今回と次回は蘭豹編です。
正直言って自分は恋愛描写苦手です。
なので温かく見守ってくれると幸いです。
では、どうぞ。
6月。
それは、『ジューン・ブライド』という言葉もあり、欧米では結婚すると幸せになれるといわれており、数十年前から日本でもそう言われるようになっていた故に世の女性たちはこぞって6月狙いで結婚するのだ。
そして、それを狙っているのは東京武偵高校の
実力の高さ故に誰も寄り付かな……いや、理想とするハードルが高すぎる故に独身ばかりであり、全員が『彼女いない歴=年齢』である。
2009/06/01(Mon) 13:12
「これで…………今度こそ当たりが来てくれてもええやろ」
「…………蘭豹、お前またあのサイトやっとんのか。一体今年に入って何回利用してるんだよ」
蘭豹の正面に座っていたショートヘアで咥えタバコがトレードマークな
「ええやん。こういうのは諦めた時点で試合終了やからな」
蘭豹は笑って綴にそう返した。
「そうよねぇ。それは言えてるわよねぇ。それに今日からもう6月だし、そろそろ動かないと売れ残りになっちゃうしねぇ~」
そう微笑みつつも非情な現状を突きつけたのは『武偵高の癒し枠』と一部界隈で有名な
「う゛っ! 痛いところ突くなよなぁ~ゆとりぃ~」
「そうやって、ゆとり。今から相手探せば遅くないやろ」
図星を突かれた蘭豹と綴は反論する。
「ん~でもぉ、そうやって失敗している前例がいるわけじゃない?」
ゆとりは名前を伏せつつも現在もなお、失敗中のアラサーからアラフォーになりつつある人を挙げた。
「あー、
綴はゆとりの発言の対象者に心当たりがあったようで、綴の言葉に蘭豹も理解したらしい。
「あー、あのCVRの結城ルリか。もう三十路も後半だろ? あの人にくっつく男って居るんか?」
遂にその人の名前…………
「バカか、お前は!? ルリの奴は
「…………大丈夫よ。少なくとも周囲6km半径にルリの気配は感じないわ」
綴はゆとりにルリの気配がないか探らせ、ゆとりは周囲6km半径の気配を探る。
ゆとりの気配察知は傭兵時の索敵回数の多さによって察知範囲・精度は既に人間が為せる域を超越している。
因みにゆとりの気配察知から完全に逃げられる生徒は1名の本気モードを除いて存在しないし、教職員に至ってはあの『見える透明人間』と名高い緑松武尊校長でも逃げ切れる確率は良くて3割ほどである。
気配察知の結果、ルリの気配は感じなかったようで、ひと安心する一同だった。
仮に、蘭豹の失言が聴かれた暁にはルリが
通称、『ルリ酒地獄』はあの『見える透明人間』と名高い緑松武尊校長でも逃げ切れる確率は良くて2割ほどである故に、それは何としてでも避けたいのが校長含めた
そう思うと結城ルリ、彼女がある意味においての
閑話休題。
「そういやぁ蘭豹、午後の準備あるんやろ? もう行かんくて良いのか?」
綴は壁の時計を指差して蘭豹に言った。
時計は1時25分を指していた。
「え? もうそんな時間か……。そろそろ行くかぁ…………」
蘭豹はPCを閉じて椅子から立ち上がり、バインダー片手に部屋を後にしようとする。
「あ、そうだ。蘭豹、二つ聞いて良いか?」
綴が蘭豹を呼び止めた。
「ぉん? どうしたんや」
蘭豹が綴の方へ振り向く。
「今日の午後って水無瀬はずっと
「えっと…………水無瀬は今日は
蘭豹は一通り答えた後に質問の意味を綴に聞き返す。
「別に? ま、お前には関係ないから。だから気にすんな。てか、さっさと行ったらどうだ?」
蘭豹の質問をテキトーに流してあしらい、蘭豹に早急の退出を促す綴であった。
「むぅ…………。めっちゃ納得いかへんわぁ…………」
蘭豹は釈然としない表情で第一職員室を後にし、蘭豹の退出後ゆとりは綴に話しかける。
「梅子、何が狙いなの?」
「何がだよ……ゆとり。別に何も狙ってないって」
「嘘。大体、梅子が無意味に行動起こすなんて有り得ないじゃない。それも自分にメリットが無いのは尚更ね」
「…………バレてたか。言っとくとただ、アタシは『
「ふぅん…………。また『カン』なのね」
「まぁ……な。そんなところだ。それじゃ、あたしも行ってくるわ」
「ふふっ。行ってらっしゃい」
