かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
「公園にいてもつまんないからさ~飛んでったほうへうろちょろしてたらここにこれたってわけー」
「……そうか」
はい、甘酒瓶片手にふらふらとやってきたアルゴ君。アルコール分は一切ないはずなのに酒気帯びた赤ら顔。本当にアルコール飛ばしてる?
疑うなら飲んでみろって?
……はい、一杯いただきます。いつも通りおいしい。でも今日は少し甘みが強いね。
「あーそれ、塩入れたと思ったら砂糖だったんだぁ。まあなんにしても甘酒はおいしいからいいのだ~♪」
「へぇ。ね……僕ももらっていいかな。アルゴくん」
「……う~んっいい顔してるしいいよー!」
じろりとメアの顔を舐め回すように見た後、アルゴは嬉しそうにトックリを傾ける。
……ダメだぞアルゴ。いくらなんでも落ち込んでるメアの顔をつまみにするのは。
あくまで部員勧誘の際に許可したのは俺のことだけだからな。
ほら俺を見るんだアルゴ、メアのフォローができずに困り果てている俺の目を見ろ。メアに向こうとしている顔を引き寄せてでもこっちを見ろ。
どうだ、情けない顔をしてるだ──誰の顔が情けないだ。
「……ふふ、嫉妬ぉ?」
「……部員のためだ」
──なんだこの絵面は
──とっとと天使擬き置いて帰らんかぁ? 妾は暇になってきたぞ
本当になんなんだろうねこの構図。あとメアは流石に置いていけないからなトロア。
暇なら今夜アクション映画とかでも見るか? ホラーは嫌だけど。
「──真 光陰如箭!」
「──真 八咫鏡!」
そうこうしてるうちにまた二人の状態が整ったらしかった。
輝く光の矢が鏡に水平に突き刺さる、瞬間だ。光の写しが通り抜けるように跳ね返る。
「おー、なんかすごそう」
アルゴが気を抜かして言った。俺も言いたかった。
光の矢が、先ほどよりも水平に鏡にぶつかったのがなんとか見えたから。というかそれしか見えなかったから。
その一瞬で、ボールは一号の足を射抜くように進み戻る。
「……ぐ、ぅ……ぅうっ! !」
しかし、終わらない。
生きていた。ボールはまだ生きている、白煙をあげ、輝きが今にも爆ぜようとしている。
だがまだだと、俺たちの理想はこれからなんだと言わんばかりに一号は再び構える。
「……光、陰!」
放ったと同時に戻った周囲の光をもう一度、弓矢と成して収束させている。
一触即発のラインを優に超えているボールを浮かび上がらせ、番える。
「っ!」
反転。
狙いは、反対側。がら空きのゴールのど真ん中。尻餅をつき立ち上がろうとしている二号を背に置き、芝を踏みしめる。
「――如箭ッ! !」
「……っ!」
その言葉が耳に届くよりも先に、ボールがネットに突き刺さるのを確かに見た。
そのあとようやく、放つ動作を行った一号を見た。
体よりも、音よりも速く、その一矢が放たれた証拠。
「……また、一段階速くなったな」
「す、すごいねリーダー……今の、全然見えなかった……」
とてつもなかった。まさしく光の一撃。
光った瞬間には手元に届いていた従来の光陰如箭よりも更に速く。
光った、それを認識することすらできない神速ともいえる領域。
これを止めるにはそれこそ……。
「……兄さん、やったね」
「…………あぁ」
やりきった、進化した光をその目に焼きつけた二号は小さく笑った。
……だが、一号は煙を上げるゴールネットをじっと見つめ、小さく返事をしただけ。
納得していない、俺にはそう見えた。
――難儀なやつじゃのう……向上心の高さは不満足に繋がるだけじゃというのに
トロアが呟いた。全くもってその通りだと思うが、強くなろうという心意気はとてもいい事だ。
しかし一号は自分が何に納得していないのか、それすらもわかっていないようでもある。
「今のなら世宇子にも通用するかな? ねぇリーダーどう思――」
「――織部!」
新たなる光に期待を隠せないメアが尋ねるよりも強く、一号が俺の名前を叫んだ。
……えっ、俺?
何の用でございますかとばかりに立ち上がり、一号に少し近づく。
……決してグラウンドの線は超えない様にな!! 参加しないぞ俺は!
