申し訳ありません。
ワタルたちが外に出ると、例の震動がより大きいことが身を持って感じた。フツアが住んでいる岩壁の脆くなったところはゴロゴロと小石が落ち、金属質な木々はバサバサと揺らめいている。
その樹海からは先程ワタルたちを襲った怪物たちも何かから逃げるように急いで大空へと舞って行く。
そして…その樹海の中に一際大きな黒い身体が姿を現した。
アレを忘れる者はいない。木々を薙ぎ倒し、着実にこちらへと足を進めるゴジラは…ワタルたちを見つけたのか大きな咆哮を轟かせた。
「マズい!ゴジラはこっちに来ている…!」
「急いで揚陸艇に戻って、奴の気を逸らすんだ‼︎フツアの人たちの居場所を無くす訳にはいかない!」
「待て‼︎ワタル大佐!」
そう指示していると、洞窟からいつの間にか機密服に着替えたマーティンが出てきた。
「博士!」
「君たちは揚陸艇に戻ってゴジラから距離を取るんだ!足止めはフツアの人たちがやってくれる」
「え?でもどうやって…」
リカが困惑していると、マーティンは声を荒げた。
「早くするんだ‼︎全滅するぞ!」
「わ、分かった!全部隊!急いで揚陸艇へ戻るんだ‼︎」
方向は分かっているため、ワタルたちは揚陸艇に戻ることは出来る。
しかし、それではここにいるフツアの人たちはどうするのか、ワタルは気になったがマーティンがああ言っている以上、信用するしかないと彼は思った。
全員が樹海の中を駆け抜けている間、双子のマイナとミアナは卵に手をかけていた。ミアナは最初、上の方に出来ている
マイナとミアナの能力は、人類と対話するための架け橋とするだけではない。ハルオの時、マイナは彼を助けるために卵の力を借りた。それと似たようなことを今回もするつもりだった。
「「卵よ、我らの願いを聞いてくれたまえ。我らフツアの民を…守りたまえ!」」
ワタルが揚陸艇に乗り、エンジン作動するのを待っていると、突然ゴジラが近付こうとしている岩壁から離れたところに輝く影が出来上がっていった。
その形は、ここにいる生物とは異なったもので、誰の目から見ても昆虫の形をしていた。ゴジラはその姿を捉えると、そっちに標的を変えた。それを確認した昆虫の幻も背を向けて、岩壁と真逆の方向に向かっていく。
だが、それを逃さないと言わんばかりにゴジラは背びれに電気エネルギーを蓄積させ、口先から熱戦を放出した。
昆虫の幻は熱戦をすり抜けたが、熱戦で掻き消されてしまった。しかも熱戦は樹海の真ん中に着弾し、爆発を起こした。
ゴジラは昆虫の幻が消えたことで、獲物を始末したと思い、再び咆哮を上げた。だが、囮となっていた昆虫幻が消えてしまい、ワタルたちが乗る揚陸艇の存在に気付かされてしまった。
「マズい!早く離陸しろ!」
「それだと間に合わない‼︎逃げてもこの揚陸艇は修理したばかりでエンジンはボロカスだ!誰かが囮にならないと、全員死ぬ!」
ワタルはそう言って、自分が囮になるために多脚砲台に乗り込もうと席を立ったが、カイルに止められた。
「俺が行く。お前は皆をまとめてくれ」
「バカ言うな。ここは皆をまとめる俺だから行くんだ」
「ゴジラを倒して地球を取り戻すのが…お前の長年の悲願だろ?」
そう言われて、ワタルは何も言えなくなってしまった。
「俺に任せろ」
カイルはそう言いきって、1人多脚砲台に乗り込んで、揚陸艇とは別の方向に進むと同時に砲撃を開始した。その光景をモニター越しに見ているワタルは驚愕した。あれでは自らをターゲットにさせているも同然だった。
「何やってるんだ‼︎早く離れろ!」
『いいや…俺にはワタルたちをここに連れてきた罪を償う必要がある…。こんな危険だらけの地球へと連れてきたな…』
「連れてきた?何を…」
『俺とベルド代表で人工知能をコントロールして、ここに連れてくるように仕向けたんだ…』
それを聞いている全隊員は大きく目を見開いて驚いた。
リカはユリの言う通りだったんだと思った。
そんな話をしてる間にも、ゴジラは背びれからのエネルギーで空間電位を上昇させていく。
「もういい!そんなことは後ででいいだろ⁈早く脱出を…」
『ワタル』
無線から聞こえたカイルの声は、実に清々しいものだった。
『ゴジラは…任せたぞ…』
