いた。

 ……赤く充血した目でそう言われても説得力がまるでない。甘酒をまた一杯、喉を潤す。

 

「……」

 

「……?」

 

 しばしの沈黙。彼はこっちを伺うように眉を顰める。

 

「……ん、どったの?」

 

「……いや、もう泣き止んだだろ。早くいなくなれ」

 

「いいや、まだ信じきれないなー」

 

「えっ」

 

 純真というかなんというか、あまりに呆けた顔でこちらを見てくるものだから笑ってしまう。それが不快に感じたのか彼は騙したのかとばかりに怒りを滲ませる。

 

「いやさー今一瞬泣き止んだくらいじゃ、離れたらすぐに泣いちゃうかもでしょ〜?

だから、泣かないか確認しよ?」

 

「かく……にん?」

 

 勘違いだよーと言えばまた彼はキョトンと怒りをどこかにやってしまう。チョロい子だ。将来は大丈夫かとさえ思う。

 だが関係ない。僕の、僕のためによるイタズラを実行するためだ。

 

「……うん、ほらっせっかく今日は夏祭りじゃん?

――肝試し、しない? 近くに……いい場所があるんだぁ」

 

――悲願がいまここに

 

 

 

 

 

 

「――以上だ」

 

「……ええっと、まとめるね。夏祭りの日にリーダーは一人でいて、そしたらその変な子が話しかけてきて、離れるように言ったのにいなくならないから条件?を飲んで……最後に肝試しをしたってわけだよね?」

 

 どこから取り出したのかメモに逐一俺の言葉を記録していたメア。

 特にすれ違ったこともなかったので肯定のため頷く。

 

「……えっ、そ、それからどうなったのさリーダー?」

 

「……思い出せないな。気がついたら家に帰っていた」

 

 泣いていたことを全力で隠し、とにかく夏祭りで一人でいたら変な子に誘われたことを話した。

 

 ようやく思い出せた部分を語ってみるも、肝心の肝試しの内容が出てこない。せいぜいポケットに自分のではないハンカチ……というか布切れが入っていたくらい。

 

「肝試しの後に記憶がなくて、気がついたらおうちに……!?」

 

 ……まぁ別にいいだろう! 仮に肝試しで俺がめちゃくちゃびびっていたとしてもメアに教えられる訳ないからな!!

 というかそうか、約束事は「もう泣かない」だったか。すっかり忘れていたけど、まあそれ以降一度も泣いた覚えがないしオーケーだろう。契約は守れている。

 

――心の中ではいつも泣き叫んでるくせにのぉ

 

 お静かにトロア! 今度体育の授業受けたときに塩素水で目をめちゃくちゃ洗うぞ!?

 

――……あーそういう訳か。フェル

――まーそういう感じ?

 

 なんか悪魔二柱は通じ合ったようだけどなんの話? 教えない? そんなー。別にいいけど。

 

「そ、そのあとその舍には向かったりは……」

 

「あぁ、何度か。こっそり開けても見たが、何もなかったな」

 

 ……て今にして思えば、なんにも入ってない舍ってのも不気味だよなあ。明らかになんか置かれてたっぽい台座もあったし。

 もしかして盗まれちゃったんだろうか。

 

――ソウカモナー

 

 やっぱコルシアなんか勘づいてるよな? でも言わないってことはその方がいいと判断してるからなのか?

 じゃあそのままで。世の中には知らない方がいいことはあるだろう。

 

「……ん、一号のキレが良くなってきたな…」

 

 話をしている間もサッカーマスクズは特訓を続ける。次第に増幅されて帰ってきた自身の一撃をうまく受け止める術を上達させていっているようだ。

 そう話を振れば、メアはチラリと見たのちまたこちらをじっと見つめる。

 

「……? どうしたメア」

 

「え、いや……今の話はすっごい気になるところあるけど……その、本題というかなんというか……」

 

 結局、家族は分かり合える云々は? 疑問符が目に見えるほど困惑しているメアはなんだか新鮮だ。

 ……ははは、そうだよなあ。本題とずれまくってるもんなぁ。

 

 ……、

 

 …………、

 

 ………………やっべ。思い出すのに夢中ですっかり忘れてた。本題に絡んだのはおじさんが一緒にお祭り行ってくれなかったってだけで特にそのあと地が固まったわけでもないし……。

 どうしようコルシア。

 

――結論を考えずに話すからそうなるんだ……

 

「……ズレていたか? ありがとう」

 

 内心汗ダラダラで何も考えずに返答する。

 

 いやだってそもそも家族の仲直りとかさぁ! 俺全然わかんないもん! 喧嘩したことないし! なんか拗ねても大体あっちが折れてくれてたし!

 ワタリの時は親の方を説得するアレだったから、常識に訴えかけたけどさぁ!

 

 メア親子の喧嘩の原因なんだっけ? 確か、悪魔が絡むサッカーってなんだよ! そんなあぶねーもんやるんじゃねーぞって話だよな?

 

 

 ――事実じゃん!!

 

 十割正解じゃん! もう何も反論できねーよ俺!

 むしろメアのお父さんとかたい握手交わしたいぐらいだよ俺!

 でもメア的には地雷すぎる答えなんだよなぁ!

 

「……俺は、メアのことをほとんどわかる気でいる。でも違えることもある」

 

 ほら、チームメイトでも思考はズレまくり、勘違いしまくりだろう? だから家族でも……いやダメだな。チームメイトは仲良くしていて欲しいし。

 

ほーれどんどん空気が微妙になっていくぞ〜?

 

 愉快そうだねトロアさん、今日は目薬キツいやつさしたい気分だぜ!

 えーとえーとそうじゃないよね、適当に言葉並べても誤魔化せないよねぇ! とにかく家族が仲良くなくてもいい理由を考えないとぉ!

 

 たすけて! 神でも悪魔でも天使でもいいから!

 

「お〜こっちにいた部長さん♪」

 

 アルゴが来た!? 絶対助けにならないな!

 誰か助けて!

 

 

 




次回に続く


〜オリキャラ紹介〜
・アルゴ MF 6番
 なんらかの生まれ変わりとして祝福されし子供。
けど本人的には変な声が聞こえる力はいらなかったし、周りから浮いてしまう感覚が嫌だった。 結果として隠居じみた、人を観察する
趣味を得る。
 今現在は声も聞こえないし楽しいらしい。


・挿絵紹介


【挿絵表示】


 この度、ジミーくんを描いていただきました!!
 健康でたくましい肉体、学校で友達がいっぱいいそうな快活な笑顔が素晴らしいです。
 しゅう様、いつもありがとうございます。
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