かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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蛇にらみを感じる日

 一号が鏡の世界から帰還した後の話。

あれから何度か一号自身が鏡の中へ入れるように特訓し、

コツがつかめたあたりで部長権限を使って今日はここまでとした。

流石にそろそろ寝ないと明日からの特訓に響くと説得すれば結構素直に応じてくれたのでありがたい。

 

さぁ、とっとと寝て朝を迎えようと寝室に戻る。

 

「それで結局必殺技は出来たんスか? 一号さん」

「いや……鏡の中だと動きが思うように取れなくてな。まず中で技を使えるのを目標にしている」

 

……が、駄目だったようだ。

 

既に部屋の明かりは消え皆寝静まる時間……のはずだったが、時刻はまだ夜の10時。

一応の特訓こそあったが、公園で遊んだりカレーを食べたりシャワーで暴れたり枕投げで暴れたりした習合メンバーは全員元気がまだ漲っていたらしい。

 

「カガさんは鏡の中で自由に泳げたんですね……」

「……! ……?」

「逆に普段より泳ぎやすい……? うぅん、地中を泳ぐ必殺技と相性がいいのかな」

「明日はその中に全員入ってみようぜっ!」

 

そんなところに必殺技特訓をした一号達を連れてきたものだから、消灯時間になっているにもかかわらずバングたちは盛り上がっていた。

ワタリは一号が動きにくいと評した世界について疑問を持ち、二号も腕を組んで唸っている。

それをジミーはあまり気にせず楽しそうな提案をしていた。

 

「……誰も寝ていないのか」

「まぁまぁボス、流石に合宿初日だし勘弁してくれって」

 

ふと言葉を零すと、グラさんがなだめる様にこっちに笑いかけてきた。

その笑顔を見て思わず、消灯時でもサングラスしてるのかと言いかけたがぐっと飲み込む。見えるのかそれ……?

 

部屋の豆電球が出す赤みを帯びた薄暗い明りの中、掛け時計の針を見ながら考える。

 

「……30分だ。それ以降は寝るんだ」

「わかったーっ!」

 

返事はウリ坊の突進と共に腹に突き刺さった。

痛みと衝撃で変な声が出そうになるのをぐっと……グググッと飲み込んだ。

うぅ。

 

─吐きそうになってないか?

 

お黙りコルシア。

ウリ坊の突進ほど着実にダメージを与えてくる存在はないんだ。

 

「ぅぃっ……い、いい突進だ……」

「もっちろん、世宇子相手でもぶっ飛ばすつもりだからね!」

 

なら俺じゃなくてアフロディとかに突進してくれ。俺は味方だ。

なんて文句は言う訳がない。

 

腹に突き刺さった笑顔のウリ坊を引き抜くように両手で抱え、そっと布団に差し込む。

そして枕が見当たらないことに気が付いて探せば、部屋の隅に落ちていたので拾って戻した。

……どうやら枕投げはかなり白熱したらしい。寝具の破損も後で確認しないとな等と思いながらもう一度部屋を見回す。

 

「……今この部屋にいないのは、メア……あとアルゴか?」

「メアならシャワー前に見たっきりだな。アルゴは……どこいったんだアイツ」

「確かメアさんを探しに行くって言ってましたけど……知りませんかキャプテン?」

「いや……」

 

トールとワタリがそれぞれ答えてくれた。

どうやら俺がカガを連れだした後もメアは戻ってきていないらしいし、アルゴはそれを理由に枕投げから離脱したようだ。

とすればメアの居場所は自ずと割り出せる。

 

「だが、当てがある。探してくる」

「分かりました。お願いします」

 

流石に消灯時間が過ぎて皆が寝る時間になっているというのに特訓を続けさせるのはいかん。

とっとと連れ戻すか、そう思った俺は必殺技の進捗を聞かれ困っている一号・二号を尻目に部屋を出た。

そして少しだけ首をひねってもうひと踏ん張りするかと気合を入れて、顔を上げた。

 

「……上だな」

 

さっきまで地下のスタジアムで必殺技の練習をしていた俺達が見ていないのだ。

メアが部室棟から出ていないという前提を元に考えれば答えは一つしかない。

 

部室棟天井階、三階の重力装置付きの屋内練習場だ。

 

─いきたくない~

─もう無視して早う寝ないかぇ?