「……今のシュート、お前なら防げるな?」
無理だが? 人の可能性を高く見積もり過ぎだぞ。
いつものように逸らして防ぐやつでもシュートのタイミング掴めなければ……、いやどうだろう?
なにせさっきの軌道はど真ん中丸わかりだった。シュートを放つためのタメもいつもより長くなっていた。
「……」
ダークネスハンドV2を、弾く方向性に誘導する様に作り上げれば……なんなら、溜めている間にDFに指示を飛ばせば……。
入れなきゃいいだけだし。わざわざ打たせる理由もなし。
「……その沈黙は、お前の甘さと取るぞ」
「……すまん」
数秒の沈黙は肯定と取られたらしい。今の全部言葉にしようとすると数分以上は普通に使うからね。無視してたわけじゃないんだごめん。
……というか、「タメがわかりやすいし止まってるから邪魔し放題」、「元より苦手としていた、常に防御壁を出すような技」といった弱点が克服出来ていないんだよな今の。
――かと言って今の速さだけで得点できるかと言えば、まあ貴様が言った攻略法がある時点でお粗末だ。
キーパーと合わせて2枚のコマを使ってやるほどの価値があるとは思えん。
あの速度を一人で、なおかつタメをより少なくできればこれから先でも有用だろうが
コルシアからも手厳しい指摘。さすコル。
「え、今の何かダメだった? 僕全然わからなかった……」
「……ボクも」
しかしメアと二号は頭にクエスチョンマーク。一号もダメだとは気がついてるけど言葉にできていない。
……つまり、俺が説明しなくちゃならないというわけだ。
コルシア、解決策というか原因を考えてくれ。なんかこう、いい感じに格好つけられる論理も併せて。
――断る、それくらい自分でなんとかしろ
「……じゃあ、実際に部長さんがやって見せたらいんじゃない〜?」
「あ、それいい案だねアルゴくん」
「……うん、お願いする」
……何言ってくれてんだよアルゴさんー!?
そして名案とばかりにうなづくな天使と二号!
一号も仕方がない……って顔をしないでくれ! マスクしてないからわからない? 雰囲気で読み取れるわこんちくしょう!
――喋りが苦手なんだろう、良かったじゃないか
――お、動くのか? せいぜいよく目を凝らすがよい
やめるんだアルゴ、ぐいぐい俺をゴールに押し出すんじゃない! というか力強いなお前!
ニヤニヤしてる辺りわざとだよなぁ! 一号たちのためって感じじゃないよなぁ!
フェルタン助けて、なんかこういい感じにこの状況を邪魔して! というかさっきから無口だけどどうしたんですか?!
――ご飯の気配ないから休んでるね〜
そんなご無体な! ああでも確かに一号たちの技は食べられる要素ないもんね。ちくしょう!
――別に天使擬きの技よりかはいいだろう、さっさとダークネスするがいい
結局ダークネスハンド使ったら骨折すること忘れてませんかねぇトロアさん。
今日既にグラサンたち相手に一回使ってて、フェルタン貯金使い果たしてるんだよ!
ここで折ったら下手したら合宿の間ほとんど骨折したままになるんだよ!
「……では、いくぞ織部! 準備はいいな弟よ! 」
「うんっ、わかった! 」
俺にも準備の可否を聞いてくれませんかね一号さん。
嫌だぁ……、なんか良い手はないのか、できるだけ被害を最小限に抑えられるやつ!
そうだコルシア、闇の力で頭に兜みたいなの作って、それでヘディングして軌道をずらすというのはどうだろう。
――一号たちのシュートの威力を想定、お前の首が一大事になる事がほぼ運命づけられるが?
……無かったことにしよう! やっぱり小手先の技じゃダメだな!
じゃ、じゃああれだよアレ! 闇の力で逆滑り台みたいなのを軌道線上に置いて、シュートをゴールから逸らすってのはどうだろう!
――……出来なくはないが、大丈夫かそれ? 主に貴様のイメージが、だが
……闇に葬ろう今のアイデア! やっぱり男はなんか止めたり跳ね返したりしないとね!
どうすりゃいい、どうすりゃいい! 嫌だよ骨折して今テンション爆発中の習合のみんなのところに戻るの!
「行くぞ2号、真 光陰如箭!」
――……うるさいのう、手を使いたくなければ、ドミネーションでもすれば良いではないか。特別に、出力を最大にしてやろうか
……ちなみにトロアの全力って、普段のドミネーションが1だとしたら?
