かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について 作:低次元領域
「――と、いうわけで! 僕としてはエンゼルブラスターを更に進化させつつ、ザ・ユートピアもより完成度を高めていこうと思うんだ!
そのためにはやっぱり更なる特訓、そして光の強さを上げていくわけなんだけど、やっぱりそれには深淵なる闇を使うリーダーの協力が――」
「そうだな、そうかもな、その通りだ」
相変わらず何を言っているかわからないまま、メアと二人で歩く道。
無事な左腕でメアを支え、メアはオレの首元に手を回し半ばおんぶ状態。靴がないからね、流石に歩かせるわけにはいかない。
――今の状況をエマが見たら喚きそうだな
仕方ないだろう、携帯で着替え持ってきてもらおうにも、ふと見たら携帯が壊れてたんだから……。防水仕様でもイカレるとは。それとも耐衝撃の方がダメだったのか。
携帯会社の保険は入ってるから大きな出費にならないってだけが今の心の励ましだよちくしょう。
「今こうしてリーダーの背中に乗っているだけでもなんだか……深く、沈む冷たさと、包み込む闇と確かな暖かさ……? いや冷たいのに暖かいっておかしいかも……と、とにかく肌身で感じ取れる気がして、また一段と強い光になれそうだよ!」
「そうかもな」
適当相槌も堂に入ってきた。しかし耳が治らないと不便で仕方がない。
まあ大体は読み取れるからいいんだけど。
多分新技作りたいなぁとかエンゼルブラスターもっと強くするから〜とか言っているに違いない。
……真 エンゼルブラスターまで行ったけどまだ先があるんだろうか。
なんだろう、超とか極とか絶とかその辺の冠詞がつくのかな。いっそ元祖とか本家とかどうだろう?
――絶対特訓に協力するなよ長久。下手をしなくとも焼き尽くされるぞ……
――うー張り切りすぎて疲れたのぅ……妾も休むかぁ。ふあぁ……
悪魔って寝たりしないはずじゃ……いや休息ぐらいは取るか。おやすみトロア。フェルタンと仲良く休んでな。
あくびが一つ脳内にこだまして声が減った。やや寂しい。
太陽が傾いて、足元からじっくりと伸びる影を見てもトロアの気配をほとんど感じない。本当に休んだらしい。
……そしてメアの影がどこか薄い気がした。というかメア自身がほんのり発光している気がしたが、無視した。
洞窟とかいったら便利そうだな発光機能。
──もう手遅れだなこの天使擬きは
それはそうとコルシア、アルゴがどこに行ったか知ってる? なんか見かけないんだけど。
あの子ったらすーぐどっかにふらふら行っちゃうんだから。
――アルゴ……あぁあの不気味な桃色頭。マスク兄弟の後をつけて行ったぞ?
「……アルゴ」
アルゴくーん……。
さては一号たちの顔をじっくり見たいからとかそんな理由で離脱したな……。まあ無理矢理連れ戻すにもどこ走って行ったかもわからんし諦めるか。
すまん真経津兄弟。強く生きてくれ。そして強くなって俺がベンチでかっこつけてても問題ないくらいになってきてくれ。
「? ……あれ、そういえばアルゴくんがいない?」
「一号たちの特訓を見に行った。そのうち帰ってくる」
「あー……彼らしい、のかな? 二人とも大丈夫かな……」
アルゴの趣味はあまり良くないが、流石にあの二人の熱気をどうこうできるとは思えないし、悪影響はないだろう。
……よく考えたら、立ち直った後の顔はアルゴの趣味とは違くないか? うーむ。まあいいや。
「問題ないだろう、今の二人なら」
「……」
それだけ言うとまたテクテク歩く。腕痛いからあまり震動が伝わらないように。
一瞬だけメアの呼吸が止まったが、すぐにまた再開したかと思えば、逆に大きくゆっくりと二、三度深呼吸をする。
膨らむ肺が背中に押し当てられたからわかる。聞こえないはずの呼吸の音が、背中を通して伝わってくる気がした。
少し湿った靴が音を立てる。グチュリグチュリと進む。
不快な感覚のはずだが不思議と楽しかった。なんでだろうかと考えても答えは出なかった。
「……リーダー、僕さ。少しだけ、少しだけわかった気がするんだ」
「……ほう?」
メアがまた話し始めた。首だけ回して顔を見る。
空を見上げたメアの瞳には、夕暮れの月が映っていた。静かな闇を待つ、赤さを残した衛星。星を浮かべ、やがて干上がり上る光を沈めた海。
相変わらず綺麗な目をしやがって、さぞモテるでしょうなぁ! と謎の怒りがわいてきたが原因はワカラナカッタ、ナンデダロウナー。
「家族は理解しあってるってのは違うって」
「……」
「勘違いしてたんだ。通じ合っているのが一番いいんだって」
落ち着いた、けれど芯を持った声はやはり聞こえないけれど、俺に真意を伝えてくれる。決して焦らないリズムの音は波として耳をいやす。
メアの脳裏に浮かんでいるのは、きっとあの兄弟のことだ。
「二人がああして熱くなったのは、仲の良さもあったろうけど……ズレがあったからだ」
思い出しているはずだ。熱きこころが流した真経津弟の悔し涙を。それを見て困惑した兄の顔を。
いつも通じ合ってるように見えた兄弟で起きたすれ違い。
でもそれは喧嘩の原因ではなかった。
「ズレがあったから、1号くんは底から引っ張り上げられた。
2号くんは理想に辿り着くために、走ることができた」
真経津兄が最初から燃えていれば、弟は内心を燃やすことなく特訓に挑んでいたかもしれない。発露し、吠えることもなかったかもしれない。
逆に、弟が発露しなければ兄はその後の特訓に惰性が出てしまったかもしれない。
ズレがあったからこそ、二人で高みを目指せる。
