最終話 ゴジラ
ワタルたちの前から去っていくゴジラが焼き付いて…遂に視界から消えても…そこにいる者たちは釘付けになって暫く動かなかった。
そして最初に身体を動かしたのはワタルで、向かったのは光を失い、翅を焼かれ、無惨な姿になったモスラの亡骸だった。
何故…ゴジラがモスラをここまで持って来てくれたか…。
その真意は分からない。
だが、ゴジラにも何かあるからここまで連れて来てくれたんだ。
ワタルはモスラの身体に手を当て、目を閉じてこう呟いた。
「ありがとう…俺たちのために…」
それを聞いたリカたちもワタルに倣って目を閉じ、モスラの冥福を祈る。マイナとミアナは天に向けて、あの歌を歌う。
綺麗なソプラノ声が朝焼けの空に舞って行った。
それからはごく普通の生活だった。
唯一失ったと言えば、ワタルの右目だろう。メトフィエスの洗脳とギドラを呼ぶための眼帯をされたためだ。
実際、視界は以前より狭まり、よく物に躓きそうになるが、それをリカたちが支えてくれている。そんなことしてくれなくても…と、ワタルは言うのだが、彼らはやめない。
そんなリカたちに感謝をしながら、更に一年が過ぎた。
ある日、フツアの人たちが広場に木製のものを設えているのが見えて、ワタルは気になってミアナに聞いてみた。
「これは?」
「呪いよけ…準備……。これ、祈る…無事に生きられる…」
「呪いよけ…か」
形はまるで人のようで、大きな翼が生えた人間のように見えたが、その下には藁で作られた人形が2つ…手を繋ぎ合っている形で置かれていた。
「ハルオ…呪い……無くすため」
「……」
ワタルも今から考えてみると、本当はゴジラを殺したかったのかと疑問を持ってしまう。本当は……ただ、あの狭い船室で…暗い宇宙で…未知の星に行くのが嫌なだけだったのかもと思えた。
地球に還って…普通に生きていく…。
それが叶えたかった夢…。正に今のように…。
「…ワタル?」
「俺も…呪いよけをするよ。もう…二度と誰にも惑わされないように」
「それが、いい…」
マイナは笑顔を作ると、ワタルの手を取って座らせる。
そして…人形を渡す。
「おまじないをして。これが…呪いよけの儀式……」
「ああ」
ワタルはマイナに言われた通りに小さな声でおまじないを言い続ける。その横では…誰かに似た顔のフツアの子供が同じように詠唱していた。ワタルは一瞬、その子をどこかで見たことがあると、直感したが、そんな考えは放棄した。
彼にとって、人類が栄華を誇っていた時代は終わり、今は新たな時代に向かっている。昔会った人がどうとか、どうでも良かった。
彼はそれから外に出て、春の花が咲き誇る丘に座っていた。
こんな酷い環境でも生きていける生物は凄いと思いながら、花を一つ取る。
「…俺たちも…この花のように…しぶとく地球で生きていたら…何か違ったのだろうか…」
ああ……そうだよな…。
「え?」
聞いたこともない声が…どこかから聞こえた。
メトフィエスみたいな洗脳でもない。
この丘から聞こえた。
「誰の声だ?」
考える間もなく、リカが声をかける。
「ワタル!ご飯だよ!」
「すぐ行くから」
ワタルはそう言って、立ち上がり、そこから見える黒色の背びれを持つ怪獣に目を向けた。
相変わらず…ゴジラはこの地球に君臨する王だ。
だけど、ワタルは逆らう気がなかった。
何故か…それは、奴が…この地球自身だからだ。
ワタルはそう心に思いながら、花の丘から降りる。
そしてゴジラ・アースは…敵も居ないのに、高々と咆哮するのだった。
ー完ー
ここまで長らくお付き合い頂きありがとうございました!
これにて『GODZILLA Another stage 』は終わりです!
この話は戦闘がグダらないように書くのが非常に大変でしたね…。
何はともあれ、アンケートなど皆さんが協力してくれたお陰です。
またの機会が有れば!
それと、近々登場人物紹介はする予定です。
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