ギドラはゴジラに噛み付いて、何度も…何度も地面や山に叩きつけて、力の差を見せつける。だが、3つの首の1つがある怪獣を捕捉する。ゴジラ を口から離し、凄い速度で迫ってくる者に目を向ける。
そして…ギドラから見て、山の上に現れたのは…七色に輝く蝶だった。
「なんだ、あれは?」
金色の中に七色の光が眩しく輝いていた。
しかもそれを放つのは大きな翅を広げて、ギドラに敵意を向けている巨大な蝶…。マーティンたちがその神々しい姿に見惚れていると、突然フツアの民は「おぉ」と言葉を漏らし、地面に膝を付いて手を合わせた。
「あれこそ……フツアが長らく待っていた救いの神…モスラ…」
「モスラ?」
モスラは翅を大きく羽ばたかせて、突風を巻き起こす。
そして…洞窟から出てきた双子は歌を歌い始める。
「モスラヤ……モスラ……ドゥンガンカクサヤン…インドゥムウ……」
その歌声に応えるかのように…モスラはゴジラとギドラのいる方向に高速で進んでいった。
そしてその歌は双子だけでなく、フツアの民全員が歌うにまで発展する。清らかな歌声は…夜空を覆う黒い雲よりも…澄んでいた。
ギドラの三つの頭は全て七色に輝くモスラに向いていた。
黄金に負けない光を放つモスラに興味を惹いたか…はたまた、新たな敵が現れたと認知して、今すぐに殺してやろうと思ったのか…。
正解は後者だった。
口元に電撃を溜めていき、一気に放射した。
モスラは何とそれを翅を羽ばたかせた際に舞い散る鱗粉を利用して、電撃熱線を反射させたのだ。
3つの光線はモスラに当たるどころか、放ったギドラの頭に直撃させた。受けた反動で一気に転げるギドラを横目に、モスラは倒れたままのゴジラの上に翅を休め、緑色の光を浴びせる。
マーティンから見ても、あれが何の役目を果たしているか瞬時に理解した。
モスラはギドラを倒す力は有してない。
だが、癒す力はある。そこでゴジラに力を与えて、ギドラを殺すことを任せようとしているのだと…。
だがギドラもそこまで頭が悪い訳ではない。
すぐに立ち上がり、長い尾でモスラの身体を掴むと虚空へと投げる。
投げられはしたが、モスラはすぐに態勢を立て直した大空を舞う。
再び電撃光線を放とうとしたが、1匹がそれを止める。
すると、突然大きな翼をぐっと閉じると、翼に噛み付いてエネルギーを蓄えていく。ゴジラに噛み付いていたお陰で、ギドラの腹の中はエネルギーで満たされている。
そして、翼を一気に広げると同時に何十もの電撃を空中に産出させた。
いくらモスラがギドラの光線を跳ね返す鱗粉を有していても、数十近い電撃を全て跳ね返すのは流石に不可能だった。
最初の数撃をどうにか凌いだだけで、後からは何度も食らっていき、翼の一部が焼け爛れて撃墜されてしまった。身体を炎上させながら、地面に落ちていくモスラにフツアの民と双子の姉妹は手を合わせて、その魂が安らかに行くように祈る。
邪魔者がいなくなったギドラは咆哮を上げて、嵐を更に激しくさせる。
だが、その時だった。
今まで倒れていたゴジラが突然立ち上がり、一本の首に噛み付いたのだ。唐突の襲撃にギドラも赤い目を見開かせているように見える。
そのままゴジラは乱暴に噛み付いたまま、ギドラを地面に伏せさせた。
「何だ?どこからあんな力が…!」
メトフィエスもこの事態ばかりは想定外だったようだ。
ゴジラはそこから足で何度もギドラを踏みつける。だが、ギドラも負けじと電撃で応戦する。
光線を胸に受けたまま後退していくゴジラだが、全く倒れない。
しかも…ゴジラの電撃ばかりが背びれに溜まっていく。一体何がどうなっているのか…誰にも分かっていない。
実は…モスラが撃墜された後に、自らが持っていた力をほとんどをゴジラに託したのだ。
そして残りは……。
ギドラの洗脳に耐えるリカに小さな声が耳に響く。
『大丈夫よ…もう少しで終わる…』
