人里周辺────
「…………永琳、アレ撃ちなさい」
異形の妖獣たちと戦闘を行っている最中、
唐突に、輝夜がそう切り出した。
「は………アレ、と言いますと」
「分かってるでしょう」
「何をする気だ、医者!
今はそれどころじゃないだろう!」
レミリアがそれを止めようとするが、
永琳にとって輝夜の命令は絶対、
拒むことはせず、静かに頷く。
鈴仙も顔を強ばらせ、それに同意していた。
「何を────!」
「そろそろ、来る筈の奴を撃ち落とす。
貴女たち姉妹も永琳に合わせなさい、
特別に私の力の一端に巻き込んであげるわ」
「レミリア様、お願いです。
これは最速でこの異変を止めるための策。
貴女方の力が必要です」
「……………異変が止められることに
越したことはない、か。いいだろう」
レミリアが頷く。
それを見た永琳がスペルを発動し、
周囲を一掃する。
そして、唐突に雲から何かが出てくる。
「来たわね、行くわよ」
黒龍を前に、輝夜が能力、
〝永遠と須臾を操る程度の能力〟で
世界の時間を極度に遅くする。
黒龍も力の発動者に気づく。
その隣で、得物を構えた2人にも。
「奉れ、人々よ。
そして我が力、畏れ見よ」
「雷神の槍よ!」
極度の世界では黒龍の動きは鈍く、
2人には完全に力を溜める時間すらある。
だが黒龍も大きく巨大な翼を広げ、
大きく息を吸い上げる。
輝夜はほぼ止まった時間の中ですら
ゆっくりでも動く黒龍に苦い顔をするが、
だが。
「我が名、八意思兼神なりて」
永琳が弓を大きく引いた。
溢れ出す光がそこに凝縮し、そして矢を覆った。
「龍を───!」
レミリアが槍を大きく引き絞る。
紫電を纏った雷霆が弾けるような音を立てる。
「「穿て!!!」」
永琳が矢を放ち、レミリアが槍を投擲した。
黒龍もそれに合わせ、一直線のブレスを放つ。
両方向からの攻撃が衝突する。
巨大な衝撃波が発生し、
それが幻想郷の地表を抉った。
力を使い果たした輝夜は疲弊し、膝をつく。
攻撃を放った2人も同様に、
息を切らしてその場に膝から崩れ落ちる。
『度しがたい』
声が、その場の全員に聞こえた。
重々しく、哀れむような声だ。
無駄だとでも言うように、それは声を発した。
そして声の主の黒龍は
更にブレスの勢いを強める。
拮抗していた両方からの攻撃を
ブレスが呑み込み始める。
『散れ。我が理想、我が力の前に!!
生命は終わり、そして再び始まりを迎える!!』
輝夜による世界の速度が元に戻ったため、
黒龍はそのブレスの勢いを更に強めていく。
だが。
「やっと、来たわね」
『─────無謀なり』
その場に、十六夜咲夜が現れる。
それを見て、永琳とレミリアは再び立ち上がり、
弓をつがえ、槍を構えた。
「まだ、終わりではないわ」
「ナイスタイミングよ、咲夜」
そして、再度同じ攻撃を放つ。
『無駄だ───何!?』
「果たしてそうでしょうか?」
「調子乗ってんじゃねぇよ!」
天魔と鬼神が、黒龍の前に現れる。
そして、まだ援軍はいる。
「さて、馬鹿なことしてる
トカゲさんはここかしらん?」
『────地獄の女神か………!』
最強の援軍が現れる。
それぞれが黒龍への攻撃へ加勢し、
遂に形成逆転、人里側の攻撃がブレスを押し返す。
『────せいぜい、足掻くがいい。
カウントダウンは既に始まっている』
そして、黒龍へ攻撃が命中した。
人、妖怪、神の全力の攻撃の極光が龍を飲む。