かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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久しぶりの更新にも関わらず、たくさんの暖かきご感想ありがとうございます。



鏡を見る日

出来上がったカレーはみんなで仲良く食べた。とても平和な食事の時間だったのはカレーのシンプルな美味しさのおかげだろうか。

やたら小さい野菜の切り方やで盛り上がってとても楽しかった。明日から何回もこれを迎えられると思うと次が待ち遠しい。

 

困ったことはせいぜいエマがわんこそばのノリで一品料理を出して来たぐらいだろう。

フェルタンは大喜びだった。

 

胃袋の底からカレーと、大量の肉料理の香りが混ざっている。

出されたものは残さず食べるのは礼儀だが、久しぶりに食べるのに苦労したなと膨れた腹を手で叩いた。

 

─地獄の魔獣一頭分近く腹に収める光景が普通か……?

─まんぞくまんぷく

 

ずっと頭の中で料理名を呟いていたフェルタンもこの通りの大満足。

おかげで聴覚と腕も何とか戻った。腕を覆っていた黒い闇は格好いいのでそのままにしている。

 

復活、完全復活!と叫びたいほどに体が軽い。

やはり飯は力なのだと思いながら、俺はシャワーを浴びていた。

 

「ふぅ……」

「ねぇねぇリーダー! 新しい技名なんだけどモンスター・インパクト……とかどう!? 」

 

「湯舟があればなぁ……」

「アルゴさん、泡で遊んでないでちゃんと洗い流して下さいね?」

 

「技……どうやって隙を無くすか」

「……?」

 

習合の部室塔にはシャワールームがある。

流石に全員入るのは無理だったので前半後半(マネージャー陣は別枠)に分けられ、俺はメア、アルゴ、ワタリ、二号、カガ、という奇跡的にほとんどが大人しいメンツに配属された。

逆に後半メンバーはジミー、一号、バング、トール、ウリボウ、グラさん、ソニック……一号とバングは犠牲になるだろうなぁって感じだ。頑張れ。

 

「あぁでもモンスターって括りも安直か。逆にここは一切あの怪物には触れない感じで……」

「そうだな」

 

メアのハイテンションは恐らく一日中続くだろう。

大分応対が雑になってしまっていて申し訳ないが、何も決まってない技について名付けるのは無理だ。

 

「……必殺技」

 

名前を付ける前にまず必殺技の内容が決まらないと話にならない。

その為に現状の仮想敵とも言えるシュート技を並べる。

 

雷門のブラック、染岡、豪炎寺の三人技である『爆哮 双龙(バオウ シャウロン)』、

マグマの竜二匹が襲ってくる合体技で、竜は時間があればフェルタンが捕食してくれる。ただし灼熱のマグマに近い熱量は止めるときの痛みは尋常ではない。

 

ゼウスの『真 ゴッドノウズ』、

メアとの合体技で蹴り返せるがメアを一々後ろに下げなくてはいけない。

タイマンはまず無理だろう。

 

そしてメアの『真 エンゼル・ブラスター』、

コルシアたちひいては俺の背中から生やせる骨の翼に対し大ダメージを与えてくる恐怖の存在。怖い。

しかもメアのやる気で威力が跳ね上がっていくからもう一段階ぐらい強化されてもおかしくない。助けて

 

「大きい顔……顎(アギト)! アギトって良くない!?」

「そうか?」

 

……なんで味方の大技が一番の天敵なんだろうね本当。

 

ともかく、俺の現状の最大技は『ダークネスハンド V2』。

使うと痛覚リンクで激痛が走る代わりに骨折は防げるありがたい技だったが、相手の攻撃が強くなりすぎて耐えられなくなった。

骨の手の数を増やすほど痛みも倍増どころではないのでこの技の強化はもう無理だ。

いつか痛覚を一切持たない存在が使いこなすかもしれないと思いつつ諦める。

 

「その反応だと微妙……? うーん……わぷっ」

「体が冷えるぞ。それと、メアの方はどうなんだ」

 

ずっとネーミングのことばかり考えているメアに対してシャワーをかけて話を逸らした。

 

「僕? 今のところはね、今までのエンゼルブラスターの概念を超えるってことで、超 エンゼル・ブラスターって名付けられるものにしようとしてて……」

 

─喰らった瞬間こっちが死線を超えそうだ

─絶対打たせるなよ長久

 

悪魔たちからブーイングが飛ぶが、聞こえてないメアには意味がないものだ。

俺も受けたくないがどうあがいてもメアの一撃はやがてこっちに来るのだろう。

今はあえて何も言わないでおく。助けて……。

 

─一秒で矛盾するな

 

どの道、俺は新技は作る必要がある。

今までの技の弱点、俺が受けるダメージについてを解決できるような何かを。

なるべく敵のシュートが接近する前に対応できるものを。

 

「でも今までみたいに出力上げるだけじゃ劇的な進化にならないと思うんだよね。いいアイデアないかな?」

 

その点で言えば今日、一号二号の未完成だった合体技に使ったあの拍手はどうだろうか?

