黒い龍は幻想で笑う   作:青い灰

105 / 105
終章 第6話「止まらない絶望」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっ、た………」

 

 

歓声があがる。

一時とはいえ、あの龍を止められたのだ。

膝をつく者、倒れる者、喜びに声をあげる者。

それぞれが歓喜し、安堵している。

 

 

「か、ぁ!?」「っ、あ」

 

 

だが、それでも。

 

 

「え、あ………?」

 

 

絶望はその歩みを止めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封印を行った2人の身体を、黒い槍が貫いて。

────赤い瞳を輝かせる黒い天使が、嗤う。

 

 

「ふ、っ、あはははははははっ!!

 貴女たち、みんな私と彼の掌の上!!

 全く滑稽で仕方ないわ!!

 あは、あはははははははははははははは!!!」

 

 

長い金髪、血のように赤い双眸。

纏うのは闇を体現したかのような黒いドレス。

その頭の上にはまるで天使のような輪があり、

だがその色は眼と同様、血の色に染まっていた。

闇で織られた禍々しい翼を羽ばたかせ、

その身体の周囲には闇を凝縮したかのような

漆黒の球体が浮かんでいる。

手にしているのは、

紫電の走る十字架を模した赤黒い巨剣。

 

その掌から放たれた闇の槍が、2人を撃墜した。

 

誰もが、その姿に見覚えがある。

無邪気で、誰よりも残酷で。

幻想郷では珍しい、人を喰らう妖怪。

 

 

「ルー、ミア………!!?」

 

 

天使が笑った。天使は嗤う。

クルクルと、子供のように楽しそうに空を回る。

無邪気な笑いと底知れぬ悪意、

そして圧倒的な闇と恐怖を、

周囲に振り撒きながら。

 

 

「あぁ、残念。

 ─────天使は、笑う」

 

 

漆黒の天使が1人、空を舞い踊る。

 

すぐさま地上で唯一無事で、

相当な猛者である永琳はその恐怖から抜け出す。

そして弓に矢をつがえ、巨大な光を収束させる。

同時に悪魔でもあり天使と闇に耐性を持つ

吸血鬼であるレミリアが正気に戻り、

即座に魔力でグングニルを練り上げた。

 

 

「堕ちろッ!!」「散れ!!」

 

 

太陽のような光を放つ矢、

雷を纏う神槍が天使へ向かって放たれる。

だが、尚も天使はそれを見下ろし、

身体の回転を止めただけ。

 

2つの光は、それぞれ天使の目の前で霧散する。

天使は何もしていない。

ただ、矢と槍は斬られただけ。

 

 

新たに現れたのは、虚ろな眼をした初老の男。

緑色の羽織袴を纏い、太刀を手にしている。

その髪は白髪となっており、

青い瞳に光はなく、濁りきっており、

まるで生気を全く感じない。

 

 

「………………」

 

 

そして、ゆらりと空間が歪み、

天使の前に1人の中性的な角のある妖怪が現れる。

鬼は、初老の男と同様に刀を携えていた。

右手には盃を手にしている。

そして、幽霊のように脚がない。

その背には細い炎のようなものが揺らいでいた。

 

 

「あぁ、悪い。遅くなってしまったね」

 

 

ケラケラと朗らかに笑う中性的な女。

その姿にルーミアも笑う。

初老の男は静かに下界を睥睨している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び現れたそれに、下界の者たちは気付く。

─────あれは、敵だ。

紛れもない敵。

 

一度は排除した絶望は、

形と状況を変えて新たに現れる。

 

 

 

「さぁ、私たちは彼の御心のままに。

 計画を進めるとしましょうか」

 

 

 

天使は笑い、その場から消失する。

 

 

残った初老の男は太刀を振り、

鬼も楽しむように盃を呷って刀を抜いた。

 

 

 

─────冥界の剣士、魂魄妖忌。

 

─────星幽の天使、コンガラ。

 

 

 

最悪の形で、2人は幻想郷に牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。