リカとユリは先にベルドたち、オラティオ号からの脱出に使ったという揚陸艇の墜落地点に向かった。ゴジラやセルヴァム、そしてスペースゴジラでもない『何か』が、彼らを襲った。
ベルドの証言を鵜呑みにするなら、それで良いのだがユリはどうも釈然としなかった。何故なら彼女は救助に行った時、周りには何かがいたような痕跡も気配もなかったからだ。静かで…金属質の木が燃えるパチパチとした音しかしなかった。
そんな感じで半ば何もないと思いながらも、墜落地点に着く。
リカはこの惨状を見て、口に手を当てて驚いていた。それもそうだろう。
屑鉄の下に挟まれて動かせないビルサルドの死体がまだ残ったままだし、それを食べるワーム型セルヴァムが群がっていたからだ。
ユリもこの光景を見て、良い気持ちはしないがいつまでも狼狽えている場合ではない。
ワタルに言われた通りに、セルヴァムやゴジラ以外の生物が攻撃した形跡がないかを探し始める。
しかし、機体の大半が吹き飛び、ここにはほとんど残っていない。焦げた機体しかないのに、どうやって痕跡を探すんだと、ワタルに言いたくなった。
と、ここでリカが声を上げた。
「ユリ、これを見て!」
「何?」
リカが見つけたのは機体の側面部分だった。大きさは大体1m四方の大きさで、中央には何かで抉られたような傷が残っていた。
「こんなの……あの翼竜の引っ搔き傷じゃないの?」
「でもこれ…動物が引っ掻いたんじゃなくて、何か…こう……熱戦状のもので抉ったように見えませんか?」
リカの言う通りだった。あのセルヴァムが付けたものにしては、傷は深い。
かといって、ゴジラなどの熱戦でもない。ゴジラの熱戦ならもっと大きく抉れる…どころか、貫通して機体なんて一つの欠片も残らずに消えてしまうだろう。
だとしたらこれは一体何なのか…。
二人が黙っていると、突然燃えている機体がガタンと大きく揺れた。
顔を上げると、残骸の上に翼竜型セルヴァムが立っていて、二人を見ていた。
リカとユリは元々持っていたマシンガンを構える。セルヴァムは雄叫びを上げて、翼を広げて向かってこようとした時…赤い尾がセルヴァムを掴んだ。
「え⁈」
赤い鋏尾はセルヴァムの首をがっちりと掴んで、地面に何度も叩きつけると、今度は先端が真っ赤な足が出てきて止めと言わんばかりにその足を頭頂部からグサリと突き刺して絶命させた。
殺したセルヴァムを掴んだまま、その殺した奴はリカとユリの前に姿を現した。
その姿を見た二人は、ゴジラを見た時と同等程度の身体の震えが襲って来た。
「何…あれ…」
「…何にせよ、逃げた方がいいわね…」
二人はマシンガンを無鉄砲に撃つよりも、逃げることを選んだ。
それが懸命だった。何故ならセルヴァムを仕留めた奴は、『一匹ではなかった』からだった。
マイナの案内でワタルはただ一人…彼らフツアの種族で言う祭壇に連れてこられた。
ワタルは冷静さを保っているが、まだあまり理解していない種族の溜まり場に単独で向かうというのはどうしても不安になってしまう。もしかしたら、祭壇というのは生贄を捧げる祭壇なのでは…など、無駄な想像だけが膨らんでしまう。
マイナが先に子供を近くにいる老人に預け、双子の片割れのミアナと共に昆虫の翅らしきものが描かれた祭壇に上がっていく。ワタルは中央に行き、そこで立たされる。
そして、双子の姉妹は壁画に手を置いて、目を閉じる。
壁画の奥は眩しく発光し、ワタルの脳内に直接語りかけてくる。直接口で話せばいいのにと思いながら、ワタルは彼らが自分に何の用があるのか耳を傾ける。
『ワタリガラスよ……これを見よ…』
老人の声が聞こえ、ワタルは彼らが言う『これ』に目を向けた。