あれは両手でダークネスハンド+トロアのパワーブーストで起きたが……とんでもない爆発だった。

 

─凄かったじゃろ? 妾の力に感謝せよ

 

目薬すんぞレモン風味の。

結果として腕はボロボロ、耳がしばらく聞こえなくなったが改良を加えれば……だが、拍手した時の衝撃波は周辺に広がる。

つまり相手のシュート単体へという訳にはいかない。範囲攻撃と言えば聞こえはいいが。力の無駄遣いと言って過言ではない。

 

「集束……」

 

拍手は手で空気を一気に圧縮することで起きる。

圧縮された空気が手の隙間から漏れ出るから音が鳴るし、手が大きくなればその分漏れ出る空気の勢いも強くなる。

 

「集束かぁ。今までのエンゼルブラスターは光の力が抜けちゃうのお構いなしでって感じだったけど、今ならもうちょっと凝ったやり方が……?

リーダーが言うなら挑戦しよっと……放つ瞬間じゃなくてぶつかる瞬間を最大火力にするために……」

 

─おい、なんかヤバそうなの出来上がりそうだぞ長久?

 

なら漏れ出る空気の方向を定めておけばいい。

リアルタイムでそんなものを計算できる頭はないが、事前にこの方向に飛ばす時はとパターンを決めておいて……。

あぁでも作るにしても結局骨の手のままじゃダメだな。皮を被せないと空気がそのまま漏れて圧縮があまり出来ない。

それに前回より多くの空気を圧縮するから強度も上げる必要が……

 

「──キャプテンっ!」

「っ……どうしたワタリ」

 

考え事をしすぎていたせいか、浴びているシャワーの水圧が強すぎたせいか、背後から声をかけてきたワタリに驚いて振り返った。

あれ、メアはどこに行った? 先程まで隣に居たはずなのにどこにもいない。

 

─お前が呟いたアドバイスを繰り返しながら出て行ったぞ。もう知らんからな我は

 

えっ? 何か俺呟いたか。

そう聞こうと思ったが今は目の前のワタリの方を優先すべきだ。改めてワタリに向き合う。

 

「二号さんから相談があると」

「うん……」

 

シャワーで濡れた前髪を横に払いながらワタリは後ろにいた二号へ視線を向けさせた。

今日、兄である一号と新しい必殺技を完成させると叫んで見せた二号はその意志の強さを目に宿したまま俺をじっと見ている。

 

何を相談されるのか、大体わかった俺はいつもよりも真剣な表情で頷き口を開いた。

 

「その前に、シャワー室から出よう」

 

そろそろ出ないと後半組から文句が出るからね。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「それで相談は……必殺技か?」

「うん、イメージをつかむためにも織部の意見を聞きたい」

 

メアが「エンゼル・レーザー……いやもっと鋭く……ドリル、槍?」なんて呟きながら出て行ったのを見ながら、僕はいいなと思った。

河川敷で兄さんと新必殺技を作ると誓った、織部には首を洗って待っていろと言った。

 

一日も経たずにそこから織部に聞くのは格好悪いことだと思ったけど、気にする意味なんてないとも思った。

 

強くなれるなら、その機会があるなら全力で掴みに行くべきだ。

兄さんは少し不機嫌になるかもしれないけど聞くべきだと思ったから僕は織部に尋ねていた。

 

「兄さんの光陰如箭(こういんじょぜん)の速さは今だって一線を画してる。でも溜める時間がいる。

今日のように速さの底上げなら僕が跳ね返したものを更に光陰如箭で放てばいけるけど……」

「二回の溜めは致命的弱点。相手はその隙は逃がさない」

 

タオルで髪を拭きながら織部が答えた。その通りでしかない。

雷門に入った中国人の黒月……織部はブラックってあだ名をつけていたアイツには通用しなかった。

ゼウスを相手にするなら当然同じように突かれるだろう。

 

「でも、兄さんの光陰如箭のやり方を変えるのは……多分間に合わない」

「同感だ」

 

弱点とは言ったが兄さんが一年以上使いこなしてきた必殺技は洗練されている。

下手に新しい方式の技を作った所で光陰如箭より楽に打てるとは微塵も思わない。

だから考えたい、どうしたらいいのかと。

 

「無様だとは自分でも思ってる。

でも……織部ならどう考えるかを、聞きたい」

 

無茶ぶりだとは思っているが、切り口が欲しかった。

最悪、まったく当てにならないとんでもない意見でもそれを反面教師に考えることが出来る。

 

でももしかしたら、そう織部を見つめると

織部はしばらく考え込む素振りを見せ……何故か近くにいたカガに視線を向けた。

カガは既に着替え終わっていて僕の相談がどうなるか気になっていたようだった。

 

「……カガ、髪がずぶ濡れだ。乾かすぞ」

「……?」

 

何だ急に、と思ったが確かにカガの前髪からは水滴がまだ見えた。恐らくかなり雑に髪を拭いて終わらせたのだろう。

困惑するカガの肩をつかみ鏡の前に座らせ、ドライヤーとタオルを持ち出して頭を拭き始めた。

とても微笑ましい光景に思わず苦笑して

 

いや、僕の相談は? と顔を顰めた。

 

「……そんな顔をするな」

 

僕の顔に鏡越しで気が付いたらしい織部はただ申し訳なさそうに言った。

 

「俺には、これぐらいしかできない」

「これってな、何のこと……?」

 

まさか、何も浮かばないから誤魔化す為にカガの髪を……?