 

フェルタンとトロアからブーイングが上がる。

上に意識向けるだけで光の力感じて肌ひりひりするせいだろうか。

 

……バリバリ特訓してるんだろうなぁ。

 

……行きたくないなぁ。

 

内心嫌な予感を抱えつつ、行くしかないと肩を落とした。

 

 

 

 

 

 

 『集束』だとリーダーは言った。

僕の必殺技を更に高みへ持っていくためのアイデアとして出されたその意味をずっと考えていた。

言葉の意味を考えれば、とにかく集めて束ねればいい。

 

「んーでも、よくよく考えたら現状もう束ねてないかなぁ」

 

言われてた時はよくわかってなかったけど、改めてボールと共に考えると急に違和感が出てくる。

 

「──光よ」

 

もう一回自分の技の流れを考える。

体からボールへ、光を込めていく。初めてやった頃とは比べ物にならないほどに強烈に。

 

「この状態で普通に蹴ると……エンゼル・ブライト」

 

込めすぎた光はボールに留まれず、熱量としてボールから放出されていく。

周囲の温度が上昇していくのを肌からにじみでる汗で感じる。

こうして詰めたそばから光が漏れてしまうのでシュートとしては欠陥品だ。

 

この未完成だった技は結局、リーダーに素手で防がれた当時の二号の八咫鏡になす術がなかった。

だからもっとリーダーの隣にいたいと思って技を進化させた。

 

「我が身から」

 

祈りを唱え背中に天使の翼を作り出す。光が込められたボールと共に宙へ飛び、無人のゴールを見下ろす。

四対の、光の力を増すごとに増えていった翼が空への旅を叶えてくれている。

 

「救いを求める人々へ」

 

片足を高く伸ばし、頭の上まで足を届かせて、

今までよりも上げた足に今までで一番、光を込める。

 

このまま足を下ろしてボールにかかと落としをすればエンゼル・ブラスターだ。

じゃあここから集束するにはどうしたらいいか、何が必要だろうか、考える。

集束しようにもそもそもが一発の光弾だ。これをより細くすればいいのか? でもやり方がわからない。

 

僕はリーダーの隣に居たい。彼を理解したいし彼の助けになりたい。

世宇子相手には今のエンゼル・ブラスターじゃ足りない。

そしてエンゼル・ブラスターを更に進化、込める光を強くするだけじゃ多分この先の戦いじゃ多分駄目だ。

 

だから、この合宿中に編み出さないといけない。僕の新しい必殺技を。

 

「蹴り方を変えてみる……とか?」

 

今まではかかと落とし、つまり片足で放っていた。

じゃあ次は両足でしてみるのはどうだろう。足を一回下ろして、光を今度は両足から強く放つ。

イメージはドロップキック。翼を動かし、勢いをつけ光るボールを両足で蹴り飛ばした。

 

ドン、と空気が割れる音がしてボールはゴールネットに突き刺さり辺りには砂埃が舞った。

 

「おお……うーん、いやこれは」

 

名付ける程でもない変化。

ボールは普段よりは周りを吹き飛ばしたが……逆に貫通力が無くなったように見える。

しかもボール自体の速度も落ちていたように思える。両足で蹴ったことでブレが生じたのだろうか。

これでは意味がない。そう僕は地上に降りて頭を抱えた。

 

……いっそリーダーにもうちょっとヒントをもらいに行こうか。

このままじゃ埒が明かないしその方がいいかもしれない……。

 

「楽しそうだねぇ~♪」

「ん、あれっ。アルゴくん?」

 

