6 years old
♪〜……♪♪♪〜…♪♪……♪♪〜……
「レイ……あなた……どうしてその歌を…?」
門に一番近い木陰の下、ママは俺を見て怯えている。
ママがここに来ることはわかっていた。門に近寄る子供がいれば、ママは無視できない。俺のことは前から注意していたんだろう、姿が見えないと知るや、すぐ時計型の発信機でどこにいるのか確認したに違いない。俺がここに座って歌を口ずさんで10分もたたないうちにママは来た。
「………。」
俺は答える代わりに、笑ってみた。ママが俺の母親だという確信はあったけど、本人からしっかり確認したかった。
「……………。」
ママも、無言だった。だけどその表情だけで十分にわかってしまった。ママも気がついてしまった。今まで俺しか知らなかった、知ってはいけなかった真実を。
でも俺の目的は、それじゃない。
「わかっちゃったんだ、ハウスの正体。」
ママは答えない。俺を恐ろしいものでも見る様な目で凝視している。いや、もしかしたらどこも見ていないのかもしれない。
「どうする?殺す?」
本当の母親だと気付いたのは、3歳の時だ。それまで、ハウスの子供達はみんな孤児だと聞かされて馬鹿正直に信じていたけど、ママの声は、昔お腹の中で聞いたあの子守唄の声と同じだった。ママに抱かれた時の安心感は、胎児の時のそれと変わらなくて。
「どうして俺を産んだの?ママ。」
ただ、どうして嘘を言っているのか、隠しているのかだけがわからなかった。そして、ママがそれに気がついていない様な振る舞いだったのも気になった。
探してみれば、綻びはハウスのいたるところにあった。でもそれも、俺が胎児の頃からの記憶があって、かつ突き止めようと調べまわったからわかったことだ。俺自身の記憶が確信につながったのは言うまでもないが、それ以外では、ママが外に関する話題、ことに出て行った兄姉たちの話をしないことが、真実への拍車をかけた。ママは俺たちに嘘をついていると。
これに対しての返事は期待していなかったので、話を進めた。
「出荷順に予想はついてる。成績でしょ?」
いつの間にか、無表情を通り越して冷徹な顔で俺を見下ろすママがいた。さっきの動揺ぶりはどこへ行ったのか、今では顔の表情一つ動かない。
この人が自分の血の繋がった母なのかと思うと、ゾッとした。その冷徹な残酷さで、一体今まで何人の子供を殺して来た?幾人もの子供の命を奴らの手に明け渡して、あんたはのうのうと、何も知らない子供たちに囲まれて笑顔で生きているーー
(恐がるな!渡してたまるか、2人の命だけは……!)
実の母親だからなんだ、大人だからなんだ。ママも結局、鬼に命を握られている。あいつらに加担して俺の、家族の命を弄んだこと、後悔させてやる……!
「ママ、取引したい。」
続く