リカたちが乗っているエレベーターは数分後に最下層に到達した。
目の前には大柄な男が立っている。出で立ちは明らかにビルサルドの人間だと分かるのだが、どこか人間でない気がした。
理由としては、まず彼の身体の表面がまるで液体のようにサラサラと動いていることだった。マーティンもその事に気付くと、声を荒げながらもガルグに聞いた。
「ガルグ!君の身体はナノメタルなのか⁈」
「当たり前だ。ゴジラの分子運動による熱エネルギー攻撃を受けては生身の身体は融けてなくなってしまう。だが…ナノメタルなら話は別だ。立ち話もなんだ。奥へ行こう」
ガルグがそう言うので、リカとユリは彼の後を歩いていく。すると、マーティンが取って加えるようにリカとユリに耳打ちした。
「気をつけたまえ…」
「え?あ…はい」
リカは何が危ないのか…何を気を付ければいいか分からなかったが、マーティンがそう言うのだから、このガルグというビルサルドは危険なのだろうかとも考えてしまうのだった。
3人は歩きながらも驚かざるを得なかった。
この地底基地は3人が考える以上に巨大だった。今歩いている通路も、横に並べば6人は通れそうだ。しかも透明となっている窓ガラスから外を見ると…巨大な洞窟を|掘削<くっさく》し、更なる侵食を進めているナノメタルが見えた。下には白いガスが溜まっており、この下が如何に危険かを物語っていた。
「君たちの目的であるワタルはここで寝ているよ」
ガルグがボタンを押すと、リカたちの前に上半身に包帯を巻いてぐっすり寝ているワタルの姿があった。
「大佐!無事だったのね…!」
ユリはホッと胸を撫で下ろす。リカも溢れそうに涙を堪える。
マーティンも生きていたと分かり、ホッとするやいなや、ガルグの方に向き直って厳しい表情を作った。
「それで…今回は何が狙いだ?」
「狙い……とは?」
「
それを聞いたリカとユリはゾッと背中に悪寒が走った。
ビルサルドがそんなことをする種族なのかと差別意識まで生まれそうになった。
だが、その事に関してガルグは…なんと、頭を下げて…。
「あの時のことは……すまない。我々はゴジラを倒すことだけに固執し過ぎていた。あの時君たちの同朋を殺してしまったことに関しては謝罪する」
「…そんな風に言われるとは思ってなかったな…」
マーティンは想定外だと言いたげな表情で頭を掻いた。
「それよりも……あいつはどこに行ったんですか?」
「あいつ…とは?」
「暗い青色の鱗に肩から生えた巨大な水晶を持ったまるでゴジラみたいな奴よ!そいつが部隊の大半を……」
全滅させたと続けたかった言葉はガルグが突然、肩を掴んでリカを揺すったことで止められた。ガルグは今まで以上に冷静さを失っていた。
「な、なんだと⁈今の特徴は本当のことか⁈」
「え…ええ…」
ガルグのあまりの焦燥にリカは驚いてばかりである。
ガルグは頭を抱えてどうしたのものかと考え出す。そしてここでマーティンがガルグに問いただす。
「あのゴジラに似ている怪獣について…何か知っているのか?」
「それは俺が説明しよう」
どこからその声がと思えば、3人の前からナノメタルが迫り出して、人型になっていく。同じくビルサルドだ。
「べ、ベルベ…!」
「驚くことはない。俺も生きていただけだ」
「マーティン博士…この人は?」
ユリは堪らず質問する。
「ベルベ…同じくアラトラム号の船員だった」
「そちらに地球人、よろしく。で…話を戻そう。君らが見たゴジラに似た怪獣…そいつは我々の母星『ビルサルディア』を破壊した奴だ」
その事実を聞いた3人…と、もう1人…。
「その話…詳しく聞きたいな…」
弱々しい声にリカは即座に反応した。
目の前の扉には、身体を引き摺りながらも必死に動かすワタルの姿があった。フラフラな足取りなため、すぐに倒れそうになる。
それをリカが支える。
「大佐!無事で良かったです!」
「リカか…。迷惑をかけたな…」
「大丈夫なのか?身体は」
「このくらいでバテたなんて言っていられるか。構わず続けてくれ」
ベルベは頷く。
「しかし…君らの星はブラックホールに飲み込まれたって…」
「博士、そのブラックホールを作り出したのがあの怪獣なんだよ」
信じられなかった。
星を飲み込むレベルの大きさのブラックホールを生成するなど、もはや次元を超えたものだと思えた。
「奴……名付けるならゴジラから取って、『スペースゴジラ』、は星からエネルギーを確保して生きているんだ。だが我が母星にはそんなエネルギーは有していなかったから破壊されたのだ」
「ということは…スペースゴジラはこの地球上全てのエネルギーを取り終えたら…あんたらの星と同じ運命を辿るってわけか…」
この事実に全員が言葉を失う。
ただでさえゴジラ1体だけでも、大変なことだというのに、スペースゴジラまで…と思ってしまう。
しかし、そんな絶望感漂う中でガルグが言う。
「言っただろ?希望を持ってきたと」
「ガルグ、何か案があるのか?」
「恐らく…スペースゴジラは今どこかでエネルギーを補充しているはずだ。そこを叩くんだ」
「どうやって?」
リカが問う。
「もう1度メカゴジラを作る」
ガルグの発言に周囲は一瞬静まった。
少しの間を置いて、ユリが聞いた。
「メカゴジラをもう一度完成させたら…スペースゴジラは倒せるんですか?」
「スペースゴジラだけでなく、ゴジラも倒せる」
そう断言するガルグ、隣にいるベルベも自信満々のように見えた。
しかしワタルは……。
「…なんでそう言い切れるんだ?」
「大佐?」
様子がおかしいワタルにリカが顔を覗き込んで聞く。だが、リカの言葉は耳に入っていないのか、勝手に話を進める。
「あんたらは20年前もメカゴジラでゴジラを倒せると豪語してたよな?それでまたそう断言すんのか?全く変わらないな、ビルサルドは‼︎」
ビクッとリカの身体が震える。
「…あの時はメカゴジラが作動しなくなったんだ。だが今から考えれば、メカゴジラはあの状況でゴジラに勝てないと判断して作動しなかったんだ。だが、20000年経った今なら…」
「しかし…ガルグ、1年前も同じ結果に…」
「だがメカゴジラは生きている。問題はない」
「それは…死んだサカキ大尉やユウコ少尉に言えるのか?」
マーティンの言葉にガルグは一瞬言葉に詰まり、目線を逸らした。
またサカキの名が出たことにワタルは少し気になった。
この3人を導いたサカキ大尉とは一体…。
「とにかく、まずはスペースゴジラを見つけることが先決だ」
「それには賛成だ。奴が何をしているか見つけないと…」
スペースゴジラを見つける……このことだけは満場一致した。
しかし、ワタルが抱えているビルサルドに対する不信感は消えていない。これが後々響くことがあるのではなかろうかと…リカとユリが思っていると、突然地面が激しく揺れ始めた。
「な、何⁈」
「またゴジラか?」
ガルグが外のモニターで確認すると、山も何もないところから突然溶岩が噴き出し、樹海を燃やしていたのだ。
「噴火⁈ここは活火山はないんだぞ?何故だ?」
「…スペースゴジラだ!奴の影響がもう出始めているんだ!」
ワタルは外の様子を見ながらも、こう呟くのだった。
「もう…ツベコベ言っている時間はないってわけか…」
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