かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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エルデンリングやりたいなぁ


分からせる日

 親の喧嘩ほど見苦しいものはない。特にそれが親しくしている人の血の者であれば尚更だと思いました。

 

「だからっ、離せと言っているだろう!」

 

「いいえ、一言謝ってもらうまでは行かせません!」

 

 どこかに行こうとするメアのお父さんの袖を、どこにも行かせまいとするキャプテンの叔父さんが掴みます。先ほど会った時の弱気に見えた表情には今、必死めいた物もあり、最初は怒りを露わにしていたメアのお父さんさえもたじろぐほどです。

 

「……どうしてこんなことに」

 

「まあー、あんなこと言ったらそりゃ怒るって……とは言えどうすっかなこれ」

 

 慌てて頭を悩ませる僕の横で、冷や汗をかいているジミーさん。それはそうだ。あんなこと言えば家族が黙っている訳がない。

 ただでさえキャプテンの家の事情は複雑そうであるというのに。

 ……みんなでワイワイしていたら突然メアのお父さんがやってきて、

 

『明をだせ! ここにいるのはわかっている!』って言いながらまあ荒れまして……そのうちに今度はどこからかキャプテンの叔父さんがやってきて……。

 最初は叔父さんのほうはメアのお父さんを宥めようとしていました。

 

 この状況はまずい。ただでさえメアさんの家はうちの学校に対しての発言力が大きいと言うのに、それと現在学校で魔王と恐れられてるキャプテンの家がぶつかり合えば……何かよくないことに繋がるのは間違いない。

 だからみんな、大人である叔父さんにお任せしていたのです。それが裏目に出でしまったのかもしれません。

 

「というか俺、メアが家出してたって初めて聞いたんだけどワタリは?」

 

「いえ……でもよく考えればいくらメアさんと言えど不自然な行動でしたね。飛びながらキャプテンに激突するなんて」

 

「あん時裸足だった気もするしなー」

 

 事の発端はメアさんの家出らしい。家を飛び出した息子を追って、ここに来ていると思ってメアのお父さんが襲来。

 そこにたまたま仕事で近くに来ていたらしいキャプテンの叔父さんが、雰囲気がおかしいとこっちへやってきて……。

 

 彼がメアお父さんを宥める時「織部」であると名乗ったら、

 

『お前があの悪魔憑きの家族か! うちの息子をたぶらかしてどうするつもりだ!』

 

 怒りで頭に血が昇っていた言葉が、温厚そうに見えた叔父さんの導火線に火を……むしろその本体ごと爆破しました。

 それまでは取りなそうとしていたのも一変、絶対に許さないとばかりに睨みつけています。

 

「お父さん、だから謝りなって……」

 

「お前は黙っていなさい!」

 

 メアのお姉さんが心配でやってきた頃にはもはや手遅れ。

 大人と大人の意地の張り合いは袖の引っ張り合いという、ひどく地味に見えて一触即発の事態へと発展してしまっていたのです。

 

 うぅ……二人を呼びに行ってもらったはずのアルゴさんは戻ってきませんし、どうしましょう。やっぱり人選を間違えた気がします。

 

「あの子が……長久くんが、どんな思いでこの合宿に参加したかわかってない。絶対に撤回してもらいます!」

 

「知ったことか! 本人が危なければその家族も危ない。そんな合宿に参加させるなんで許可するわけもない。故に言葉も取り下げない!」

 

 事態の収拾のために動くべきなのでしょうが……大の大人二人の喧嘩に戸惑いみんなおろおろしています。

 

「トールさん、トールさん! 流石に力に頼るのはやばいっすよ……!」

「……! ……!」

 

「離せお前ら……メアにはワリぃがあのおっさんは一発拳骨をくれてやらなきゃ気が済まねぇ……」

 

 ……内1名がいつまで抑えられるかもわかりません。頑張ってくださいバングさん、カガさん……!

