ゼノブレイド2 指輪の継承者   作:shinp

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メギド7章スタートしましたね…。まだハードがクリアできない…。

今回はこの一話だけです。ごめんね。


フォカロル教官のスパルタドライバー訓練

「おーい、フォカロル教官ー!」

「何だ?用件は手短に伝えろ。」

 

 訓練が終わった直後、イニエが訓練所にいるフォカロルに手を振るとフォカロルはさっきまで特訓スケジュールを組んでいたのか紙とペンを持っていた。

 

「うん、アタシの幼馴染みのソロンを鍛えてもらいたいんだけど、いい?」

 

 イニエはキッパリとそう伝えるとフォカロルは猛禽類のような鋭い目でソロンを物色する。

 

「…ほう。お前の仲間、レックスから聞いたが、楽園を目指しているようだな。」

「まぁ、俺は巻き込まれたって感じだけどな…。」

 

 フォカロルは苦笑いするソロンの指輪が目に入ると鋭い目を細めた。

 

(…何だ?何か、嫌な予感が…。)

 

 ソロンはフォカロルの表情を見て悪寒がした。隣にいるイニエに目を向けるとイニエもソロンと同じ事を思ってるような顔をしている。

 

「いいだろう、鍛えてやる。だが、俺は甘くはないぞ。戦場ではベテランもアマチュアも関係ないからな。」

 

 フォカロルはそう言うと歯車が付いた槍のような物を取り出した。

 

「え、ちょ、フォカロル教官?それ、使うの?」

「当たり前だ。その指輪をしているならばそれに見合う実力が必要だ。イニエと同じコースで鍛えてやる。掛かってこい!」

「は!?あ、あたしと同じって、ソ、ソロンはまだドライバーに成りたてなんだよ!?」

「何度も言わせるな!悪党やモンスターにドライバー初心者だから手加減してくださいって言って聞いてくれると思うか?」

 

 武器を持ったフォカロルは正論を言って構える。イニエの焦り具合から予想外の事なのだろう。

 

「え、えぇと…、もうちょっと優しくってのは…?」

「無駄口を叩くな!」

 

 ソロンの提案をフォカロルは一喝で却下し、攻撃する。

 

「あっぶな!?いきなり何するんだよ!」

 

 ソロンは双剣を取り出し、ガードした後距離を取る。

 

「戦いに開始の合図はないぞ!常に警戒しろ!」

「んな事言われたって…!」

 

 ソロンはフォカロルの猛攻から逃げ切る為に素早く距離を取った。

 

「ブレイドとの距離を考慮しろ!離れすぎるとブレイドの支援が受けられないぞ!」

「待ってよソロン!早いよぉー!」

 

 しかし、距離を取ろうとするとフォカロルから注意が飛ぶ。

 

「戦いは即断即決だ!ちんたらしていると足元を掬われるぞ!」

「うわ!?」

 

 アーツを放とうか迷っているとフォカロルのスライディングで転ばされ、打ち上げられ、叩きつけられる。

 

「く、くそ!このっ!このぉ!」

「攻撃が単調になってきてるぞ!冷静さを失うな!」

 

 がむしゃらに一矢報おうとしても全部払われる。

 

「な、何で…勝てないんだ…。」

「それは簡単だ。」

 

 ソロンは膝に手を当て、肩で息をしている一方、フォカロルはまだ表情を崩していない。どうして勝てないか。その疑問が零れると武器を構えたままフォカロルが答えた。

 

「お前はドライバーとしてまだ未熟であることともう一つ。危険に挑む覚悟がお前にはない事だ。ノポン族であるお前の親友から今までグーラのスペルビア兵相手に鬼ごっこをしていたと聞いた。が、それはおそらくスペルビア兵の練度が足りないのと、ドライバーがいなかったからだ。一流相手には動くこともままならなかった。違うか?」

 

 フォカロルの答えを否定できない。何せずっとちょっかい掛けてきたスペルビア兵は気が抜けていたり、別の所に意識を向けていて隙だらけな相手ばかりだった。ニアを助けたときに戦ったメレフとは手持ちの道具が通用しなかっただけで動けなかった。ゼパルと同調した時に動けたのは、やけくそでどうとでもなれという勢いで行ったのだ。

 

「そして、最後に一つ。」

 

 そしてフォカロルは武器の穂先をソロンに向ける。すると、ソロンはフォカロルの武器に付いてある歯車が素早く回転していることに気が付いた。

 

「こうやって相手の攻撃の準備をする暇を与えたことだ!」

 

 あれは何か分からないがヤバい。直感したソロンが右に飛んで避けたが、フォカロルの武器がエーテルで型どられた刀身がギザギザの巨大な刃となって襲いかかる。

 

「な!?」

 

 ソロンは驚いている間にもフォカロルは距離を詰めてくる。

 

「うおおおおおおぉ!?」

 

 ソロンは双剣で防御するが、エーテルの刃はガリガリと双剣を削っていく。

 このままでは不味い。そう考えたソロンは攻めようとしたが、

 

「切り換えが遅いぞ!」

「ごぶっ!」

 

