第14話
ユリは退屈にフツアが住んでいる洞窟で待ちぼうけを食らっていた。
自分も一緒にゴジラを倒しに行きたいと申し出たが、誰かがここに残らないと『もしも』の時にどうすることも出来なくなるから…という理由でユリを含めた一部の隊員が残った。
ワタルやリカ、ナノメタルの身体になったビルサルドは今頃どうしてるのだろうか…とユリは思った。
ゴジラの恐ろしさはつい最近になって分かった。
老人や年上から聞くだけではあまりイメージが掴めなかったが、実際に見て、その力の差を見せつけられると、一番最初に戦いを挑んだ人たちでさえ英雄に思えて来た。
あんな化け物を倒せるのか……。
ユリは見張り台からボケーと外を見続けながらそう思った。
と、その時、一機の揚陸艇がこちらに近付いてくるのが分かった。
一瞬、ワタルたちのコンバートしたものかと思ったが、あれはコンバートされてもいないし、何より片側のエンジンが火を噴いている。
「まさか…あれは…!」
間もなくして、揚陸艇は樹海の中に不時着していった。
ユリは数名の隊員を連れて、墜落現場に向かう。
樹海の一部は墜落の影響で崩れ落ち、とても生き残ってられる状況ではなかった。が、一番奥の脱出ポッドからガンガンと中から誰かが叩く音が聞こえた。
「おーい‼︎誰か…!開けてくれ‼︎」
扉の奥から聞こえる声は、聞き覚えのあるものだった。
急いで扉をこじ開けると、中からは黒い煙と一緒に堅いの良いビルサルドたちが約数名出てきた。全員満身創痍で、とても疲れた様子であった。
「ベルド中将…!」
「君は……ユリ隊員か…」
小さく弱々しい声でベルドはそう言った。
ユリは何があったのかを聞く前に、ベルドたちをフツアが住む洞窟へと運ぶのでった。
ー数時間後ー
スペースゴジラ…そしてゴジラ・アースとの激しい戦いを終えて、一時撤退して来たワタルたちは、基地に戻るやいなや、倒れる形で椅子に座って頭を抱えた。
最新のメカゴジラでも、スペースゴジラを倒せなかった。
だが、ゴジラはそのスペースゴジラを最終的に圧倒し、意図も簡単に殺してしまった。
スペースゴジラが深傷を負わせていたからと言えば、それはいいのだが誰もそうは言う気になれなかった。
そんな中、一人の隊員が、こんな発言をした。
「もう…地球を捨てるしかないのでしょうか?」
根本的な問いだった。
誰でも一度は考えてしまうものを、誰かが言ってしまったのだ。
ずっとゴジラを絶対に倒して地球を取り戻すと豪語していたビルサルドでさえ、即座に否定することは出来なかった。
ワタルも同じように返答出来なかったが、彼の中で『逃げる』の文字はなかった。
では何故そう言わなかったか…。そう言ったとしても、効率的な作戦が思い浮かんでいなかったからだ。
作戦のビジョンも見えないというのに、そんなことを言えるわけがなかった。
疲れ切ったワタルはフラフラと立ち上がり、個室の前へと向かう。
「大佐?」
「……各自、今日はもう休め…」
リカたちの耳に入ったワタルの言葉は、力、覇気を完全に失っていた。ワタルが個室に入ろうとした時、不意にワタルの無線がユリからの連絡をキャッチした。
「ユリか?どうした?」
『大佐、大変です!オラティオ号からの生存者を発見しました。現在、フツアの洞窟で休養させています』
その事を聞いた途端、ワタルの疲れは一瞬にして吹き飛んだ。
生存者がいた。
この事実がワタルの動かしたのだ。
「今すぐ向かう!」
ワタルは個室には入らず、すぐにフツアの洞窟に向かった。
他の者は何があったのか分からず、茫然としていたがその後を追っていったのはリカだけで、他は地面に尻を付いたまま身体を動かすことはなかった。
ワタルとリカはフツアの洞窟に着くと、いつもと様子が違っていた。
この時間帯、ほとんどのフツアの民は就寝する時間なのに、今日はやけに起きている人数が多い。
「どうしたんだろうでしょうか?」
「分からない。とにかく、先に生存者の話を聞こう」
ワタルとリカはユリたちの住まいの方に駆けていく。
その背中を…恨めしい表情でフツアの人たちに見られていることに気付かず…。
「あ、大佐!」
「生存者って、本当か?」
「はい、ビルサルドの一派数名だけですが…。揚陸艇の脱出ポッドに閉じ込められていて…。しかも、中で火事になっていたらしくて、煙を吸って今はこんな状態です…」
ユリが暖簾を捲ると、確かにビルサルドだった。
サイボーグの身体を持つ彼らを見分けるなど、猿でも分かることだ。
「ん……ワタル…大佐じゃないか…」
弱々しい声を絞り出したのは、オラティオ号ではビルサルドの頂点に立つベルドだった。サイボーグなのに、ここまでダメージを負うなんて…何があったのかよく聞きたかった。
「ベルド中将、何があったんですか?」
「…突然…大きな結晶の塊が、降ってきて…オラティオ号に向かって来て……船は、紙細工みたいにぐちゃぐちゃに……その前に…揚陸艇で脱出を…」
「なるほど…。逃げようとしたけど、スペースゴジラの引力か…オラティオ号の爆発に巻き込まれたか…」
「ち、違う……」
「「え?」」
ワタルだけでなく、リカも『違う』と言われて、声を出してしまった。スペースゴジラやオラティオ号によるものでこんなことになっていないとしたら…何が彼らにここまでの重傷を…。
「アレは…地球の生物とは思えない……。だが、地球外から来たようには思えない…」
「………」
ベルドの物々しい発言にワタルは背筋が凍るような感覚が走った。
地球に…また、恐ろしいものがいる…。
その時、暖簾から子供を抱えてマイナが中に入って来た。
「ワタル、リカ……村長、大事な、話…ある」
「大事な話?」
マイナはコクリと頷く。
ワタルは数秒考えたのち、リカに頼み事をした。
「リカ、ユリと一緒に墜落した揚陸艇を調べるんだ。何か手掛かりがあるかもしれない」
「え、でも大佐は…」
「何の話か知らんが、重要な話っぽいしな。きちんと彼らの意見を聞いてくる」
「分かりました」
ワタルとリカ、そしてユリは暖簾を潜って別々に行動する。
暖簾が捲られた時、ベルドの目にナノメタルで出来た矢じりが目に入った。目を見開き、ナノメタルがここにあることに驚く。
だが、これでベルドが長年しようと思っていたことを実行出来ると分かると、彼は周りに聴こえぬよう小さく笑うのであった。
次回予告
フツアの長老から呼び出されたワタル。
祭壇には双子の姉妹、そして謎の生物の死骸が置かれていた。
この謎の生物の出現はワタルたちワタリガラスのせいだとされ、ワタルたちは洞穴から追い出されてしまう。
リカとユリも墜落した揚陸艇で見たものに驚愕する…。
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