それは生物の死骸だった。祭壇の周りに備えられた炎で照らされたそれは、明らかに地球上にいない生物だった。見た目だけで言えば、赤いサソリと言ったら良いだろうか。
足の先端や尾の先端は真紅、他はダークレッドで、大きさは大体3mくらいに見えた。突き出るような口が出たままで、そこから緑色の粘着性のある液体が漏れていた。足は十本以上あるように見える。緑に近い黄色の目を持ち、全体的に見て相手を一瞬で畏怖させそうな見た目を持ち合わせていた。
「これは…なんだ?」
『分からぬ…。しかし…ワタリガラスなら、知ってるのではあるまいか?』
「ど、どういうことだ?」
ワタルが思った通りのことを言い続けていると、木製の仮面を被ったフツアの民が怒号をワタルに浴びせた。
何を言っているか分からなかったが、明らかにワタルたち人類とビルサルドに怒りを向けている感じだった。
どうしてこうなっているか、分からなくて狼狽えているワタルにミアナが説明する。
『ワタリガラス、これ、運んできた…そう、思って、いる…』
「俺たちが?そんなわけない‼俺たちはこんな生物のことなんて知らない!」
ワタルがそう訴えても、フツアの民はまるで信じてくれなかった。
『これ、私たちの生活、影響……』
『だから、ワタリガラス…出て行って、もらう」
「待ってくれ!俺たちには本当に身の覚えがないことだ!」
いくら叫んでも無駄だった。周囲から「出て行け!」と、大量の声が頭の中に直接入って来た。
ここまで言われてしまっては、流石のワタルも反駁のしようがなかった。
反論できず、立ち尽くしていると、突然奥の方が慌ただしくなった。
何が起きたのか、向かってみるとフツアの洞窟の広場に二人の女性が息を荒くして倒れていた。しかも、片方の足からは赤い血が流れていた。
「…!リカ!」
足を負傷しているのはリカだったのだ。ワタルは急いで駆け寄って、大丈夫なのか確認しようと思った時、狭い通路からも悲鳴が上がった。
そこに目を向けると、さっき祭壇に転がっていた赤い生物と同じ奴が入ってきて、フツアの民に襲いかかろうとしていた。その前に、ワタルはユリが持っていたマシンガンを取って、奴の頭に何発も銃弾を撃ち込んだ。
弾は何発か弾かれたが、すぐに硬い甲殻を貫いて、頭部から緑色の液体を噴き上げて、上体を倒した。
奴が倒れて数秒してから、ワタルは叫んだ。
「こいつを俺たちが連れて来たなんておかしい!こんな誰にでも襲いかかる怪物なんて…!」
これがワタルが出来る最後の訴えだった。
この必死の訴えも、長老の心には響かなかった。恐らく、この洞窟の襲撃が一番の要因となったのだろう。
長老の口から、こう言われた。
「出て行け…」
ワタルは、力なく…肩を落とすのだった。
奴らはさっきのワタルとの戦闘を見ていた。
奴らの大きさは様々だ。3mを超える個体もいれば、目に見えるのがやっとという大きさもいる。
そして、個体個体で情報を共有できるこの生物は、森の中で更なる進化に向けて、準備を開始する。
まず…そこら中にいる生物を捕食する。
エネルギーを蓄え、どんな生物にでも負けない身体と能力を備えようとしているのだ。
奴らの最終目標は…人類、ビルサルドが渇望している…ゴジラを殺すことだった。
次回予告
フツアから最大の居住地である洞窟を追放されてしまったワタル。
ナノメタルの地下基地へ居住地を移したが、彼はフツアとの溝を埋めるにはあの赤い生物を倒すしかないと決心する。
そこでマーティンと周囲の調査に向かうと、あの生物の正体が明らかに…。
そして全快したベルドは密かにある計画を開始する…。
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