きっと素晴らしいことだ。
「僕の父さんは、僕がサッカーするのが嫌いなんだ。リーダーのことも……少しも理解してくれないんだ」
「……そうか」
「だから、何も分かってくれない父さんなんかもう……い、いなくなって欲しくって……飛び出したんだ」
絞り出した言葉はきっと、父親を否定する言葉だった。
俺の顔を見て一瞬ひるんで、それでも言い切った勇気の言葉。否定の言葉は吐き出すだけ体力を使う。
メアは心を疲弊することを知ったうえで、言い切った。
「その、ごめんねリーダー。わがままだしひどいことを──」
そう見えた。
だから俺は、俺は。
「……俺も――父のことは嫌いだ」
嘘偽りなく話した。
心が疲れたくないから流していた言葉を、誠意をもって口にする。
それがメアへの励ましであり、礼儀になると思ったから。
「……!?」
メアが驚いてこちらを見る。
「どちらか言えば、叔父のほうが好意は強い」
「えっ、えっ……」
一言で終わらせたかった怠惰な心。
それなのに、どうしてか言葉が流れ出る。封を切ったらあふれ出る。
「時折からかうために嘘を言うのも、調子に乗って母に叱られるのも、大人の癖に子供っぽいところも、準備がなってないところも、格好つけたいがために格好わるくなるのも嫌いだった。子供らしい父だった」
思い出はきれいなものばかり残していたつもりが、改めて思い返すときれいなものなんてほとんどない。
日常のどうでもいい場面ばかりがよみがえる。
メアの父親を否定する自分を否定する言葉を出したかったのに。
気がついたら俺は自分のパパを否定し始めていた。ルートは一緒かもしれないが、目的がずれている。
これじゃまるで、俺の悩み相談じゃないか。
「母も、しっかり者のようにしていたが、時折り抜けていた。それでいてプライド高く、自分で失敗に気が付かないようにする癖があった。言い出せば自分が面倒を見るから。結局父の後始末をするが、先んじて注意しない。だから、だから……もっとしっかりして欲しかった」
おかしいな、メアを励まそうと思ったのに。
仲直りさせたかったのに、愚痴が止まらない。
子供の時に思った感情が、乗り越えたと思った感情が溢れ出す。
「叔父さんは、赤の他人に近い俺を引き取ってくれた。とてもいい人だ。だが、大変そうだった。もっと頼ってほしかった。俺でなくてもいい。色んな人に」
「三人には……格好良くし、しっかりし、頼って欲しかった」
吐き出していた。
好意を持っていると先ほど言ったばかりの叔父にすら。吐き出していた。
「メア」
「う、うん」
地面を見る。俺の影の中にはトロアがいる。
腰のあたりにはフェルタンがいる。
手の中にはコルシアがいる。
「……俺には、同体の悪魔がいる。けれど隠し事もあるし、もめることもある」
脳内で話すときはほとんど包み隠さないが、意図的に話さない、聞かないことなんて山ほどある。
でも、それでいいし楽しい。にぎやかだし。
メアを諭すためにはまず自分から? 無理だ。腹を割って話せば傷つくこともある。俺はそれが嫌だ。
腹を割って話すことを良しとし、悪意に近いものを否定したいメアは尊敬に値する。
だから、俺はただこういうほかなかった。
「家族とは……スレ違い、勘違い、人生を共にする者。そう、思っている」
理解しなくていい、ただそこにいるだけでいい。
臆病者の考えだ。今すぐごまかしたい。でも、それだけはしちゃいけない気がして、ずっと何もしゃべらないでいるコルシアが見守ってくれている気がして。
ただ、言い切って歩いていた。
俺は今、どんな顔をしている。
メアにそう尋ねる事だけはどうしてかできなかった。
◇
「――でも、違うんだよね」
リーダーが、いつもとは違った。デパートでおもちゃを買ってもらえなくて、泣き疲れた子供を思い出す。
その時僕は、父に連れられていたはずだ。
僕が欲しかったものとは違うけど、実に子供らしい、合体ロボットがレジでラッピングされていた。
僕のために、わざわざ父が店まで連れてきて買った。そのことの意味を考える。
「分かり合えないから、でもずっといるから、偶に、一瞬だけ噛み合う」
その時僕が、あっちが欲しいって言い出したら、父はどうしたんだろうか。
母との一件以来、僕は父に対してどうしていたんだろうか。
わからず屋だと僕は父に思ったけど、ちゃんと何度も僕は訴えたっけ。
「噛み合った時きっと、かけがえのない光を生む。それが積み重なって、消えない人生の宝になる」
親は、何歳からが親なんだろうか。その時点で未熟さは消え失せるのだろうか。
期待していないどころか、僕は何も言わずに父が分かってくれるだろうと思い込んでいた。
リーダーが気づかせてくれた。子供らしさを残す親を嫌いだといったリーダーの顔が、いつもよりずっと子供らしかったから。
年相応どころかずっと若く見えたから。
「でも、避けてたら、逃げてたら、その瞬間も逃しちゃうんだね」
二号くんがあの時無力さに燃えていなかったら、一号くんが熱に浮かされて立ち上がらなかったら。
彼が一号くんに後ろを向くように言わなかったら。
あの綺麗で、流星のような光景はなかった。
宝は生まれなかった。
人生を歩む友……いいや知り合いは、例え仲が悪くとも、例え思考がずれていても、置いていくなんてもったいないんだと。
「ありがとう、リーダー」
今にして思えば、リーダーは僕のことをほとんどわかってくれて、ありがたかったはずなんだ。
理解されないのが当たり前だったんだ。
自分にとって嫌な環境から逃げ出して甘えて、どうなる。
それで長い時間の間、ほんの少しずれたら離れるのか?
