この片手が映すもう片手の翼   作:日向 ゆい

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響き、鳴り渡る叫び

 歌姫ではなく防人として現れた翼さんが連れてきた場所は特異災害対策起動部二課が所有する第二野外演習場。二、多くね?とは思ったが余計な事を言うのは野暮だろう。そんでもって、キョロキョロしている俺と違って何かしらの覚悟をしている翼さんは俺から離れていく。

 

「それで、俺はなんで呼ばれたのでしょう?」

 

 改めて距離を置いたことで疑問に思ったことを投げかける。訳も分からず連れてこられたのだから理由くらい聞いてもバチは当たるまい。と言うか、普通の人間なら当然思うはずのことを聞いた迄なのだが。

 

「__Imyuteus amenohabakiri tron__」

「いや無視かい」

 

 とうの翼さんは俺の意見などお構い無しのようで、天羽々斬……だっただろうか。ソレを身に纏っている。

 

「……貴方の胸の歌、聴かせてもらうわ!」

「ちょっ……と待てってば!」

 

 一気に距離を詰め、刀を一振。後ろに飛びのければ、突きの構えで突進してくる。ノイズに対抗できる兵器を、生身の人間に振り回すものじゃないと言いたいが、翼さんは生憎聞く耳持たずだろう。

 

「何故、ギアを纏わないの!」

「俺にだってわかるかよ!無我夢中で戦った人間に分かるわけないだろ!?」

 

 立花と戦ったあの時、二人を守りたいと強く思ったからきっとギアは応えてくれた。けど、今回はそんな事態に陥ってない。ギアを纏えたあの一回は奇跡だったと言える可能性がゼロではないことも踏まえると、俺は生身でギアを纏った翼さんに対抗しなければならない。戦わなきゃ負けるけど、戦っても今現状負ける。……アレ?折角助かった命がものの数秒で風前の灯なんですが……?

 

「……貴方は!貴方達は!奏から何を受け継いだって言うの!」

 

 翼さんの叫びに動きが止まる。あぁ、そうか。翼さんは一人になってもずっと戦い続けてたんだ。大切な人を失って、それでも前を向いて誰かのために戦い続けた。それも、歌姫として活動を続けながらだ。

 

「……俺が奏さんから受け継いだものは無い。けどね?今、翼さんから教えて貰ったことはあるよ」

 

 俺の発言に翼さんが止まる。そうだ。俺は翼さんから大切なことを教えてもらった。

 大切な人を失っても尚、前を向かなきゃいけない力を持っていること。

 

「困ったことに、俺もシンフォギアを纏える奇跡の一人なんだもんな」

 

 力があるからこそ、自己を犠牲にしてでも多くの命を救わなければいけないこと。

 

「だから俺は!一人の奏者として!風鳴翼に並び立ちたい!」

 

 多分、奏さんが持っていた力をたまたま俺と立花が手にしてしまった。その事が翼さんには辛かったのだろう。けど、俺が持ってるこの力は俺のモノだ。だから、力を借りるよ。

 

「__Imyuteus Yaenojing tron__」

 

 呟いた言霊はペンダントを輝かせ、ペンダントの輝きは、体を包み込む。大した変化はないが、こんどは青い手袋を付けていて、右手には刀があった。それは翼さんが持つ刀と全く同じものだった。

 

「貴方は、人の積み上げた努力を奪うのね」

「どうやらこの力は、強い想いに反応するようでして」

 

 鍔迫り合い、と言うのだろうか。刀による攻撃を刀で防ぎ、顔を近づけて話す。戦いの最中に話をするなんて、本来ならそんな余裕はないはずなのに成り立っている。お互いが、殺す戦いをしてないからなんだと感覚でわかる。

 

「俺は、翼さんと一緒に戦いたい」

「今、こうして戦っているじゃない」

「あー、いや、そういう事じゃなくてですね」

 

 一方的に攻撃されているにも関わらず防ぎきれてるというのは、暗に翼さんが手を抜いてくれているからだろう。恐らく、彼女にとってこの戦いはただの訓練に移行した……と願いたい。

 

「……彼女が起動した聖遺物、ガングニールは元々奏のものだった……なのに、彼女はなんの努力もしてないのに!」

「言いたいことは何となくわかったっす。けど、奏さんは立花に託したんですよ。ガングニールの力を」

 

