狐ちゃん奮闘記   作:moti-

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第11話

 まず最初に、()()()()()()()()()()()

 

 娘が殺されたから抜けるという理由はその通りなのだろう。だからといって、口にするすべてが正しいとは限らない。

 

 たしかに彼自身は一度告げていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()、と。

 

 冗談であると否定していても、実際はそのとおりでしかないのだ。むしろ仲間が死ぬことなんてなれっこ。それに対して今更なにかを感じることはない。娘だから少しばかり感じるかもしれないが、自分が死ぬ恐怖に比べると微々たるものでしかない。

 

 少なからず動じたのは、母親に殺されるかもしれないという危惧。しかしそれも異能解放軍と敵対し、こちら側に入ることで隠れながら生きることができるという考えができたことにより、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ───これが、父と呼ばれる男がぼくたちの仲間になった理由である。

 

 心の声はなによりも雄弁だ。ぼくは彼の打算を全て理解できる。だから、彼の参加を許すことにした。

 

 敵対しないというのであれば別に仲間になってもいい。ぼくのほうから弔に推薦することもできる。裏切られるかもしれないが───そのときは、別に温存など考えず叩き殺すだけだ。

 

 別に、全身を全開まで強化していると勝てない相手じゃないのだから。

 

 すこしだけ厄介なのが娘だ。それがいなくなった段階で、彼を殺すのは容易い。

 

 というか、娘がいても意外とかんたんだろう。全力で殴って散らせるのなら、ぼくも同様にそうすればいい。

 

 と、いうわけで。

 

 現在の共闘に至る。

 

 全身を強化する───多少温存はする。この共闘のあと敵対されると面倒だからだ。

 

「あ、そうだ。君の名前はなんていうの?」

 

「ん?」

 

「いや、知らないと呼ぶとき不便だなって」

 

「ああ……茶味(ちゃあじ)だよ」

 

「おっけー茶味。チャージって呼ぶね」

 

「どっちもそんなに変わらないと思うんだけど……」

 

 鉄球が撃ち出される。

 

 それを正面から打ち砕きながら進撃する男を見て、息を吐きながら踏み出す。鉄球が、今度は二発放たれた。どちらも尋常じゃない速度だ。しかし、先程よりは威力が劣っている。

 

 一息に距離を詰め、そのまま腕を振り抜いた。腹部を打撃するが、全く効いた様子もなく相手はそのまま拳を振り下ろす。左腕を持ち上げ、いなそうとする───しかし失敗した。左腕が引っかかり、殴打される。地面に叩き潰されながら、次に来る足を横から払い、起き上がる。

 

 高防御のからくりが読めない。ひょっとすると素の防御力で耐えているのかもしれない。こうなると、ぼくの火力じゃ足りないだろう。弔がいればこういう相手は問答無用で即死なのだが……今はいないので、仕方ない。

 

 なら、貫通するだけの火力を用意するだけだ。もしくは柔らかい部位を潰すしかない。

 

「チャージ!」

 

「なんだよ!」

 

「なんか……こう……いい感じに攻撃力のあるやつお願い!」

 

「はぁ!? ……わかったよ! 時間稼げ!」

 

 時間がかかる───ということは、ぼくの頭を吹き飛ばしたあれを撃つのだろう。準備に時間がかかると言っていたが、どういう準備なのだろうか。

 

 ちらりと見ると、浮かべた鉄球を何度も殴っていた。絵面だけ見たらとんでもなく地味だ。

 

 しかし、こう見ると、鉄球の中に力を溜め込むことのできる個性と推測できる。弾さえ大量に用意していれば、大量に高火力の攻撃が撃てるのは強いのではないだろうか。

 

 腕が振り下ろされる。今度は回避し、

 

 膝を強化し、

 

 蹴り飛ばす。

 

 今度はチャージの初球のように、遠くまで吹き飛ばせた。こうみると、やっぱり腕と足に同じ強化倍率を乗せた場合でも、足のほうが格段と破壊力がある。

 

 しかしそのぶん隙ができる。これは欠点だ。なるべく最速で、最短の動きで蹴りを放てるようになるべきだろう。

 

「驚いたぜ……」

 

「?」

 

 ここで、相手の男が話しかけてくる。後ろのことには気づいているだろうに、悠長なことをする。

 

「お前、増強型の個性か。男で筋肉さえあればもっと強かっただろうのになぁ……」

 

「……なに言ってるのかわからないんだけど」

 

「お前の攻撃は、軽い。お前の攻撃で俺は倒せない。今の攻防ではっきりわかった」

 

「……そっか。じゃあ、もっと強くするね」

 

 足の強化倍率を最大に。

 

 温存だなんて考えない、純粋な最大威力。

 

 それで以て、相手の顔面を蹴り飛ばした。

 

 近場の家に激突し、その壁を破壊して、さらに奥に吹き飛んでいく。全力の強化倍率でこうだ。あんまり効率がよくないから、普段はやらないのだが……ともあれ、失ったぶんをバッグから肉を取り出して食べることで回復する。

