「…ん?なんかトラの家からいい匂いがするな?」
スペルビア兵を振り切ったソロンはトラの家に向かう道中、そう呟いた。普段機械いじりと萌え談義で料理などしないトラが料理を振る舞うとは思えない。もしや、あの時逃がすのを助けたドライバーかブレイドが料理を作っているのだろうか。そう思いながらトラの家の入口に向かうと、とろピカカチャータを食べているトラとドライバーの少年、ブレイドの少女がいた。
「あ!ソロンが帰って来たも!」
トラと目が合うと手の機能を兼ね備えてる耳をパタパタしながら声をあげた。
「トラから聞いたよ。あんたがオレたちを救ってくれたのか?ありがとう!」
そう言って席を立ったのは青いサルベージャースーツを身に包んだ少年だ。どうやら自分のことはトラが話してくれたようだ。
「オレはレックス。このちっこいのがじっちゃんで、あそこにいるのはブレイドのホムラだ。」
「うむ、よろしくの。」
「はじめまして。」
ソロンの予想通り赤い少女は少年、レックスのブレイドだった。そして、背中に付けているサルベージャーのヘルメットから可愛らしい姿とは似つかわしくない老人のような声をした生き物がレックスのじいさんらしい。
「んーと…、レックスって何かのモンスターとハーフなのか?」
疑問を思わず口に出したソロンにレックスは違うよと笑いながら訂正する。
「じっちゃんはオレの面倒を見れくれている巨神獣なんだ。オレはその背中で生活してたんだ。」
「ワシのケツにクレーンをぶっ刺したり背中を七輪で炙ったりしておったじゃろ、お主。」
「七輪は気持ち良さそうにしてたじゃないか。」
関係も良好のようで軽口を言い合うくらいの関係のようだった。
「処刑って…まぁ、指名手配されてたしな…。」
まずはスペルビア兵に捕らわれてしまったレックスの仲間、ニアの情報収集で得られた情報はニアの処刑だった。
そこから、どうやって収用されている巨神獣戦艦に乗り込むのか会議を始めた。
途中、レックスがやっぱり正面突破しようと提案したが、全員声を揃えて却下した。
最終的に、巨神獣戦艦の下へ伸びている根っこを伝って搬入口から入る作戦で決まった。
「もっふっふ。」
作戦が決まった直後、トラが不敵な笑みを浮かべた。
「トラ?」
「みんなに見せたいものがあるも。」
不思議に思ったレックスが話しかけると、自信満々なトラはカーテンで仕切られた部屋へと歩いていった。
(…まさか!)
ホムラを目を合わせ、トラの後を追うレックス。しかし、その先に何があるか知っていたソロンはトラの意図に気付く。
「これは…!」
トラがカーテンを開けた先にあったのは、眠るように目を閉じている一人の少女だった。
ターバンのような帽子に、赤いマントにワンポイント付いた花。見た目はあどけない少女だった。しかし、その少女は背中に沢山の配線が繋がっており、体もヒトのそれとはかけ離れた鋼鉄でできていた。
「ソロンにしか見せたことがない、トラだけの秘密…人工ブレイドなんだも!」
トラは自信満々に目の前の少女の紹介をし、この人工ブレイドの製作に至った経緯を話した。
トラはブレイドと共に戦い、絆を育むドライバーに憧れを抱いていた。が、トラにはドライバーの適性が無かった。検査に見事に落ち、鼻血が止まらない地獄を味わったのだ。
ちなみに、その様子を見ていたソロンが介抱してくれた事から、トラとソロンは親友になったのだ。
「トラ、まさかとは思うけど、お前もしかしてレックスに金を貸すんじゃないだろうな?」
「え?」
「実は、そうなんだも。人工ブレイドの開発ばっかりしてたからお金がすっからかんなんだも。」
ソロンが指摘するとトラは素直に白状した。
「じゃあ、お金を貸して欲しいとか?」
「貸すんじゃなくて、出してくれたらもっと嬉しいも~。」
ソロンと友人関係でいるが流石はノポン族。お金関係ではちゃっかりしている。
「流石はノポン族。しっかりというか、ちゃっかりというか…。」
じっちゃんも呆れているように呟く。
「でもでも!人工ブレイドが完成したら、きっとすっごい戦力になるも!大活躍だも!」
「そりゃまぁ、そうかもしれないけど…。」
トラは必死に説得するが、レックスは冷めた目をしていた。サルベージャーという仕事上、引き揚げたものの換金にノポン族がケチっている事が少なくないのだろう。
「お金なら、私が稼いで来ましょうか?」
そんな中、ホムラが名乗り出る。
「どうやるの?」
「ま、まさか、その身体を売…ぎゃ!?」
「いい加減にしろクソジジイ!」
ホムラの提案を邪推したじっちゃんにレックスがすぐさまチョップを加える。確かにホムラの身体は素晴らしく、そそられる。しかし、それを自分も口にした瞬間、じっちゃんの二の舞になりかねないので黙っておくことにした。
ホムラは自分のイヤリングを外し、レックスに手渡す。
「天然ものだから、売れば六万くらいになると思う。」
「だめ!そんなの受け取れないよ!」
しかし、レックスは首を振って否定した。ソロンはそんなレックスに忠告しようとした。
「でもな、レックス。手っ取り早く資金を調達するならそれくらいしか…」
「えぇい!オレも男だ!分かった!パーツ代全部オレが持つ!」
が、ヤケになったレックスはそう言いはなった。
「何っと太っ腹!」
「ももー!アニキは男の中の男も!」
それにじっちゃんが驚き、トラがよいしょする。
「その代わり!へんてこなブレイドだったら承知しないぞ!」
「それは任せても!」
最後に釘を刺し、トラも大丈夫と太鼓判を押した後、レックスとトラは一緒にパーツ調達へ家を飛び出していった。
「…行っちまったな。」
「大丈夫でしょうか?」
「ありゃ、ヤケクソじゃな。」
残ったのはソロンとホムラとじっちゃんだけだった。
「やれやれ。じゃあ、俺も準備しに行くか。」
ソロンは呆れながらもレックスが出ていった方向とは別の方向に歩いていく。
「どこかに行くんですか?」
「スペルビアの基地に潜入するんだろ?だったら、下準備もしとかないとな。」
後ろからホムラが呼び掛ける。ソロンは振り向くことなく、そう言うと自宅へと帰っていった。
「えーと…煙幕にかんしゃく玉、それから…。」
トリゴの町から少し離れた小屋、そこがソロンが家としている場所である。そこでソロンは持っていく道具の選別をしていた。
「こやし玉…ダメだ。室内じゃ臭いで集まる危険がある。」
ブツブツと選びながら腰に付けた袋に道具を入れていくと、青い輝きを放つ石が目に入った。それは、ブレイドの核となるコアクリスタルだった。
「…まぁ、これも一応持っていっとくか。」
自分はドライバーではない。しかし、何が起こるか分からないので用心に越したことはないだろうとコアクリスタルも袋に入れるのだった。