GODZILLA Another stage   作:GZL

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第7話

「それで…どうやって奴を仕留めるんですか?」

「ゴジラが非対称性透過シールドを増幅させる部位は分かった。作戦もある。しかし…どうやって背びれを破壊するか…だ」

「一斉射撃ではダメなんですか?」

 

まだゴジラのことをあまり知らなそうな青年がそう聞いてきた。

ワタルは彼の前に立ち、質問する。

 

「名前は?」

「はっ!ムンベルト・シャー少尉です!」

「今から言うことを覚えておくんだ。それで、この事実を知らない者たちに伝達するんだ」

「分かりました!それで…その内容は?」

「ゴジラは攻撃を受けると、シールドを展開する。このシールドは核兵器でも破れなかった代物だ。今の俺たちの装備では奴には勝てない。だから、シールド展開を無くすまで無理な攻撃はしないようにと」

「はい!」

 

シャーは先にホバーに乗って、伝達に行った。

すると、マーティンが手を挙げて言った。

 

「問題はまだある。どうやってゴジラを足止めするかだ」

「どうして足止めを?」

「あの作戦通りにするには、ゴジラを固定し、なおかつ背びれを狙える位置に置いておかなくてはならない。だが…一斉砲撃だとそれは難しい」

「それなら……私に案が…」

 

すると今度はユリから案が出た。

 

「今はとにかく何でもいい。言ってくれ」

「こうすれば………」

 

ユリの案を聞いた4人はそれなら行けるかもしれないと思った。

 

「よし!作戦は決まった!母船に連絡だ。あのエネルギー砲を撃って貰えるようにしないと……」

 

 

 

 

作戦の準備が始まった。

まず、ゴジラを特定の位置に誘導する。これはホバー数百機と多脚砲台で対処する。

同じくホバーに乗っているワタルは指揮官ではあるが、自らこのホバー部隊に志願した。一部のビルサルドからは止めろと言われたが、ただ指揮しているにだけでは彼の気が収まらなかったのだ。

 

「かなり危険な作戦だ。フツアの人たちも手伝ってくれるが、油断はするなよ」

 

無線を通じてそう言う。

実際、ワタルも怖かった。あのゴジラと再び戦うのだ。これまでどの国が戦っても倒せなかったゴジラを…こんな捨て身の乗り物で近付くのだ。

 

「…!目標確認!」

 

1人の隊員が声を上げた。ワタルも上空から見えた黒い外殻を見て、鋭い眼差しを向けた。

彼らはこれから…荒ぶる神に対して…戦いを挑むのだ。

 

「砲撃グループ!もしゴジラが俺たちホバー部隊を標的にしたら、どこに当ててもいいから撃つんだ!高速移動しながらな。出来るだけ犠牲を少なくするんだ!」

『了解‼︎大佐!』

 

リカのきちんとした声に安心するワタル。

 

「よし‼︎行くぞ‼︎」

「目標ゴジラ胸部!…撃てぇ‼︎」

 

ホバー部隊は一斉に砲撃を開始する。

もちろんゴジラに効くはずはない。それは分かっているが、これでもダメージを与えられないのかと、隊員の中では思っている者もいることだろう。

 

「旋回しろ!」

 

ゴジラを軸として、部隊は固まったまま旋回する。

これはホバーに乗り慣れた者でも至難の業であった。ほとんどが成功はするが、中には…ゴジラの身体のどこかにホバーが衝突し、そのまま落下する者もいた。

それを見たワタルは舌打ちをしながらも、全員に指示する。

 

「上昇しろ!ゴジラを引きつけるんだ‼︎」

 

ワタルたちはゴジラの背中を取っている。

ゴジラもワタルたちに興味…というか敵視したのか重たい身体をホバー部隊の方に向けた。

 

「大佐!ゴジラがこちらの方を向きました!」

「よし!誘導開始だ!行けるぞ‼︎」

 

だが、突然ホバーから騒がしい程の警告音が鳴り響く。

装着されたモニターには自分たちの真後ろで『Danger(危険) 』の文字がいくつも現れた。

 

「…!避けろ‼︎」

 

熱戦が放たれる前にに叫びはしたが、ゴジラの熱線は凄まじいものだった。

部隊の中央を貫き、たった1発の熱線で部隊40人のうち5人が餌食となった。ならなかったワタルたちも熱線の影響か、ホバーが激しく揺れた。

 

「陣形維持だ!このまま引き付けろ‼︎」

 

ゴジラから距離を取ろうとするワタルたちの背中を狙うようにゴジラはもう1発熱線を放とうとする。

すると樹海の方から一斉に砲弾が飛んできて、ゴジラの顔面を直撃した。ゴジラは熱線放出を中止し、青い瞳を樹海内にある多脚砲台に向けた。

 

「今よ!ホバー部隊と同じ方向に走って‼︎全速力よ‼︎」

 

リカの指示で数台の多脚砲台は一気に加速して、トラップの方へと移動を開始した。

今のゴジラはホバーと多脚砲台と、2つの獲物が見えていた。

それらを完全に滅ぼすまで…ゴジラの進行は止まりそうにない。

 

「ユリ!爆発準備は出来たか⁈」

『大佐!すいません‼︎まだもう少し!』

「くそっ!このままじゃ…」

『足止めを!あと2分…!』

 

ユリはそう要求するが、2分間ゴジラの進行を食い止めつつ、尚且つ犠牲をあまり出さない方法は何かないかと考えた。しかし、そんな都合のいいものがあるわけがない。

 

