GODZILLA Another stage   作:GZL

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第21話

最近、ワタルの様子がおかしいことは誰しも気が付いていた。

以前のようにリーダーとしての言葉も消え、自分の部屋にずっと篭りっぱなし。食事もろくに摂らない。

果てには夜中に叫び声を上げて、地面の上でのたうち回る。

こんな異常な行動の数々をしているせいで、ワタルはゴジラを殺せなかったことが相当堪えていて、悔しすぎて頭がおかしくなったのではとも言われ始めた。

しかしミアナとリカはそういうことではないように思えた。

つい1週間前はいつもと同じ様子だったのが、この2、3日でここまで酷くなるものかと思った。

だがそう思っても…彼を助ける方法は見つからず…途方に暮れる日々が続いた。

 

 

次の日も、リカはミアナから渡された食事を持ってワタルの部屋に入る。今日は上半身を起こして、ただ俯いているだけ。

最近の様子からすればまだマシな方であった。

 

「大佐、ご飯です。食べないと…いざって時に身体が動かせませんよ?」

 

そう告げて部屋を出ようとした時、ワタルの左手辺りにキラリと光るものが見えた。それはナイフで、リカが部屋から出ると同時に右目に向かって突き刺そうとしていた。

それに気付いたリカはすぐ様ワタルに飛び付き、ナイフを奪おうとする。

 

「大佐‼︎やめて…やめてください‼︎」

「離せ‼︎もう……もう嫌なんだ‼︎‼︎こんなの見たくない!俺の右目は…イカれてしまっているんだ‼︎リカにも見えるだろ⁈黄金の輝きが‼︎」

 

そう言われたが、リカには普通の状態の右目が見えているだけだった。

 

「…何も……見えませんけど…」

「そうやって全員俺を騙そうとする‼︎夢の中の男も!リカも‼︎フツアだってそうだ!全員…俺に全てを押し付けて…!」

「落ち着いてください‼︎」

 

何度説得してもワタルが落ち着くことはない。

最後は他の隊員がワタルの部屋に雪崩れ込んで、暴れる身体を抑えつけて、疲れ切って寝るのを待つのだった。

 

 

「…はあ……」

 

リカはため息を吐く。今日あったことは、初めて300mのゴジラ・アースを見た時よりも衝撃的だった気もする。

いつから…大佐はああなってしまったのだろうかと…リカは改めて思った。

 

『リカにも見えるだろ⁈この黄金の輝きが‼︎』

 

黄金の輝き……一体何のことかも分からない。

だけど今はそんなことはどうでもいいことだった。

早くワタルを元通りに戻さなければ、フツアとの関係にも何かしらの影響が出るかもしれない。

しかし、ワタルを元通りにする方法なんて何もないし、出来ることもない。

そう考えると…ワタルがゴジラに対していかに己が無力な存在であることを叩きつけられた気持ちが分かる気がした。正に今の状態だ。

どんな策をやろうとしても、全て無に帰ってしまう。

そう思うと…リカの目に自然と涙が溜まった。

 

「無力だ……私は…」

「そんなこと…ない」

 

リカの呟きに答えたのはミアナだった。

 

「ミアナ…」

 

ミアナはリカの隣に座って、ゆっくりと片言の日本語で話す。

 

「ハルオ……も、同じ、感じてた…」

「ハルオって……アラトラム号の船員で、ゴジラ討滅隊の?」

 

マーティンに聞かされた限り、ゴジラを倒すために全力で挑んだが、やはり倒せず、最後はゴジラに特攻して死んだ…と聞かされた。

 

「ハルオは…迷って……溺れそうになった。奴に負けそうに…なった。だけど、勝った。それはハルオ…意志が、強い…から」

「『奴』?奴って?」

「ギドラ……黄金の輝きを放つ魔物…」

 

それを聞いた途端、リカは驚きのあまり立ち上がってしまう。

 

「黄金の輝き⁈…まさか…!」

 

漸くワタルを苦しめていた者の正体が分かり、急いでワタルの部屋に飛び込んだが既にその姿は無かった。

 

 

ーリカが来る5分前ー

右目を抑えて…ワタルは薬物依存者のように呟き続ける。

 

「助けてくれ…助けてくれ…助けてくれ…助けてくれ…」

『助けてほしいか?』

 

また…あの男の声が聞こえる。

だが、身も心も弱り切ってしまったワタルには、男を突き放す力は残っていなかった。

 

「お願いだ…。こんなの嫌だ…。解放してくれ…」

『本当に良いのか?ゴジラを倒すことを諦めた君が…』

「今更そんなこと言うのか?俺をここまでボロボロにさせといて…」

 

これがこの男の狙いだってことくらい…分からない訳ではない。

だが…永遠に見え続ける七芒星と何者かの連続した咆哮…。

この2つが消えるのなら…ゴジラを倒そうと人間を滅ぼそうと地球が滅びようとどうでもよかった。

何故なら…今にワタルは…全て、この苦しみから解放されたいの一心で動いてからだ。

 

「頼む…。もう…。神でも幽霊でも何でもいい…。俺を…俺を…助けてくれ…」

『…承知したよ…。それなら…その右目を貰うよ…。君の祈願は、必ず…私たちの神が果たしてくれよう!』

 

男が何か…結晶のようなものを高く掲げると、黄金の輝きが増していき、ワタルの意識はプッツリ途絶えた。

身体は一瞬、死んだように動かなくなったが、すぐに立ち上がった。

その右目では…七芒星が輝き、その光は全てのものを照らしていくのだった。

 

 

地球の近くに再び特異点が発生する。

今度は前よりも大きい。前回と違うことは、宇宙で舞っていたオラティオ号の破片が特異点に入る前に、人間の目に見えない程に粒子にされていった。

そして…再び見えた青い星に向かって、多量の赤き目を煌々とさせるギドラ…。だが、今回は頭と首だけではない。

全てが爛々と輝く身体が特異点から全て曝け出し、黄金の輝きを地球に見せつける。

今では青い地球も…金色に支配されていた。

ギドラはゆっくりと…黄金の翼を羽ばたいて、地球へと向かっていくのだった。




次回予告
堕ちてしまったワタルによって、再びギドラが地球に襲いかかる。
真っ暗な夜でも構わず、黄金色に染まる空に誰しも絶望を味わう…。
その時、フツアが長年守ってきた卵が…。
そして…リカも…。

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