 

「お前! 俺が溜めてた意味あるのかよ!」

 

「あるよー! おおありだよー!」

 

「にしたって大技だな……それ、消費激しいだろ」

 

「そりゃあね。大技ってほどでもないけど結構消費する」

 

「ははははは! なんだ! 今のが全力か!?」

 

「うっわまだ生きてる……」

 

「なにあいつクソ面倒だな」

 

 跳躍し、大きく地面にクレーターを作りながら着地する大男。単純に、肉体強度が尋常ではない。これはやっぱりぼくでは貫通できそうにないなぁ、と思い、チャージを見た。

 

「おっ、撃ったほうがいい?」

 

「どうぞ」

 

「じゃあ」

 

 彼はその場に鉄球を構えた。今回は───中くらいの大きさだ。前のように巨大なものではない。

 

 それを、宙に浮かべて、彼は後ろから殴り飛ばした。

 

 瞬間の閃光。なにが起きたのかわからないほどだった。瞬間的に、放たれた鉄球は相手に向かって飛んでいき、その腹部を吹き飛ばした。それだけでなく、その後の風圧で鉄球より大きい穴を広げていく。

 

「───狐に使ったぶんの四倍だ。さすがに死ぬだろ」

 

 そういって、彼は腕をだらんと落とす。ひょっとすると疲れたのかもしれない。はぁ、と息を吐いて、自分が今吹き飛ばした男を見る。

 

「……いやぁ、強敵だった」

 

「いや君ほとんどなんにもしてないよね」

 

「相手が受けるタイプだったのが悪い。俺の技は基本火力特化だからな」

 

 そういって、彼は手をあわせた。

 

「どうだ……スイコ。お前の仇、俺がとったからな……」

 

『すまんかった。お前も安らかに地獄に行っといてくれ』

 

「こいつほんと畜生」

 

 殴ったほうがいいだろうか。そう思って、拳を構える。チャージがそれをみてあからさまに怯えた。ちょっと楽しいかもしれない。一応、頭に軽く拳骨を落とす。ごろごろと地面に転がり悶える姿は、見ていておもしろい。

 

 そうして遊んでいるとき。

 

 ───男がゆっくりと起き上がろうとする。

 

「うわっ!? まだ生きてんのかよキモいな」

 

「……でも、たぶんもうなにもしなくても死ぬよ」

 

「なんでわかるんだ?」

 

「狐の感」

 

 と言ってみたはいいが、男がこちらに向かって超速で走ってきたあたり狐の感は外れていたようだ。手で押さえようとしたが、そのまま押されるままに後ろに進んでいく。

 

 幾重もの壁を貫通し、周囲の悲鳴を聞きながら、ぼくは負った傷をそのたび治していく。

 

 死にかけの最後の意地のようなものだ。放っていても、そのまま死ぬだろう。とはいえ───この状態は、少し面倒だ。体勢が崩れるので手は使えない。バランスを崩すかもしれないので足を使うのも少し躊躇う。

 

 どうするべきか───そう考えた瞬間、相手の傷口を水が浸っているのを見た。

 

「あれ───」

 

 言葉にするよりも早く、その水が急激に体積を増して人型になり、心臓を握りつぶす。

 

 そのあと、少しの時間が経って男の力が抜けていった。ぼくを下敷きに、倒れる男を体の上から退かし、ぼくを見下ろす水の体のそれを見る。

 

『ぶい』

 

 そう言って、指を二本立てているのは、間違いなく叩き潰されたはずの少女だった。

 

「生きてたんだ……」

 

『まぁあれくらいで死ぬわけがないよね。(バカにぃ)はあれ喰らうと死ぬけど』

 

「あ、そうなんだ……」

 

 だから庇った、と。

 

 なるほど……ちょっと予想外だった。そんな簡単に集合できるものなのか。

 

 とすると、彼を仲間にするのは少し逸ったかもしれない。なにぶん耐久という観点で見ると強すぎる。液体だから、弔が触ることもできない。

 

 総評すると、強すぎる。

 

 とりあえず、吹き飛ばされたぶんを死体を引きずりながら歩いて戻る。その間、彼女と少しだけ話をしていた。

 

「どうやってあいつの体にくっついてたの?」

 

『まず全身分をもとに戻して、そこから地面で様子を伺ってた。腹に穴が空いたからその隙に体の中に忍び込んだぜいえーい』

 

「意外とバレないものなんだね」

 

『あいつがバカなだけだと思う』

 

 そんな話をして、もとの場所へと戻ってきた。

 

 チャージが幽霊を見たような顔で彼女を見る。

 

 それに対し、彼女は中指を立てて返した。

 

(バカにぃ)は自分の娘を捨てる人間のクズー! クズにぃー!』

 

