フツアの族長から出て行かれるように言われたワタルたち人類とビルサルドはひとまず例の地下基地へと向かった。
実際、ここで住むだけなら何の支障もなかった。だが、異種族間で対立があると次に何があるか分からない…そう考えていたからワタルはフツアと交友を良くしようと尽力したが、得体の知れない怪物の出現でその信頼は一瞬で崩れ去った。
それに問題はもう一つあった。
「マーティン博士!リカの足の手当てをお願いします」
そう…。その謎の生物によって怪我をしたリカだ。
傷は浅いが、未踏の地での傷は何があるか分からない。
ワタルたちはかつてない程の不安を抱えていたのだ。
「それは俺がやろう」
「ガルグ…」
「心配するな。俺たちの技術力を持ってすれば、こんな傷なんかイチコロだ」
「…分かった。任せる」
リカは足を引き摺りながら、ユリと共に奥の部屋へと向かった。
ワタルはマーティンと話をする。
「博士は、あの生物をどう見ます?」
実は基地の中にもあの生物の死骸は置いてある。
リカたちが仕留めた1匹らしい。それを解剖並びに研究しようと、ビルサルドとマーティン博士が回収してきたのだ。
「何とも言えない…。甲殻種の特徴はあるが、甲殻種ではない。かと言って、地球外の生命体でもない。私が気になるのは、これがどこから湧いて出てきたか…だ」
「…そうですね」
ワタルもマーティンの考えには同意見だった。
こいつは突然現れて、ワタルやビルサルド、フツアの民を襲い始めた。このゴジラ細胞に侵食された地球において、ゴジラ細胞を持たない生物が突如として現れるのもおかしい。
何か原因があるはずだ。
そう思ったワタルはマーティンに1つの提案をしてみる。
「博士、一回森に出て調査してみませんか?」
「調査?」
「はい。あの生物たちがどこから出てきたかを突き止めないと、フツアの人たちの信頼を取り戻せない」
「…それは一理あるな…。私もあの生物を調査してみたいし……。よし!やろう!しかし、誰と行く?」
「少数がいいでしょう。多いと被害が大きくなる。それと多脚砲台に乗って行くので、小さい翼竜やあの生物にあっても少しは耐えられると思います」
「早速行こう!」
博士は半ば興奮しながら、どんどん先へと進んでいく。
ワタルは能天気な博士を羨ましく思うと同時に、暢気過ぎないかとも思った。
多脚砲台に乗ったワタルとマーティン、そしてもう1人…。
「どうしてお前が乗ってくるんだ?ユリ…」
彼女はワタルたちが出発しようと乗った時から既に中におり、決してワタルの言うことを聞こうとはしなかったため、止むを得ず一緒に行動を共にしている。
「リカを怪我させたのは私の責任でもあります。だからです」
「責任感の強いのは良いと思うぞ?」
何故かマーティンがフォローに入る。これ以上話していても埒があかないと思ったワタルはこの話題を切り上げた。
3人は黙って外の景色を見ていたが、ここでマーティンがふとこんなことを言い出した。
「…私の気のせいかもしれんが、やけに翼竜が少ないと思わないか?」
「そう言われたら……」
「恐らく、あの生物が食っているんだ。このままじゃいつ俺たちがやられるか分からない」
そうやって森の中をひたすらに進んでいると、突然森が無くなった。
それもそのはずだった。
ここは最初にゴジラを倒した地点…要するに初めてワタルたちがゴジラ・アースを目撃した場所だった。
「原子価エネルギー砲を撃って倒したと思ったら…奴が現れたのか」
「……あれは仕方がない」
マーティンはワタルにそう言う。
と、ユリがガラスに顔を付けて、クレーター状になった地面の中心をじっと見詰め出した。
「大佐、あの穴は何でしょうか?」
「どれだ?」
「あの…大きな穴の隣にも別の穴が……」
リカの言う通り、そこにはゴジラと原子価エネルギー砲が開けた穴とは別に掘り返したような穴が出来上がっていた。
「気になるな…。行ってみよう」
ワタルは多脚砲台から降りて、その穴へと向かってみる。
近づいてみると、その穴の大きさがよく分かった。
直径は2mもないが、仮に奴らがここから出入りしているなら充分通れる穴だ。
ワタルは唾を飲み込んで、単身で中に入っていく。
「気をつけるんだぞ!」
マーティンの声が穴の中に響き、木霊する。
ライトを片手に頑張って降りるが、ここで足が滑って身体が落下を開始した。
「やばっ…!」
どこまで落ちるのかと不安になったが、心配するほど深くはなかった。ただ、ワタルの尻は激しくぶつかって痛みを起こした。
「ああ……いってえ…。何だここは…?」
グルリとライトで周りを照らしてみると、そこは…驚愕の場所だった。
「こ、これは……⁈博士!ユリ!来てくれ‼︎」
