サバトで何人来てくれるかな…。
グーラ出発に向けて
次の日、世界樹への道筋はどうするか話していた時にレックスが取り出した手のひらに収まるほどの大きさの機械、雲海羅針盤によるとここグーラからが世界樹に近いらしい。それならば船でグーラを出て行けばいいのだが、問題があった。
トリゴの町に出入りしている船は全てスペルビアが管理していることだ。昨日の騒ぎで港はスペルビア兵が厳重に警備しているだろうし、あのメレフも目を光らせているかも知れないのだ。また戦う羽目になったら、今度こそ勝ち目がない。
「そうだよな…。」
「それだったら、ウモンのおっちゃんの船を借りればいいも!」
既に手詰まりを感じた時、トラが提案をしてきた。
何でも、トラの祖父の友人に船を造っているノポン族がこのグーラにいるとのこと。これ以外に道が思いつかないのでウモンの造船所へ向かうことになった。
「それよりも…マリーさんまでついてくるのか?」
だが、ソロンは何故かついてきたマリーに目を向ける。非戦闘員であるマリーをこのまま連れていくのは気が引けたからだ。
「うぅ…。だ、だって、グーラは森が多すぎてインドア派な私には酷ですし…。かといってトリゴの町に戻ってもスペルビアの兵隊さんに捕まっちゃいますし…。」
マリーは申し訳なさそうに話す。確かに今の状況ではマリーは放っておけない。でもこのまま連れていくのもどうかと思う。
「どうしましょう?」
「うーん…このまま置いていくのは可哀想だしな…。」
「ウモンのおっちゃんに匿ってもらうも?」
「でもご主人。マリーは油臭い造船所より、図書館の方が落ち着くと思いますも。」
レックスたちはマリーの今後をどうするか考えるが、いい案が思い浮かばず首を捻る。
「でしたら、ソロン様の故郷に連れていったらどうでしょうか?事情を話せば、受け入れて貰えるのでは?」
「そうだな…。すまんレックス。俺はマリーを俺の故郷のグロル村に連れていくよ。先に行っててくれ。」
結局、ビャッコの案に賛成することになり、ソロンはマリーを故郷に案内することにした。しかし、レックスが待ったをかける。
「どうしてだ?オレたちも一緒じゃダメなのか?」
「…実は俺の村、よそ者にはあまりいい印象を持てないんだ。だから、大人数で来ちゃうと匿ってもらえないかもしれないんだ。」
「でも、それはマリーも同じじゃないかのぉ?」
セイリュウがもっともな疑問を口にする。それに対してソロンは苦笑いをした。
「あー、うん。普通そうなんだけど。俺の村は困ってる人は放っておけない性分みたいでな…。多分マリーさんなら受け入れてくれるよ。」
「わかった。それじゃあ、オレたちはウモンさんの造船所で待っておくよ。」
「ありがとな。ちゃちゃっと送ってくよ。じゃ行くか、マリーさん。」
「は、はい!」
ソロンは一旦レックスたちと別れ、マリーの手を引くとソロンの生まれ育った村、グロル村へと向かうのだった。
「今だ、ゼパル!」
「うん!炎よ!灼熱の槍となって敵を貫けぇ!!タービュランス!」
行く先の道で襲ってきたゴゴールとの戦闘。ソロンはドライバーとしての感触を掴む訓練も兼ねて戦っているのだ。ゼパルに剣を投げ渡すとゼパルは剣を燃え上がらせ、自分の両脇から炎を発生させた。その姿は四本の腕を生やしている炎の化身のようで、そのままゴゴールに四連撃を加えた。炎の四連撃を真に受けたゴゴールはそのまま力尽きた。
「ふぅ。マリーさん、終わったぞ。」
「は、はい!」
危機が去ったことを確認したソロンはマリーを呼ぶ。岩陰に隠れていたマリーはこそこそ出てくるところを見たソロンは歩き出す。運動が苦手なマリーに合わせてゆっくりと歩を進める。
「さて、そろそろだけど…。」
少し進んだ後、ソロンは突然歩みを止めた。村に着いたのだろうか?マリーはそう思い、辺りを見渡すが周りは木々が生い茂っているだけで村らしきものはどこにもない。
「?あ、あの、どこに…」
「そこのお前!何しに来た!」
マリーが不思議そうに首をかしげ、話しかけようとした瞬間、木の上から声が聞こえた。
「ひぃっ!?」
「誰!?」
マリーは驚き、ソロンの後ろに隠れる。ゼパルも双剣を取り出し、警戒する。
「キーマーリースーはぁー、つよーい!のだ!」
その雄叫びと共に木の上から槍を持った少女がソロン目掛けて飛んできた。
「させない!」
が、ゼパルが素早く間に入りバリアを張る。ガードされた少女はバク転しながら距離をとり、着地する。
