オキシジェンデストロイヤーが入っていると思われる円筒を持ち帰って、マーティンの分析が終わるまでワタルは負傷したリカの元に立ち寄っていた。幸いにも彼女の足の怪我は浅くて、すぐに治るだろうとユリから言われたが…この地でそう言われても完璧には安心出来なかった。
「大丈夫ですよ、ワタル大佐。これくらい」
「そうだと良いんだが…。あの生物が付けたものだと考えると、どうしても…」
「大佐……いや、ワタル先輩はいつも心配性過ぎです。ゴジラと戦う時は…そんな弱気な態度を作らないくせに…」
「戦う時までこんなんだったら、隊長やリーダーをやっていられるか」
「変わらないですね。昔、言ってくれましたよね。ゴジラは必ず倒せる。そしたら…美しい地球を見せてやるって」
「…その約束はもう破ったけどな。もうこの地球は…ゴジラによって汚されてしまった…。いや…結果的に俺たちが生んだゴジラによって汚された…と言った方がいいのかな…」
「ワタル先輩が悔やむようなことではありません。私たちは…まだ戦えます」
「リカ…」
ワタルはいつの間にか彼女に励まされていると気付いた。
そして、今まで考えたことも、思ったこともなかった感情が込み上げてくるのを感じた。
暫く二人は見つめ合い、互いの顔を近づけて行こうとした時。
『そうだ……大切な者を得るがいい…』
頭の中に、声が響いた。
ワタルは目を見開いて、辺りを見回す。
「…大佐?」
何度も何度も見回したが、人の気配はない。
いや…そもそもあの声は頭の中に直接入ってくるような感じだった。対話ではない。
「リカ、今何か聞こえなかったか?」
「いいえ。静かですけど…」
地球に帰還してから、たまに聞こえる謎の幻聴。
そして、何故か痛む右目。
これが何を意味するか、ワタルには未だに分からない。
その事を考えていると、突然部屋の扉が開き、マーティンが興奮したような…焦ったような表情をして入ってきた。
「大変だ、大佐!来てくれ‼︎」
「あ、ああ…。リカ、大人しくしろよ」
リカは素直に頷く。
ワタルはマーティンの背中を追って、何があったのか聞く。
「どうしたんですか?」
「あの円筒を持ち帰って分析したんだ。そしたら驚くべきことが分かったんだ!」
マーティンは画面を開き、例の生物を映し出す。
「この生物はあの円筒の中に微量に残っていたオキシジェンデストロイヤーによって変異した生物だったんだ!」
「ということは…博士の見解は正しかったということか…」
「だけどそれだけじゃないんだ!このオキシジェンデストロイヤーを詳しく調べたら…これは水中の中の酸素を無効化する兵器だったんだ!」
そう言われても、ワタルはおろかビルサルドも理解出来ずにいる。
「つまり?」
「分からないのか⁈これは要するにゴジラを倒せる唯一の兵器だ‼︎」
マーティンの発言は、とんでもないものであった。
ゴジラを倒せる…。ビルサルドも豪語していたが、こっちの方が明らかにコンパクトで扱いやすそうだった。
「これは水中で使うと、水分子の中の酸素だけを失くしてゴジラを殺すんだ。奴だって生物。体内の放射能エネルギーでは生きていけない」
「なるほど…。しかし、これは…」
「ああ。もう中身はほとんどない。しかも実験書も紙屑同然で再現は不可能だ。しかし、こいつを受け継いだ生物が奴らだったんだよ!」
「受け継いだ?どういうことか説明しろ」
「あの生物たちはゴジラに攻撃出来る。非対称性透過シールドを破って、肉体を破壊する力を一個体が有している。そいつらがゴジラを一度に攻撃したら…」
「ゴジラ死ぬ」
それを聞いた他の隊員たちはメカゴジラが見つかった時と同じような反応で声を上げた。だが、ビルサルドは納得出来ずにいた。
「ちょっと待て。仮にそうだとして、奴らが殺したとして…今度は我々人型種族に襲いかかる可能性はないのか?」
「それは問題ないと思っている。いくら奴らでもゴジラの巨体ではすぐにやられる。そうやってお互いに体力を消耗すれば、こちらが後は排除出来る」