 鍔迫り合いをしながらじゃ話にならない。そう察した翼さんは少しだけ俺から離れて少し楽な体制になる。俺はと言えば、情けないことに座り込んでしまった。いやだってさ、疲労感がとんでもないわけだよ。ましてや相手はシンフォギア奏者、体力お化けだぜ?俺はよくやったって言われるべきだ。っと、翼さんが黙ってるってことは続きを話さないとだな。

 

「俺は、会場に居たけど話は聞こえなかった。だから何を言っていたのか分からないけど、誰かのために戦った立花だから、奏さんからガングニールを受け継いだ。そう考えられませんか?」

「随分と、ご都合主義なのね」

「そう捉えるのが、一番無難で傷が浅く済むと思いませんか?」

 

 翼さんは、そうかもしれないわねと同意してくれたが、その次には俺の首元に剣を突き立てていた。飛び退こうと足に力を入れるが、無駄だと悟った。

 

「戦場では油断しない事ね。惚けていると死ぬわよ」

「……それ、ちょっと前に聞きましたよ」

「……私には、受け入れられないの。あのガングニールは奏のものよ。私はずっとそう思ってた。だから!彼女がガングニールを使えたことが嫌なの!」

 

 それだけ告げて翼さんは逃げるように立ち去った。……まぁ、ぽっと出の一般人が相棒だった人のギアを纏えたら受け入れられなくて爆発するわなぁ。

 

 

 俺が聞いた翼さんの心の叫びから一ヶ月経った今尚、翼さんと立花が結託することは無く。

 

「……噛み合わんか」

「未だ、翼さんには受け入れられないんでしょうね」

 

 司令のため息混じりの呟きに、合わせて溜め息。モニターに映る翼さんと立花を見ていて思うのは、みごとに立花が空回りしている現状だけだ。

 ちなみに、俺のギアはどうにも強い意志に応えるため使いこなせない。その代わり、立花達のバックアップをしっかりしろと言われた。要は、奏者としては半人前だからサポート役に徹しろとの事だった。

 

「と言っても、そろそろ翼さんが爆発しますよ」

「どうやら、そうみたいだな。ちょいとあのバカ者どもを止めてくる」

「……俺も行きますよ。翼さんの本音を知る人としては放っておけません」

 

 そう言うと司令に背中を叩かれる。多分これは思いっきりやれの合図だ。そう解釈してからエレベーターに乗り込む。地下にあるこの施設は地上直通のエレベーターがある。本来は地下シェルターのためのものらしいが、特別に用意されたものらしい。

 

「……胸の覚悟を構えてご覧なさい」

 

 翼さんが何か血迷っている。がまぁ放っておく。俺もなんのこっちゃ状態なんだ、察してくれよ。

 案の定、立花は意味がわかってないようでアタフタしている。きっと、翼さんは俺の超解釈では納得出来ていなかったらしい。立花に天ノ逆鱗をぶっぱなしている。おいおい、死ぬぞ立花。

 

「まぁ、させないけどなぁ!」

「うおらぁ!!!」

 

 宙に居る翼さんをタックルで押し、バランスを崩させる。司令は放たれた剣を拳で相殺し、地面に受け流していた。うわすげっ、水とか吹き出してるよ。

 

「なーにやってんだお前達は」

「翼さんらしくないっすよ。ついでに泣いてるし」

 

 泣いてないという翼さん。だが確かに翼さんは泣いていた。きっと、というか確実に想いが溢れ出て止まらなかったんだろう。

 

「私、全然ダメダメなのはわかっています。だから、頑張って!奏さんの代わりになってみせます!」

 

 そんな翼さんに追い打ちをかけるなよ、立花。立花には立花にしかない強さが確かにあるはずなんだ。なのに、誰かの代わりなるなんてこと言うなよ。

 

 パチンと、確かに痛そうな音が鳴った。俺の手からだが。

 

「なんで、なんで邪魔するの!」

「……なら、翼さん。立花を叩いて何かが変わるんすか」

「……っ!!」

 

 きっと、言いたいことを全部飲み込んで、それでも抑えきれなかった衝動に駆られたのだろう。何も言わずに翼さんは俺達から離れていった。何も言えなかった三人は、お開きになりこの日を終えることになった。




短くてすいません。区切りがよかったのでとりあえずここで。雑だとは思いますが、次はもっと長くオリジナルを強く含めていきます。
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