黒い龍は幻想で笑う   作:青い灰

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朧さん悪役ロールに徹します。




終章 第2話「花鳥風月」

 

 

荒れ狂う爆炎が華麗な華々を包み、

爽やかな緑の光が凍てつく氷晶を穿つ。

 

 

「ぬぅァ!!」

 

「はッ!!」

 

 

白い氷の剣と緑の巨大な蔓がぶつかり合う。

朧の大振りの一閃が大量の蔓を焼き切る。

 

幽香が押されているのは火を見るより明らか。

 

 

「炎に向かう蛾とはこのことよ!!

 たとえ自然全ての化身と言えど、

 焼き尽くす炎と凍てつく氷結には敵うまい!?」

 

「………ぐ……っ!?

 たとえ、それでも………!!」

 

 

幽香が朧を取り囲む炎と氷晶へ緑の熱線を放つ。

それぞれは掻き消え、砕かれる。

 

幽香はそのレーザーと共に朧に急接近。

朧の抜いた刀と閉じた傘を打ち合わせる。

息のかかる距離で鍔競り合いになる。

 

 

 

「例えば、暑く燃えるような砂漠で!

 例えば、寒く凍てつく雪原で!!

 厳しい環境の中に咲く一輪の花こそ、

 高潔で、そして何よりも美しいのよ!!!」

 

 

 

幽香が鍔迫り合いに押し勝つ。

朧はすぐさま体勢を立て直し、

身体から炎と冷気を放出して幽香と距離を取る。

 

 

「ならばその一輪、守り通せるか!!?」

 

 

熱気と冷気の勢いが更に増し、

地面が燃え上がり、凍てついてゆく。

幽香も熱線を放つが、一瞬弱まるだけで変化がない。

 

その瞬間、炎が全て消失する。

朧が白い氷の剣を振り上げ、構える。

大技が来ることを察知した

幽香はすぐに対策を取る。

 

 

「潰れろ」

 

 

右足を大きく踏み込み、

朧は氷の巨剣を振り下ろす。

凄まじい冷気が光と共に振り下ろされ、

周囲一帯を焼き払う。

 

白い光は上空に円柱状に巻き上がり、

巨大な光の柱を作り出した。

 

 

「ぐ………っあ、あああああぁぁぁあぁぁッ!!!」

 

「………っ……」

 

 

光に包まれた幽香に朧は一瞬、力を弱める。

そして、

 

 

「やっと………隙を見せたわね」

 

「!?ごがァ、ッ!」

 

 

弱まった炎の中から飛び出した幽香の

傘の一撃を受け、吹き飛ぶ。

 

 

「…………ふふ」

 

「──何が、おかしい………!」

 

 

朧は立ち上がり、幽香を睨む。

幽香は口元の血を拭い、クスリと笑う。

 

 

「貴方は本当に、どこまでも人が良いのね」

 

「なら、お前をここで始末してやる」

 

「出来ない。貴方は私を………いえ、

  貴方は()()()()()()()()()()()()()

 

 

幽香は朧の覇気に負けず、睨み返す。

そして、そう断言した。

 

 

「何を……」

 

「全く変わらないのよ。

 いえ、貴方は変わることを放棄したからこそ、

 もう誰も殺せなくなっているのよ」

 

「………」

 

 

朧は俯き、炎と冷気の勢いを増して

幽香へ襲いかかる。

 

振り下ろされた氷の剣を幽香は地面から

伸びる蔓で防御する。

明らかに、威力が落ちている。

 

 

「今だってそうよ、"ここで始末する"?

 なら今まで私を殺す気はなかったのでしょう」

 

「黙れ!!」

 

 

巨大な氷柱が氷の飛礫と共に空中に出現し、

幽香を目掛けて飛来する。

 

幽香は弾幕を張って飛礫を全て撃ち落とす。

巨大な氷柱が迫るが、

幽香は熱線を撃って破壊する。

 

 

 

「貴方は、どこまで行こうと人なのよ。

 たとえ、幾億の時を経ても、その姿を変えても」

 

 

 

幽香はスペルカードを抜く。

朧は歯軋りをする。

 

 

「スペルカード……そこまで舐められたか!!

 これは遊びではなく、殺し合いだ!!!」

 

「誰も殺せない貴方を止める───!!」

 

 

幽香の身体から光が漏れだし、

妖精としての姿が顕現する。

巨大な虹色の花弁が幽香の背後に現れ、

虹色の光が一帯を照らす。

 

 

「"幻想"」

 

「させるか───!!」

 

 

朧がスペル発動を防ごうと、

炎を発生、幽香を爆炎が包み込む。

 

 

「『花鳥風月・嘯風弄月』───!!!」

 

 

全方位に向かって弾幕が発射され、

弾幕が炎を打ち消し、朧へ襲いかかる。

それは降り注ぐ雨のように、

周囲一帯を埋め尽くす回避不能の弾幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凍てつく冷気が、

弾幕を撃ち終わった幽香を襲った。

 

 

「…………甘いのはそちらだったようだな」

 

「ふぅっ、ふ、っ、はぁ、っ、はっ」

 

「自然の化身………難儀だな、

 冷気と灼熱の中にいるだけで命を削るとは」

 

 

その周囲は今でこそ暖かな風が吹いているが、

先ほどまでの戦闘では場所によって

―50度、200度以上の地獄。

 

生物では息をしているだけでも

肺が凍るか火傷する場所だ。

そんな場所に自然など存在できるわけがない。

幽香は戦いの中でも命を削られていた。

 

 

「死ぬことのない妖精でも、生き地獄は辛かろう」

 

「ふぅ、っ、は、ぁっ、そう、ね………」

 

 

朧は周囲を見回す。

墓と思われるものは無事だったが、

先の戦闘である場所は焼け焦げ、凍てついている。

 

 

「荒れ果てたな………まぁ、いい。

  もうここに来ることもないだろう」

 

「…………あの墓を、守りながら戦っていたのね……」

 

「どうせ俺を追ってくる者も

 じきに此処へ辿り着くだろうな。

 伝えろ、『諦めろ、追ってくるな』と」

 

「何処へ…………?」

 

「動けないお前に伝えたところで………

 ………いや、動けないからこそ、か」

 

 

朧は幽香を見下ろす。

 

 

「───────地獄へ向かう。

 黒雨の影響であらゆる境界が歪んだ今なら

 アレを引きずり出し、殺すことも出来る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

去った朧を見送り、

その空間だけに広がる青空を眺め、

幽香は随分前の記憶を思い出していた。

 

 

「ここまでやられたのも………あの日以来かしら」

 

 

そして、朧が守っていた小さな墓を見つめ、

その名前を口にした。

 

博麗の巫女と呼ばれる最初の存在。

そういえば、今代の巫女、300年前の巫女と、

かなり似ていると、幽香は思い出す。

 

 

「覚えてる………?

  ───────靈夢」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






幽香さんが大妖精という設定はオリジナルですが、
思い付いた理由は大ちゃんとの共通点が多いのと、
旧作のセリフですね。

幽香「何よ、人を妖怪あつかいして……」
靈夢「人じゃないくせに……」

妖怪でしょ?え、違うの?

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