4 years old
「おめでとうマーリン!」
「マーリン元気でね!」
4歳になった年のある日の夜。今日は最年長のマーリンがハウスを出ていく日だった。
口々に祝福の言葉をかける弟妹たちに微笑みかけて、マーリンは隅で見つめていた俺のところまできた。
「レイ、ほら、またこんなに隅っこにいて。もっとみんなの所にいなくちゃ、心配になっちゃうだろう?」
マーリンは、よく俺を気にかけてくれた優しい兄だ。ママとチェスで遊ぶところを膝に乗せて見せてくれたのは、マーリンだった。俺がそうしたいのもあったが、マーリンもよく俺を乗せたがった。俺はマーリンの膝が大好きだ。
俺はマーリンの言葉に首を振った。みんなのことは好きだが、あの真ん中ではしゃぐのはどうも苦手だった。それなら、マーリンの膝でマーリンの話を聞く方がずっと好きだ。
「マーリンといっしょが良い。」
マーリンはそんな俺に苦笑して、俺の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「そうだ、レイ。最近はチェスもだいぶ強くなったよね。僕は先に外の世界へ行くけれど、いつかレイもここを出ることになったら。その時はまた、会ってチェスで遊ぼう。」
そう言って、マーリンが俺を抱きしめてくれる。
「また会おうな、レイ。」
俺は難しいことは言えなくて、でも簡単な言葉も浮かんでこなくて、最後のワガママに抱きついた。なぜだかわからないけど、言い知れない不安が押し寄せて、今までになく強くしがみついた。マーリンは俺にとって、本当の兄のようだったんだ。
「じゃあ、ね。そろそろいかないと、ママが、」
「マーリン、そろそろ時間よ。」
マーリンはママに返事をして、俺に向き直ったかと思うと、俺の脇の下に手を入れて力を入れた。
俺は急に高くなった視線に驚いて、だけどその下でマーリンが心底楽しそうに笑うのを見て、やっと安心した。
俺を掲げたマーリンと2人でひとしきり笑うと、マーリンは俺を抱きしめてほおを寄せた。その時、マーリンの顔が濡れている気がして見返したが、マーリンは相変わらず笑っていた。気のせいだったのかもしれない。
と、その時。
「もー!2人ともいつまでお互いを独り占めにするつもり?」
マーリンの次に年長のライラが、しかめっ面を作って言った。
「そうよ、私たちもあなたたちとぎゅーってしたいのよ。」
そう続けたのはライラといつも一緒にいるスーザン。
「したい!」
「ギュしたい〜!」
すると、レイくらいの子やそれよりもっとチビたちが、連鎖のように叫び出して。気がついたら、俺とマーリンを中心にしてみんなでギュって抱きしめあっていた。そこには、もちろんエマとノーマンの姿もある。
「ママもー!」
スーザンが、団子のように固まっている兄弟たちの様子を見て微笑んでいるママを呼んだ。
「ママー!」
「ママも来てー!」
ママは一瞬驚いて、でもすごく嬉しそうに笑顔で応えてくれた。
「ママも、マーリンやみんなのこと、大好きよ。」
つかの間、みんなで一つになって、幸せな家族の絵のようだった。血は繋がっていなくとも、想いは、絆はずっと繋がっている。そう信じられる家族が、今ここに集まっている幸福。この時のみんなの楽しそうな笑い声は、俺の記憶に今でもはっきりと残っている。
続く