「温かいものどうぞ」
「……温かいものどうも」
あの後、なんでもありな風鳴翼が残りのノイズを掃討。今はその後処理をしているのだろう、強面の人達が忙しなく動いていた。
ようやく名前を聞けた少女、立花響は翼さんにお礼を言っていたように見えるが、翼さんの方が立花を拒絶しているように感じた。さて、俺はそろそろ帰ろうかなと逃げる体制をとる。
「……あなたもよ。逃げられるわけないでしょう」
まぁ、当たり前ですよね。翼さんと同様にノイズと戦ったのだから、逃げられるはずがない。仕方の無いことだが、これは逆に俺が手にした力を知るいい機会だと思った。
「逃げませんよ。ただ、手錠をつけられるのは勘弁願いたいと言おうと思っただけです」
「残念ですが、それは出来ません。万が一、ということもありますので」
黒スーツさん達の中で唯一優しそうな顔をしたお兄さんが問答無用と言わんばかりにごつい手錠を着けてくれている。このまま車に乗り込み、向かった先は私立リディアン音楽院高等科。曰く、翼さんと立花が在学している女子校らしい。
立花はまだ状況を飲み込めないまま愛想笑いを浮かべている。そんな立花が気に食わない翼さんは、愛想は無用だとバッサリ切り捨てた。
「……俺……いや、私達が向かっている場所はどこなのでしょうか」
「我々が向かっている場所は、地下深くにある得意災害対策機動部二課の拠点施設とも言える所です」
唯一一緒に来てくれたあの優しそうな男性、緒川さんが移動中説明してくれた。ついでに言うと、堅苦しいのは抜きにしてもらいたいとも告げられた。
「これから向かう場所に微笑みなんて要らないから」
翼さんは徹底的なまでに立花を叩き潰す。まるで大事な人が立花のせいで亡くなったとでも言わんばかりだ。
「さぁ、着きましたよ」
緒川さんがエレベーターの扉を開けてくれる。俺と立花は軽くお辞儀をしてからそこを出て案内された扉を開ける。
「ようこそ!人類屈指の砦、特異災害対策機動部二課へ!」
「……へ?」
扉を開ければなんとびっくり、俺と立花の名前が書いてあるプレートにお祭りとでも言わんばかりの料理の数々、ついでに言うと某謎解き教授でしか見ないような縦長のシルクハットに赤シャツのおじさん。……あぁ、翼さんと緒川さん呆れちゃってるよ。
「緒川さん、お願いします」
「はい。二人とも、失礼します」
緒川さんが手錠を外してくれる。全くもって意味がわからないが、さっき自己紹介してくれた風鳴弦十郎司令がこちらに来てくれた。
「すこしいいかい、湊君」
「えぇ、構いませんよ」
司令に連れられるままパーティー会場の端の方に行くと、司令が急に頭を下げてきた。
「すまなかった、湊君。君を二度も助けることが出来なかった」
「そんな、急に頭を下げられても全く全然わからないですよ」
嘘だ。司令が助けられなかった、と言われた時点でどの事なのかを何となくわかっていた。けれど、だからといって司令がわざわざ俺に頭を下げる通りがない。
「一つは二年前、風鳴翼とユニットを組んでいた天羽奏が殉職したライブ会場での悲劇だ。そしてもう一つ、住宅街で君の両親か殉職した惨劇。その両方に君が関わっていたのに助けられなかったこと、本当にすまなかったと思っている」
「俺の両親が……殉職?」
確かに俺の両親は目の前でノイズに殺された。ただの事故死だと思っていたが、これは詳しく知る必要がありそうだ。
「弦十郎さん、俺の両親は一体何者だったんですか」
「簡潔に言えば我々の仲間、優秀な人職員だった」
どうしてここの職員だった両親を助けなかったのか、なんで其のことと俺の救助が出来ないことが関わっているのか。聞きたいことは山のようなあったが、開けてはいけない箱のように捉えてしまっている自分がいる。
「……君の知りたいことは、順を追って説明するつもりだ。だから、今は何も聞かずに君の力を貸してくれ」
「俺は、勝手に行動することが多いですよ……」
「ははっ、その程度なら任せておけ。子供の無茶無謀を手伝うのが大人の使命ってもんだ」
この日から、身寄りのない俺は特異災害対策起動部二課のメンバーに加わることになった。まぁ、その際に色々な制約があったことは言わずもがなである。
「ごめんね、わざわざ送ってもらって」
「気にすんな。近いとは言え、夜に女の子を一人で歩かせる訳にも行かんだろ」
ところ変わって学院外。立花のメディカルチェックが終わり、検査結果は後日されることになった。ついでに言うと、俺のギアについても教えてくれるらしい。なので、今日は解散となり立花を送っていくことになった。
「湊君は、優しいんだね」
「は?急になんでよ」
「だって、名前も知らなかった私達を助けてくれたんだよ?」
立花の放つ言葉は的を射ている。触れれば確殺のノイズを目の前に、誰かを助けるという考えが浮かぶ一般人の方が少ない。必ず出る言葉は、嫌だ死にたくない。とかだろう。普通に生活してたら、俺だってそう思うはずだから。
「俺は、二回もノイズの襲撃から生き延びたんだ」
「え……?」
「だから、今度は俺が助ける番だって思ったんだ。俺が今を生きてるのは、そのためなんだってずっと考えてた」
誰かのために戦うのは確かに偽善かもしれない。けど、だからといって、目の前にある悲劇から目を逸らしていいわけじゃない。誰だって、それぞれの正義の元行動している、ならば手の届く範囲の人くらい助けることが自分の正義だっていいじゃないか。
「私、人助けがしたいんだ。よくわからない力だけど、そのためにあると思ってるから」
「そう思うなら、突き進め。なんて言われても、何があっても。自分の信じる道を行け」
「うん!じゃ、送ってくれてありがとう!」
俺には未来が見える訳じゃないが、近いうちに翼さんと立花が対決するような予感がする。面白いくらい噛み合わないのもあるが、いつか立花が翼さんの逆鱗に触れる。そうなった時、俺に出来ることはあるのだろうかと色々考えながら今借りている家に向かっていた。
「……やっと見つけたぞ」
「なんの用っすか、翼さん」
家に向かっていたはずなのに、野生の翼さんに出会った。野生ってのはさすがに失礼か。いやまぁ、訂正する気は無いけどさ。
「いや、少し話をしたいと思ってな」
「大人気の歌姫が、こんな時間に出歩いていいんすか」
「今は歌女ではなく防人としてここにいる。だから大丈夫だ」
正直何がなんだかさっぱりだ。多分、歌手ではなくシンフォギア奏者だから補導の心配がないという事だろう。ってことはだ。
「……俺は、どこへ向かえばいいんですか」
「私と一緒に野外演習場に来てもらうわ」
抵抗するだけ無駄だと、つい最近起きた事を頼りに結論付けてついて行くことにした。
更新遅れましたと、スーパー懺悔しています。
シンフォギアXVがついに始まりましたね。私は観るのとこが出来ませんが(笑)
ここから話がオリジナルと原作と混ざっていきます。
都合の悪いことはすべて「ギャラルホルンのせい」になるのでご了承ください(笑)