朧さん悪役ロールに徹します。
荒れ狂う爆炎が華麗な華々を包み、
爽やかな緑の光が凍てつく氷晶を穿つ。
「ぬぅァ!!」
「はッ!!」
白い氷の剣と緑の巨大な蔓がぶつかり合う。
朧の大振りの一閃が大量の蔓を焼き切る。
幽香が押されているのは火を見るより明らか。
「炎に向かう蛾とはこのことよ!!
たとえ自然全ての化身と言えど、
焼き尽くす炎と凍てつく氷結には敵うまい!?」
「………ぐ……っ!?
たとえ、それでも………!!」
幽香が朧を取り囲む炎と氷晶へ緑の熱線を放つ。
それぞれは掻き消え、砕かれる。
幽香はそのレーザーと共に朧に急接近。
朧の抜いた刀と閉じた傘を打ち合わせる。
息のかかる距離で鍔競り合いになる。
「例えば、暑く燃えるような砂漠で!
例えば、寒く凍てつく雪原で!!
厳しい環境の中に咲く一輪の花こそ、
高潔で、そして何よりも美しいのよ!!!」
幽香が鍔迫り合いに押し勝つ。
朧はすぐさま体勢を立て直し、
身体から炎と冷気を放出して幽香と距離を取る。
「ならばその一輪、守り通せるか!!?」
熱気と冷気の勢いが更に増し、
地面が燃え上がり、凍てついてゆく。
幽香も熱線を放つが、一瞬弱まるだけで変化がない。
その瞬間、炎が全て消失する。
朧が白い氷の剣を振り上げ、構える。
大技が来ることを察知した
幽香はすぐに対策を取る。
「潰れろ」
右足を大きく踏み込み、
朧は氷の巨剣を振り下ろす。
凄まじい冷気が光と共に振り下ろされ、
周囲一帯を焼き払う。
白い光は上空に円柱状に巻き上がり、
巨大な光の柱を作り出した。
「ぐ………っあ、あああああぁぁぁあぁぁッ!!!」
「………っ……」
光に包まれた幽香に朧は一瞬、力を弱める。
そして、
「やっと………隙を見せたわね」
「!?ごがァ、ッ!」
弱まった炎の中から飛び出した幽香の
傘の一撃を受け、吹き飛ぶ。
「…………ふふ」
「──何が、おかしい………!」
朧は立ち上がり、幽香を睨む。
幽香は口元の血を拭い、クスリと笑う。
「貴方は本当に、どこまでも人が良いのね」
「なら、お前をここで始末してやる」
「出来ない。貴方は私を………いえ、
貴方は
幽香は朧の覇気に負けず、睨み返す。
そして、そう断言した。
「何を……」
「全く変わらないのよ。
いえ、貴方は変わることを放棄したからこそ、
もう誰も殺せなくなっているのよ」
「………」
朧は俯き、炎と冷気の勢いを増して
幽香へ襲いかかる。
振り下ろされた氷の剣を幽香は地面から
伸びる蔓で防御する。
明らかに、威力が落ちている。
「今だってそうよ、"ここで始末する"?
なら今まで私を殺す気はなかったのでしょう」
「黙れ!!」
巨大な氷柱が氷の飛礫と共に空中に出現し、
幽香を目掛けて飛来する。
幽香は弾幕を張って飛礫を全て撃ち落とす。
巨大な氷柱が迫るが、
幽香は熱線を撃って破壊する。
「貴方は、どこまで行こうと人なのよ。
たとえ、幾億の時を経ても、その姿を変えても」
幽香はスペルカードを抜く。
朧は歯軋りをする。
「スペルカード……そこまで舐められたか!!
これは遊びではなく、殺し合いだ!!!」
「誰も殺せない貴方を止める───!!」
幽香の身体から光が漏れだし、
妖精としての姿が顕現する。
巨大な虹色の花弁が幽香の背後に現れ、
虹色の光が一帯を照らす。
「"幻想"」
「させるか───!!」
朧がスペル発動を防ごうと、
炎を発生、幽香を爆炎が包み込む。
「『花鳥風月・嘯風弄月』───!!!」
全方位に向かって弾幕が発射され、
弾幕が炎を打ち消し、朧へ襲いかかる。
それは降り注ぐ雨のように、
周囲一帯を埋め尽くす回避不能の弾幕。
凍てつく冷気が、
弾幕を撃ち終わった幽香を襲った。
「…………甘いのはそちらだったようだな」
「ふぅっ、ふ、っ、はぁ、っ、はっ」
「自然の化身………難儀だな、
冷気と灼熱の中にいるだけで命を削るとは」
その周囲は今でこそ暖かな風が吹いているが、
先ほどまでの戦闘では場所によって
―50度、200度以上の地獄。
生物では息をしているだけでも
肺が凍るか火傷する場所だ。
そんな場所に自然など存在できるわけがない。
幽香は戦いの中でも命を削られていた。
「死ぬことのない妖精でも、生き地獄は辛かろう」
「ふぅ、っ、は、ぁっ、そう、ね………」
朧は周囲を見回す。
墓と思われるものは無事だったが、
先の戦闘である場所は焼け焦げ、凍てついている。
「荒れ果てたな………まぁ、いい。
もうここに来ることもないだろう」
「…………あの墓を、守りながら戦っていたのね……」
「どうせ俺を追ってくる者も
じきに此処へ辿り着くだろうな。
伝えろ、『諦めろ、追ってくるな』と」
「何処へ…………?」
「動けないお前に伝えたところで………
………いや、動けないからこそ、か」
朧は幽香を見下ろす。
「───────地獄へ向かう。
黒雨の影響であらゆる境界が歪んだ今なら
アレを引きずり出し、殺すことも出来る」
去った朧を見送り、
その空間だけに広がる青空を眺め、
幽香は随分前の記憶を思い出していた。
「ここまでやられたのも………あの日以来かしら」
そして、朧が守っていた小さな墓を見つめ、
その名前を口にした。
博麗の巫女と呼ばれる最初の存在。
そういえば、今代の巫女、300年前の巫女と、
かなり似ていると、幽香は思い出す。
「覚えてる………?
───────靈夢」
幽香さんが大妖精という設定はオリジナルですが、
思い付いた理由は大ちゃんとの共通点が多いのと、
旧作のセリフですね。
幽香「何よ、人を妖怪あつかいして……」
靈夢「人じゃないくせに……」
妖怪でしょ?え、違うの?