──死んだ。
経緯はどうでもいい。ただ『死んだ』という事実が突きつけられる。
「さて……お前は死んだ、が。ここでお前に二つの選択肢をやろう」
"神"を名乗る少年が気怠げに言い放った一言に、思わずバッと顔をあげる。
しかし。見れば、口調とは裏腹に彼の顔はニヤニヤとした笑みが張り付いている。
「選択、肢……?」
「ああそうだ。──お前は、新たな生を望むか? それとも消滅を望むか?」
くつくつと、彼から意地の悪い笑い声が漏れ始める。
呆けている俺を見下ろすような姿勢で、彼は小馬鹿にした口調で言う。
「分かりやすく言ってやろうか? 『神様転生』というやつだ。ただ、間違っても不手際ではない、とだけ言っておこうか」
「は──?」
「あのなぁ……神ってのは全知全能なんだぞ? ミスなんてするはずが無いだろうが。億に一つもないね、ありえない。そんなことがあればソイツは神じゃねえよ」
なに、を──。
「じゃあ、俺がここにいるのは……」
「無論、オレが連れてきた。おっと、どうしてなんてつまらない問いはやめてくれよ。どうせお前は後1ヶ月で死んでたんだ。それが少し早まっただけのことだ」
まるで蟻を潰したかのように軽く言う彼の顔には罪悪感など微塵もなかった。
狂ってる、頭がおかしい。
そんな俺の思考を読んだように、彼はニヤリと笑った。
「キチガイ、破綻者──大いに結構。オレを
「だからといって……神だからなにをしてもいいのか!? 遊び感覚で未来を潰すのになにも思わないのか!?」
「
神を名乗る全能者は語る。
俺たち人間は数は多いがあまりにも脆弱で惰弱だと。
そして一日に死ぬ数もまた多く、その魂の処理が一々面倒だと言う。
そこで編み出された
そんな人を人とも思わぬ所業に憤怒が湧くが、それすらもコイツらは楽しんでいるのだろう。事実、目の前のクソ野郎は心底愉しそうに目を細めている。
握りしめた拳から血が滴り、食いしばった奥歯は今にも砕けてしまいそうだ。
しかし次の瞬間にはそれら全てが消え去る。まるでなにもなかったかのように。
神は俺を見下ろし、歪んだ笑みを浮かべたまま口を開いた。
「砂に息を吹きかければ吹き飛ぶよな? オレにとってのお前らは
喜べよ、お前にはその権利があるんだぞ、と。神の手から放たれた光が俺の胸に吸い込まれていく。
それはきっと、特典と呼ばれるものなのだろう。一般人の俺だが、与えられた『力』は確かに感じ取れた。
神の言葉は嫌に響いた。
主人公。ああ、たしかにそんな存在になれたら楽しいだろうな、嬉しいだろうな。
可愛い女の子を囲って、無双の力で困難を切り開いて、英雄だ勇者だと讃えられて。
けどな──
「お前みたいなクソ野郎に与えられた力なんて誰が使ってやるか!! せいぜい俺のくだらない人生盗み見て退屈してろバーカ!!!」
俺は中指を立てて、神の言葉を鼻で笑ってやった。
どうせ俺の意思に関係なく転生させられるのだろう。だから、これは俺ができる最後の抵抗だ。
時間はそこまでだったのだろう。
この空間から消え行く中、大笑いする神の声が、耳朶を打っていた。
『そのパターンは初めてだ』
──と。
続かない