なんて考えていると、甘酒の入った瓢箪を片手にやや赤ら顔のアルゴ君がやってきた。

寝巻なところを見るに、特訓しに来たわけじゃなさそうだけど一体どうしたのだろうか。

 

「いやぁ、部屋で枕投げ始まったからさぁ。のんびり飲めそうな場所探しついでに部長たち探そうかなって~」

「あぁそうなんだ……ってリーダーは部屋にいなかったの?」

「うん、一回出て行ったあと戻ってきたと思ったらカガ連れてっちゃってさ~。

こっそり尾行してみたけど、地下で一号達の必殺技特訓を見てたよ♪」

「えー……いいなぁ」

 

思いもよらずリーダーの動きが知れた。

今日の河川敷の件で、必殺技のアイデアが浮かんできたからリーダーに見てもらっていたのだろう。

リーダーが見ているのだ。もしかしたらもう完成しているかもしれない。

 

それならこっちにも来てくれないかな。

なんて甘い考えが浮かんで来て、いや流石にもう少し一人で考えないとと頭を振る。

 

「それで、どうだった? 凄い技とか完成してた?」

「凄いかどうかはわかんないけど完成しそう、ってぐらい? つまらなかったからこっち来ちゃった」

「つまらないってアルゴ、君は……」

「だってさぁ、一日でもう切っ掛け掴んで方向性みえて~ってとんとん拍子過ぎるからさぁ~」

 

あんまりな物言いに少し苦言をしようとすると、アルゴは開き直って瓢箪に口を付けた。それを見て、アルゴの悪いところが出たな、と僕は思った。

人間観察が趣味らしい彼、ちょっと苦しんでいたり悩んでいたりするのがツマミになるらしい。

偶に特訓中のみんなを見てニコニコしているが、誰も別に気にしていない。なんだかんだ喜ぶ時は一緒に喜べる人間だって知っているからだ。

 

「まぁ、それで僕のところに来たのなら……ご期待には添えそうかな?」

 

だから僕は、挑発気味に尋ねた。ツマミにするのもいいけど、僕もすぐに解決するよと。

そう言うとアルゴは口角を少し上げて笑う。

 

「うん♪ 大期待だよ~? だって今──

 

最後は部長に頼ればいいって思ってたでしょ?」

 

挑発のつもりで開いた口に銃口をねじ込まれたようだった。

急に僕の視線を縛り上げて独り占めしたアルゴの問いは僕を固まらせるのに十分過ぎた。




メアの必殺技お悩みと、アルゴの……?
次回、「光の槍で織部死す」

~オリ技一覧~
・真 エンゼル・ブラスター シュート技
敵に出す前にもうお蔵入りされそうなかわいそうな技。
3対の翼とメアから放たれる光を撃ち込まれた光弾は全てを吹き飛ばす。

~オリキャラ紹介~
・サッカーマスク一号 (真経津 光矢) FW 12番
 鏡の中の世界で何度かおぼれた男。
どうやら水泳の技術はそこまでないらしいが、短時間で鏡の世界に入るコツをつかめているのでやはり超次元な兄。
弟が作った世界を自由に泳ぐカガに若干ジェラシーを燃やす。

・サッカーマスク二号 (真経津 鏡介) GW 13番
 鏡の中の世界で何度か兄をおぼれた男。
自分が作った鏡の中の世界で何故かサメは泳ぐし兄は溺れるしで悩んでいる。
自分は別に溺れたり空気が持たなくなったりしないのになぜ……?と。

・メア(勅使河原 明) FW 11番
 リーダーからのアイデアを何とか形にしようとしていたら急にアルゴから攻撃を食らった。
末っ子属性がなかなか抜けない。さらっと4対の翼を安定させているので真 エンゼル・ブラスターを超えたエンゼル・ブラスターならもう打てそうではある。

・アルゴ MF 6番
 ずっとうろついていた酔いどれ。合宿中もずっとみんなを見ていた。
人間観察が趣味で他人が悔しがったり苦痛に歪んでいる顔を見ると楽になる性分の持ち主のはず。
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