「みんな!よく聞いてくれ‼︎今、爆破チームから連絡があったが、まだ時間が掛かるそうだ。それでゴジラの進行を止めなくてならない。それには…君たちの命が危険になる。ここで作戦から離脱したいものがいるなら、勝手に出て行ってくれ。俺はまずお前たちの命を優先する!」

 

この発言の後、ワタルの無線に聞こえてきたのは…ワタルが思っていたのとは逆のものだった。

 

『何言ってるんですか⁈私たちはもう命なんかとっくに捨てる覚悟があります!だって…私たちは大佐の背中を押すんですから‼︎』

 

リカの声を筆頭に次々と励ましの声が出てきた。

ワタルは嬉しくて、涙を流してしまう。拭うことは出来ないが…ワタルは覚悟を決めた。

 

「よし‼︎ゴジラにもう一度攻撃だ‼︎1秒でも長く足止めするんだ‼︎」

 

ホバー部隊は急転回して、ゴジラの正面から突っ込んで行く。

もちろんそんな好機をゴジラは逃さず、自慢の熱線を浴びせる。左右に別れて避けつつ、ゴジラに砲撃してその場に留めさせる。

それを繰り返していると、ユリから連絡が入った。

 

『終わりました‼︎もう足止めは大丈夫です!』

「分かった!すぐに誘導するんだ‼︎」

 

ホバーは再びゴジラの熱線が届かないところにまで飛行し、多脚砲台はさっさとトラップのところに向かって行った。

ゴジラも獲物を逃さまいと大きく重い足を必死に動かす。

だが、いくらゴジラでも…人類の知恵がどれほど豊かなのかは、分からなかった。

 

「起爆しろ!」

 

ワタルの一言でゴジラの足元では、大地震ではないかと思うくらい激しい震動が発生し、ゴジラの下半身が陥没穴に埋まった。これにより、ゴジラは動きを制限されてしまう。

 

「背びれを重点的に狙うんだ!ノイズ波形を(おこた)るなよ!」

 

予定の位置に配置されていた砲台から何十発と砲弾が飛んでくる。ゴジラは雄叫びを上げるが、下半身をまともに動かせなくては抵抗のしようもなかった。

ワタルはホバーで上から観察しながらも、母船のベルドに連絡した。

 

「ベルド!いよいよだぞ?」

『我々の祈願が叶う瞬間だ。いつでも発射体制は出来ている』

 

暫く砲撃を続けていると、ゴジラの背びれから青白い電撃が走った。

非対称性透過シールドが出来る予兆だ。その波形も全ての隊員のモニター出されている。

 

『同調までもう少し…!』

 

全隊員が息を飲む。

 

「今だ‼︎背びれに集中砲火‼︎」

 

ゴジラのシールドが展開される前に、ワタルたちはゴジラの背びれを破壊してシールド構築を阻止した。これでゴジラは丸裸になったも同然だった。

 

「背びれの破壊を確認!」

「ベルド‼︎やれ‼︎」

『おう!』

 

ベルドの声と共に、曇っていて暗かった空が仄かに輝きを持ち始めた。エメラルドグリーンの輝きが空を覆い、1本の光線が動けなくなったゴジラの背中を貫いた。

ゴジラは悲壮な目をワタルや他の隊員を向け、小さな雄叫びを上げた。

 

「これが……人類の力だぁぁ‼︎‼︎」

 

ワタルがそう叫ぶと同時にゴジラの背びれから青白い電撃が走り、その身を粉々にした。周囲の樹海が少し吹き飛び、ゴジラは絶命した。

ホバーから降り、その堕落した姿を見たワタルは力なく近くにある岩場に腰を下ろした。

 

「はあ………」

「大佐!やった…!やりましたよ‼︎」

「ああ……俺も、夢なんじゃないかと思ってるよ、リカ…」

 

他の隊員たちも絶命したゴジラの周りに集まり、それぞれ歓喜の声を上げた。

そんな中で1人だけ、厳しい表情だったのが、マーティンだった。

 

「今回も…どうにか倒せたか…」

 

マーティンの小さな呟きをワタルは聞き逃さなかった。

 

「え?博士、今のはどういう……」

 

『ことか』と続けて、聞こうとした矢先のことだった。

突然地面が激しく揺れ出し、ゴジラの亜種…通称セルヴァムたちが再び翼を広げて上空へと逃げ出す。

他の隊員も狼狽(うろた)えていると、今度は青白い光線が地面から立ち上がった。それは死んだゴジラと周りにいた隊員数十人を巻き込んで、全てを焼き払った。

 

「なっ⁈」

「まさか……あれは…!」

 

光線はすぐに消え、次に現れたのは巨大な尾だった。

さっきのゴジラより何倍も大きい尾は凄まじい勢いで地面に叩きつけ、地面を更に揺らした。

 

「博士!アレは⁈」

「…我々が“最初”のゴジラを倒した後に現れたのと、同じだ…。全てを焼き払い、どんな敵をも寄せ付けない絶対な存在…」

 

マーティンが独り言のように呟いていると、尾の次に…巨大な背びれが見えた。その背びれからは電気がピリピリと走り、先程の熱線が誰が放ったか、一目瞭然だった。

 

「そんな…奴は…嘘だ……」

 

ワタルは恐れを成したようにか細い声を上げた。

 

「誰も勝てる者はいなかった…。20000年の歳月を生き抜いた究極の生物…」

 

そして、遂にその全体像を見せた“奴”は……巨大なゴジラだった。

マーティンは感慨に(ふけ)るように、その名を呼ぶのだった。

 

「破壊の王…ゴジラ・アース…」




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