黒い龍は幻想で笑う   作:青い灰

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66話

 

ぐいっ、と朧は酒の入ったコップを呷る。

そこへ、真っ赤な顔の美鈴が寄りかかる。

 

 

「ひぃっく、うぇへへへ///」

 

「美鈴、飲み過ぎだぞ」

 

 

夜。日も沈み、既に辺りは暗闇が満ちている。

が。ここは違った。

 

妖怪の山の裏手、地獄へ続く道の

とある出店で、朧は酒を飲んでいた。

 

 

「Zzz……」

 

「今日も荒れてましたからね………///」

 

「あはは………」

 

 

横では妖夢もコップを傾け、泥酔した主もおり、

朧たちの目の前で鰻を焼きながら乾いた笑みを

溢すのはこの店の店主、雀の妖怪、

ミスティア・ローレライである。

 

 

「朧さん、助かります」

 

「いや、それはいいのだが……

  美鈴、いつもは荒れているのか?」

 

「そりゃあもう……」

 

「酷いもんですよ、いつも咲夜さんに

 ナイフで刺された、門番面倒くさい、とか」

 

「絡み酒………美鈴、酒もいいが、

  あまり飲み過ぎないでくれよ?」

 

「わーってますよぉ、へへへぇ~」

 

 

朧はやれやれ、といったような苦笑いを

浮かべて鰻の蒲焼きを頬張る。

 

 

「やはり旨いな」

 

「それは光栄です」

 

 

朧は一度箸を置き、

懐から便箋を取り出して、開く。

 

 

「お手紙ですか?」

 

「あぁ、途中でレンに会ってな」

 

「内容はなんですか?」

 

 

朧は手紙を見る。

 

内容は、簡潔に言えば招待状だ。

 

 

「招待状………だな」

 

「一体どこへ?」

 

「地獄………あぁ、今は旧地獄か。

  確か、地底と呼ばれていたか?」

 

「あれ、地底とは不可侵条約があった筈では?」

 

「妖怪のもので龍は問題なかろう?」

 

「ははっ、確かにそうですね」

 

 

実際かなりガバガバな条約らしく、

鬼神であるレンは行ったり来たりしている。

 

紫が忘れていてもおかしくなさそうである。

朧が一度行こうとしたときはボロボロの

看板があった。

 

 

「取り敢えず、地霊殿と呼ばれる屋敷で

 何かあったらしいのでな。1ヶ月ほどかな」

 

「私も行きたいなぁ」

 

「お前にはそこの主がいるだろう?」

 

「幽々子様には1人暮らしを

 体験してもらって欲しいです」

 

「中々妖夢さんも溜まってらっしゃいますね……」

 

「そりゃそうですよ………」

 

 

妖夢は幽々子を見ながら盛大にため息をつく。

そして、思い出したように

ミスティアが朧に聞く。

 

 

「そういえば、新しい神社が

  出来たと聞きましたけど………」

 

「あぁ、また朧さんの手引きでしょ?」

 

「酷い言われようだな………

  まぁ、その通りなのだがな」

 

 

そう言われてしまうと朧も何も言えない。

 

 

「やぁっぱり!

 全く、今度は誰を(たぶら)かしたんですかぁ?」

 

「誑してはいないんだが………」

 

「妖夢さん、飲み過ぎですよ?」

 

「煩いです、飲ませて下さ───っ!!」

 

「…………!」

 

 

そう言った瞬間、朧が立ち上がる。

遅れて妖夢も目を見開いて刀に手を添える。

 

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「…………あれ?」

 

「逃げたみたいね」

 

「幽々子様も起きましたか、

  一体、今のは何だったんでしょうか………」

 

「さぁ?」

 

 

ミスティアが戸惑う。

 

 

「な、何なんですか?」

 

「殺気だな、

 鋭利な刃物のような殺意を感じたが……

 幽々子の言う通り、逃げたようだな」

 

「さ、殺気!?」

 

「どうして逃げたのでしょうか………」

 

「おそらく、こっちに数で勝てないからでしょ?」

 

「あぁ、多分な。

  ミスティア、店は1人で開くのは控えてくれ」

 

「え?ど、どうしてですか?」

 

 

「危険な生物がここ最近動いている。

 出来るだけ、いや、必ず強力な奴が

  いる状態でなら店を開いてもいいが」

 

 

朧はそう言って、店の裏手にある森を

一瞬で凍てつかせる。

 

 

「…………時間はあまり残されていないかもな」

 

 

朧の声は、誰にも聞こえることはない。

 

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