かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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君が一人で泣かないでいるところ。
ずっとずっと、見ていたよ。
強がっていた君が、その強がりを自然にこなせるようになったことも見ていたよ。
本当に強くなったんだろうね。きっといい事だ。

でも、そろそろいいんじゃない?


憧れを超えたい日

「うまくいかなかったら、とりあえず部長に聞けばいいやって思ってる?」

 

「……えっ、いや」

 

数秒して何か否定しなきゃと思って喋ろうとしても何も頭の中でまとまらなかった。

ただそんな僕を見てアルゴは笑っている。普段通り、けれどどこか雰囲気を放つ彼は笑っている。はずだ。

 

「違うの~? てっきりウリ坊や二号とかみたいに助けて欲しいんだと思っちゃった」

 

逃げようとした僕の首ねっこをつかまれる。僕が獲物だと言わんばかりに彼は距離を詰めてくる。

 

確かに羨ましいと思ったし口にもした。確かにヒントを聞きに行こうとも思った。

でも、駄目だって。ちゃんと頭の中で拒否したんだ、そう声にしようとして、出ない。

 

「えっと……ええと」

 

嘘になる気がする。

だって、今日はやめようと思ったということは……明日なら?

日を跨いだら聞いてもいいだろうと思っていた自分がいるから。

 

ダメな時は仲間に頼るのもいいじゃないか。

そう耳障りがいい言葉を吐こうとした自分いる事に気が付いて、口をふさぐ。

 

「んん~別に悪いって訳じゃないんだけどね~」

 

あれ、口にしてしまったか?

アルゴの突き刺さる声が僕の視界に映る景色を彼だけにしていく、他の物は霞んでいく。

 

「誰かを頼るって、難しくて簡単なんだよね」

 

どういう意味だろう。考えようとして、思考にモヤがかかる。

気がつけば周囲には薄桃色の霧が出始めていた。甘い匂いがする。

なんだか思考が、ただでさえまとまらない思考が駄目になっていく気がする。

 

「メアはさ、部長の隣にいたい~って、負担もかけたくないって思ってるじゃん?」

 

リーダー以外に話したっけそれ、という呟きを受けてアルゴはただケラケラと小さく笑う。

でも僕はそうなんだ。何度も何度もリーダーに助けられて救われて、家出騒動だって迷惑をかけた。

これ以上迷惑をかけるのはよくないことだって何度も思ってる。

 

「うん」

 

「でも、これじゃさ~……部長は結局助けらんないと思うなぁ~」

 

釘を刺される。

 

アルゴは甘い霧の中、ぼーっとし始めた僕を前にして、"いつも通り"だった。

どんな空気にも乱されず、一人何かを見ている。霧の中にたたずむ彼は多分、ずっと何かを考えている。

僕は彼の行動をあまり深く考えていなかったらから、今までそれに気が付いていないだけだったのかもしれない。

 

「うちのメンバーって多かれ少なかれ、部長を頼ってるし、部長が言うことは正しいって思っちゃう子もいるけどさ~」

 

両手を広げ霧を散らすように体をゆっくりと左右に回す。もっていた甘酒の徳利が水音を鳴らす。

霧の支配者だと言わんばかりに、そんな彼から霧がにじみ出ているように見えた。

 

「メアは、部長のアドバイスと特訓を受けたらさ~問題なく強くなる」

 

僕はただ霧の中に沈んでいた。もらったアドバイスに満足できず、昇華できず、再度貰おうとしていたから。

そう思って不意にうつむいた僕の視界に

 

「でもメア、部長のアドバイスで強くなってもさ……それは部長の強さだよ。

部長は強いけど、負けるときは負けるんだ。部長が一人だとダメだったアフロディに通用したのは、君が咄嗟に動いて完成させた楽園(ザ・ユートピア)だった」

 

「……っ」

 

彼はずいっと覗き込んできて教えてくれた。

彼の言葉は突き刺さり、僕の弱さに溶かしていく。

溶かして溶かして、ドロッとした何かに変質させていく。

それを感じながら僕はただ、僕を見るアルゴ君を見ていた。

 

