黒い龍は幻想で笑う   作:青い灰

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  55話。



束の間日常
55話


  

  「むきゅー………」

 

 

  おかしな声を出すのは、

  紅魔館の図書館の司書

  パチュリー・ノーレッジである。

 

  現在、朧のマッサージ中だ。

 

 

  「たまには外に出たらどうだ?

    かなり凝っているようだぞ」

 

  「無理よ、魔理沙が

   いつ盗みに来るか分からないし………

   ああ、そこぉぉー、気持ち良いわぁ~」

 

  「………」

 

 

  艶っぽい声を出すパチュリー。  

  何故こんなことになったのか。

 

  元はと言えば、本を見に来ただけなのだが。

 

  翡翠と話をし、地上に戻って来た朧は、

  魔理沙と霊夢、天子を永遠亭へ、

  紫と藍は朧の家でリアに治療を頼んだ。

 

  一応、マヨヒガから橙を朧の家、

  衣玖と霊花を永遠亭に向かってもらった。

 

  朧は少し本を見るために紅魔館へ向かい、

  図書館へ向かった。

  すると腰を痛めているパチュリーを見つけ、

  今に至る。

 

  小悪魔は本を棚へ直しに行っている。

 

 

  「あぁ………最高………」

 

  「なら良いんだが」

 

  「ただいま戻りましたー、

   うわー気持ち良さそうですね」

 

 

  戻って来た小悪魔はパチュリーを見て言う。

 

 

  「そういえば朧さん、わざわざ

   図書館まで何をしに来たんですか?」

 

  「お前たちの顔を見る、ってのもあるが、

   少し本を探していてな、魔術書なんだ」

 

 

  魔術書は人里の鈴奈庵には無いが、

  紅魔館の図書館には数多くの魔術書がある。

 

 

  「私が持って来ましょうか?

   ここから探すのは大変ですよ?」

 

  「……確かにな、なら頼んで良いか?」

 

 

  しかしこの図書館、広いのだ。

  咲夜の能力により広げられたのだろうが、

  おそらく紅魔館を越える広さだ。

  下手すれば図書館内で迷子になる。

 

  

  「はい、魔術の名前を聞かせて下さい」

 

  「………その魔術だが、"名前は無い"んだ」

 

  「え?」

 

  「真っ黒な、黒い本だ。

   おそらく図書館内にあるが、分かるか?」

 

  「表紙も、ですか?」

 

  「あぁ、強力な呪術が仕込まれて

   いるから、絶対に本は開かないでくれ」

 

  「あー、探してみますね」

 

 

  そう言い、小悪魔は本を探しに行った。

 

 

  「珍しいわね、名前の無い本なんて」

 

  「あぁ、確かにそうかもな」

 

  「でも、魔術書なんて貴方に必要なの?」

 

  「かなり古い魔術だからな、

   元は竜の国の書物らしい」

 

  「は!?そんなものがうちにあったの!?」

 

  「らしいな、翡翠が持ち込んだんじゃないか?」

 

 

  翡翠は、かなりの読書家である。

  必ず1日に一冊は読んでいた。

 

  彼女が魔術書を地上に持って行ったことも

  あったかもしれない。

 

 

  「あぁ、朧の妹さんね。前に来たのよ?

   何故かすごい親近感を感じたわ」

 

  「あいつも本好きだからじゃないか?」

 

 

  小悪魔が本を見つけたらしいが、

  呪術を解くのも面倒だったので、

  朧はパチュリーに本を借りることにした。

 

  レミリアたちに会っていなかったので、

  朧は紅魔館の廊下を歩く。

 

  すると、咲夜を見つけたのだが、

  何故か文もいた。

 

 

  「珍しい組み合わせだな」

 

  「あや、朧さんじゃないですか」

 

  「あら、いらっしゃい朧」

 

  「文は取材か?」

 

  「はい、あ、新聞買って

    頂きありがとうございます」

 

  「あぁ、いつもありがとな」

 

 

  朧は早朝から新聞を配る文に

  何度か遭遇したが、本当にご苦労なことだ。

 

 

  「いえいえ、では私は行くことにします。

   朧さん、また天狗の里に来てくださいねー」

 

 

  そう言い、文は飛び去って行った。

  窓から。

 

 

  「で、話は終わった?」

 

  「あぁ、文も大変だな」

 

  「私は朝から晩まで仕事なんだけど」

 

  「……咲夜、いつもご苦労様」

 

 

  彼女も毎日仕事があり、

  更に厳しい師匠たちの修行もある。

 

  よく考えれば妖夢もそうだ。

  

 

  「……今度差し入れ持っていこう」

 

  「やった♪」

 

 

  朧は咲夜に連れられ、

  レミリアとフランに会いに行くことにした。 

 

 

  「お嬢様、朧が来てますよー」

 

  「え、ほんと!?」

 

  「あいたぁ!?」

 

  「おぼろー!!」

 

  「うおわっ!?」

 

 

  咲夜が部屋をノックすると、

  まずレミリアの驚く声が聞こえた。

  次にフランがドアを思いっきり開け、

  咲夜が頭をぶつけた。

  最後に朧の頭にフランが飛び付いた。

 

 

  「~~~っ!!」

 

  「いらっしゃい朧!!」

 

  「咲夜!?」

 

  「フラン、歓迎は嬉しいんだが、咲夜が」

 

 

  頭を押さえ悶絶する咲夜。

 

  

  「あ、咲夜ごめんね?」

 

  「~~~っ!!」

 

  「おいおい、ほら

   とりあえず冷やすぞ」

 

  「っ!?っ!?」

 

 

  朧は頭を押さえる咲夜を両手で抱え、

  額に手を当てる。

 

  

  「咲夜、暴れたら駄目よ」

 

  

  朧の腕の中で暴れる咲夜をレミリアが宥める。

  ちなみに咲夜が暴れているのは、

  痛み三割、羞恥七割である。

 

   

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

  何とか咲夜を治療した朧は、

  夜の食事を紅魔館で取らせてもらい、

  帰って行った。

 

  朧を見送ったレミリアは

  不安そうな顔をする。

 

  それに気付いた美鈴がレミリアに尋ねる。

  

 

  「お嬢様?どうされました?」

 

  「………朧が、帰る時にね、

   能力で、運命が見えたのよ」

 

  「どんな運命をご覧になったんですか?」

 

  

  レミリアの言葉に、美鈴は驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「……………黒い龍が、幻想郷を滅ぼしていたわ」

 

 

 

  そう遠くないかも知れない運命。

  確実ではないかも知れない運命。

 

  既に、歯車は回り始めている。

 





  何で額に手を当てたのかは、
  朧の熱を操る程度の能力によるもので、
  熱を冷ましています。

  次回から日常。

  「釣り」
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