黒い龍は幻想で笑う   作:青い灰

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弾幕戦、
物理戦闘、
変わりゆく……

5、7、5で詠みました。
いきなり字余り。




71話

 

「……………」

 

 

ヴラドは傷だらけの娘を静観する。

レミリアはニヤリと笑い、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペルカード発動を宣言した。

 

 

「″呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』″」

 

「!」

 

 

倒れたままのレミリアから紅い光が放たれ、

周囲を一瞬だけ染め上げる。

 

 

「しッ!」

 

 

ヴラドはレミリアへ接近し、

スペルカードの発動を止めようとする。

 

 

「見えた」

 

「何!?」

 

 

ヴラドの踏みつけはレミリアの腕によって

足を弾かれ、失敗する。

そして再びレミリアから光が放たれ───

弾幕が、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ぐぅッ、がァ!!?」

 

「は、ぁぁぁぁッ!!!」

 

 

弾幕は、何もない空間へ()()

レミリアは、そこへ弾幕を更に放ち、接近する。

 

 

「貫き、穿ち、焼き焦がせ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見事なり───」

 

 

ヴラドが小さな声でそう言い、

レミリアが再びスペルカードを宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「″雷霆『ランス・ザ・グングニル』″!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

青い雷を纏った巨大な紅の槍が、

そこに現れたヴラドを貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは、すまなかった」

 

 

そして、今に至る。

バルコニーへ戻ってきたレミリア、ヴラド。

吸血鬼の能力と朧の治療で2人の傷は癒え、

ヴラドがレミリア、フランの前で頭を下げる。

 

 

「余が、いや、私が悪かった。

 私がもっとお前たちの面倒を

 見てやれなかった故の、フランの狂気だ」

 

「「…………」」

 

 

ヴラドの、父親の言葉を2人は黙って聞く。

2人は謝罪が欲しいわけではない。

 

それもヴラドは理解している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、レミリア。

  お前がフランを大切にしてくれて。

 

 ありがとう、フラン。

  レミリアを信じ、健やかに育ってくれて。

 

 2人は─────私の誇りだ。

 この世の何よりも、私の誇らしい娘だ」

 

 

「「………!」」

 

 

2人の小さな吸血鬼は、

嬉しそうに笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ヴラドと朧は話をするために皆と離れ、

パチュリーたちは図書館に集まっていた。

 

 

「ねぇ、こぁ、レミィ。貴女、父方の能力を

 当てたみたいだけど、結局何なの?」

 

「私は少し違ったみたいで、

  朧さんに教えてもらったんですけど………」

 

「それについては私から。お父様の能力だけど、

 ″幻を作り出す程度の能力″、よ」

 

「幻?」

 

 

フランが顔を傾ける。

 

 

「それなら実体はない筈ですが………」

 

 

咲夜も眉をひそめる。

確かに、ヴラドの攻撃はレミリアに命中し、

自分達もそれを見たのだ。

 

幻である筈がない。

 

 

「咲夜、違うわ。

 私は″作り出す″と言ったのよ?」

 

「作り出す………?───あっ!?」

 

 

咲夜が驚きの声を上げる。

レミリアはクスリと笑い、教える。

 

 

「えぇ、作り出していたのよ。

  だから幻にはない影もあるし、実体もある」

 

 

つまり、だ。

幻は実体があるが、幻でしかない。

実体のある景色のようなもの。

 

フランの「フォーオブアカインド」

と似たものといえば分かりやすいか。

 

 

ヴラドのトリックはこうだ。

自分を景色の幻で姿を隠し、攻撃の時のみ

幻に合わせて攻撃してダメージを与える。

 

そうして一方的な攻撃が可能となり、

敵は景色に攻撃することしか出来ないのだ。

 

 

「私の光を出したスペルだけど、

  光にも当たり判定があるのよ?

  それで幻を見破って、攻撃を本体に当てたの」

 

「成る程…………すごいわね、レミィ」

 

「お姉様、よく気づいたね!」

 

「流石はお嬢様です」

 

「ふふーん、でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雲が晴れた月の下、紅魔館の屋根で、

2人の男は酒を飲んでいた。

 

 

「しかし、してやられたな、ヴラド」

 

「うむ、まさか

 余のファントムヴィジョンが破られるとは………」

 

 

ヴラドの幻影が破られるのは朧を除いて

前代未聞であり、レミリアが2人目である。

 

 

「流石は余の娘よ!!

  これは将来も安泰であろうなぁ!」

 

「クハハ………だが、本当にレミリアは見事だった」

 

「そうであろう、そうであろう?

  ほれ、余の娘の見事な戦いに、乾杯である!」

 

 

朧はワインの注がれたグラスをぶつけ、飲み込む。

内心、親バカは治らんな………と思いながら。

 

 

 




フランちゃんの、
禁忌「フォーオブアカインド」
は分身のため本体と威力は同じ(という設定)です。

ヴラドさんの
「ファントムヴィジョン」は
(Phantom・Vision、日本語としては幽霊幻影)
あくまでも幻影のため威力なんてありません。

ヴラドさんは幻影と自分を
重ねて攻撃を当てていたので判定がありました。


…………あれ?
遺伝したならフランちゃんの方が強くない?

と思いがちですが、ヴラドさんが本気なら
100体以上の幻影が軽く現れるので
どっこいどっこいですかね。

本人は「ファントムヴィジョン」以外を
全て(少し力を入れた程度の)打撃でしたので。
まぁ本気じゃござーせん。

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