――む? うーん、10ぐらいかのう
――貴様……いつの間にそんな力を蓄えて……いやよく考えたらたまる一方だったな
それしたら片足が死ぬんだよ! 今でさえコルシアの力で強化しても一撃するたびに足痛くなるんだぞ。
「真 八咫鏡! ぐっ……兄さん!」
というかなんでわざわざ俺の体を犠牲にするの? こう、普通にトロア単体からビーム出すとかそんな感じの使い方はできないの?
そうしたらドミネーションの時もわざわざ足が痛くならないんだけどさ。
――あーん? 顕現してやるのは肉体的にも疲れるじゃろ。他人の体でやるからこそやる気が出るというものよ
こ、こいつ……! じゃあ指一本でも宿れればやる気が出るんだな?!
――あー? まあそうなるが……
よーし言質とったからなトロア! とりあえず今は右腕にいてくれ。
よしあとは指だけとか最小限の骨で防げそうなモノを考えよう。
えーと形はどうするか、とりあえずは闇の力を出しやすく、こねやすくするためにダークネスハンドを作っておいて……。
操作性をよくするためにさっさと痛覚とか色々繋がないと──。
「光、陰っ!!」
あ、やべ間に合わ――
助けて! !
◆
お前なら防げるな?
聞いたのは、ある種のあてずっぽうであった。
強力な技だと思った。光速の名にふさわしき一蹴、どう止めるかも頭の中では浮かばない。
……かつてのブラックのように、光を収束させている間に妨害する。
もしくは強固な壁を一定時間出しておく。
せいぜいがこの二択だろうとも思ったし、この二択を取るような人間ではないことも知っていた。
それだというのに、目の前の男は何も語らなかった。
俺なら防げる。
言外に語る奴を見て、必殺技の習得が上手く行かない苛立ちに火が付くのを感じた。
だからこそ、アルゴの提案も関係ない。最初から受けさせる気でいた。
きしむ体は、限界だと俺に騒ぐ。
黙っていろと歯を食いしばる。
「光、陰っ!」
弟の必殺技により増幅された俺の一矢、そこへ更に光を集めて凝縮、固めていく。
だからこそ速い、だからこそより推進力を持つ。
放つ、という行為が終わる前にゴールする。
ゴールするからこそ放たれる!
因果逆転の一撃をどうにかして見せろ! そう吠えて大地を踏み蹴る!
奴はいつものように骨の手を作り上げていた。だが遅い!
「如箭っ!!」
その言葉を言い切った。
体は解放感に包まれていた。
「──」
最光の矢が、放たれたはずだった。
「……何が、起きた?」
光の爆発で一瞬奪われた視界、次の瞬間にはすべてが変わっていた。
周囲の芝は吹き飛んでいた。
ゴールは大きく後退し、力が抜けていた俺も吹き飛び気が付いたら弟の近くまで……フィールドの中央から反対側のゴールまで転がっていた。
爆心地、芝どころか土も削れたその場所に立っている……その男だけが、何が起きたのかを知っている。
いや、
「……何を、起こした」
「……」
だから、聞いた。聞くしかなかった。
かつて俺の一撃を防いだ、頭突きなんてモノではない。だから答えを求めた。
男は俺の声など聞こえてないとばかりに空を見上げる。
「何を起こしたと聞いてるんだ、織部長久!」
……少しした後、空からサッカーボールが落ちてきた。
完全に光を失ったそれは何度か地面をはねた後、動きを止める。
「──しゅ」
それを見届けた織部は、ただ言葉を口にした。
「……拍手を、した」
幸せなら手を叩こ
~オリキャラ一覧~
・織部 長久 リーダー 1番 GK
骨折を気にしていたら功を奏して新技の切欠を手に入れた。
ちなみに右腕は折れた。
・真経津 光矢 サッカーマスク一号 12番 FW
神速の域に達するほどの合体技にたどり着きかけていたが織部に壊された。かわいそうな人。
とはいえそのままだと裏ゼウスなどには通用しなかったので仕方がないともいえる。
~オリ技一覧~
・真 光陰如箭+真 八咫鏡+真 光陰如箭=?
未完成技。とにかく速さを求めた結果、放った時にはゴールしている。技名を叫んだ時にはゴールしている。
とにかくふざけた速さになった。
しかし溜め時間、直線的すぎるなど以前の弱点を克服できていない。
・拍手
右手は(トロア入り)はダークネスハンド、左手もダークネスハンド。
合わせてドーン!!
芝は死ぬ。