かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について   作:低次元領域

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 キャラの見た目を分かりやすくするため、全員描こうと思った。よく考えたらそんなスキルなかった……。
 あと今頃気が付いたんですが、部長や部員の名前どうしよう……実況の人にずっと「習合キャプテン!」とかあだ名言わせるのは無理ですし……
あとの事はあとで考えるか!(無鉄砲)

前回より第一章「部長、噂の人になったよ」編がスタートしています。
地区予選までを考えています

※色々追記
 バングの必殺技をマイルドに
 ペンギンなどいなかった、いいね?


遂に目をつけられた日

「────」

 

「……そう、父さんがそう言うなら。じゃあ私はそのことを部長さんに伝えるよ」

 

 カーテンが閉め切られ、日の光が一つだけ差し込んでいる部屋。

 冷え切り、短い会話。親子の会話とは到底思えない惨状だ。

 相手に対して決して目を合わせようとしない自分を、父は何と思っているのだろうか。

 

 ──どうせ、疎ましく思っているに違いない。そうでなければ、出来立てのサッカー部に()()()()()()が出来るはずがない。

 

「……部活は、サッカーは楽しいか?」

 

 外面だけは取り繕っているつもりなのだろうか。その息子が楽しんでいるかもしれない部活をつぶそうとしているのは何処のどいつだ。

 きっと、本当に私がそんな思いを抱いていたのなら叫んでいただろう。

 

 けど、私は……。

 

「……あの部長さんの足掻きを見るのは楽しいですよ。それも、次が最後になりそうですが」

 

 自分も父と同じ最低な人間なのだ。自嘲を含めた笑いで、久しぶりに父の顔を見返してやった。

 直ぐに、後悔する。

 

 ──父の顔は、あの日見た物と全く変わっていなかった。

 

 夢を捨て、母も助けられなかった、壊れた人のそれ。

 きっと自分もいつかそうなるだろうと思うと──。

 

 父さん、私は近いうちに……多くの人をその顔へと陥れることでしょう。

 せいぜい、仲間が増えることを期待でもしていてください。

 

 そう吐き気に合わせ言い捨てて、私は『理事長室』を出た。

 

 目指すは、今も希望に満ち溢れ練習に励んでいるだろう皆の元へ。

 手土産に──一つの絶望を持ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とっくに分かっていたかもしれないが、必殺技と言うのはなんでもありだ。

 俺が簡単に調べた限りでも……謎のエネルギー壁を張る奴がいたり、生き物を召喚したりする奴がいたり、分身する奴がいたり……この間の高天原だってそうだ。光を集めてボールを矢にするとかいう訳の分からない物質変換が容易に行われていた。

 改めてこの世界はどうなっているのか不思議でしょうがない。

 

 だからと言って、それアリなのか。

 俺はこの光景を受け入れられないでいた。

 

「そんじゃあもう一回やりますから見てくださいっス!」

 

 グラウンドの真ん中に立っていたのは、ボールを持ったバング。その前にはすでに体制を万全にしているトール。

 いたって普通の1on1だ。

 

 ……バングが、このまま普通にドリブルをするだけなら。

 

「──ドライブアウト!」

 

 端的に言おう。

 バングは最初の動作として、ボールを軽く蹴って頭に乗せた。中々のバランス。

 次に彼は、身に着けていたバンダナ一本を外すと右手に持ち、()()()させた。

 

 ……うん、この時点で色々おかしいが、まだ聞いていてもらえると助かる。

 

 次の瞬間にはそれを自分の体全身に巻き付けた後、一気に引き抜く──恐らくはベーコマ回しをイメージしたのだろうか。

 自分をものすごい勢いで回転させ、トールに突っ込んだ。

 

「ぐぉぉぉっ!!」

 

 ──トールは、吹き飛んだ。あの巨漢が、二,三メートル。

 回転によって生み出された輪っかのエネルギーによって。

 

 やはりそれも、負けて弾き出されたコマの様に……。

 

 人ってあんなに飛ぶんだね、という感想と共に、俺の目の光は失われていく。

 というかあれ俺だったらファール取りそうだな。

 

「……へへっ、どうッスか部長、皆! これぞ俺の必殺技……ドライブアウトッス!」

 

「お見事だねバングくん。自分の頭に巻き付けている物からイメージを膨らませて技につなげるなんて……」

 

「なるほどな、隙を見てブロックされるならずっと回ってりゃ隙なしってことか。

その分疲れそうなもんだが……持久力を生かすいい技だぜ。考えたなバング!」

 

「……」

 

 腕を組み眺めている俺とは違い、回転を終えたバングに対してみんな、走り寄って褒めたり頭をぐしゃぐしゃにしたりして可愛がっている。

 めっちゃうれしそうだなバング。よかったな。

 あとカガは相変わらず無口だがそれ喜んでるんだよな?