「キマリスの攻撃を防いだか!お前、中々やるな!」
姿を現したのは見た目は12、3歳ほどの見た目で金色の長髪で純粋さを表すかのような碧眼。そして身なりは原住民のような動きやすさを重視した服装、そして、その胸にはコアクリスタルがあった。
「よ、キマリス。俺だ。ソロンだ!」
ソロンは手を上げて挨拶をする。
「ソロン…?本当だ!ソロンだ!」
キマリスと呼ばれた少女は疑い深く目を細めたが、ソロンと分かると見た目相応の笑顔になった。
「シュゴンに用事があって来たんだが、一緒じゃないのか?」
「おーい!キマリスゥー!大丈夫かぁー!?」
ソロンがキマリスに尋ねると、キマリスの後ろから大柄なグーラ人がどすどすと足音を踏み鳴らしながら現れた。
「よ、シュゴン。相変わらずでかい図体だな。」
「ん?おぉ、ソロンじゃないかぁ!久しぶりだなぁ。どうしたんだぁ?」
ソロンが気さくに声をかけるとシュゴンと呼ばれたグーラ人は笑顔で駆け寄る。近寄るとその巨体も相まって迫力がある。それでもソロンは気圧されることなく話しかける。
「実は、この女の子を村に匿ってから傭兵団に送ってほしくて…あれ?」
事情を説明しようと後ろを振り向くとマリーは忽然と居なくなっていた。見渡すとキマリスが降りてきた木の陰に隠れていた。
「こ、怖いですぅ…。」
ガタガタと震えるマリーにソロンはため息を吐きながら近付く。
「あー…、大丈夫だ。シュゴンは確かに見た目怖いけど、優しい人だから。」
「あれ?もしかして、オラが怖がらせちまったかぁ?」
木陰に隠れたマリーを説得するソロンその後ろでシュゴンは気まずそうに頬を掻く。
「来れるか?…よし、行こう。」
「す、すいません、急に隠れて…。」
ソロンに手を引かれたマリーはおずおずと現れ、シュゴンに謝る。
「いーや、怖がらせたオラが悪ぃんだ。嬢ちゃんは悪くない。」
しかし、シュゴンは気にした様子もなく笑いかける。その様子は怖がられるのは慣れており、その度に誤解を解いていることが伺える。
「じゃあ、頼むよ。俺はこれからグーラを出る船に乗らなくちゃいけないからな。」
「…そうかぁ、お前も行くんだな。イニエに会ったらよろしくなぁ。」
ソロンは未だにシュゴンに怯えるマリーを押し付け、グーラを出る事を伝えると踵を返す。
それを聞いたシュゴンは少し寂しそうな声色で送る。
「おう。じゃあ、じいさんに俺がグーラを出る事と、この人を匿って傭兵団経由で安全な場所に送ってほしい事、伝えといてくれ。」
「わぁったよ。頑張れよぉ。」
「分かったぞ!キマリスはかしこいからな!」
任せろと頷くシュゴンを見たソロンはマリーに話しかける。
「それじゃ、俺はここまでだ。ここからは見張り番のシュゴンとキマリスが村へ案内するよ。そこから安全な場所まで送ってもらいなよ。」
「あ、あの、何から何までありがとうございました!」
「うん!じゃあね、マリー。短い間だったけど楽しかったよ!」
お礼を言うマリーにゼパルは別れの握手をしようと両手を差し出す。
マリーはおずおずと手を出すとゼパルはそれを両手で掴み、ブンブンと上下に振る。
振り回されあわあわしていたマリーだったがゼパルの活発さに影響されたのか、その表情は満更でもない感じだった。
「じゃ、行くぞ。シュゴン、村のみんなにもよろしくな。」
「またな!キマリスはお前と会えてよかったぞ!」
シュゴンとキマリスの見送りを受けてソロンはウモンの造船所へ向けて歩みを早めるのだった。
「あれ、レックス?造船所で待っていたはずじゃ?」
「まぁ、こうなるよね…。」
造船所へ向かう道中、ソロンは待っているはずのレックスたちにばったり出くわした。どうやら、造船所に向かったまではよかったのだが、肝心の巨神獣が逃げ出してしまい、すぐさま見つけて、緑の花粉玉で手懐け、造船所まで戻るよう指示した。その後の帰るまでの道中でソロンたちと出会ったと言うわけだ。
「まぁ、すぐに見つかって良かったな。」
「あぁ、すぐに造船所へ向かおう!」
「それじゃあおっちゃん!借りてくも!」
「ありがとう、ウモンさん!」
「おう!船旅、楽しんでこいもー!」
巨神獣船に乗った一行は船を製作したウモンに見送られながらグーラを出港した。巨神獣船はレックスの舵に従いゆっくりと雲海を掻き分けながら、進んでいく。その行く先には空を穿つようにそびえ立つ世界樹の姿があった。
俺らイケメンがカラオケ入りは流石に草。