Lebe in der Zukunft   作:小石

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総題 
題意:未来に生きる
序章
題意:ベルノルト・フォン・ギレンセン


Bernold von Gylensen

ベルノルト少年には、ずっと昔の過去に生きた記憶がある。

それが、いわゆる前世というものの記憶だと知ったのは、地元の学校に通いだした頃。その当時、ベルノルトは8歳だった。

それまでそれは普通のことと思っていたので、家族にも誰にもわざわざ話そうと思ったことはなかったが、友人たちの言動を見ているうちに、自分のような過去に生きた記憶を持つことは異常なのではないかと考えるようになった。ベラベラと人に話していたら、きっとおかしな奴だと思われたに違いなく、ひどい場合はいじめにでもあったかもしれない。ベルノルトは幼い頃の自分の選択に助けられたのである。それから改めて、この記憶のことは誰にも話さないと決めてすでに9年経った。

今とは違う時代と場所で過ごした日々のその記憶は、技術の進んだ今の時代で役に立つ事はほとんどなかったが、現在の自分よりもはるかに歳を重ねた経験を持つ過去の自分の名残なのか、ベルノルトはそこらの子供のようにはしゃいだり喧嘩したりという事がほとんど無かった。

ただ、現在子供であることに変わりなく、昔の記憶があると言っても、それは自分の目線でいくつもの短い映像が流れているようなものであるので、心が大人であるわけではない。すべてが鮮明なわけではなく、所々はひどく断片的なもので、映像の画質も悪い。過去の自分の名前も最早記憶にとどまっておらず、過去の自分に関わった人々の顔も、朧げだった。

ただ、昔の自分の趣味は覚えていた。それは読書である。過去に生きた自分は、生涯でかなりの冊数を読破していた。老人になった時、自宅は壁という壁が本棚になっており、そのすべてに本が収納されていた。おぼろげながらも、我ながら誇らしい光景であった。家にある本は一冊一冊に目を通し、その内容もほとんど朧げではあるが、一つだけ、かなり正確に思い出せる本がある。

“銀河英雄伝説”

当時より遥かに未来の世界を舞台にした英雄たちの物語である。作者も、それを読んだ当時の自分の心情や熱中ぶりなども分からないが、本の端が傷むほど何度も読んだことと内容だけは覚えていた。

それは長い長い物語で、何人もの人々の視点で描かれた重厚な歴史物語である。分類としてはスペースオペラの歴史ものに区分されるだろうが、登場人物たちはみな魅力的で、まさしく英雄たちの伝説と言えるものだった。

昔の自分は多分相当好きだったのか、何がどこで起きたのか、年月日まで覚えている。……そして、今現在のベルノルトが生きている世界は、その本、銀河英雄伝説の世界観とそっくりだった。

この世界で、過去の記憶をもったまま生まれたその者の名はベルノルト。

ベルノルト・フォン・ギレンセンという、平民と貴族の血を引いた17歳の少年であり、憲兵隊員としてローエングラム元帥軍に追従する階級は中尉の帝国軍人なのである。




序章 終

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