ビャッコによると、自分達を呑み込んだ巨神獣、インヴィディアは背中に町があるらしい。そこに行けば出られるだろう。そう考え、インヴィディアの中を進んでいくとボンヤリと明るい場所に出た。
どうやら、インヴィディアは背中が半透明で陽の光が体内に届くようだ。そして、その光が届いているということは今は雲海の上にいるらしい。
「よし、それなら光が強い所へ行けば出られるかもな。」
「待ちな!」
方針が定まったことで行動しようとした瞬間、野太い声が待ったをかけた。声がした方向に視線を向けると、屈強かつ壮年の大男が高台からソロンたちを見下ろしていた。男の傍らには二足歩行の赤い鳥のような人物がいる。胸に青い光が放っていることからブレイドなのだろう。
大男は高台から飛び降りるとその両隣にいた三人のドライバーも後を追うように飛び降りる。
「この辺りじゃ見かけん顔だな?さしずめ漂流中に巨神獣に飲まれでもしたってのか?」
大男は物色するようにレックスたちを見る。ゼパルは警戒をMAXまで引き上げ、睨み付けるが、ソロンは手で止めるよう制す。こちらから刺激してしまえば返り討ちにされてしまうかもしれないからだ。
「…ん?そのブレイド…翠玉色のコアクリスタル!」
大男はホムラを見て表情を険しくしたかと思えば、大声で豪快に笑いだした。
「はぁーっはっはっは!!なるほど、噂は本当だったか!」
「噂って何のことだ?」
警戒しているレックスが問うと大男は腕を組ながら説明する。
「ドライバーなら誰しもが耳にする伝説のブレイド、天の聖杯。それが500年ぶりに目覚めたって噂のことさ。」
どうやらホムラの事は噂とはいえアルスト中に広まっていたらしい。
「それにしても、まさかお前のような小僧っ子がドライバーとはな。」
「オレがドライバーじゃ、いけないのか?」
大男の挑発にムッとしたレックスが反論する。それでも大男は涼しい顔で受け流す。
「いけなかねぇ。そいつが普通のブレイドならな。だが、そいつは普通のブレイドじゃねぇ。お前には過ぎたシロモンだよ!小僧、天の聖杯とその剣を渡しな。」
「まさか、お前もホムラを!誰が渡すもんか!」
大男のその言葉に全員臨戦体勢に入る。
ソロンもこの手の輩はロクではないことは知っているので直ぐ様ゼパルの双剣を取り出して構える。
「威勢がいいじゃねぇか。おい、お前らは他の三人をやれ。この小僧は俺がやる!」
面白そうに口を歪めてにやけた大男は周りの部下に指示を飛ばす。
「へっ、任せてくれッス。」
「可愛がってやるぜ、お嬢ちゃん。」
「分かったよ、おやっさん。行くよ、アガリアレプト。」
「えぇ、想定時間内に終わらせるわ。」
大男の部下たちが各々武器を出したのと同時にレックスたちも武器を出し戦いの火蓋が切って落とされた。
盗賊たちは統率が取れているようでレックスたちの連携をことごとく妨害してくる。トラが庇おうとしても、ニアが回復しようとしても、ソロンが撹乱しようとしても、冷静に対応してくるのだ。
ソロンの相手はフードを被って顔は窺えないが女性ドライバーのようだ。ブレイドは青いコートを羽織り、ハットを被っており、片目が前髪で隠れているクールで知的な印象を受ける女性ブレイドだ。しかし、武器らしいものは持っておらず、代わりに懐中時計のようなものをぶら下げているだけだ。
「ゼパル!行くぞ!こいつを速攻で片付けるぞ!」
ソロンはゼパルに呼び掛け双剣を構えながら、アーツを放つ準備をする。
「アガリアレプト、行くよ!」
「えぇ、いいわ。」
盗賊もアガリアレプトと呼ばれたブレイドに呼び掛けると両手にダガーを取り出した。ソロンと同じくスピードタイプなのだろう。
「なっ…!?」
しかし、ソロンはその盗賊の指を見て目を見開いた。
何故なら、盗賊の指にはソロンが嵌めている指輪が親指と中指、小指にあったからだ。その指輪を自分以外に嵌めている人物はソロンが知る限り自分と後一人しかいない。
「お前…その指輪はどこで…!?」
ソロンが尋ねるも盗賊は何も言わず肉薄してきた。
反射的にガードしたソロンはそのまま押し返し反撃に出る。
「くらっ…、ぐわっ!?」
だが、刃を振り下ろそうとした瞬間、後ろから誰かに蹴飛ばされた。
「くっ…!」
咄嗟に体勢を建て直し、後ろを見ると盗賊の後ろにいたはずのアガリアレプトと呼ばれたブレイドがゼパルの目の前に立っていた。
「い、いつの間に!?ぐっ!」
アガリアレプトは驚くゼパルにも蹴りを入れ、軽やかなステップで盗賊の元に戻る。
(い、一体、何をやったんだ?全く動きが読めなかったぞ?)
困惑するソロンに盗賊はもう一度、ソロンに肉薄する。
「こ、このやろぉ!!」
ガードしたソロンは蹴りを入れて距離を離すが、盗賊も同時に後ろに飛んだようで大したダメージは入ってないようだった。
「蹴りがなってないわね。」
すると、後ろからアガリアレプトの声がしたかと思えばまた背中に蹴りが刺さった。
(だ、ダメだ…相手の攻撃が読めない…!何で瞬間移動してるんだ?)
まるで手の内を全部見抜かれているような感覚に陥り、ソロンは歯噛みする。
「じゃ、決めるわよ。何発お見舞いしようかしら!」
アガリアレプトはそう言うと懐中時計を放り投げるような動きをしたかと思った瞬間、
「ぐぇっ!?」
顔に蹴りが三発同時に叩き込まれたような衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。