謎の生物に襲撃を受けたワタルたち一行はこの生物が何なのかカイルらと議論を展開していた。
「一体こいつは何だんだ⁈いきなり襲いかかってきて…!」
「…リカ、負傷者はいるか?」
「3名だけです。いずれも軽傷です」
「良かった…」
「ただ……」
「ただ…なんだ?」
「あいつらのせいで私たちが乗ってきた揚陸艇は全て破損して、無事に母船へ戻れなくなりました…」
それを聞いた周りの人たちは悲鳴とも言えない声を上げた。
それはそうだろう。こんな獰猛な生物がこの樹海の中に潜んでいるのだから…。すぐに逃げ出すという手段も絶たれてしまった。
「そいつは……ヤバイんじゃないのか?ワタル」
「ああ…。1度船長とコンタクトを取りたいのだが…どうも通信の調子が悪い…」
ワタルはもちろん他の隊員もだが、地球に到着してから満足な無線通信が出来ていないのだ。機械の不調だと思っているワタルだが、その不調が今は大きな問題となっている。
「とにかくここの警備は強化しよう。話はそれから……」
「大佐!また奴らが来ます‼︎」
話をしていると、どうやらさっきの奴らがまたこちらに向かって来ているらしい。すぐにワタルたちはパワードスーツや多脚砲台に乗って、奴らを迎え撃とうとする。
そして森から飛び出して、引き金を引きかけた時、向こうからヒュンと風切り音が聞こえた。そして、その風切り音が聴こえてすぐに奴らの頭や首辺りに弓矢が突き刺さっていた。
怪物は悲鳴を上げて倒れ、何かに恐れるようにワタルたちの前から消えていった。
「今のは⁈」
全員が振り向くと、そこには仮面を付けて弓を構える謎の集団が立っていた。肌は褐色で、まるで縄文人のような身なりをしている。更に褐色の肌には白いペンで塗られたように鮮やかな模様が入っている。カイルたちはすぐに怪しみ、銃火器を構える。だがワタルは…。
「待て!撃つな‼︎彼らは助けてくれたんだ!」
確かにその通りだ。もし彼らがワタルたちも敵と見なしているなら、既にあの矢で射抜かれていることだろう。
「ちょっ……ちょっと失礼!やっぱり!君たちは…!」
謎の集団の間から同じ服装をした人物が現れたが、彼らとは明らかに違った。まず仮面を付けておらず、何より肌が白だった。髪は金髪で年は30代後半から40代前半に見える。
「君たちは…オラティオ号から来たんじゃないのか⁈」
「ど、どうしてそれを…。それにあなたは?」
「ああ!失礼、私はアラトラム号少佐のマーティンだ」
『アラトラム号』の名を聞き、誰しも驚いた。まさか…生き残りがいたなんて…と。
「俺はオラティオ号大佐のワタルだ。マーティン少佐、地球は…一体どうなっているんだ?」
「話したいことは山々ある。だけど、早くここから離れよう。彼らが君たちを保護してくれる」
そうマーティンが言うと、謎の集団たちは頷いた。
何にせよ、ここから離れるのは先決だと思ったワタルは、マーティンたちの後を付いていくのだった。
ワタルたちが到着したのは岩壁に作られた洞穴だった。入り口には木製の門があり、勝手に入ることは出来ない。マーティンや彼らはすぐに入っていくが、ワタルたちは少し躊躇してしまう。
全く分からない種族の住居に入っていくなんて…誰しも足を止めてしまうことだろう。だが、ワタルは意を決して洞穴の中に足を踏み入れた。それを見たリカやカイルも、勇気を振り絞って中に入っていく。
中は意外と明るかった。母船の灯りには負けるが、それでもここで生きていくだけなら十分な光量だった。狭い通路を進んでいき、途中で開けた場所に出た。
そこには無数の穴があり、そこからは仮面を被っていない彼らは出入りしていた。
「あそこが彼らの家だよ」
マーティンはここで説明を入れてきた。
「彼らはフツアの民だ」
「フツア?」
「我々が地球から脱出した後でも残っていた人類の末裔たちだ」
それを聞いて、ワタルの心は締め付けられた。
彼らが、自分たちが置いてきた人類の末裔なのかと…。20000年経っても生き残っていた驚きと嬉しさ、そして、昔の時代より遥かに文明が衰退した光景に…ワタルは申し訳ない気持ちで一杯になった。
「私も彼らに助けられた。フツアは友好的な種族だから警戒することはない」
「ありがとうございます、マーティン少佐」
「マーティン少佐は慣れないな。いつも『博士』って呼ばれてたからね」
「では…博士、あの生物は何ですか?」
ワタルはここで1番気になっている質問をマーティンにぶつけた。マーティンは淡々と説明を始める。
「あれはゴジラの細胞を持つ生物……厳密に言えば、ゴジラの亜種、と言ったところだ」
「ゴジラの…亜種?」
「それだけじゃない。この地球上のほとんどの生物にG細胞が入っている。つまり…地球そのものがゴジラにひれ伏したということだ」
「そんな……そんなことが…」
リカは信じられないと言いたげな声を上げた。
「確かに信じられないだろうが、それが事実だ」
「……博士、他の人は?アラトラム号の…」
「ほとんどが死んだよ。母船は恐らく…アイツに…」
「アイツ…?まさかゴジラが!」
「違う!ゴジラじゃない!」
マーティン即座に否定した時の表情は恐怖で歪んでいた。
あの表情はただ者ではないと分かったワタルはそれ以上聞かないことにした。
「博士、じゃあ、ゴジラはまだ……」
「ああ、生きているとも…」
それを聞き、ワタルは例の研究内容をマーティンに見せた。
「マーティン博士、これで…本当にゴジラは倒せるのですか?」
マーティンがその内容を見ると、一瞬で目を丸くさせて、ワタルたちを一瞥した。
「どこでこれを⁈」
「放置されていた揚陸艇の中にありました。…中には自殺体も…」
「これは……サカキ大尉の…」
マーティンはそう小さく呟く。
ワタルにも『サカキ』の名は聞こえたが、それが誰なのか全く分からない。
「確かにこれで倒せるが……奴は……」
マーティンが更に何か言おうとした時、大地が揺れた。
ゴゴゴゴと地面が鳴り、この洞穴内の小石が僅かながら落ちてくる。
そのすぐ後に、ワタルたちの耳に絶対に聞き間違えることのない雄叫びが…洞穴に響いてきた。
「今のは……!」
「ゴジラだ!」
「外からだったぞ?しかもかなり近い!」
「カイル、リカ、部隊を編成して行くぞ‼︎」
そう言って、ワタルはゴジラに対する憎しみを抱いたまま洞穴から出て行く。マーティンはそれを止めようとしたが、その姿は初めに見たハルオにとても似ていて、止めようにも止めれなかった。
だが、マーティン以外…オラティオ号の船員は知らない。
この星に20000年という長い月日を生き抜いたゴジラが……どれほど恐ろしく…強大な敵だということを…。
その頃、マイナは子供を抱いて、卵の前で祈りを捧げていた。
もうじき、ハルオが死んで1年になるがこの子がすくすくと育ってくれれば……と願っていた。
すると、固く閉ざされていた卵の一部に、ピキッとヒビが入った。
「え⁈」
驚きのあまり、間の抜けた声を上げてしまうマイナ。
だが、その一回だけでそれから卵には何の変化も見られなかった。
しかし…産まれようとしている卵の中の何かに、これはまた良からぬ前兆なのでは…とマイナは思わざるを得なかった。