狐ちゃん奮闘記   作:moti-

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第21話

 有象無象はあらかた片付き、死柄木弔は作戦の進行具合を考える。

 

 抹消ヒーロー・イレイザーヘッド……その実力を考えると、そろそろ自分が動く頃合いだろう。それはそれとおいておいて、今考えることは───プランの移行をどうするかだ。

 

「プランA───今後の動きによるな」

 

 イレイザーヘッドは強い。たしかに強い。だが今回はオールマイトを殺すために用意した改造人間が存在する。それにそれだけでは心もとないから、

 

 三年前から蓄え続けた()()()()()()の怪人・脳無を用意してある。

 

 これでプロヒーローが大量に現れた場合も戦うことができる。いや、それどころか全てをヒーローを抹殺できるだろう。

 

 確実に勝てる保障があるからこその、実行。だからこそ、間違いなく負けることはないだろう。

 

 イレイザーヘッドが、雑魚刈りに集めた手下をすべて片付けてこちらへと向かってきている。仕方がない。

 

 自分で動くことにする───と、死柄木弔は歩き始めた。

 

「こんにちは」

 

 捕縛布が飛ばされる。それを弾き飛ばし、死柄木は嘆息した。

 

「おいおい……仮にもヒーローだろ? 挨拶は返せよ」

 

 足へと向かってくるそれを、踏み潰し、つかみ、逆に引っ張る。戦い慣れているのだろう。得物だろうに即座に手放して体勢を崩さないその姿。なるほど強いな、とすぐに判断する。

 

 だからといって───この程度ならば負けるわけがない。強い敵は今までもたくさんいた。それらと比べたら、イレイザーヘッドは個性を消されるだけだ。

 

 余裕、と言うわけではないが。

 

 それでも、今まで戦った強敵と比べると───弱い。

 

 今までの戦闘はすべて観察していた。だからこそ、一定の間隔で髪が下がる瞬間があることも把握していた。そのときが個性を使っているときだろう。そう考えるとわかりやすい。

 

 相手のまばたきの隙に触れる。それだけで、相手は容易に仕留められる。

 

 武器を奪われたイレイザーヘッドは、そのまま殴りかかってくる。それを確認し、死柄木弔は拳を正面から受け止めた。

 

 崩壊が始まる。

 

 肘が砕けたことに反応し、即座に個性を発動して跳び去った姿は確実に優秀のそれだ。それが近接系で輝く個性持ちだったら、と考えると恐ろしい。

 

 しかし、相手は残念ながらただの無個性も同然。純粋に、圧倒的な力では対応できないだろう。

 

「───脳無」

 

 死柄木弔は宣言した。それはある種、死刑宣告にも等しい。イレイザーヘッドでは確実に勝てない敵だ。だからこそ、呼び掛けた。

 

 それに応じ、ずっと佇んでいた巨漢が動き出す。それを見て、死柄木は吐息を吐く。

 

「───死柄木弔」

 

「……黒霧。どうだった」

 

「生徒に一名逃げられました」

 

「わかった」死柄木弔は宣言する。「プランBの発動だ」

 

 

 

 

 撃ち込まれたのは、過去と今を繋ぐ楔。

 

 過去と現在の境界を貫き、彼が自らに施した封印を解くもの。

 

 髪が蒼く染まっている。ああ、またこれだ。()()()()姿()()

 

 この姿になったのは何年ぶりか。彼───茶味は考える。封印したのは、あまりの凶悪さにだったか? それともあまりの悍ましさにだったか。

 

 そんなのはもう、関係ない。

 

 そう───関係ない。茶味は吐息と共に、拳を握った。元々個性の半分を封印していたのだ。それが開放されて、個性は本当の力を取り戻した。

 

「───ま───」

 

 直ぐ近くにいる、緑谷出久へと拳を放つ。位置は少し離れている。関係ない。何故なら今から放つのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

「わりぃな」

 