「なるほどな…」
「でも、何故今更になって…」
「これは私の予想だが…我々が見つけたあの部屋は原子価エネルギー砲で半壊していた。それによって空気中に分散していたオキシジェンデストロイヤーが漏れ出し、地中に生き残っていた古代の生物に影響して突然変異を起こした…と考えている」
「…それで理解した。良かったじゃないか、ワタル。これで……ワタル?」
ワタルの顔は青かった。
何故ならマーティンの話が本当だとすれば、あの生物を解放したのも結局は自分たちだということになる。
フツアの人たちが正しかったのだ。
その事実にがっくしと肩を落とし、ワタルは一人外へと出て行った。
その後ろ姿は、誰が見ても完全に落ち込んでいた。
基地はもう隠す気もないくらいに上へ上へと高く昇っていた。
最初は地下基地であったのに、今では鉄筋ビル並みの高さになっている。セルヴァムたちも突然の建造物に驚くことなく、翼を休めるがすぐにナノメタルの餌食となってこの世を去る。
そんな場所の屋上にワタルは呆然と座っていた。
いつも考えていた。今更ながら…。
何故、人類は、ゴジラを殺そうとしているのか…と。
自身も両親や友を殺された恨みからゴジラを倒そうと躍起になっていた。しかしよくよく考えてみれば、ゴジラは本当に敵なのかと疑った。敵だと認識しているのは…自分たち人類だけではないかと思った。
実際、ゴジラが破壊の限りを尽くした国々は1ヶ月も経つと緑豊かな土地へと変貌し、新たな生態系が生まれた。元は人類が勝手に住み着き、森を切り開き、都市を立てて自分たちのものだと豪語していたが…そんなのは脆いものだった。
ゴジラはもしかしたら、地球を元に戻そうとする創造神なのかもしれないとワタルは思い始めていた。
だが、そんな考えはすぐに排除したいのが本音だった。
そうでなければ、何故…これほどの犠牲を払ってまでゴジラに立ち向かってきたのか…分からなくなってしまうからだ。
「俺は……何故、ゴジラを殺そうとしているんだろう…」
思ったことが口に出てしまう。
ワタルが樹海ばかりが続くこの地を暫く眺めていると、後ろから足音がした。ゆっくりと振り向くと、そこにはフツアの双子の妹、ミアナが立っていた。
「ミアナ…どうしてここに?」
「ワタル、今…ハルオと、同じ…」
ワタルの質問に答えずにこんな事を言い出した。
マーティンやガルグが言っていた前のリーダーも、ワタルと同じように悩んでいたとミアナは伝えたのだ。
「…なあ、俺は…正しい、のか?」
「ワタル、勝とうとする、ダメ。負けるのが、勝ち…。それに、フツアの目的……命を、繋ぐ」
「命を…繋ぐ…」
不思議とワタルはミアナの言葉を受け入れいていた。
彼女が伸ばしてくれている手を取ろうとした時、青い光が二人の視界に入った。
1つの熱戦がメカゴジラの基地のすぐ横を一閃したのだ。
そして、樹海の一部は綺麗に焼かれ、吹き飛んだ。
基地から少し離れた場所に、あの破壊の王が咆哮していた。
「ゴジラ…!」
「ワタル…私、戻る。だから、ワタルも…」
その言葉はここから逃げようと言っているように聞こえたワタルは…。
「中にはまだ仲間がいる。逃げるわけにはいかないんだ!」
そう叫んで、ワタルは再び基地の中へと戻っていった。
ミアナは不安そうな視線をワタルの向け、ゆっくりと歩み寄るゴジラにこう呟くのだった。
「破壊の王……あなたは、それほどにまで……私たちが憎いの?」
…と。
次回予告
ゴジラの出現により急遽メカゴジラを出動させようとしたところ、樹海の中からあの生物が出現し、ゴジラに襲いかかる。
オキシジェンデストロイヤーによって変異を繰り返したあの生物は…第二の破壊王として君臨する。
計り知れない力の前にゴジラは圧倒される。
そして、ガルグの口から予想外の言葉が発せられた。
「メカゴジラ出動!ゴジラを援護するんだ‼︎」
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