「でも敵も更に強くなるんだ。部長の、オリベくんの隣で立ちたいって思うなら、楽園のままじゃダメだよ」

 

ふとどうしてか、アルゴ君を見ているうちに彼の瞳の奥に、蛇がいるような気がした。

普段リーダーに憑りついてる黒い蛇じゃない、白蛇が見えた。

 

「…………ん-でも、やっぱり閃きって頑張ってどうにかなる物じゃないしぃ……聞きに行っちゃう?」

 

パッと、アルゴ君の雰囲気が変わった。なんというか、霧のモヤモヤと一緒になったいうか、ごまかされているような。

甘い雰囲気になった彼は、先ほどまでの言葉を曲げて、僕に提案する。

 

けれど、彼の意地悪でわざとらしい問いかけを理解できないほど、僕は愚鈍じゃないつもりだった。

 

「……いいや。大丈夫、甘えてた」

 

つい先日、自分に喝を入れたばかりだというのにもう腑抜けかけていた。思考に甘えが出始めていた。

危ない所だったと自分の両頬を叩く。

 

「甘えが悪いって訳でもないけどね~頑張りすぎも毒だしぃ?」

「……うん。でも今のままだと多分、足りなかった。ありがとうアルゴ」

 

頭を下げた。

アルゴは心配して僕に発破をかけに来てくれたのだろう。

 

もっと言えば、リーダーのためのほうが大きいかもしれない。

僕だってそのつもりだったけど、前提が間違っていると気が付いた。

彼を頼って必殺技を完成させても、それは彼が考えてくれた僕の理想だし、彼の考えてくれた範囲までしか助けになれないだろう。

 

つまり、リーダーの理想が叶わない相手が出てきた時に、助けることができない。

 

『家族とは……スレ違い、勘違い、人生を共にする者。そう、思っている』

 

そう言ったのを聞いたばかりじゃないか。リーダーが自分の両親に対しての愚痴を吐露した時を思い出す。

すれ違うからこそ、お互いの考えがぶつかるからこそ、とんでもない輝きになるのだ。

さっきまでは彼の言葉に固執しすぎている自分がいた。

 

彼の言葉の意味を考えるがあまり、自分の考えを出せずにまた頼ろうとしていた。

 

これじゃかみ合わないし光が強くならないのは当たり前だ。

僕は、リーダーの言葉を尊重するがそれはそれとして自分の考えが第一だ。

 

相談するにしたって、僕の100%を出し切ってからだ。

 

「それで、どうする感じ~?」

「……とりあえず、難しいことは考えないようにしようかなって」

 

思えば簡単な話だった。

ザ・ユートピアの時は、リーダーがいてくれたから自然と力が湧きだしたし、そこに闇の力が合わせてくれた。

天照、一号との合体技の時はエンゼル・ブラスターを一号に向かって放つだけで良かった。

エンゼル・ブライトの時は力が漏れ出るから更に注入するなんて力業の解決をしていた。

 

多分、僕には凝った技は向いていない。

もっと早く気が付くべきだった。なら今まで通り、力業の全力を出してから考える。

 

「ねっアルゴ、ちょっと見てて!」

「えー、う~ん……まぁいいよ~♪」

 

今なら何か掴める。そう思ってアルゴに聞いてみると、今までとは違った笑顔で彼は笑っていた。

 

これは僕が何か勘違いしてあらぬ方向に突っ込もうとしてる予兆なのか、それとも単純に喜んでくれているのか。

よくわからないけど、もう一度。ボールを用意し深呼吸。

僕は今フィールドの真ん中、視界は相変わらず霧が立ち込めていて見え辛いけどゴールの場所はわかっている。

 

「──光よ」

 

唱える、何度も何度も叫んだ言葉を。

光の翼を5対、はばたかせる。集束するための力の制御とか考えず、とにかく気持ちのいい空へ飛んでいく。

天井付近まで飛んだと気が付いたのでまた全力で光を発する。

 

「──我が身から」

 

