ゼノブレイド2 指輪の継承者   作:shinp

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旅立ちの夜

「ここまで、来れば、もう追って、こないだろ…。」

 

 トリゴの町から飛び出したソロンは肩で息をしながら後ろを見る。小高い丘の麓にはスペルビア兵の姿が見えないことからどうやら逃げ切れたようだ。

 

「追ってこないようですね。」

「上手く撒けたようじゃの。」

「ここで一休みしよう。もう限界…。」

「トラも、ハヒハヒも~…。」

「と、図書館司書にはキツすぎますよぅ…。」

 

 安全を確認できたレックスはその場でへたり込むように腰を下ろし、トラとマリーもふにゃりと倒れ込む。

 

「じゃあね。」

 

 すると、ニアが短く別れの言葉を切り出し、歩いていく。

 

「皆様の旅のご無事を祈っております。では…」

 

 ニアのブレイド、ビャッコも会釈をした後ニアの隣へと歩いていく。

 

(…まぁ、しょうがないか。あいつはテロリストであるイーラの一員だしな…。)

 

 ホムラは攻撃型、ハナは防御型、そしてソロンが呼んだブレイドは回復が得意そうに見えない。ソロンは貴重な回復役が離れる事に惜しくなる。しかし、本人が選択した事だ。無理強いでついて来ることはないだろうと割りきる。が、

 

「楽園に行きたいんだ!」

「え?」

 

 レックスがそう叫び、ニアを呼び止める。

 

「約束したんだ、ホムラを楽園に連れてくって。オレ…命を分けて貰ったホムラの願いを叶えてやりたい。」

 

 それはサルベージャーとしての義理、『助けたら助け返せ』なのだろう。

 

「…だけど、ホムラを狙おうとしている奴らは多い。それって、巨神獣の住む場所がなくなって、それで争いが起こって、争いに勝つためには強い力が必要で…」

 

 レックスが言いたいことはソロンにもなんとなく分かる。最近は大型の巨神獣の寿命が尽きる事が多くなっており、風の噂ではスペルビアの巨神獣も風前の灯らしい。だから、自然溢れるグーラ領に移住しようとスペルビアの兵や人間をよく見かけるのだ。

 

「楽園の存在が証明されれば、そんな争いもなくなるかもしれない。…でも、さっきメレフって奴と戦ってわかった。オレの力だけではホムラを守れない。」

 

 ソロンは何故かニアとレックスの間に入ってきたトラの存在に気になりながらもレックスの話に耳を傾ける。

 

「ニアはドライバーだろ?力を貸してくれると嬉しいんだ。…駄目かな?」

 

 トラを押し退けながらニアに呼び掛けるレックス。

 

「楽園って、あんた本気でそんな与太話信じてんの?」

 

 しかし、ニアはそう返す。それもそうだ。伝説の中でしか存在しない、眉唾物の話など、ソロンも半信半疑なのだ。

 

「ホムラから故郷は楽園だって聞いた。ホムラは今ここにいる。なら楽園だって…だろ?」

 

 しかし、レックスは自信に満ちた目でそう返す。

 

「何だよ?そのモーフみたいな三段論法は?ったく、短絡的って言うか、お人好しって言うか…ホムラが嘘を吐いていたら?」

「レックス。確かにホムラを救いたいって気持ちも分かる。でもな、相手は伝説のブレイドだ。何を隠してるか分からないぞ。」

 

 ソロンはニアの意見に同意する。

 

「そうだよ。楽園に行くと見せかけて、ある日頭っからボリボリ食われたらどうすんのさ?」

「ホムラはそんなことしない!」

「頭からとか無理です、お腹壊しちゃう…。」

 

 レックスはニアの忠告に間髪入れずに否定する。が、ホムラが天然な発言をした。

 

「いや、ホムラ。そういうことじゃなくてだな…。」

「マジに受け取るのかそこ…。ぷっ、あははははは!」

 

 一連のやり取りに場の空気が和んだようでニアが笑い出す。

 

「翠玉色のコアクリスタルは天の聖杯の証し、か…。楽園はホントにあるんだろ?」

「モチロン!」

 

 胸を張るレックスには自信があって、見ているとニアもソロンも本当にあるのではないか。そんな気がしてくる。

 

「面白そうじゃないか。アタシもついて行くよ。」

「まぁ、俺はこのまま帰ってもスペルビアのお偉いさんに歯向かったし、お前らが心配だしな。それに、俺もドライバーになっちまったから…。」

 

 ソロンはそう言って隣にいるスリットを入れ、動きやすさを重視したウェディングドレスのような服装をしたブレイドに目を向ける。

 

「あ、もう話終わった感じ?じゃあ、自己紹介してもいいかな?アタシはゼパルって言うの!属性は炎で、ガンガンアタックかける攻撃型!よろしくねドライバーさん!」

 