「人聞きが悪い! 俺は単純に、お前が死んだと思ってこんな組織にいられるか! って思っただけだって」

 

『それできつねさん。ほんとのところは?』

 

「自分が死なないならいいやだって」

 

『ギルティ』

 

「いたたたた! なんでそっちの証言優先するんだよ!」

 

『だってこのひと、たぶん心読めるし』

 

 そういうと、彼は固まった。こちらを見てくる顔にぶい、と二本指を立てる。そして渾身のドヤ顔だ。

 

「いや……いやいやいや、ちょっと待て。心が読めるってなんだよそのチート」

 

「読んで字の如しだよ!」

 

「じゃあ俺の考えてたこととか全部気づいてたわけ? 初めてあったときとか」

 

「……ん? なんのこと?」

 

「おっとこれはセーフだったぜ」

 

(バカにぃ)さらっと墓穴掘るのやめようね。ほんと馬鹿だから』

 

 ほんとになんのことだかわからないのだが、初めてあったときになにかあったらしい。思い出すこともできないので、それは放置する。

 

 ワープゲートが開いた。

 

「……あ、とむら。お帰り」

 

「……お前……今何時だと思ってるんだ……」

 

 首を掻きながら寝間着の弔はこちらを睨んだ。

 

 顔が怖い。

 

「死柄木弔。あなためちゃくちゃ心配してたでしょうに」

 

「いらんことを言うなよ黒霧。殺すぞ」

 

「……それで、この死体はともかくそちらの二人は?」

 

「寝返ってくれたよ。仲間になってくれるって」

 

「……………………」

 

 弔は無言で二人を見つめ、

 

「…………まぁいい。お前の推薦だったらそこそこ信用してもいいだろう。とりあえず、面接だ……この惨状だとヒーローが来るだろ。黒霧、場所を変えるぞ。全員いつもの場所に連れて行け。……その死体もな」

 

「わかりました」

 

「あとは……部屋の荷物を全部運べ。ヒーローに捜索される前にな」

 

「……はい」

 

 展開されるワープゲートに、弔が一番最初に入っていった。次にぼくが入り、二人は少し悩みながら、ワープゲートに入ってくる。

 

 着いたのは、古いバーだった。最低限寝泊まりはできるように整理されている。布団も用意されているようだ。しかし、それしかない場所だった。

 

 弔は椅子に腰掛けながら、頭を掻いて二人を見下ろす。

 

「……それじゃ、面接の時間と行こうか。お前らの個性は? 何ができる?」

 

 二人は、顔を見合わせて、

 

「俺の個性は【チャージ】。鉄球に力を溜めることができる。そこの死体の腹の穴を作る程度には火力を出せる」

 

「ふぅん……まぁ、物理系の遠距離攻撃と考えると……悪くはない。次、お前は?」

 

『わたしは【液体化】。体を液体にできる。基本的に物理攻撃は効かないかな。弾けとんでも復活できるよ。ただ火はちょっとごめんです。蒸発しちゃって死んじゃいます』

 

「なるほど……要は、ゲームに出てくる強キャラのスライムか。液体は……なんだ。金属のものにはならないのか?」

 

『ちょっとずつ体に金属を混ぜていったらできるかも?』

 

「マジか。じゃあ目標はメタルスライムだな」

 

「お二人さんちょっと意気投合してないか? ……それで、判定はどうなんだよ」

 

 弔は少しだけ悩むそぶりを見せる───そぶりだけだ。実際には、もう答えはでているだろう。そういう悩みかただ。

 

「……まァ、合格だ。これからもよろしく」

 

「おう。わかった」

 

「じゃあ俺は寝る。あとのことは黒霧に聞け」

 

 そういって、弔はぼくを手招きした。どうしたのか、と思って駆け寄ると、抱きかかえられる。

 

 そのまま布団の中まで連行された。

 

「あの、あの……とむら? とむらー?」

 

 リュックを枕元に置くことはできた。しかし、布団に入った瞬間反応がない。逃げ出そうにも抱きつかれているので抜け出せない。

 

 どうすればいいのだろう。とりあえず、腕の中で少しだけ動いて、靴を布団の外に出した。

 

「……仲のいいことで」

 

『あ、(バカにぃ)嫉妬してる。嫉妬だ嫉妬。うらやましーんだ嫉妬しっとー』

 

「うるせぇ、お前俺のことお父さんって呼んだの気づいてるからな? 煽られても痛くありませんよーだ!」

 

 外野がうるさい。

 

 ……そういえば、ぼくも寝る寸前で襲撃されたんだっけ。

 

 そのことを思い出すと、自然と瞼は落ち───ゆっくりと意識は落ちていく。




 次回からは幕間で他キャラ視点入ります
 あといろいろ指摘されたのでちょっとずつ前回の話とかに修正入れていきます
 ようやくいろんな人の思惑とかを描写していけますね
 キャラの裏話とか、どうしても主人公だけの視点だと描写しきれないので。
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