 でもこれなら最初からトールさんを先頭にみんなで抑えつけて無理矢理にでも引き離せば……ここまでこじれずに済んだのでは、後悔先にたたず、ああどうしよう。

 

「いい加減にしないと警察を──」

 

 そう、思っていた時でした。

 

――光よ、この一撃より照らせ

──闇よ、この一瞬より広がれ

 

「……回避!」

 

「えっ」「あれ、部長とメア……やばっ」

 

 

 声がしました、慌てて視線を頭上に上げれば……、

 天より広がる光と闇の奔流、それが一点に集まり降り落ちようとしていたのです。

 

 その場にいた全員がみんな慌てふためくこととなった、というのは言うまでもないでしょう。

 ゆっくりと、わざとらしいほどに遅く落ちてくる楽園から逃げるため、私たちは雲の子を散らすように走り出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、言うわけで二人とも喧嘩になってしまいまして」

 

「……うぅ、ごめんねワタリ」

 

「世話をかけた」

 

 みっともないほどの泥仕合はとりあえず力による恐怖で落ち着いた。

 ……みんなほんと死に物狂いで逃げていて申し訳なくなった。

 

──あのゴッドノウズを吹き飛ばした技という認識だからな当たり前だろう

──ぐうっ……妾らのほうも傷ついてるだろうぞこの技は

 

 い、いや待ってほしいコルシア。ほら着弾点を見てほしい! 少し芝がつぶされて濡れているくらいだろう!?

 

 いくら魔王呼びされていようがチームのみんなに危害が及ぶようなことはしない!

 ボールも使わない必殺シュート、実体がない技だったから例え直撃しようと少し暑さと寒さを感じる程度のはずなんだ!

 

──見た目は何も変わらないのだから意味ないだろう。貴様本物そっくりのナイフを突きだされて冷静でいられるか?

 

 ……はい、そうですね。ちょっと焦っていたからって考えなしでした。

 

「みんな……驚かせてすまない」

 

「なーに、おかげで喧嘩もトールも収まったしな! しっかしマジでビビったぜ……」

 

 頭を下げた俺の肩を優しく叩くのはジミー。

 こんなことを言ってるが、みんなが逃げる中、一人着弾点に向かって蹴り返そうとしていたすさまじき男だ。

 ……蹴り返されていたらヤバかっただろう、つくづくボールを使っていなくてよかった。

 

 トールはとりあえず凄いものが見れてすっきりしたらしくまたソニックたちと練習する(遊ぶ)ためもう回転ジャングルジムへと向かった。

 ……遊具が壊れないだろうか心配だ。

 

「安心しろってボス、壊れてもウチのモンで直しておくからよ」

 

 そういう問題ではないんだグラさん。

 叔父さんは……

 

「へいへーい部長の叔父さーん、ちゃんと反省してるー?」

「本当にごめんね……」

 

 何故かウリ坊に慰められ……慰められ?ている。あと頭突きは叔父さんには耐えられないと思うからやめてやってくれ。

 すっかり消沈したようだから……まあ後で俺からも励ましておくとしよう。今は何も言うことが浮かばない。

 

「そういやメアのパパさんはどした?」

「……うーんびっくりして帰っちゃったみたい、ほんとうにあの人は……」

「まぁ、サッカーもあんまり知らないみたいだしびっくりするって」

 

 サッカーて今更だけどなんだっけな……。

 

「あ、ワタリ今携帯持ってる? ちょっとお姉ちゃんに電話したくて」

「ええどうぞ」

 

 内心悩んでいる俺をよそに、メアはワタリから携帯を借りた。何度か画面に触り、おそらくは電話番号を押し切るとほんの一瞬息を吸って、携帯を耳に当てた。

 苦手だという相手に電話をかける、それだけだというのに俺はメアのことをすごいと思う。

 

「……ああ、お、お姉ちゃん。その、悪いんだけど後で靴とか持ってきてもらいたくて……うん、うん」

 