 何もかもを消し飛ばすかのような威力の拳だった。それの直撃を喰らった緑谷出久が、遥か彼方へと吹き飛んでいく。

 

 見えなくなるほど吹き飛んだ緑谷出久を見て、茶味は漸く息を吐いた。あの様子では死んだだろう。しかし悪いとは思わない。ああしなければこちらが死んでいた。

 

 それに───今更誰が死のうと、悲しむことはない。

 

 彼は未だ目を覚まさない狐のもとへと歩いていく。ゆっくりと。未だ体の痛みは収まっていないが、それでも自己再生力ですぐにすべて回復するだろう。

 

 そういうものだ。

 

 ───だからこそ、自分も娘も化物扱いされていたのであろう。

 

「なぁ、狐さんよぉ」

 

 茶味は未だ目を覚まさない彼女へとゆっくり声を掛ける。

 

「俺さ、誰が死んでもどうでもいいんだけど……スイコとお前さんが死ぬのはちょっとだけ悲しいぜ」

 

 誰かを惜しむ感情は、遥か過去に捨てたもの。それは人生を怨んだときに錆びついてしまったもの。

 

 なのに、この二人だけは例外のように、少しだけなにかが痛むのだ。それが何故かと考えたとき、気づいた。

 

 似ているのだ。

 

 ()()に。

 

「狐さん、そろそろ起きろ。……まさか死んでねぇよな?」

 

 ふと疑問に思って、茶味は狐の首に手を当てる。呼吸はしている。それを確認して、何故まだ目を覚まさないのかを疑問に思ったときに、

 

 顔面を殴られた。

 

「───!?」

 

「───やっと───戻ってきた───」

 

 そのまま吹き飛ばされる。今度は受け身を取れなかった。それより困惑と疑問が勝り、わけのわからないままに聞く。

 

「お前……どうやって……」

 

「───折れた足でも───ぐっ───はぁ───ふっ───頑張れば走れる」

 

「───!? 嘘だろ!? お前、走ってきたのか!? あの傷で!?」

 

 そこに立つのは緑谷出久。左腕は使い物にならないほどに壊れ、右足は骨折しており、さらに先程殴られた体は前面が裂け、中の肉が露出している。立っていることも奇跡のような状態だ。

 

 そんな状態で───走ってきた?

 

 いよいよ驚愕する。自分のように壊れた体を勝手に修復してくれるような能力があるならまだしも、それではなくただの気合だ。

 

 鬼気迫る───そんな言葉が似合う、狂気すら顔を覗かせるようなレベルの正義感だ。

 

 ───こんなヒーローばかりだったら。

 

 ふと心の中に湧いた思いを、首を振ってかき消す。そして茶味はポケットに手を突っ込んだ。持ち出すものは鉄球だ。

 

 触れた瞬間、個性が作用し変化していく。蒼い、矢へと。

 

 放った。先程の鉄球より明らかに速いそれを緑谷出久は見て、

 

 

「───スマッシュ!」

 

 

 ───壊れた左腕で以て相殺する。

 

「ま……マジモンの馬鹿かよお前……!?」

 

 そして、壊れていない右手の人差し指で攻勢に出る。近くに落ちてあった小さい石の破片を人差し指の全力で撃ち出した。

 

「……っ、あぶねぇ!?」

 

「……………………」

 

 鉄球で相殺しつつ、悍ましさを感じさせる緑谷出久から一歩遠ざかる。

 

「───なぁ、お前……ヒーローって、どんなものだと思う」

 

 ふと、そんなことを聞いていた。意識は朦朧としているだろうに、そんな問いかけに対して緑谷は律儀に返答する。

 

「───誰かを助けるために戦える人だ」

 

「……………………」

 

 その答えを聞いて。

 

 茶味は、笑った。

 

「……ヒーロー全員が、お前みたいなやつだったらよかったのにな」

 

「……………………?」

 

