特に言うことないです。
番外編 昔話 スキマと狐と龍と
これは、スキマ妖怪と狐の出会いに
関係する龍の話。
人は、時に選択を迫られる。
否、これは人でなくとも同じであろう。
それが妖怪であっても、神であっても、
龍であっても、である。
実際、龍である朧は今、
選択を迫られていた。
「……」
「主はん、止め刺さんと」
「……うーん」
「どう、した、殺すなら、殺せっ……」
朧と瑠璃の目の前には、
瀕死の九尾の狐が転がっていた。
山へ山菜取りへと出掛けた二人は、
突然襲いかかってきた狐の妖怪を
撃退(瑠璃が瀕死まで追い込む)した。
「なぁ、お前なんで襲ってきたんだ?」
「腹が、減っていた、からだ」
「主はん、情けかける
必要ないで?狐は嘘つきやから」
「……お前は何の妖怪だよ。仕方ない、瑠璃」
「え?」
「連れて帰るぞ」
「「は?」」
狐二人の声が見事に一致した。
「助けて下さり感謝する、朧様」
「なんちゅう変わりようや」
「煩い。どうか私を貴方様の
式として御使いください」
「はぁぁ!?ふざけんなや!!」
「何でお前らそんな仲悪いんだよ」
朧が玉藻前(たまものまえ)と名乗る
狐を拾って3日後、
玉藻前は見事に餌付けされていた。
「えぇ……」
「主はん!辞めてくれや!
うちはコイツとなんて本当に嫌や!!」
「あぁ、まあ俺の所は
既に三人も式がいるんだ。流石になぁ」
「そうですか………」
そこへ、家へと一人の女性が入って来る。
「おぼろぉー!お酒飲みたいー!」
「……紫、煩い」
「「煩い」」
「ひどっ!?あれ?朧のペット増えたの?」
「いやペットやないわ」
「私も違う」
「違う、が。ちょうど良い所へ来てくれた紫」
朧たち三人は全否定し、
紫は顔を傾け不思議そうな顔をする。
「なに?」
「お前、式が欲しいって言ってたよな」
「えっ」
「そうね」
「こいつ引き取ってくれ」
玉藻は固まり、
紫はさらに不思議そうな顔をする。
「朧なら一匹増えても問題ないでしょ?」
「ペット扱いやめぇや。
うちコイツ嫌いやからや」
「私も嫌いです」
言い切った瑠璃と玉藻が睨み合う。
「ですが朧様、私は確かにコイツが嫌いです。
そして、まだこの方が信用出来ません」
「確かにそこからよ」
「そこは大丈夫だろう、多分」
「多分!?」
紫が突っ込むが無視して朧は話を進める。
「そうですか、なら私は良いですが」
「一応言っておくけど、
私の式なら条件があるわよ」
「その条件とは何でしょうか?」
「これは大事なことよ。
貴女、人間は好きかしら?」
朧は玉藻前に何故そこまで空腹だったのか
一度聞いたことがあった。
人の観察がしたくて人に化けて
暮らしていた彼女は、妖怪だと言うことが
バレてしまい、命を狙われ、何とか
逃げたしてきたと言っていた。
望み薄だったが、果たして……
「……好き、ではありません」
「……」
「ですが、彼らの生き方に、惹かれます」
「へぇ……、なんでかしら」
「人間は、短い命の中を、笑い、泣き、
時には争い、そして恋をして、死にます」
「……」
「その生き方に惹かれ、私は人に化けました」
意外だったが、面白い。
紫は、目を見開いていた。そして笑った。
「ふふふっ!良いわね」
「クハハッ!お前の望みにぴったりの
逸材じゃないか!しかもお前と同じこと
を考えていたと来た!」
「貴女、私も全く同じ事を
考えていたことがあったのよ?」
「……てっきり、馬鹿にされるかと」
「貴女、人と人間が笑って暮らせる
世界があったら、見てみたい?」
「! はい」
「決定やね」
「ええ、私はね、そんな世界を
創っている途中なの。改めて聞くわ」
「はい」
「私の式になってくれるかしら?」
「勿論です。
これから、宜しくお願い致します」
こうして、玉藻前は、八雲 藍という名前が
紫によって与えられ、二人は幻想郷という
楽園を創り出すことになる。
そして、数百年が経過した。
「ふぁぁぁっ、おはよう朧、藍~」
「おはようございます」
「おはよう紫」
「朧をおもてなししたいところですが
紫様、早速ですが仕事です」
「……え?」
「結界の調整に行きますよ。
さっさと準備なさって下さい」
「私寝起きなんだけ」
「準備なさって下さい」
「ハイ」
「クハハハ……」
数百年が経過した今でも
全く、相性が良い二人である。
こんな感じですかね。
次回、「終わらない宴の次は終わらない夜」
永夜抄編突入です。