ワタルがまた何か言おうとした時、無線に強烈なノイズが入り、防護マスクの横に『No Signal』と表示される。
外を見ると、ゴジラの側では何かが炎上していた。それがカイルの乗っていた多脚砲台であることはすぐに分かり、ワタルは彼の名を呼ばずにはいられなかった。
「カイルーーーーーー‼︎‼︎」
その声は虚しく響くだけであった。
ワタルたちは1番最初に着陸した盆地にまた集まり、現在状況をカールに報告していた。
『何⁈カイル中佐が殉職⁈』
「はい…今すぐ地球に帰還しようにも、揚陸艇はほとんど損壊して航行不能。しかもそちらから新しい揚陸艇を用意してもゴジラに撃墜されるでしょう」
『では、どうするつもりだ?』
「ゴジラを倒すのみです」
まだカールが何か言いたげな表情だったが、すぐに無線での通信は終了した。
ワタルは一息吐き、カイルの死をしっかりと受け止めた。
幼き頃に経験したことだからもう慣れていると思っていたが、そんなことは微塵もなかった。
やはり…友が死んだ悲しみは襲ってくる。20年宇宙を放浪していてもそこは変わっていなかった。
ワタルは多脚砲台の上に立ち、全員の表情を伺う。
そこには2種類の表情があった。1つは完全にゴジラという最悪の化身に対する恐怖心が蘇った者または感じた者。もう1つは、ワタルと同じようにまだゴジラとの戦いを諦めていない者…。どちらかと言えば前者が多い。当たり前だろう。初めてゴジラを見たと思われる若者も少なくはない。
すると、リカも砲台に上がってきてワタルに聞いてくる。
「ワタル大佐、これからどうするんですか?」
「…俺はカイルの死を無駄にはしない。あいつは俺たちに重要なことを教えてくれた。みんな!聞いてくれ!」
ワタルの声に全員が耳を傾けた。
「カイル中佐は言っていた。『ここに連れてきたのは俺だからその罪を償う』…と。だが、それと同時に奴はゴジラを倒すための重要なことをしていたんだ。一部の者は見ただろうが、ゴジラを倒す方法の書類にあったシールドを増幅させる部位…それをあいつは…自らの命と引き換えに教えてくれた」
「その…部位とは?」
「背びれだ。そうと分かれば話は早い。俺はあのマニュアル通りに作戦を展開させて、ゴジラを倒す」
「しかし…ワタル大佐!アレで本当にゴジラを倒せるなんて確信があるんですか⁈」
そういう声があることはワタルも予想はしていた。
ここにいる者たちの大半は弱気だ。そんなのではゴジラに対抗出来るわけがない。
「じゃあ…また放浪の旅に出るか?」
「ちょ…大佐!」
リカが発言を止めようとするが、ワタルは続けた。
「俺は幼い頃、ゴジラを倒す倒すと言っていた大人たちを信用していた。だが…結局は倒せず、俺たちは星を捨ててまで逃げ出した。それをもう一度繰り返すのか⁈歴史を繰り返すのか⁈俺はここで断ち切る。20年もの間、俺たちを苦しめてきたゴジラを倒して…!」
ワタルの強い意志が篭った演説は効果絶大だった。絶望に満ちていた隊員たちの心を和らげていった。
暫く無言が続いていると、1人の隊員が「俺、やります!」と声を上げた。それに続いて続々とゴジラ討伐戦に望む声が上がった。
「みんな、ありがとう!」
「私たちも手伝おう‼︎」
「マーティン博士!」
再びマーティンは姿を現した。
「フツアの人たちを安心させるにも奴は倒さなくてはならない」
「よし、リカ!まずは母船との通信を万全にするんだ」
「了解!」
そうやって、作戦の準備を始めると、不意にワタルの右目にツンと痛みが走った。
「っ!」
一瞬閉じた右目をもう一度開くと、そこは全くの別世界だった。
見たことのない図形が水晶体の中を移動していた。
そして…男の声が聞こえた。
『やはり……時は、我々の味方だった…』
そう聞こえてからすぐに右目の痛みも別世界の情景も無くなった。
「なんだ…今の…」
とても印象的で忘れられそうにないが、今はゴジラのことで頭がいっぱいなため、ワタルは忘れようと思った。
だが、これは…再び黄金の翼が舞い降りる前兆であったのだ…。
ギドラを登場させないとか、ゴジラではあってはならない。
次の投稿でアンケートは終了なので、まだ済ませていない方はお早めに。