 お前には姫様()は救えない、だなんてことを言うことすらせず、彼はぼそりとつぶやいた。

 

 ───そのとき。

 

「ん───ぅゆ」

 

 狐が目を覚ました。

 

「───っ! 死染さん!」

 

「ん……んぅ? あ、あははははは。あははは。あはは」

 

 緑谷が駆け寄る。

 

「大丈夫だった!? えぇとえぇと……どうしようか。一人で逃げられるかい!? 安全な場所へ───」

 

「───いただきましゅぅ」

 

 え? と、緑谷が反応するより早く。

 

 人食い狐の牙は、緑谷の腕へと突き刺さった。

 

 

 

 

 それは助けへと向かう最中の出来事。

 

「───なにか来るぞ」

 

 轟が呟いた。この状況において、そのことで狼狽えることはなく全員が冷静に立ち止まり、警戒しないわけがない。

 

 空から墜落するようにやってきたのは───切島が、先程死体を確認したはずの敵。それを見て、一瞬困惑する。しかし気を取り直して、情報を叫んだ。

 

「あいつは俺と戦ってたやつだ! ぶん殴ったら破裂した!」

 

「なるほど」

 

 と、轟はいう。そして手を翳し、

 

「俺には関係ない」

 

 瞬間で体を凍結させる。氷像になった敵は、先程のように膨れ上がり───そして、爆ぜた。

 

「また死んだ!?」

 

「……違う、死んでない!」

 

 尾白が踏み出した。降りかかってくるその肉片を拳で捌きつつ、意思を持って襲いかかるそれを弾く。

 

「くっそ───動けないようにできればなんとかなるか……!?」

 

「俺の氷じゃ駄目そうだな……拘束系の個性はいるか?」

 

「お、オイラの個性がそうだ!」

 

「拘束力は?」

 

「今日の調子的に一日はくっついたままだと思う!」

 

「なら任せた。……尾白、蛙吹。一箇所に集めてくれ」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

「すまん、蛙吹」

 

 弾く位置は一定に。一点に集め、そこに峰田が個性の産物である球体───もぎもぎを投げつけた。

 

 完璧にぴったりくっつく形に。

 

「……さすがに拘束できただろ」

 

「じゃあ急ごう。まずは先生のところへ───俺たちみたいな対人向き個性が必要だろ」

 

 そう言って、動こうとして、

 

 ───ふと、空に何かがいたような気がした。

 

「……………………今、なにか見たか?」

 

「……俺は見えた。けど……確証は持てない」

 

「なんの話だ? 見えたって?」

 

「オイラにはなんも見えなかったけど……」

 

「……気の所為かしら」

 

 蛙吹梅雨はつぶやく。

 

 

「なにかがたくさんいたかのように見えたのだけれど」

 

 

 

 

 

 上鳴電気、絶賛苦戦中。

 

 振られる攻撃は戸惑いながら回避……この調子だと、いつやられるのかわかったものじゃない。基本的に、当たればアウトの戦いでしかないのだから。

 

 いかに冷静に、攻撃を回避するか───なのだが。

 

 先日まで中学生だったのだ。まともに戦うなんて、やってこなかった。個性でできる幅を増やしてなかった───ミスだ。

 

「あーえーと───耳郎! なんか案ないか!?」

 

「こっちが聞きたいくらいなんだけど! あんた電気遣いでしょ? なんかできないの!?」

 

「俺は電気を纏うだけなんだよ!」

 

()()───でしたら! 持っている武器も一緒に電気を纏うんですの!?」

 

「あ!? ……ああ! そのはずだ!」

 

「ならば考えがありますわ」

 

 同じ場所へと転移させられていた八百万百が、その個性で刃を潰した剣を作り出す。

 

「これを使って時間を稼いでください!」

 

「でも俺剣とか使ったことねぇよ!?」

 

「剣は素人が使っても扱いやすいものです! がんばってください!」

 

「あーもう!」

 