「……間違っても『逝って』にはするなよ? マジで。洒落になんないから」
「もう……。一体梅子は私をなんだと思ってんの。しないわよ、そんな事…………多分」
「ちょっと待てや。今、明らかに間が在っただろ!? それに今、『多分』って言ったよな!?」
「気のせいよ、気のせい。ほら、授業始まるんだからさっさと行ったら?」
「強引すぎる……本気で納得いかねぇ……」
強引すぎるゆとりに釈然としない綴も職員室を後にするのだった。
2009/06/01 13:28
「ハイハイ。解ったてば。私なら心配ないって。……え? 大丈夫だって。もう心配しすぎ! じゃあね。兄さん」
銀髪セミロング・紅眼で首から『
どうやら、通話の相手は彼女の実兄らしい。
「師匠、相席良いか?」
同じく
その女子生徒の首から提げている顔写真入りのパスには『ジャンヌ・ダルク』と書かれていた。
「あ、ジャンヌ。奇遇ね、こんな所で会うなんて」
「確かにそうだな。私も師匠も余りここを利用する回数は少ないからな」
「そうね。確かに休憩は作業スペースで済ませちゃうし。偶にしか利用しないわね」
「私もだ。そうだ。珈琲淹れてきたが、師匠もどうだ? これで一息つくのもよかろう」
「お、ありがとジャンヌ」
凪優はジャンヌの淹れた珈琲を受け取る。
「師匠、そういえば、先程から電話をしていたようだが、相手は兄上様か……?」
ジャンヌの言う『兄上様』と言うのは凪優の実兄である「
「そうよ……。今日から出張らしくてね、『その間会えなくなるし心配で私と数日会えなくなるのが不安で仕方がない』ってさ」
凪優は嘆息しながらそう答えた。
「…………兄上様も相変わらずの溺愛っぷりだな……」
ジャンヌは苦笑いでそう返した。
「ホントに『超ド級』と言っても良いぐらいのシスコンよ。兄さんは。私としては少しくらい妹離れしてくれても良いんだけど。というか、その方が有難い……というか、本気で妹離れしてくれ」
ジャンヌの指摘がかなりの確率の的中で凪優はまた嘆息しながら答えた。
「水無瀬ぇ、お前さっきから溜息ばっかりついてるけど、幸せ逃げまくりだな」
凪優の返しに綴が珈琲片手に現れ、皮肉交じりに更に返す。
「言わないでくださいよ、綴先生。その原因が身内なんですから」
「ふーん。また雄の奴か……。アイツも大概なシスコンだからな」
綴は凪優の話を聞き、この東京武偵高校OBでもある雄一郎を思い出していた。
昨年まで、東京武偵高校の
人柄・実力共に申し分は無く、まさに完璧超人…………と思いきや違った。
彼……雄一郎は超が幾つ付いても足りない程のシスコンだった。
妹の事が話題になれば1日はザラに語り続けているほどである。
それ程妹愛の強い彼だが、高校3年生……つまりは去年が一番酷かった。
雄一郎と妹・凪優の学年の差は2つ。
『自身が溺愛する妹と同じ学校に在籍している』
それだけの理由でもう暴走っぷりが酷かった。
① 凪優の組手の授業には毎回と言っていいほどに乱入して、相手フルボッコ。
② 凪優が少し怪我したとなればイリン先生の所に凪優を抱えて全力疾走。
③ 『凪優と離れたくない』という理由で外部依頼の任務全てボイコット。
等々…………その前の年までの人物像が行方不明になるほど酷い。
これには教師陣も頭を抱えて不眠症街道まっしぐらであった。
そして、妹の凪優もまた、度を過ぎた兄の過保護っぷりに幾度となく恥ずか死していた。
そして3月になり、雄一郎が卒業したのを凪優+在校生+教師陣は『これで平穏になる!』と手離しでガッツポーズで喜んでいた。
卒業後、公安0課にスカウトされ所属する事となって雄一郎を獅童に押し付ける事に成功し、教師陣は宴会騒ぎだったそうな。
閑話休題。
「で、私に何の用なんですか? 綴先生」
凪優は綴がここに理由を尋ねた。
「まぁ…………ちょいと水無瀬に頼みがあってな」
「『頼み』……ですか?」
「あぁ。お前の兄貴……雄の事でな」
「兄さんがどうかしたんですか?」
「あぁ……ちょいと蘭豹とデートさせてくっついて貰おうかと思ってな」
「へぇ…………デートですか。…………ゑ?」
「どうした、水無瀬」
綴が告げた依頼に驚愕の凪優。
「『デート』て、あの恋人同士がお出かけするあの……?」