リーダーの負担を増やして、またあんな思いをさせるだけだ。決めたはずだ、彼の隣を歩くと。
「もう、おぶってもらわなくても平気だよ」
彼の、一度も聞いたことがなかった家族への愚痴。
勇気をくれた。彼を支えようと気を引き締められた。
「……そうか」
彼に預けていた体重を戻し、天を見る。
沈む夕日とそれを遠くで見る月。時折り噛み合い、移り変わりを教えてくれる景色がそこにあった。
「じゃあ――飛ぶね!」
「? とぶ――っ!」
その輝きに混ぜて欲しくて、いつかわかり合いたくて、高く高く飛んだ。
気がついたら光を放ち、この街のどんな建物よりも高く飛んでいた。
四対、八枚の翼が風も空気も撫で飛ばし、重力すらも話し合う。
「……また、強くなったな。メア」
「リーダーに追いつきたいからね!」
いつもだったら光が弱まってしまう、リーダーの闇の力も気にならなかった。
リーダーが気を使ってくれたのか、それとも分かり合えたのか。わからない、分からないからまだ手を繋ぐ。
「よーしっ、色々うじうじしてしまったけど! 特訓に戻ろう――あっ……い、家出は……そのえーと」
改めて公園に向かおうとして、そうだ家出中だったと思い出す。
流石にこのまま参加するのはまずい。一度電話でもして話し合って、許可をもらわないと。
んー、でもそうすると間違いなくまた猛反発するよね。どうするか……。
そう悩んでいたら、ぶら下がっていたリーダーが
「……分かり合えないとしても、譲れないものを譲る必要はない」
そう言って、恥ずかしそうに下を向いた。
「え、えーと?」
「『なんと言われようと合宿に参加する。合宿期間中は戻らない』。これで十分。
あとは、こっちの仕事だ」
今度はこっちが口を開けた。
それいいの? 反則では? 避けない逃げないに値するの? 色々と巡る。
「……絶交、というわけではないならいいだろう。気にするなら毎晩、成果をメールにでも、投げつけてやれ」
別に仲良くする必要なんてどこにもない。
相手の反応はともかくこっちの言い分をずっといいつけてやれ。そうリーダーは背中を押してくれた。
でも、確かに、まあ、家出したままよりかはずっとマシな話……だし?
ここまで言われてもなお、僕は云々と唸って――、
「――習合のみんなは、メアには……いて、ほしい」
「全力で言い捨ててくるよリーダー!!」
こっちの言葉の方がよっぽど反則だ!!
力技の解決案で開いた口すら更に惚ける口説き文句で、僕の飛翔はより速度を増した。
「まだやるのか!」
「こっちにも意地ってものがあるんですよ……!」
「お、おいおいおっさんたち喧嘩はやべーって……」
……しばらくして、公園で言い争いをしている僕とリーダーの親御さんたちを見つけた途端ガタ落ちしたのは言うまでもないよね。
……どうしようかこれ。
リーダー、助けて……。
「無理だ」
そんなぁ……
地獄絵図が作りたかった。
反省はしている。
~オリキャラ紹介~
・織部 長久 GK 1番
なんだかんだ全肯定するほどではない。でもまあそれが家族だろという思考。
腹を割って話すなんてことは絶対に無理と考えているチキン。ちょうど背中から鳥の骨生えてるしちょうどいい。
・メア 勅使河原 明 FW 11番
リーダーの話を受け取り、本人よりも素晴らしい考えを生み出した。結果本人がごまかしたかったきれいごとを答えにしてしまう。まあええか。
ちなみにエンゼルブラスターは超進化の系列である。