 見かけ通りの少女らしい活発で無邪気な印象を受ける笑顔で自己紹介するブレイド、ゼパル。

 

「ああ。よろしくな、ゼパル。俺はソロンだ。ドライバーなりたての新人だが、よろしくな。」

 

 ソロンもそれに答え、微笑みながら握手する手を差し出す。

 

「えへへ!いい人そうで良かったー!」

 

 それに答えるようにゼパルは元気よく差し出された手を握りブンブン振るのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから夜も更け、焚き火の周りで一夜を明かす事になった。ハナが怪力を駆使して集めた薪にホムラとゼパルが能力で火をつけ、メレフ戦で消耗した体力の回復に努める。

 

「ニアがついてきてくれて、ほんとに良かったよ。」

 

 メレフからの攻撃を一番受けたレックスはニアの回復アーツで癒し、微細な傷は包帯で巻く。ニアの方を見ると全員の回復作業に疲れたのか、自身のブレイド、ビャッコに身を預けているが、得意気そうにVサインをしている。そんな光景をソロンはレックスたちと焚き火を挟んだ所に座って見ていた。

 

「それにしても、聞きそびれてたんですけど、あなたのその指輪…一体なんですか?」

 

 隣にいたマリーが話しかけてきた。ソロンは近くで見たマリーの整った顔立ちに、ぽやっとした表情に一瞬ドキッとしたが取り繕って指輪の説明をする。

 

「あ、あぁ。この指輪か?俺の村のしきたりでさ。代々この指輪を着けることができる人は村長になるって奴なんだ。」

「ということは、あなたは村長さん、なのですか?」

「いや、いつもは付けられる奴は一人だけなのだが、俺ともう一人いたんだ。イレギュラーな事態だったんで、外で経験を積んでどっちが指輪の持ち主に相応しいかそれまで村に戻ってくるなって事になってさ。一人は既にグーラを出ているよ。」

「えぇ、何それ!ひっどいじゃん!」

 

 ゼパルは村の獅子の子落としのようなスパルタ教育に憤る。

 

「いや、俺の村って秘境よりも辿り着くのが難しいとこにあって、しかも危険であんまり出られないから、むしろ俺は嬉しかったよ。」

「…もしかして、ゼパルさんのコアクリスタルは村の人が?」

「あぁ、俺ともう一人が出るときにな。まさか、あんな女の子が出てくるなんて思わなくてビックリしたよ…。」

「…そう、なんですね。」

「あれ?村に出るとき貰ったなら何ですぐアタシと同調しなかったの?」

 

 話も終わりかけた所でゼパルが質問してきた。質問されたソロンは懐かしむような顔から一転して苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「あー…、そのー…、コアクリスタルの同調ってさ、下手すりゃ命関わるだろ?それを子供の頃、目の当たりにしちゃってさ…。だからブレイド無しでも生き延びられるようにあのスタイルが身に付いちゃったワケで…。」

「えー!何それ、もっと早く呼び出してたらレックスたちもピンチにならなかったじゃん!あ、もしかしてずっとグーラから出てないのも怖がってたの!?」

「あー、あー!分かった分かった!変なところで臆病な俺が悪かったよ!ゴメンって!もう吹っ切れたからさ!」

 

 ブーブー文句を言うゼパルにソロンは素直に謝る。そんな馬鹿騒ぎを聞いたレックスとホムラが仲裁に入る。文句を言うが、あの明るい性格ならば、旅の良いムードメーカーになりそうだ。そう思ったところでソロンはふと思い出した。

 

「そうだ、マリー。お前にも聞きたいことがあったんだ。」

「はい?」

 

 キョトンとするマリーにソロンは口を開く。

 

「マリーは何で捕まったんだ?それが気になってたんだけど、後で聞こうと思ってたんだ。」

「そ、それは私にも分かりませんよぉ。ただ、静かなところで本を読みたかっただけなのに法王庁に捕まったんですぅ。」

 

 法王庁。その言葉で思い浮かぶのはアーケディアという白亜の巨神獣にあるコアクリスタルを管理している組織だ。何故、人畜無害そうな、ルクスリアで図書館の司書をしていた女性を捕らえたのか、疑問になることは多々あったが、一つだけ分かるのは、

 

「…一つ聞いていいか?俺達に危害を加える気は?」

「そ、そんなのありませんよぉ!?」

 

 こんな臆病な女性が連続殺人鬼ではない事だ。まぁ、何かしらの事情を抱えていようが、ソロンには関わりのないことだろう。そう結論して、空を見上げる。

 

(これでお前にも、追い付けるかもな…。)

 

 ソロンは満点の星空を見上げながら、グーラを出ていったもう一人の顔を浮かべながら一夜を過ごすのだった。




と、言う訳で一章終了です!メギドの日という記念すべき日に投稿できて良かったです…!
これから俺らイケメンを作業用BGMにして、二章書いていきます!
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