「師匠……そのデート以外に何があるというのだ?」
驚きのあまり、傍から聞けば『え? そこから?』という発言まで飛び出す凪優。
それに呆れつつ返すジャンヌ。
「誰と誰が……?」
「お前の兄貴……雄と蘭豹だ」
「なんで……?」
「いや、なんやかんやでアイツ等幼馴染で仲良いし、丁度良いかなって」
「確かにそうですけど…………」
「あん? 何か不満か? この話はお前にもメリットが有ると思うけどなぁ……」
「『メリット』……ですか?」
綴の言葉に食いつく凪優。
「そうだ。まぁ……少なくとも雄の妹離れも完全ではないが出来るだろ」
「確かに…………」
「そうなれば、お前も少しは負担が減るだろ」
「そう…………ですね」
「だろ? で、この話に乗るか?」
「乗ります。是非やらせてください!」
凪優は綴からメリットを聞き、超乗り気になって依頼を引き受けた。
余程、兄の妹離れ問題は深刻な代物だったらしい。
「そうか。じゃあいきなりだが、二人のデートを今度の日曜日にセッティングしようと思う」
「えらく早い……ですね。綴先生」
ジャンヌは綴の発言に異を唱える。
「こういうのは『思い立ったら吉日』なんだよ。だから早い方が良いのさ。解ったかぁ、ジャンヌ」
「な、なるほど…………」
「つーわけで、水無瀬お前、何とかして雄の予定空けさせろ」
「日曜日のですね…………。ちょいとお待ちを」
そう言って凪優はスマホを取り出し、とある相手に電話をかけた。
「あ、もしもし」
『その声は凪優ちゃんか? 珍しいな、俺の携帯に掛けてくるなんて』
「お久しぶりです。獅堂さん」
凪優の電話相手は雄一郎の上司……公安0課の三式班を束ねる人物、
『今日は何か雄一郎の奴に内緒な依頼でもあったか?』
「鋭いですね、獅堂さん。まぁそんなところです。その対象が兄さんなんですけど」
『どういう事だ? 詳しく話せ』
「はい。実は…………」
(事情説明中………………)
『成程な。解った。雄一郎の奴の非番はこっちででっちあげといてやるよ』
「ありがとうございます、獅堂さん」
『礼には及ばねぇよ。俺個人としても雄一郎の奴には凪優ちゃん離れして貰いてぇからな。それと助言良いか?』
「何ですか?」
『もしかすると雄一郎の奴を憎悪する輩が湧き出てくる。その対策も講じとけよな?』
「了解です。こっちの方で人員見繕っておきます」
『そうか。念のため不知火の奴もその日は非番にしておく。必要あれば自由に使え』
「ホントにありがとうございます、獅堂さん」
『気にすんなって。んじゃ、頑張れよ。じゃあな』
「はい。失礼します」
しばらく、獅堂と通話をして電話を切る凪優。
「で、上手く行ったか?」
綴が結果を尋ねる。
「兄さんの方は大丈夫です。ですが、邪魔者の殲滅に人員要るかと思います」
凪優は先程の結果を綴に伝えた。
「そうか。じゃあ水無瀬、お前が殲滅の人員も見繕っておけ」
「了解です」
凪優に人員の見繕いも指示した綴は席を立って尋問科の専門棟へ向かって行った。
「ジャンヌ、今度の日曜日大丈夫?」
「無論、大丈夫だ。協力するに決まってるだろ、師匠」
「ありがと、ジャンヌ」
「礼には及ばんさ、師匠」
「そっか。さてと、もう何人か誘わないとね」
「うむ、そうだな」
その直後から、凪優とジャンヌは友人に片っ端から連絡した結果、見張り(殲滅)要員が
水無瀬 凪優、ジャンヌ・ダルク、峰 理子、姫神 結衣、霧島 葵、神崎・H・アリア、
星伽 白雪、不知火 亮、遠山 キンジ、レキ、小夜鳴 マキナ、リーナ・ツェペシュ、
ヒルダ・ツェペシュ、カツェ・グラッセ、リサ・アヴェ・デュ・アンク、夾竹桃、水蜜桃、
間宮 あかり、火野 ライカ、佐々木 志乃、島 麒麟、乾 桜、高千穂 麗、愛沢 湯湯、
愛沢 夜夜
という、総勢26名のオーバーキルという行為が朝飯前で実行出来てしまう面子が揃い、蘭豹と水無瀬雄一郎のデートは2009年6月7日(日曜日)に決行されることになったのであった。
続くんだよ!
売れ残りのルリ先生の扱い(笑)は決めていた事。
最後の最期まで売れ残る予定ではある。
次回はデート当日の予定。
次回更新は未定です。
ではでは。