 ああそういえばメアは家から直接飛んできたから荷物とか何もないのか、確かに今お家に戻ってもまた揉めるだろうし仕方ないよなぁ……。

 俺も一旦濡れた服とか壊れた携帯とか色々やらなきゃいけないことが……

 

「──安心してください兄さん、着替えをお持ちしました! あとその携帯はこちらで何とかしておきますね」

 

「っ、エマいつからそこに……もういない」

 

 そう思った時、急に背後からエマの声がしたと思えばそこには服の入った紙袋のみ。

 ……エマにしてはとても珍しい行動だ、というか壊れた携帯も持っていかれてるし。どこまで把握されているんだ?

 

──まあ、むしろ何もないならありがたい限りだろう

 

 うーんどうしたんだエマの奴……なんか企んでいそうで怖いんだけど。

 案外叔父さんとの一件を心配してくれてるとか。

 

「……え? 分かった、いいよ。電話替わって、僕も言いたいことがあるし」

 

 む、そんなことを気にしているうちにあちらのことが進んだらしい。

 メア姉が電話を替わる相手は……考えるまでもなく、あの人だろう。

 

「……父さん?」

『──! ──!?』

 

 スピーカーモードにはしていない。それでも電話の先からメアの父親が騒いでるのがわかる。

 きっとまたメアが傷ついてしまうようなことを口にしているのかもしれない。大丈夫かなとメアの顔色を窺おうとして、やめる。

 

 携帯を持っていない手をぎゅっと握りしめながら、メアの瞼は優しく閉じられていた。

 そして彼は口を開ける、怒号に負けない、芯が通った声を出した。

 

「うるさいっ! 何をどう言われようと僕はサッカーをリーダーたちとする!」

 

『ッ……』

 

「それと、そんなにリーダー達のことが怖いなら……もっと見に来なよ! 練習でも、試合でも、それでもだめだっていうなら、もっともっと見てよ!」

 

 叫んでいる、全部満タンのメアの言葉が詰まっている。

 ぶつかり合うために、いつかかみ合う瞬間のために、隠そうとした、放そうとした自分の欲望をぶつける。分かってくれ、なんて優しい言葉じゃない。

 

 つまるところ「譲るなんてことはないし、諦めもしない」、永遠に殴り続けるといっているようなものだ。

 宣戦布告……メアの、凛々しい顔の中に隠した夢へのあこがれのように強い宣言だった。

 

 

『……』

 

「……あっ切れちゃった、全く……また後でかけよっと」

 

 ワタリに携帯を返し、吹っ切れたメアは力の抜けた困り顔を見せた。

 

 ……これでようやく、全員が合宿に参加できたような気がする。約二名、別の場所で特訓しているけど……きっと強くなれる。

 ゼウスが相手でも、希望の光が強くなったような気がした。

 

「ワタリ、お父さんを言い負かすときってどんな風にしたらいいと思う?」

 

「そうですね、やはり弱みに付け込むか、反論の気力をなくすほどに話しかけてはいかがですか? 一日一

回以上……さっきのような強さがあれば」

 

 ……メアのお父さんのこれからは心配だが、まぁうん……聞こえないふりをした。

 

 助けて、と言ってきたら……どうしようかなぁ。






どんなどろどろの話でも力が解決する、それが真理です。


~オリキャラ一覧~

・メア (勅使河原 明) 11番 FW
 悪いことを覚えた天使。大体のことは粘ればいける。最後までしゃべっていたほうの勝ちらしい。
 ちなみにザ・ユートピアをボールなしでも出せるのはリーダーのおかげだと思っているが99割己である。

・メア父
 心配することは間違っていないがとにかく強情かつ言動がうかつ。
 この後から毎日メアコールによってうなされることが確定している。


~オリ技一覧~

・ザ・ユートピア シュート技(ロング)
 光と闇が広がる一球はすべてを包み込み押しつぶす。
ボールがなければそこまで被害はない。
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