「ふわぁ……」
ふとした時にあくびが出る。
春休みが終わり、2年生が始まり、何の変哲もない
普通の……そう、憧れていた普通の日常を過ごしていた
そんな帰り道なのだが、リサはなにやら友希那に付いていくと
日菜は忙しいからと、真っ先に帰ってしまい
珍しく1人で帰っていた
「(いくらなんでも、2人がいないんじゃつまらないな)」
そう思いながら帰り道に通る楽器屋さん
なにやら新しいポスターが貼ってあるので見てみる、と同時に
日菜から連絡アプリでメッセージが届く
何の運命なのだろうか、そこには……
「……はい?」
『まーくん、あたしアイドルになるね!!』
というメッセージと、目の前にはPastel❇︎Paletesとという
アイドルバンドの売り出しポスターがあり
……そこにもはや見間違えるはずもない、天才少女
氷川日菜がギターを抱えて映っていた
「……え、どういうこと?」
「あの」
「一体なにを考えてるんだ?アイドル?日菜が?」
「あの……」
「あっ、すみませ……ん……??」
かけられた声にやっと気づき、振り返ると
そこには、日菜に瓜二つの女の人がそこに立っていた。
「えっと、もしかして日菜の……お姉さんですか?」
「……??えぇ、そうですが、あなたは?」
「あっ、えっと日菜の友人の神結誠です。」
「そう、あなたが。」
どうやら僕のことを知ってるみたいである。
日菜やリサたち以外に知られてるのはなんだかむず痒い。
「あの、日菜のことなんですが……」
「知らないわ。」
「えっ?」
日菜のアイドルデビューについて聞こうと思ったが
返ってきたその声はとても冷たく、重苦しいものだった。
「私の前で、あの子のことを話さないでください。」
「えっ、それってどういう……」
「すみません、失礼します。」
問いただす間もなく、日菜のお姉さんは足早に去っていった。
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「ねぇ日菜、これはどういうこと?」
「んーとね、るんっ♪ってきたからオーディション受けたら
なんとなく受かっちゃった」
なんとなくで受けてなんとなく受かるって
相変わらず行動が読めない。
「そういえば、日菜のお姉さんにあったよ?
機嫌が悪そうだったけど、何かあったの?」
「あー、おねーちゃんに会ったんだ!」
「マコト、紗夜に会ったんだ。」
お姉さんの名前は紗夜と言うらしい
リサと友希那と同じバンドに所属しているみたいで……
というか、バンドを組んだなんて初めて知ったのだが。
それもリサに問いただしたら妙にはぐらかされた。
そしてポスターの写真からでは気づかなかったが
Pastel❇︎Paletesの中に大和さんがいることを
日菜が教えてくれた。眼鏡のある無しで、だいぶ印象が
変わるんじゃないか、大和さん……
「あ、そうだマコト、今日学校終わったら暇?」
「うん、特にやることもないけど……」
「じゃあ、せっかくだし、今日練習あるから見てく?」
と言われて放課後連れてこられた場所はライブハウスCIRCLE
ここ最近は大ガールズバンド時代と言われるほどで
ライブハウスは賑わっている。
ここでRoseliaは練習をしているらしい。
「誠じゃない、リサに連れてこられたのね?」
「やぁ友希那、そういうこと、よろしくね。」
ボーカルは当然、友希那。リサはベースをやってるらしい
日菜のお姉さんはギター担当らしい。
姉妹で同じ楽器は何かの縁なのだろうか
そして、キーボード担当の白金燐子さん、
ドラム担当の宇田川あこちゃん。
白金さんと日菜のお姉さんは花咲川の生徒で
宇田川さんは羽丘の中等部でリサのダンス部の後輩らしい
「今から全体で合わせて演奏するから、
何かあれば言ってちょうだい」
「いや、友希那?さすがに音楽は素人だから
口出し出来ないよ?」
それでもあなたなら出来るでしょう?と
言わんばかりの表情でスタンバイする友希那
そして、Roseliaの面々。
そこから奏でられる演奏は、音楽について素人だが
惹かれるものがあった。あったが……
「うーん……」
「どうしたマコト、何かあった?」
「いや、ちょっと違和感があったんだけど
どう説明したらいいかわかんなくて」
「んー、じゃあやってみたらいいんじゃない?」
……何を言ってるんだい、リサは?
「そうね、誠はやったほうが早いと思うわ」
「何を言ってるんですか今井さん、湊さん。
彼は音楽経験は無いそうですし、
そもそもそのアドバイスも信用できるかどうか……」
「うーん、分かった。
「……‼︎」
演奏に関しては素人だが以前、先生にやらされたことがあるから
指の位置とかはあってるはず。
演奏隊の人と開始の位置を合わせ……
「(先生が言ってた。ギターを弾く時は、思いっきりっ……!)」
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「帰る前に少し、よろしいですか?」
「日菜のお姉さん?どうしましたか?」
「紗夜で結構です。同い年ですし。」
「そうですか、ところで何か用ですか?」
「
言葉の真意、おそらく日菜と同じ側、つまり
なんでも出来る
「同じ、と言われれば同じですね」
「……っ‼︎」
「でも」
踵を返し、帰ろうとする紗夜さんを引き止める
「なんでも出来るより、何か1つを極める方が
僕はかっこいいと思います。それで、苦労してきましたから」
「しかし、先程の演奏は……っ‼︎」
「ただ僕は楽しんで演奏してただけですよ。
昔、お世話になった先生に、いろいろなことを教えられて
『楽器は技術もいるが、楽しく弾くことが1番だ』って
言われましたから。」
「楽しいなんてそんな感情、私たちには……っ‼︎」
「そんなことないですよ」
事実、キーボードの白金さんも、ドラムの宇田川さんも
ベースのリサも、ボーカルの友希那も
楽しんでいるように見えた。ギターの紗夜さんだけが
楽しんでないように見えた。だから、楽しく弾いただけ
「『楽しむことは技術をもう一歩進ませる決め手だ』って
お世話になった先生は言ってました」
「そう、ですか」
「だから……、いや、これは僕から言うのは野暮ですね
もう日が暮れてるので、また機会があれば」
そう言って帰路につく。
日菜との関係は、難しそうだなぁ
人と人との関係は、いくら僕が天才だとしても
それを修復するのは難しい。
それはきっと当人たち次第なのだから
書いたけど締め方忘れた