 

「……くっそ、耐えきれなかったぜ」

 

「どんまいトール」

 

 一方、ウリ坊に肩を叩かれながら悔しそうにしてるのはトールだ。

 自分を弾き飛ばすほどの力を見せつけたバングをうれしく思う反面、自分も早く必殺技を……! という思いがあるのかもしれない。

 頑張れ。多分あと少しだぞお前も。

 

 ……いろいろと思うことはあるが、ドリブル技ならそんなに俺にも危険は及ばないだろう。

 ようやく部内にて二つ目の必殺技が誕生したのだ。ここは部長としてしっかり喜ぶべきだ。

 バングの努力を、トールの健闘を称えるべく、俺は二人へと近づいて行った。

 

 

 ……岩の様に重たく、疲労を重ねた足で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝は重りを背負って走り、

 昼は勉学に励む。

 夕方は月水金なら基礎練習、火木ならば必殺技習得をめざし四苦八苦する。

 土曜は一週間の成果を見せるため紅白戦を行う。

 

 これがジミー達が設定した我々習合サッカー部の一週間のスケジュールだそうだ。というかほぼ確定事項になっていた。紅白戦とかどっから出てきたんだろうか……俺なんも言ってないのに。

 まあこの文字だけなら普通だな。普通にありえそうな感じだ。

 

 だが、注釈をつければ一変して地獄に早変わりだ。

 

 本日は俺がダークネス・部長として噂されるようになってから一週間以上が経過した木曜日であるが、それまで体験したことを書いていきたい。

 

 朝、重り(10→20kg)が入ったカバンを背負って学校までドリブル。

 いつのまにか重りが増やされていた。もうお米二十kg分である……当たり前か。

 もう流石にカバンに重りが入りきらないのでこれ以上は増えないだろう……増えないよね?

 

 ちなみに犯人は持久力が自慢のバングと筋力自慢のトールだ。最近仲が良くなってきたらしく、トールがつい手が出てしまった場面でも見事紙一重で躱している姿が目撃されている。

 

「来週あたりには腕と足に5kgずつ付けるか? どう思うよバング」

 

「いやー流石にそこまで一気に重くすると負担が大きそうッスね……次はボールを重くしてみませんか?」

 

 やめろ!!

 そんなに重り(20+5*4=40)つけたらほぼ同年齢の奴抱えてるようなもんじゃねぇか! 腰と膝やるわ! しっかりサポーターつけとけよ!!

 

 そして、何をとち狂ったのか校外走三十分走にも重りが導入された。こちらはまだ両足に二.五ずつの計五キロだが、そのうちこっちも重くなっていくに違いない。

 犯人は勿論同じだ。なんでこいつらこんなにやっても体格変わらないんだよ。過労で筋肉回復する暇ないんじゃないか?

 

 というか部費全然ないのにどっからこんなに重り持ってくるんだ。

 

「あーそういえば言ってませんでしたね。うちの家、建材とか扱ってるんスよ。なんでいらなくなったものとかを色々!」

 

「ビックリしたぜ、うちの親父が懇意にしてるところだったなんてな」

 

 そうなんですかバング君とグラさん。あとグラさんの家は土建屋だったんですね。

 ヤーさんぽいのはそのせいなのか。大丈夫だよね、マジもんじゃないよね??

 

 昼の勉学……はうん、こっちは俺の問題だ。

 あの一件以来、すっかり「いきなりサッカー部を立ち上げたと思ったら厨二の世界に目覚めた忙しい人」扱いだ。昨日なんて新聞部から奇人として取材を受ける始末。

 練習スケジュール伝えて「入部大歓迎」って伝えたらすっごい謎な顔された。ひいてたのだろうか。多分そうだな。

 

 ちなみに、最近やたら()()()()()()()()()()()()()メアちゃんくんは盛ってくれたようで新聞部が来た頃には訳の分からない異名がいっぱいついていた。

 

 光と闇を併せ持つものとか、必殺技をただの頭突きで止める男とか、その左手にはかつて神に戦いを挑み命を落としたサタンが宿っているとか。

 なんだよサタンって、世界格闘技のチャンピオンか?

 

 ちなみにサタンとルシフェルは同一説があるからルシフェルの可能性もあるらしい。

 そこははっきりしておいて欲しい。そのうちサタンとルシフェルが同居してるとか言い出されそうで怖いもん。

 

 おかげで俺のあだ名がルシフェル部長とかつけられてんだぞ。誰が堕天使だ。翼がおれたエンジェルどころか腕がおれたヒューマンだよ。

 

 それと俺のキメ台詞は新聞部によれば「闇の炎に抱かれて死ね!」だそうだ。死ねとか言わないよ僕ぅってなったわ。

 

 これが、見事にメンタルを追い込んできてくれる昼の精神訓練だ。

 もうこの学校でモテるという可能性は潰えた気がする。他校の子に望みを抱こう。

 

 