霧が立ち込める先に、ゴールキーパーが立ちふさがっていると考える。僕の考える一番の強敵。

もちろん、悪魔と契約した僕が知る限りで最も人間らしい彼だ。不思議とリーダーのことを思うと光が一層強くなる気がする。

今までのエンゼルブラスターより、天照より、ザ・ユートピアよりも。ボールに光を詰め込んでいく。

 

入り切らずに漏れた光が、消えずにボールを覆っていく。

光の巨大な弾となっていく。

 

「全開っ!!」

 

光弾を蹴る。もちろん光も今まで入れた分程新たに入れ込んだ。

ふざけたやり方、とにかく光を出してから考える頭の悪いやり方。

巨大な光弾が、一撃によって楕円に歪む。蹴った方向へ伸びていく。

 

でも、まだ足りない。

 

「ぐぐっ……!」

 

そこで僕は、思いっきり胸を張って腕を上げた。翼もそれに応じて後ろへ向く。

勢いが足りないと思ったから、何も考えずに自然としていた。

 

羽の一本一本がピンと張っているのを感じながら、今度は一気に背中を前に曲げて腕を下す。

翼も応じて前へ勢いよく向いて……根本から抜けて飛んでいった。

 

「おおっ?」

 

アルゴの驚いた声が聞こえる。

 

5対、計10本の翼は僕の背中から離れると同時に光弾に絡みつくように10本の翼が混ざり合っていった。

やがて翼は線となる。光弾は十の線による螺旋を描き……もっともっと、鋭く変形していく。

 

そうして光はいつの間にか槍の形状を取って、僕の足から離れていた。

 

「……ブリューナク」

 

きりもみ回転をしながら飛んでいく光の槍。

その光景を、僕は地上へ落ちながらそれを天使の槍と名付けた。

 

正直螺旋を描くとか、槍の形状になるとか全く考えていないのに勝手になっていた。

ただボールを蹴った後に、残っている翼とかも全部使えばいいじゃんと、凄い雑な事でなんとかなってしまった。

 

「これは成功……かなぁ?」

 

これは……ある意味光がボールに絡みついて集束していると言えなくもないような……。

結局リーダーのヒントに沿った結果になってしまった気もしていいのだろうか? と一瞬疑問に思ったが、まぁそれは本人に見せて想像通りだったか聞くとしよう。

 

今はただ、あの光の槍がどうなるかを見届けようと思って目で追っていた。

 

気が付いた。

 

「……霧の向こうに誰か、いる?」

 

その呟きを零した視界の端で、アルゴが愉快そうに甘酒を飲んでいた。

 

 

 

 

 

 

部員を迎えに来たら謎の霧が発生していたので手探りでフラフラしていたらメアの必殺技っぽいのが飛んできた件について。

ps.避けたいけどなんか俺に向かって追尾してる気がする。少し動いただけで矛先が俺の方へズレたし。

 

─遺言にしては長いな

 

お黙りコルシア!!!

いやもう何なのこの霧!? さっきまで感じてたメアの光の気配レーダー動かなくなるし周りの声全然聞こえないし!!

この練習場不可思議ミスト出す装置なんてなかったよねぇ!?

 

─いやぁ……人生短かったのぅ織部

 

トロアも諦めムード止めろ! もう最悪お前の力で両腕つぶしてでも生き残ってやるからな!?

 

─がんば~

 

フェルタンの欠片も情のない優しさが一番つらい。

 

 

 

助けてぇ!!




アルゴ君による精神的諭し


~オリ技一覧~
・エンゼル・ブリューナク シュート技
 小難しい事は考えずとにかく全力の光を出して蹴る。
蹴るときも全力の光を出すし、翼も持っていけする。
結果、何故か槍になる。

これがなげやりってか(激ウマジョーク)


~オリキャラ紹介~
・メア(勅使河原 明) FW 11番
 アルゴの面談を受け、リーダーへの相談はとりあえず全力で取り組んでからやろうとなった。
つまりより織部へのダメージが大きくなった。
なぜ

・アルゴ MF 6番
 さり気ないオリベ呼びで関係性をにおわせるジメジメミスト系蛇男子。
織部を心配した面は確かにあるが、最後に光の槍が織部に飛んで行ったことは素で爆笑している。
今日もこの立場は酒がうまい。
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