いや流石にそんなことをする人間ではないと思っている。じゃあなんだこれはと思考を回して改めて考える。

 

織部は顔を向けることはないが、鏡越しに僕の顔をチラチラと見ながら何か言いたげにしている。

カガはドライヤーの温風とタオルによる拭き上げに困惑していたが、今ではそれを気持ちよさそうに受け入れているのが鏡越しに見える。

 

「…………」

 

織部が僕を向かずに急に鏡の前に立ったから僕は鏡を見ている。

鏡の中には怪訝な顔をしている僕も映って……と目を凝らした瞬間に、僕は息を止めた。

 

──蛇がいた。

 

織部に取り憑いているらしい蛇が、鏡の中の織部から生えて僕を見た気がした。

 

「っ!」

「フェルタン、あまりそういうのは……」

 

そう織部が窘めると蛇はつまらなそうに消える。

 

もう見飽きたと思っていた悪魔の存在だったが、こうしていきなり現れたら驚く。

しかも現実の織部の方からは特に何も出ていなくて鏡中だけの異常事態なのだから余計ホラーチックだ。

 

八咫鏡、なんて鏡に関する必殺技を使う自分だからこそ現実と鏡の光景がおかしいというのは余計に過敏になってしまう。

 

「……ん?」

 

そこまで考えて、自分の中の固定観念に引っかかった。

鏡は目の前の事象を映す物体だ。八咫鏡は太陽神を映し、その神そのものの様に祀られたものだ。

ある種、鏡とは現実そのものを映すもう一つの世界への入り口だ。

 

今こうして、僕は視界に見える織部達の背中ではなく顔を見ている。

蛇の悪魔が鏡の中にだけ現れた存在を知覚出来る。

 

現実の視界と違うことが鏡の中では起きうるというのは、当たり前なんじゃないか?

 

「あっ……」

 

そこまで考えて、たどり着けて僕はもう一回織部の顔を鏡越しに見た。

申し訳なさそうに見えた顔は今度はどこか気恥ずかしそうに見えて、僕は確信する。

 

「……言葉じゃなくて、行動で僕が気が付くようにしたのか」

 

無様だけど、と自分で前置きしておきながらようやく気が付いた。

この習合の部長は、高天原中の僕たちを気遣って敢えてそうしたのかと。

仮に織部が口で説明して僕がなるほどと思っても意味が無いだろうと……なんともお節介な人だ。

 

「……」

「…………?」

 

その答え合わせを織部は無言で返した。カガは未だによくわからないといった表情で疑問符を浮かべている。

 

それでよかった。僕は、鏡越しの織部の顔に向かって頭を下げる。

 

「ありがとう、織部部長」

 

このアドバイスは無かったことにする気なんだ。僕はそれに感謝して脱衣所を後にする。

兄さんが帰ってくる少しの間でも、気づきを形にするために使うべきだと僕はグラウンドに向かった。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

……アドバイスが思いつかなくて気を紛らわせるためにカガの頭を拭いていたら勝手に解決した件について

 

─お前詐欺師の才能あると思うぞ

 

コルシア、ハウス。




メアと二号の奥義閃き回
そして部長の必殺技の方向性について


~オリキャラ紹介~
・織部 長久 GK 1番
 自分の必殺技を考えているはずがメアに自分を地獄に落とす欠如を与えたと気がついていない愚者。
もうすぐ一日が終わる就寝時間なので油断しているのかもしれない。
両腕は回復したがこの合宿中に無事なままのはずがない。

・メア(勅使河原 明) FW 11番
 頼れるリーダーから必殺技の方向性をもらったのでウキウキ。
今でもマジン・ザ・ハンド(未完成)を打ち破る真 エンゼル・ブラスターを強化しつつ更に貫通力を上げる模様。
恐らく部長は死ぬ

・サッカーマスク二号 (真経津 鏡介) GK 13番
 合体必殺技に悩んでおり織部に相談するほどの手段の選ばなさが取れる貪欲さ
そして勝手に気が付いて成長できる程になった傑物。これにはシャワー室でトール達の暴走に疲弊しているお兄さんもニッコリ
 鏡の歪みは許さない派閥だったがフェルタンのいたずらで少し考えを変えたようで……?
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