 がら空きだった腹に蹴りが入り、ソロンは吹き飛ばされ、数回地面を転がり、仰向けになった所で止まった。

 

「ソロン!大丈夫?」

「げほっ、ごほっ!」

 

 蹴飛ばされたソロンの身を案じたゼパルが駆け寄る。その後ろからフォカロルの怒号が飛んできた

 

「どうした!お前のブレイドの得意分野は攻撃のはずだ!」

「く、くそっ!ゼパル、まだやれるか?」

「うん!こっから反撃してこっ!」

「ああ!さっきはビックリしたがここから巻き返すぞ!」

 

 よろめきながらも立ち上がり、武器を構えるソロン。その姿を見たフォカロルはニヤリと笑った。

 

「そうだ。この程度の攻撃でへばらずに掛かってこい!」

「言われずとも!」

 

 何とか仕切り直したソロンはゼパルと共にフォカロルに向かって行き、フォカロルも迎え撃つように武器を構えた。

 

 

 

 

「す、すごい…。」

 

 イニエはソロンとフォカロルの実戦紛いの訓練を呆然と見ていた。隣で見ていたアガリアレプトも感心するように顎に手を当てる。

 

「やるわね、彼。あなたよりも持ちこたえてるんじゃないかしら?」

 

 アガリアレプトは面白そうにイニエを横目で見る。イニエは納得してないようで少し頬を膨らましていた。

 

(あたし、初日はさっきの攻撃でもうダメだったのに…。何だろ、この敗北感…。)

 

 それはイニエが傭兵団に入った直後の事。アガリアレプトと同調してしばらくした後、フォカロルが訓練を始めると言い出したのだ。アガリアレプトがどのような事が得意なメギドなのかようやく覚えたばかりなのに早速実戦まがいの訓練にしごかれたのは苦い思い出だ。しかし、訓練終了後に的確なアドバイスをし、自己研鑽を怠らないフォカロルに嫌悪感は抱かなかった。

 フォカロルの武器は歯車が回転すればするほど攻撃の威力が増し、エーテルも貯蔵するという長期戦向けの武器だ。だが、ソロンは防戦一方とは言え、手持ちの道具やロープと言った搦め手で持ちこたえている。真っ先にグーラから出た自分は成長していると思っていたが、ソロンもソロンで成長していた。その事実に少しもやもやする。

 

「イニエ、あなたの気持ちが私に流れてるわよ。」

 

 横からアガリアレプトが話しかけてきた。ハッとして隣を見るとアガリアレプトは困ったように笑っていた。

 

「あ、ご、ごめんアガリアレプト。あと、その…。」

「いいわよ。あなたのその気持ちは黙っててあげる。女の約束よ。」

「…うん。ありがと。」

 

 イニエはアガリアレプトの配慮に救われつつも、自分の気持ちが流れてしまったことに気恥ずかしい思いをしたのだった。

 

 

 

 

(くそっ!少し小細工したら一矢報えるかなと思ったけど全く崩れる気配がねぇ!)

 

 ソロンは手持ちの道具全てを使い切ってしまい、歯噛みする。

 

「敵を撹乱しつつ一撃を決める戦法か…。悪くはないが、撹乱することに偏りすぎだ!己を反省しろ!」

 

 フォカロルはソロンの戦い方を分析しつつ攻撃する。打つ手がなくなったソロンは地面に倒れ付し、決着がついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーっはっは!フォカロル相手にそこまでやるたぁ、大したもんだ!俺も見たかったぜ!」

 

 しばらくして帰ってきたレックスたちは何故かボロボロになっているソロンがくどくど説教されている姿に驚き、心配したが事情を聞いたヴァンダムが大声で笑い飛ばす。

 

「で、どうだフォカロル。ソロンと戦った感想は?」

 

 ヴァンダムがフォカロルに話しかけるとフォカロルは顎に手を添えながらソロンとの模擬戦を思い返す。

 

「そうだな、悪くはないな。こいつは身軽な身体能力を駆使した先制攻撃と道具も使った撹乱で場を掻き乱す戦法を得意としている。多対一なら十全に能力を発揮できるだろう。しかし、一対一になるとしばらくは逃げ回れるが、身軽さを重視したせいで防御が脆弱だ。強力なユニークモンスターの攻撃ですぐにやられるかもしれん。」

 

 スラスラとソロンの特徴と弱点を答えるフォカロル。ソロンは苦笑いしながら相槌を打った。

 

「まぁ、ずっと逃げ回ってたし…。」

「ソロン。今現在攻撃型ブレイドしか同調していないお前は一人で敵に立ち向かうのは無謀だと思え。お前には仲間がいるからな。そいつらを大事にしろ。それに道具のレパートリーも…」

「おっと、こいつはまだ長くなるな。ソロン、頑張れよ。」

「え、ちょ、もう耳にタコができそうなんだが!?」

 

 フォカロルの説教が更に熱が入ってしまい、離れるヴァンダムに助けを求めたが、ヴァンダムは助け船を出さず親指を立てて励ますだけだった。


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