「え?」
『あの男の目に填められたモノを壊しなさい。そうすれば……彼は戻ってくる…。ギドラの力も…』
それだけ聞こえた。
あとは何も聞こえなかった。だが…メトフィエスの弱点が分かった。
耐えようと必死になろうと思ったが、既に洗脳する力もないのか、いつの間にかリカの身体は楽になっていた。
リカは立ち上がり、ゴジラとギドラの激闘を見ている隙に膝を蹴って、バランスを崩させる。
「なっ⁈」
そして、地面に押し倒すと右目に填まったモノに指を押し当てた。
「君は…!君も…‼︎この黄金の輝きを見て諦めがつかないのか‼︎滅びがない世界などない!それなら…いっそ…全て…!」
「そんなの…あんたが決めたただの御宅でしかない‼︎滅びが定めの世界なんてこの世にない!私たち人類は…この黄金を見ても…燃え盛る大地を見ても…焼け焦げた雲が覆う地球を見ても…決して屈しない‼︎それが…私たちが今まで生きてきた理由よ‼︎‼︎」
そう叫んで、填められたモノを砕いた。
途端にギドラが悲痛な叫びを上げる。
力を永久に与えてくれる源が断たれてしまった今、目の前のゴジラを止める術はない。逃げようと翼を広げて、大空に舞うが…ゴジラがそれを許してくれるはずがない。
眩しい黄金が少し鈍くなったギドラに青い目を向け、尾を高々と掲げる。そして一気に振り抜くと、青い斬撃がギドラの翼を直撃する。
翼の半分以上を焼き切られたギドラは地面に落下する。
そこに間髪入れずにゴジラは熱線を放つ。
ギドラも残った片翼にエネルギーを溜めて、十数の光線を放つ。
熱線と光線は衝突を繰り返し、連鎖爆発を生む。
しかし…ゴジラの熱線は止まらない。その後に放った1発は途中で枝分かれして、ギドラの至る所に着弾する。
ギドラは悲鳴を漏らし、ただ後退を続ける。
それでもゴジラは止まらない。
口元にエネルギーを溜め、ギドラに何発も当てる。
お陰でギドラはもうボロボロで、黄金の輝きはもやは無くなっていた。
そして…最後にゴジラは足をズンっと踏み込み、尾を地面に叩きつけて位置を固定する。
背びれの電撃も色合いが増していき、背びれどころか身体全体に広がっていく。
ギドラは口からか細い声を漏らして、ゴジラを見ている。
側から見ればもう戦意は失っているのに、ゴジラは容赦しない。
これが…この星に生きる破壊王の力…。
一段と太い熱線が…口から発射された。
普段放出する熱線の3〜5倍はあろうと言う太さだ。
それはギドラの長い首の真ん中を横切り、一回終わらせる。
ギドラは一瞬、立ったままだったが、3つの頭がすぐに落ちた。
そしてもう1発……特大の熱線を吐き、ギドラの肉片が一欠片も残らないレベルで全てを焼き尽くした。
ゴジラは青い目を天に向けて…怪獣王だと言わんばかりに…天高く咆哮するのだった。
のだが、ゴジラはすぐにとある場所に足を進めた。
それは焼け落ちて、力もないモスラのところだった。
フツアもマーティンも…止めを刺されるのではと危惧したが、ゴジラは数秒…モスラを見詰めると、その身体を優しく掴んでフツアの洞窟の近くに運んだ。
「ゴジラ……お前…」
リカに支えられ、左目を抑えたワタルも今の様子を見る。
ゴジラはモスラと人類、フツアを一瞥した後にその背を向けた。
感謝の印…それとも…共にギドラと戦い、その亡骸を運んでくれただけ…なのかは分からない。
何はともあれ、ゴジラは襲わなかった。
ワタルたちはゴジラの姿が見えなくなるまで…その勇姿をずっと眺めているのであった。
次回最終話
ギドラを倒し、平穏が戻った地球。
ワタルたちは今持っている人類の発明を捨てて、今の時代を生きることを誓う。
彼らが最後に掴んだものとは…何なのか…。
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