 基礎練習は日に日に頭がおかしくなっている。

 

 最初は普通にパス回しをしていたのに、今じゃコントロールの練習と称して遠くに空き缶を並べ置き、その間を狙う。

 ……どれもボール一個分丁度の幅しか開けておらず、コースを間違えたり空き缶に当ててしまったらその数にスクワットを()()()を掛けた量こなす。

 

 ブロック練習は一-一の練習が基本だったのに今は二-一、一-二で攻撃側を多くしたり、防御側を多くしたり。

 こちらは失敗したらプランク三分と腕立て伏せ五十回を一セットにして、その回数分こなす。

 

 当然、全て重り(20kg)をつけたままでだ……。重り大好きかお前ら……昔の漫画のタイヤみたいに何にでも使えると思い込んでいる節がある。

 一週間ちょっとで普通の練習がここまで超次元になるとは思わなかった。

 

「──遅れました皆さん」 

 

 あ、なんか呼び出されたとか言ってたワタリがやってきた。偉いなぁちゃんと走って来てて。 

 

 ……それはそうと、左腕が骨折している俺はこの全てにおいて激痛が走っているし、腕立て伏せとプランクは片腕でやらなければならない始末。

 左腕の痛みが我慢できなくなったらワザと右手で抑えて「闇の力を抑えようとしている」ムーブで誤魔化している。

 

 普通に死ねる、両方の意味で。(超次元サッカーの)闇の炎に焦がされ死にそう。甘酒を飲まないとやってらんないよ本当に。すっかり甘酒中毒だよ。

 

「……おやワタリ。随分と遅い登場だな」

 

「ソニックさん。私は部長さんにきちんと遅れることをお伝えしておりましたが……」

 

 最期──じゃない最後を締めくくる紅白戦は、まだ平和だ。

 何せみんないくら身体能力が高まって来ていてもまだ実戦経験がほぼほぼないし、さっきまでは必殺技もメアしかもっていなかった。

 

 せいぜい、俺が何度もエンゼル・ブラスターの餌食にされただけだ。

 

 ……泣きたい。どう考えても右手だけで防げるもんじゃない。

 トールとかが頑張って体張ってガードしてくれるおかげで無理やり弾いてポストに当ててるのが現状だ。そろそろこっちも折れるかもしれない。

 幸いなのは、エンゼル・ブライトと違って熱はそんなに無いから火傷しない事か……。

 

 あと思いのほかこの新しい(中古だけど)グローブがよくなじむ。

 元はかなりの高級品なのか、そう思わせるだけの頑丈さを発揮しており、今のところ破れたりする気配はない。

 

「おっ、ワタリさーん! 聞いてくださいよ俺ついに必殺技を覚えたんスよ~!」

 

「……それは、それは……おめでとうございます。それで部長さん、呼び出されたついでに伝言を預かっているのですが……」

 

 いろいろと愚痴を吐いたが、今のところ何とか耐えている。

 どうにかして、これ以上の練習の激化を抑えつつDF勢に必殺技を早く習得させなければ死んでしまう。

 

 このままいけば、ここの地区予選レベルであれば高天原中学以外は相手にならなくなるだろう。

 ……いっそ、同じ地区のサッカー部と練習試合を組んで、自分たちの実力を正しく認識させた方がいいのかもしれない。

 

「……なんだ?」

 

「以前皆さんの要望であったサッカー部の部室の件についてなのですが……」

 

 あぁそれね。今は空き教室借りてるから着替えもままならないんだよね。

 かと言って空いている部室棟もないし、どうにかなりませんかーって愚痴を届けたんだっけか。

 まあ無理だろうなとは思ってたけど。

 

「一定の、部活として実績があれば建ててもいいという事で……練習試合が組まれました」

 

 おぉ? 凄いナイスタイミングだな。

 こりゃいい。部長である俺になんも相談されずに組まれたのは意外だったがまあ、部室貰えるならいっか。

 それで、相手は何処? 隣町のとこ? それともまさか高天原だったり?

 

 

 ──帝国学園??

 

 あの都内の名門。

 フットボールフロンティアで四十年間無敗……つまり四十連覇、つまりは超次元サッカーのトップ中のトップ?

 死じゃん。

 

 

 助けて。




デ ス ゾ ー ン 開始


 ようやく原作キャラ出せる……といってもそんなに書かないんだけど



-オリ技紹介
・ドライブアウト
 バングが編み出した必殺技。
巨大化させたバンダナを紐の様に体に巻き付け、勢いよく高速回転しツッコむドリブル技。
 回転によって生まれた謎のエネルギーリングだから直接触れてはいない、いいね?
 ファール率が高そう


~選手紹介~
・ワタリ FW 10番
 よくいわれるエースの番号を保持しているが、今のところまだ普通。
 鳥の羽を模したロケットを首からよくかけている。
スネ夫

 カラスが好きだそうだ。

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