 拳を振り下ろす敵の姿を避ける。避け、そして首筋へと剣を当てた。

 

「ぐぎゃぁぁあああ───!?」

 

「あ、かなり効いてる」

 

 ほんの数秒当てただけだが、相手は昏倒するように倒れた。

 

「いやぁ───キッツ。上鳴の放電が通じるんなら一網打尽なんだけど」

 

「……()()()!」

 

「はぇ?」

 

 八百万の身体の中から、巨大なシートが生成される。それはそばにいた耳郎響香の姿も共に隠し、ぱさりと落ちた。

 

「厚さ100ミリメートルの絶縁体シートです。上鳴さん!」

 

「……なるほど」

 

 意図は察した。先程耳郎が言ったように、放電が通じる環境が完成する。

 

「これなら俺は───クソ強え!!」

 

 故に放電した。

 

 特大の雷を放った。周囲を飲み込み、全体を制圧するほどの雷。それにより、目に見える場所にある(ヴィラン)を全滅させた。

 

 放電が終わった現場を見て、八百万は呟いた。

 

「皆さんの場所に移動しましょう」

 

「あの……それより服が凄いことになってるんですけど……」

 

「また創りますわ。……上鳴さん?」

 

 問いかけながら、服を作り着る。

 

「ぅぇーぃ……」

 

「「!?」」

 

 二人がアホと化した上鳴に気を取られた、次の瞬間。

 

 ぴたり───と。

 

 その首筋に一本のナイフが突き付けられた。

 

「動くな」

 

「……!?」

 

「うェい!?」

 

 それを突きつけたのは、電気を指先から見せる一人の男。伏兵であると理解したのは一瞬だった。

 

「動いたらこいつの命はないものと思え」

 

 ナイフを突きつけているのは、電気が通用しない可能性を考えてだろう。あるいはナイフが弾かれたとして、電気によって殺せるように考えた結果なのかもしれない。

 

「そうだ……俺の命令には従ってもらうぞ」

 

「……………………」

 

 思考を回す。人質を取られた場合の対処法。どうすればいいのか、と考える。

 

「どっちも()()、か」

 

「……………………?」

 

「そうだな……お前ら、服を脱げ」

 

 と、男は言った。要求に困惑し、動きが止まる。どうするべきかを迷う。

 

 結果、一歩も動けないまま時が進んだ。

 

「…………ペナルティだ」

 

 そう言って、男は上鳴の右目へとナイフを這わせ、

 

「……ぅ、ぐぁぁぁあああああああああああ!?」

 

 ───そのまま、それをくり抜いた。

 

 ぼとりと地面に眼球が落ちる。そして、額へと一本線を刻んだ。

 

「これは戒めだ。お前らは俺の命令に従わなかった。……警告する。命令を聞かない限り、その数だけこいつの額に線を刻む。そして体のどこかを潰す。やめてほしければ命令を聞け」

 

「……………………」

 

「もう一度言う。お前ら、服を脱げ」

 

「……………………」

 

 ただ、無言で。

 

 ゆっくりと服の端に手を掛ける。そのまま、わずかに迷うように手が止まり、そのまま歯を食いしばり、勢いよく脱ぎ捨てた。上着を脱ぎ、シャツを脱ぐ。

 

「そうだ。それでいい」

 

 上半身の裸身を晒したところで、手は止まった。

 

「……ははは」

 

 男は狂ったように笑い声をあげる。

 

「はははははははは! ははは! はははは! ヒーローが俺の言うことに従わざるをえない状況! 楽しいなぁ、愉しいなぁ、楽しいなぁ!! 未来の芽を潰す! これほど愉快なことはない!!」

 

「───うるせぇよ」

 

 電撃。

 

 そして、腹部を襲う───衝撃。

 

 いくら刃が潰された剣だといえ、殴打されるとそれなりに痛い。振り払われた剣は、相手を押し倒しながらその持ち主を開放する。

 