興奮を抑えながらワタルは叫んだ。
誰かにこれを見せたい……。そんな気持ちが彼の心を支配した。
呼ばれた2人も急いで降りてみると、そこは…信じられない光景が広がっていた。
「これは……」
3人は今、部屋の中にいた。ゴジラの熱線か…オラティオ号からの原子価エネルギー砲によるものか分からないが、右側は完全に吹き飛んでいた。その部屋には2万年も経っても変わらず、実験器具や書類が山のように置かれていた。
そして、一番に3人の注目を浴びせたのが、部屋の真ん中にある椅子に座って息絶えた死体だった。2万年の歳月で、体内の水分は完全に蒸発、エジプトにあるミイラそのものだった。
マーティン博士が恐る恐るそのミイラの首にかけられた名札を見て、読み上げた。
「『芹沢…大助』…」
「芹沢大助?それって…」
「ああ…。ゴジラを殺せる兵器『オキシジェンデストロイヤー』を作ったと嘘を付いて通報された科学者だ」
ワタルはそのニュースを覚えている。
ゴジラが東京に来る数年前、オキシジェンデストロイヤーという究極の兵器を開発したと1人の研究者が発表したのだ。
だが、その次の日にはその兵器は眉唾物だったとされ、ゴジラに恐怖していた民衆の怒りを買い、その科学者は消えた…。
その科学者が…こんな地下で息絶えていたのだ。
「ここは乾燥しきっていたから、周りの器具も壁も崩れずに残っていたのか…。しかし、何故ここに…」
ワタルは書類の束の中に1つの日誌を見つけた。
それは芹沢博士の、遺書だった。
「『私は罪人だ。生きている価値もない。
私は世間に究極の兵器を完成したと発表したが、発表した後でそれは間違いだと分かった。人類がゴジラを殺せば、また悲劇が生まれる。ゴジラは…人類を正しくするための神なのだ。決して絶対的な悪ではない。だから私はこの兵器…オキシジェンデストロイヤーを封印することにしたのだ。
だが、それこそ過ちだった。
ゴジラはアメリカからヨーロッパ、アジア…そして日本までを焼き尽くし、全てを破壊し尽くした。
私がこれを使っていれば、そんなことは起きなかった。人類絶滅にまで発展することはなかっただろう。しかし今使っても、もう時既に遅し…。
私はせめてもの罪滅ぼしとして、この部屋にオキシジェンデストロイヤーを撒き、死ぬと決めた。
オキシジェンデストロイヤーは気体として部屋に充満し、私を蝕むだろう。
最後に私は問う。
何故…私たち人類はゴジラを憎むのか…』」
この遺書を読み上げて、ワタルたちは考えさせられてしまう。
本当に…ゴジラを倒すことは地球のため、人類のためになるのかと…。
「…これがその…オキシジェンデストロイヤーを入れていた容器だな…」
マーティン博士が拾い上げた物は、大きな筒状のもので中央にはオキシジェンデストロイヤーを詰め込んでいたと見られる球状の容器があった。
「…もしかしたら、これが原因かもしれない」
「どういうことですか?博士」
「このオキシジェンデストロイヤーが地中にいた生物に影響を与えた可能性はある。持ち帰って分析する」
そう言って、マーティンは容器を持って、この部屋から出る。
ワタルもこの部屋の惨状…そして、自殺した芹沢博士に冥福を祈りながら博士とユリの後を追うのだった。
その頃ベルドはガルグたちがいない間に一つの装置を設定する。
この装置が起動すれば、ビルサルドの長年の悲願は達成される。
そうすれば、メカゴジラなんか作らなくてもゴジラを倒せると同時に、面倒な地球環境も改善できると自分勝手に思っていた。
その事実を…ビルサルドも…人類も知らない。
「くくく…。これさえ…これさえ起動すれば、我々の勝ちだ…」
元丹沢大関門から離れた場所でエネルギーを大量に消費して、身体を休めていたゴジラ・アースが進行を再び開始した。
今回はスペースゴジラなど、そういった地球外の敵に闘志を燃やしているわけではなく、ワタルたち人類…厳密に言えばビルサルドたちが復活させたメカゴジラに向かっているのだ。
奴は今回ばかりはいい加減に完全に消し損ねたナノメタルを破壊しようと思っている。
だが、ワタルたちはそれに気付かず、謎の生物に現を抜かしてしまっている。
残された時間は、少ない。
次回予告
オキシジェンデストロイヤーを分析したマーティンは、あの生物はあの兵器によって変異した生物であると断定し、更にその生物が出現した原因はワタルたち人類にあるとも言う。
それを聞いたワタルはショックを受けてしまう。
そんなワタルにフツアの双子姉妹の妹、ミアナが語り掛ける。
そして、遂にゴジラが元丹沢大関門に……。
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