「な───き、貴様───」

 

「痛みで目が覚めたぜ……クソが」

 

「な、な───なぁ……?」

 

 楽しみを邪魔した少年に、男は怒りをぶつけようとした。しかしそれは失敗に終わる。

 

 空に浮かぶある一点。そこに、ぼんやりとだがなにかがいることに気付いてしまったから。

 

「なんだあれ……?」

 

 目を凝らして、その正体を確認しようとする。

 

 ()()()()()()()()

 

「が───ぎ、ぐぁ……ぐ、……?」

 

 ぱちん、となにかが弾けるような音がする。そして視界が断ち切られた。なにも見えない。おかしい。なにが起きた? わからない。

 

 困惑する男の前で、その正面に立っている少女二人は直感する。

 

 ───死んだ。

 

 ゆっくりと、体が()()()()()()()()()()勝手に変形していく。骨が折れる音、血が滴る音、男の悲鳴。その光景を呆然と見ていた。

 

「なに……あれ……」

 

「……響香さん、響香さんはほんとに響香さんですの……?」

 

「え……? 何言ってるの、ウチはウチだけど……?」

 

「ですよね! そうですわよね! ……そう、そんなはずがありませんわ! 響香さん。そこにいるのは響香さん……響香さん? 本当に!? あなたは本当に響香さんですか!?」

 

 疑われた、耳郎響香は困惑する。()()()()()()()()()()困惑する。おかしいな。自分は自分だ。なにをわけのわからないことを言っているのだろう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、いつまでも泥が滴り落ちる首を掻き毟って困惑する。

 

「……いえ、うそ……うそですよね」

 

 恐れ慄いたような表情。

 

 ()()()()()()()()()

 

「……そもそも響香さんって誰でしたっけ?」

 

「さぁ、誰だろうね?」

 

 笑い合う二人。顔のあちこちにある眼球が開いて、それらはすべて自分を見ている。口からごぼりと脳みそがこぼれ落ちた。

 

「あははは「ははは「ははははは」

 

「───すまん」

 

 上鳴電気は、首筋にあたるだろう場所へと剣を押し付けた。強めの電気を流し込み、もう片方も同じように処置し、狂った二人の意識を奪う。

 

「……さーて、これで助けは見込めない」

 

 嫌に冷静なのは、それは現在()()()()()()()()からだろうか。右目は失った。左目は血が流れ込んできて開けない。これも額に切れ込みを入れられたせいだ。拭おうと考えたが、しかし嫌な予感が走ったためやめた。視界がないまま戦え、というらしい。

 

 痛みに対しては何も感じない。それがヤバいことくらいわかる。自分はここで死ぬのかな、と漠然とした───確信にも似た予感を懐きつつ、握った剣を何度か振って、調子を馴染ませる。

 

 目を失ったからか、生体電気というのか───人の所在はわかる。死体も、意識がない人物も、正常な状態の人も、その脈動で感知できる。

 

 だから今、近くにただ一人意識のある誰かがいることは気づいていた。

 

「ははっ……入学直後からハードモードか」

 

 相手がいるだろう座標へと向かう。ぐちょり、となにかを踏み潰した。なんだろう、と考えて、すぐに思い至ったのは自分の眼球だ。

 

 これでもう万に一つも再生の目はない。今後一生、隻眼だ。

 

 ヒーローは怖い。こんな博打を打たないといけないのだ。心臓がばくばく言っている。死ぬ気がしてきた。怖い。なんで俺がこんなことをしないといけないのだ───と、考え、ネガティブな思考をすべて振り払った。

 

 なにも見えない。頭は回らない。血が溢れ出て違和感がある。武器も貧弱。個性を使うとすぐに馬鹿になりそうな気がする。

 

 しかし意志はある───ならばいい。当然、至極快調だ。

 

「来いよ変なの。命に代えても勝ってやる」

 

 やってやる、と男は言った。




 狐さん、暴走。
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